ほんものの指導のプロとは ~その1~

2008 年 12 月 12 日

 大村はま先生(1906-2005)は、日本の国語教育関係者に大きな影響を与えた、素晴らしい先生です。その大村先生の著書「日本の教師に教えたいこと」には、私たちのような民間の立場で学習指導に関わる者にとっても大変参考になる記述がたくさん残されています。

 たとえば、「教師はあり合わせの力で授業をしてはいけない」ということを書かれています。おおよその内容は、次のようなものです(若干、文章を調整しています)。

 教師の仕事はこわいもので、あり合わせ、もち合わせの力でやっていても、やさしく、あたたかな気持ちで接していれば、結構、いい雰囲気をつくれるものです。子どもはもちろん、父母や同僚とも、いい関係をもっておけるものです。いい教師で過ごせるものです。そこがこわいところです。安易に流れず、なんとかすますのではなく、人を育てるほんとうの仕事を見つめ、畏(おそ)れながら力を尽くしたいと思います。端的に言えば、あり合わせの力で、授業をしないように、ということです。何事かを加えて教室に向かい、何事かを加えられて教室を出たいと思っています。教室をいきいきとさせるものは、そういうところから生まれてくると思います。

 毎年同じような内容を扱った授業をしていると、すっかり慣れてしまい、「今相対している子どもたちの学力を伸ばすのだ」という緊張感や使命感が知らず知らずのうちに希薄になるおそれがあります。たとえ、前の年と同じことを指導する場合でも、前の年に使ったノートやメモで済ませてしまうようなことは、絶対にしてはならないことです。

 入試にしても、指導する担当者にとっては毎年のことですが、これから受験に臨む子どもにとっては人生で初めての体験です。その子の人生を左右する受験ですから、一人ひとりに最善の結果がもたらされるよう常に全力を尽くして指導にあたるのが私たちの使命です。

 「私たちのほんとうの仕事を見つめ、畏れながら力を尽くす」――このような意識は、学校の先生だけでなく、学習塾で指導にあたる人間にとっても、またどのような仕事をする人間にとっても大切にすべきことだと強く感じた次第です。

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カテゴリー: 家庭学習研究社の理念, 教育者とは

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