4年生は「語彙爆発」の時期

2009 年 1 月 14 日

 子どもの知的発達において、9歳は大きな節目となる時期だと言われています。子どもの思考様式が9~10歳(小学4~5年生)にかけて急速に変化し、大人の思考へと近づいていくからです。このことは、子どもの語彙が増えていくことと大いに関連しています。

 子どもも、4年生ともなると自分から様々な本を手にして読書を楽しむようになります。これによって、新たな語彙を素晴らしい勢いで獲得していきます。読書が定着するまでの子どもは、新しく出てきた「書き言葉」を、すでに知っている「話し言葉」と照合することでその意味を学び、自分のものにしていく必要がありました。話し言葉としてはすでに知っていたわけですから、書き言葉に焼き直すだけで、語彙そのものが増えるわけではありません。しかしながら、こうして少しずつ書き言葉のレパートリーを増やした成果が表れてきます。それは、子どもが一人で読書を楽しめるようになることです。

 書き言葉としての語彙が一定数に達すると、子どもは絵本の世界から本格的な書物の世界へと旅立ちます。多くの場合、子どもたちは3年生頃から読書に勤しむようになりますが、その結果、「間接体験」から新たな語彙を獲得する流れが生じ、子どもは日常の経験や会話から新たな語彙を仕入れるよりも遙かに多くの語彙を手に入れるようになります。

 これは、子どもの語彙獲得の道筋が逆転したことを意味するでしょう。「話し言葉」をもとに新たな「書き言葉」を獲得していたのが、「書き言葉」を通じて新たな「話し言葉」を獲得するようになったのです(専門家によると、これを「反対給付」というそうです)。これが「語彙の爆発」と言われる、急激な語彙の増加現象をもたらします。有名な発達心理学者の坂本一郎氏の研究によると、9~10歳(小学4年生)の一年間は、生涯で一番語彙の増加率の高い時期にあたり、年間39.3%を記録しています。

 このような語彙発達の時期を上手に乗り越えられるかどうかは、実は中学入試での合否に大きな影響を与えます。中学入試では、小学生の一般的なレベルの一歩上をいく思考レベルが求められているからです。次回は、この問題について引き続きお話ししたいと思います。

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カテゴリー: 中学受験, 子どもの発達

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