2009 年 10 月 のアーカイブ

子どもの自立的学びをどう引き出すか 第3回おかあさん塾

2009 年 10 月 29 日 木曜日

 10月23日(金)には、第3回おかあさん塾を五日市校にて実施しました。この回が最終回ということで、「ある程度まとめ的な内容を」といろいろ考えた末、今回のタイトルを決め、それに基づいて内容を組んでみました。

 新型インフルエンザが猛威を振るい、学校では学級閉鎖が相次いでいるなか、それでも22名のおかあさんに参加いただきました。
 さて、当日の内容ですが、まずは「学習が軌道に乗るための基本条件」をテーマに、お子さんの学習を活性化させるために欠かせない必須の事項について一緒に考えていただきました。

 学力を伸ばすにはどうしたらよいかを考えていただくと、多くの方は「子どもの意欲を引き出すことが大切だ」とお答えになります。その通りなのですが、「意欲に直接働きかける前に、学習の習慣づけから入っていくほうが自然である」という有名な教育社会学者の説もあります。その学者の考えをご紹介し、現在のわが子の学習習慣の状態について、おかあさん同士で話し合っていただきました。

 しかし、そうは言っても学習を活性化するにあたって“意欲”は不可欠な要素です。そこで、次には意欲を話題に取り上げ、どうしたら子どもの意欲が高まるかについて考えていただきました。子どもは「おもしろいから」学ぶのか、「目標があるから」学ぶのか、そのことを研究した学者の説をご紹介し、「おもしろいから学ぶ」ということが、小学生には大変重要なことだということをお伝えしました。

 そしてそのことを受け、「ものごとに興味をもって学ぶ子どもにするために、おかあさんにできることは何か」について、ご提案させていただきました。

 当日の第2のテーマは、「子どもの主体的な学びの姿勢を育てる」でした。子どもが、自分自身のこだわりとして勉強するようになる。それは、ほとんどのおかあさんが望んでおられることです。そこで、子どもの自発的学びの姿勢を引き出すための提案をさせていただきました。

 子どもの学習に自発性をもたせる効果があるのは、やはり何と言ってもおかあさんがほめることです。

 以前このブログに書きましたが、日本のおかあさんは子どもをあまりほめていません。あるいはほめ方が下手です。その証拠に、子どもに尋ねるとほとんどが「おかあさんはあまりほめてくれない」と返事をします。一方、おかあさんに尋ねると「かなりほめているつもりです」とお答えになります。このギャップはどうして生まれるのかを踏まえ、上手なほめ方について考えていただきました。

 最後になりますが、この日の最終テーマは「家庭内を前向きな雰囲気にする」でした。子どもに「勉強をがんばってほしい」となると、大抵のおかあさんは勉強のことを語り始めます。「がんばらねばならないわけ」「がんばらないとどういうことになるか」――確かにこれらについて子どもに話して聞かせることも必要でしょうが、多くの場合失敗に終わります。子どもは、こういう話には耳にたこができているからです。聴く耳をもたない子どもに、何を語っても効果は期待できません。

 筆者が経験的に思うのは、自発的に学ぶ子どもの家庭は親子関係が良好で雰囲気がよいということです。家庭が常に明るく、家族のチームワークがとれていたなら、子どもの気持ちは安定し、何をするにも積極性が出てくるのです。そこで、子どもの勉強に直接働きかけるよい方法をご提案するのではなく、おかあさん発で家庭を前向きな雰囲気にしていくための提案を4つさせていただきました。

 その一つはこんな提案です。家族揃って会議を開き、一人ひとりが当面の目標(1~2ヶ月程度のスパンの目標)を掲げる。そしてそれを大きな一枚の紙に一人ずつ書き込む。できあがったら、リビングの壁などのよく見えるところに張り付ける。それから、その目標の達成をめざしてがんばっている家族をお互いにたたえ合う。おかあさんは、特にわが子の様子を注意深く見守り、タイミングよくほめる。おとうさんも自分の目標を掲げ、一緒にがんばる。

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 ここで大切なのは、「みんなで」ということです。子どもだけでなく家族全員が目標をめざすことで、家庭内の雰囲気が盛り上がり、お子さんの学習に好影響をもたらすのです。

 最終回は3回目ということで、みなさんワークショップ風の進行スタイルに順応されたのか、全員が熱心に気持ちを入れて学んでくださいました。こちらの問いかけ、語りかけに対して表情豊かに反応する方が多く、それが進行役の筆者にとって大きな励みとなりました。おかあさん同士のワークもスムーズかつ活発に行われ、終了時には「今回が一番よかったかな」という手応えを感じることができました。参加くださったみなさん、本当にありがとうございました。そしてお疲れさまでした。これからの子育てと、お子さんの学習生活に、少しでもお役に立てば幸いです。

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カテゴリー: 子育てについて, 行事レポート

4年生の1年間の活かし方  ~その1~

2009 年 10 月 26 日 月曜日

 今回は、4年生の1年間を、子どもの言葉と思考の発達を促すために積極的に活かしていく方策をご提案させていただこうと思います。ただし、これから書くことのほとんどは以前書いたことであり、このブログを以前からお読みなっているかたにとっては、既知の事柄になり、あまり参考にならないかも知れません。ご了承ください。

 まず、小学4年生は人間の人生においていちばん語彙増加率の高い時期にあたるということを親は認識する必要があります。そのことを忘れ、勉強の内容面にばかり目を向けていると、勉強が空回りのうちに入試を迎えることになりかねません。4年生の1年間における親の役割として最も重要なのは、「適切な言語環境を設定しつつ、子どもの語彙の発達と内面の成長を引き出す」ことにあるのだと認識してください。

 では、具体的にはどういうことをすべきなのでしょうか。

1.子どもと一緒に読書を大いに楽しむ。

 3年生ぐらいから、子どもの語彙増強を引き出す主要な場は、読書へとシフトしていきます。それまで、主として親や周囲の近しい間柄の人との会話が、読書が軌道に乗るまでの子どもの語彙獲得の中心的な役割を果たしていました。しかし、書き言葉の習得が進み、一人で読書を楽しめるようになってきたこの年齢あたりから、語彙獲得の道筋に大きな変化が現れるのです。会話よりも書物を通じて新しい語彙を獲得する。そのことは、語彙増強のペースに劇的変化を生み出します。

 こうした変化が、数値にはっきりと見て取れるようになるのが4年生の頃です。年間の語彙増加率が生涯最高の数値を示すのです。発達心理学者の坂元一郎氏の研究によると、9歳から10歳にかけての1年間の語彙増加率は39.4%に達します。

 この圧倒的な増加率をベースに、ますます読書が語彙獲得を推進していきます。その結果、5年生(10~11歳)の1年間の語彙獲得数は6342語と、これも生涯最高の数字を記録します。理解や使用の可能な言葉が増加すれば、当然微妙にニュアンスの違う言葉の識別能力も進歩します。さらには、関連(4年)、編集(5年)背景(6年)など、抽象的な意味合いをもった言葉も、語彙としてどんどん増えていきます。こういう流れがあってこそ、小学生にはいささか難しい中学入試問題への対応力も身についていくのです。

 できるなら、土曜日や日曜日には親子で本屋や図書館に出かけていただきたいものですね。図書館に行くと、創作児童文学だけでなく、いろいろな本が見つかると思います。伝記、記録文、紀行文、説明文、随筆、歴史物、科学物など、いろいろな本を親子で手に取ってみてください。

 同じタイプの本ばかり読みたがる。そんなお子さんもいます。そういうとき、図書館や本屋は本を手にできますから、一緒に見て、「たまにはこういう本を読んでみようよ」とお子さんに促すこともできるでしょう。

2.子どもとの会話の時間を大切にする。

 子どもが一人で本を読み始めたなら、言葉の先生としての親の役割は終わったのかというと、そうではありません。親子の会話はやはり重要な役割を果たしていきます。おかあさんは、子どもの思考力、表現力のグレードをあげるための大切なパートナーとして欠かせない存在なのです。

 1日に10~20分でも構いません。学校や塾でのできごと、友だちのこと、子どもの興味関心に関わること、時事に関すること、新聞の記事、テレビのニュース、有名な人物のこと、家族のことなど、話題は何でも構いません。

 おかあさんが話をするときには、話が終わるまでしっかりと耳を傾けるように伝えます。また、おかあさんも、お子さんが言い終わるまで、ていねいに聴いてやります。おかあさんには、子どものまどろっこしい話し方にイライラせず耳を傾けるとともに、話し方に問題を感じたなら、「今言っていたこと、わかりにくいからもう一度言ってくれない?」など、子どもの話し方が向上するよう、辛抱強く相手をしてあげてください。

 お子さんにとって、言わばおかあさんは会話のモデル、先生ですから、おかあさんの話し方が望むと望まないとに関わらず、お子さんにそのまま浸透していきます。そこで重要になってくるのは、複雑な事柄や関係を扱うような話題に適した話し方です。たとえば、話すときのセンテンスは長く、構文は重文や複文など、主語と述語が複雑に組み合わさったものを多用するといったように。できるだけ感情的な吐き捨てるような言い回しは避け、第三者にちゃんと理解できるよう順序性や整合性においてしっかりとした話し方を心掛けてください。

 あまり堅苦しく考える必要はありません。会話の場では、互いに自分の思いを落ち着いて、わかりやすく、ていねいに相手に伝えるよう心掛ける。それをお子さんに対して徹底させればよいのです。

 1年間それを続けたなら、読書による語彙の爆発的増加と相まって、おそらくお子さんの思考力と表現力は、格段に進歩を遂げることでしょう。そのことが、本格的な受験勉強への取り組みにおいて、大いに威力を発揮するのは間違いありません。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育

ウィン‐ウィンのパラダイムと中学受験

2009 年 10 月 22 日 木曜日

 昨日、テレビのニュースを見ていたら、前原国土交通相が「成田と羽田の両空港を、首都圏を支えるハブ空港としてウィン-ウィン(Win-Win)で」というようなことを語っておられました。

 このとき、筆者が耳に留めたのは空港の問題のことではなく、ウィン-ウィンという言葉でした。この言葉は、今ではいろいろな方面で耳にするようになりましたが、筆者が最初に知ったのはコヴィー博士の著された「七つの習慣」という本からでした。この本は、ビジネスの世界における啓蒙書として世界中で翻訳され、さらには企業の社員研修用にプログラム化されて活用されています。

 ウィン-ウィンという言葉の意味は、一言でいえば「双方にメリットがある結果を引き出す」ということであろうと思います。しかしながら、現実世界では当事者同士がウィン-ウィンで納得することばかりではありません。成田と羽田、関西の三つの空港の問題も、そのことを如実に示しているように思います。

 人間関係において、ウィン-ウィンも含め、どういうものが考えられるでしょうか。「七つの習慣」によると、次の六つがあるそうです。

  • ■Win-Win   :自分も相手も、両方が望む結果を得る
  • ■Win-Lose   :自分が望む結果を得、相手は望む結果を得られない
  • ■Lose-Win   :自分は望む結果を得られず、相手が望む結果を得る
  • ■Lose-Lose  :自分も相手も望む結果を得られない
  • ■Win      :自分が望む結果を得ることだけを考える。
  • ■Win-WinまたはNo Deal 
           :双方がWin-Winに至らないとき、取引しないことに合意する。

 この中で、どれを志向することがいちばん望ましいでしょうか。ウィン-ルーズは自分勝手でわがまますぎるし、ルーズ-ウィンは自分に対して悲観的であり、いじけた負け犬根性のようで悲しい気がします。ルーズ-ルーズは、ウィン-ルーズを志向する人同士でぶつかり合ったときに生じる可能性があります。意地でも相手に勝たせたくないばかりに、どちらも勝てない結果にもちこんでしまう。いささか偏狭に過ぎますが、確かにそんな人もいるように思います。

 ウィンというのは、ただひたすら自分が望む結果を得ることだけを考えるということです。ウィンを志向する人は、相手を負かして自分のほしい結果を得ようというウィン-ルーズとは異なり、自分のほしい結果を得ることのみを念頭に置いて行動しようとするパラダイム(考え方の枠組み)の持ち主です。

 おしまいの「Win-WinまたはNo Deal」はどういうものでしょうか。これは、ウィン-ウィンをめざすものの、どうしても求める結果を得られそうにないと双方が判断したとき、「お互いにこの話はなかったことにしよう」という結論を引き出すことです。言わば、人間関係におけるオプション的存在であり、大人の選択とも呼ぶべきものであろうと思います。

 以上六つの人間関係のパラダイムを見ていくと、やはりウィン-ウィンが最も健全な考えに立っており、望ましいように思えてきます。ウィン-ウィンは、様々な人間関係において、お互いの利益を尊重する心のありようを示すでしょう。人生を競争の場とみなすのではなく、互いに協力して望むものを得ようという姿勢をもつことは、今日の社会をよりよく生きていくうえで大切なことです。

 ところで、中学受験においてウィン-ウィンというパラダイムは成立するでしょうか。わが子と他の受験生との関係において考えてみてください。「他の受験生をうち負かし、何が何でも合格を!」なら、ウィン-ルーズとなるでしょう。また、「ただひたすらわが子の合格を願う」なら、ウィンかもしれません。

 ただし、「どのご家庭にとっても、大切なわが子の受験である」というのもまた忘れてはならないことです。そういう認識に立つなら、ウィン-ウィンにこだわりたいところです。果たしてそのような考え方は成り立つのでしょうか。

 問題は、受験を「合格できなかったならすべてがおしまい」と、思うか思わないかではないでしょうか。私たちは、「合格できなかったとしてもウィンは得られるのだ」と考えています。受験のプロセスを、子どもの成長の場にしていけたなら、受験で合格できたかどうかは、お子さんの人生においてさほど大きな問題ではありません。むしろ、合格にこだわりすぎるあまり、人間としての成長が疎かになる方が問題です。

 私たちが長年保護者の方々に訴えてきているのはそのことです。受験への挑戦を通じて、わが子には学力だけでなく人間としての成長を果たして欲しい。そう思うなら、すべての受験生家庭に、ウィン-ウィンという結果はもたらされるのではないでしょうか。

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カテゴリー: 中学受験, 子育てについて

学習の習慣づけがまずもって先決です!

2009 年 10 月 19 日 月曜日

  このところ、弊社が小学4年生からの3年間を使って受験指導をしている理由と、そのメリットについてお伝えしています。

 今回は、弊社での4年部1年間で、まずもって大切にしていただきたい事柄について書いてみます。4年生から弊社の教室に通学されたご家庭に、はじめにお願いするのは「学習計画」を立てることです。これは、平日の通学日のある「週3日コース」であれ、テスト日だけ通学していただく「土曜コース」であれ同じことです。

 弊社は、中学受験のプロセスを「子どもの学習の自立」につなげたいと考えています。したがって、塾での勉強で入試に受かるのではなく、塾への通学を活かしながら家庭で一人勉強のできる態勢を整えていくこと、そしてその結果入試での志望校合格を得ることを基本においています。ですから、学習の計画を立てるということは、受験生活の始まりにおいて何よりも重要なことです。

 学習計画を立てるにあたっては、弊社の教室への通学だけでなく、他の習い事、スポーツ活動との調整も必要でしょう。また、家庭のライフサイクルに沿った計画にしないと、無理が生じることにもなります。ですから、学習の計画はお子さん任せにするのではなく、親子で話し合って立てていただくようお願いしています。

 始めからテキストの家庭勉強を一人でできるお子さんもいます(塾でやり方進め方を手ほどきします)が、戸惑われるようなら、とっかかりから10~20分くらいは、親がサポートすることも必要かもしれません。しかし、その場合には「できるだけ教えない」という意識をもっていただくようお願いしています。教えると、当面のテストで結果は得られます。しかし、お子さんが親に頼ってしまうと、受験勉強が本格化してからの伸びが止まってしまいます。いつまでも親が教えることは不可能ですし、受け身の姿勢では行き詰まりも早く訪れます。子どもの勉強ぶりはまどろっこしいものです。しかし、その親としてもどかしい段階を乗り越えることで、子どもは中学受験生らしくなっていきます。

 学習内容を理解するということを除けば、「勉強の時間になったなら、当たり前のように机に向かって勉強する」ということを習慣として定着させることが、受験生活が始まってから当面の最も大きな目標と言ってよいでしょう。また、これが果たせたなら、受験生活を軌道に乗せることが半分以上できたようなものです。

 ただし、現実はなかなか思うようにいかないものです。テレビやゲーム、さまざまな遊びとの切りかえがうまく行くお子さんならいいのですが、いつまでも尾を引き、決めた時間に机に着くことができないお子さんもいるようです。気が散るタイプのお子さんの場合、勉強中は家族もテレビを見ないようにするなど、落ち着いて勉強できる雰囲気をつくるための協力体制も必要になってきます。

 以前に書いたことがあると思いますが、習慣も一種の記憶の作用だと言われます。いつもやっているから、脳が覚えていて、体を机に向かわせるよう命じてくれるのです。これが定着すると、決めた時簡になるとサッと机に向かうようになります。また、勉強が習慣として根づくと、自然と学習効果が保障され、面白みもわかってくるようになります。そこで、「もっとやろう」という意欲が湧いてきます。当然、学習による理解が促進され、成績も上がろうというものです。

 以上からご理解いただけたのではないかと思いますが、4年生の1年間は、親がわが子の学習の自立のために、してやれることをあれこれ試しながら、受験生活の土台を整えていくための期間だと言えるでしょう。学習の習慣づけは、その要(かなめ)の一つであり、ご家庭のご理解ご協力のもとで是非とも実現させたいことなのです。
 

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 勉強の仕方, 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念

親のリーダーシップとは!? ~第2回おかあさん塾~

2009 年 10 月 15 日 木曜日

 新型インフルエンザの感染者が各地で増加しつつあり、学校においても学級閉鎖や休校が相次いでいます。どのご家庭におきましても、罹患を回避するためのケアをされておられると思いますが、くれぐれも徹底していただきますようお願いいたします。

 10月9日には、弊社の五日市校にて第2回目の「おかあさん塾」を実施しました。第1回目は、中学受験の準備学習にあたる時期の子どもの発達上の特徴を踏まえ、“子どもを善く育てる”という観点から親として心掛けるべき基本的な事柄についてともに学びました。第2回目はそれを踏まえ、親に求められるリーダーシップとはどのようなものかをテーマに掲げてみました。

 やや重たいテーマですが、わが子を望ましい方向へ導けるかどうかは、親のリーダーシップによって決まってきます。なるべく和やかな雰囲気で気楽に学んでいいただきたいので、その点に留意して内容を設定しました。

 リーダーシップの発揮の仕方は人それぞれ違います。そこで、まずはリーダーシップの代表的なスタイルを5つに類型化したモデルを示し、それらについて一通りご説明しました。

 5つのタイプとは、「子どもを甘やかす友だちタイプ」「横滑りタイプ」「支配的独裁者タイプ」「民主的外交官タイプ」「子どもを自立させる教育者タイプ」です。「横滑りタイプ」というのはイメージしにくいかもしれませんが、要するに普段はものわかりがよくて優しいけれども、子どもが言うことを聞かなくなると独裁者に変身するタイプのことです。

 まずはおかあさんがたに、自分はどのタイプに一番近いかを確認していただきました。そのあと、「いちばん望ましいのはどれか」についてご説明しました。そして、いちばん望ましいタイプに自分を近づけるにはどうしたらよいかを考えていただきました。

 親が子どもに望ましいリーダーシップを発揮させるうえで、大変重要な概念があります。それは「境界線(バウンドリー)」です。バウンドリーとは、「どこからどこまでがよくて、どこからがいけないか」の線引きをすることで、子育てにおいてこの境界線を明確にすることは、極めて重要だと言われています。

 また、バウンドリーは、おかあさんがたの対人関係において、「イエスかノーかの境界線を判断し、それを他者にはっきり言う」ということでもあります。たとえば、職場や友人との人間関係において、ノーが言えないタイプの人は、それがもとで悩みを抱えることが少なくありません。このようにバウンドリーが弱い人は、家庭でも子どもがわがままになったり、怠け者になったりする確率が高くなってしまいます(夫との関係においても悩みや精神的葛藤が生じやすい)。

 ここまでお読みになった人は、「自分のバウンドリーはどうだろうか」と振り返られたのではないでしょうか。会場においては、10の項目を挙げ、一人ひとり自分のバウンドリーが強いか弱いかをチェックしていただきました。バウンドリーの点数がどの程度必要かについてお話ししているとき、おかあさんがたの表情はいろいろでしたが、真剣そのものでした。

 自分のバウンドリーを確かめ、その数値を知っただけでは不十分です。その数値を、より望ましいレベルに上げなくてはなりません。最後の30分は、そのための提案に充てました。

 ここでそのうちの一つをご紹介してみましょう。境界線を引くということは、子どもにとって何がよくて何がいけないかを示すことでもあります。それを明文化してはどうでしょうか。といっても厳しい掟(おきて)のようなものでは、家庭内のムードはぶちこわしです。そうではなく、家族みんなで相談し、「こんな家庭・親子関係にしよう」という規則やスローガンのようなものをつくるのです。

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 ここで重要なのは「家族全員で励行する」ということです。家庭内で、それが当面の目標になると、雰囲気が変わり、前向きになります。それが子どもの学習面にも必ず反映されていきます。「勉強しなさい!」と叱らなくても、「あっ、勉強の時間だ」と子どもが自ら机に向かうようになるのです。

 建設的な方向に向けて、家庭内のコンセンサスがあるのとないのとでは、こんなにも違うのかというような事例もあります。子どもが思うようにならず、常に叱らざるを得ない。そういうネガティブな状況と決別できるかもしれません。

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