テスト結果に惑わされない

2010 年 3 月 18 日

 普通、どの進学塾でも学習による成果を見るために定期的にテストをします。家庭学習研究社では、4・5・6年生とも、すべて2週間に一回の割合で「マナビーテスト」と呼ばれるテストを実施しています。

 テストの結果は、点数や順位で示されます。これらを参考にして、2週間の取り組みで身についたこと、身についていなかったこと、ちゃんと勉強していたところ、勉強不足だったところを仕分けし、学力を伸ばしていくうえでの指針を得るのが、このマナビーテストの実施目的の一つです。

 同じ中学受験という目標をもつ子どもたちが一斉に参加するテストです。学んだ成果や努力の結果をもとに、受験への見通しを立てることができますから、こういうテストは進学塾には不可欠なものです。

 しかしながら、テストで示される数値や順位には魔物のような力があります。子どもの能力をまるごと突きつけられたように受け止め、過剰反応する親御さんは少なくありません。

 ある年の春。第1回のマナビーテストを返却した後、血相を変えて相談に来られたおかあさんがおられました。
「先生、どんな成績をとってくるか楽しみにしていたのに、結果は散々でした。うちの子はバカだったんです!」

 そのおかあさんのお子さんは、いくつもの学習塾の入塾試験を受けて受かっていました(おかあさんからそういう話を伺っていました)。入会手続きの際、おかあさんと少しお話しする機会があったので覚えていたのですが、お子さんよりもおかあさんの鼻息のほうが荒く、そんな様子が気になっていたご家庭でした。

 このあと、テストがどういうものかを説明し、「大切なのは、2週間どのように取り組んだ結果この成績になったのかを検証し、次の勉強に活かすことなのです」とお伝えしました。しかしながら、うろたえたおかあさんは、もはやこちらの話を聞いておられませんでした。

 「先生、うちの子は無理にでもやらせないとダメです。私が目を離すと、すぐにサボるんです。だから、こんなことに。これからは、私が家で教えることにします。でも、どう教えたらいいかわかりません。先生、教え方を教えてください」そう筆者に訴えてこられました。

 今なら、うまくおかあさんを説得することができたかもしれません。というよりも、多少おかあさんが不快になられたとしても、子どもさんにとって成果のあがる勉強になるよう強引に導いたと思います。しかし、当時は筆者も未熟で、おかあさんのすごい剣幕に気圧されてしまいました。そして、しばらくそのおかあさんのコーチを引き受けさせられてしまいました。

 結果はどうだったかと言いますと、ますます悲惨なことになってしまいました。おかあさんが家事を省みず、毎日子どもに猛特訓をしたため、ご主人は「俺の晩メシをどうしてくれるんだ!」「受験なんかやめてしまえ!」と怒鳴り始めました。子どもは自分に都合のよい方に味方します。「そうだ、そうだ。勉強なんかしなくたっていいんだ!」とやり始め、収拾がつかなくなってしまいました。

 あまりに極端な例をお伝えしたかもしれません。わが子のテスト成績は、ごく限られた学習範囲について、その理解度や学習の達成度を測るために実施するのであり、子どもの能力を判定しているわけではないのだということを、改めてご理解いただきたいのです。

 心理学の世界に「メタ認知」という言葉があります。自分の認知の状態を認知する、すなわち、自分はどこがわかっていてどこがわかっていないかを、俯瞰し検証する脳の働きを捉えた言葉です。中学受験生の子どもの学習にも、メタ認知的な要素は大変重要であり、自分の理解の度合いを客観的に見極める根拠として、テストデータを活かすことは大いに有効になってきます。

 数値が悪いときこそ、自分の弱点を教えてくれるよい機会だと受け止め、テスト結果とデータを大いに活用して欲しいものです。

 ある年、広島の男子私学の最高峰をされる中学校に合格したお子さんが、「僕、マナビーテストの算数で零点をとったことがあるんだ。そんな僕でも合格できた。みんなあきらめる必要なんてないんだよ」と、後輩たちによい言葉を残してくれました。その通り。悪いテスト結果こそ、最良の薬であり宝の山なのです。

 データに惑わされず、データを最良の薬にし、メタ認知的な思考を働かせて自分の状況を少しずつ改善する。それが、進学塾でのテストの活かし方の基本であろうと思います。 


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