2010 年 12 月 のアーカイブ

受験生活の始まりにあたって

2010 年 12 月 29 日 水曜日

 年の瀬が迫り、今年も余すところあと僅かになりました。現在、弊社では小学校1年生~6年生までのすべての学年で冬休みの講座を行っています。

 今年は1~2年生の講座の申込が多く、2学年合わせて2百名近いお子さんが通っておられます。お子さんがまだ幼く、また寒い冬休みですから、どちらの学年も3日間という短い期間の講座です。ですが、せっかく家庭学習研究社で授業を受けていただくのですから、できるだけお子さん方には「行ってよかった」という手応えを提供したいと考えています。3日間の講座でねらっているのは、子どもたちに「勉強っておもしろい!」という実感や手応えを味わってもらうということです。これが、子どもの気持ちを学びに向かわせる推進力になるからです。

 さて、正月が明けると2011年度の前期講座の会員募集活動が本格的に始まります。1月中旬から2月下旬にかけて、どの校舎においても「入会ガイダンス」などの説明会を繰り返し実施します。弊社の学習塾への入会を検討いただいているご家庭は、是非足を運んでみてください。どの校舎も、学習指導の方針や実際などについて、校舎責任者が詳しくお話をさせていただきます。

 そこで今回のブログでは、これからお子さんが中学受験をめざした学習生活を始めるご家庭に向けて、私たちの受験に対する考えを簡単にお伝えしてみようと思います。

 中学受験をめざす場合、ほぼ100%のご家庭が学習塾にお子さんを通わせておられます。そこで必要になってくるのは「学習塾選び」です。学習塾には、それぞれ指導法やカラーに違いがありますから、親の教育観・学力観とよく照らし合わせる必要があります。また、お子さんのタイプによっては、向き不向きもあります。ですから、学習塾選びには慎重を期すべきです。

 無論、この点については私たち家庭学習研究社も例外ではありません。受験生家庭のあらゆる期待にお応えすることは不可能だと思っています。私たちの学習指導法や学力形成に対する考え方が、すべてのおとうさんおかあさんの考えと一致するとは思えないからです。

 たとえば、次のような質問にどうお答えになるでしょうか。

★お子さんの受験対策について、どんな考えをもっておられますか?

  1. 1.受験対策は、できるなら塾にすべて任せたい。
    → 受験勉強は塾で徹底的にやらせてほしい。
  2. 2.受験対策に、できるだけ親が関わりたい。
    → 一人で受験勉強をするのはまだ無理。親が教えながらやらせたい。
  3. 3.塾も家庭も、子どもが自分で取り組む勉強を応援すべきである。
     → 勉強は自分でやるべきもの。小学生なりに自立した勉強で合格すべきである。

私たちの観点から言うと、1と2はどちらもNGです。私たちは、3のような考え方をしています。

 ただ合格することだけが目的なら、どの方法でも目標達成自体は可能でしょう。ひょっとしたら、3の方法で合格するのが一番大変かもしれません。しかし、子どもの先々まで見通したなら、3の方法がベストで、残りは比較の対象にもなりません。

 なぜかというと、中学生になってから一気に勉強は本格化します。質量ともレベルアップする学習をやりこなすには、自立した学習姿勢、自己管理能力を備えておくことが必須条件となります。ところが、大人に頼った勉強で受かった子どもはこうした学習環境に当惑してしまいます。

 「自分で勉強をやりこなすようにすればいいじゃないか」と大人は思います。しかし、勉強がどんどん高度化し、スピードアップしていく中・高一貫校で、学びの態勢を一から築き直すのは大変なことです。このような苦労をしないためにも、自分で学ぶ姿勢を培っておくことが必要です。

 中学生になり思春期が来たら、もはや親の出る幕はありません。親の言うことを素直に聞く小学生時代だからこそ、わが子が自分の力で学力を獲得する態勢を築くよう配慮すべきではないでしょうか。これは子育ての視点に立てば当然のことではないでしょうか。塾に鍛えてもらったり、親が教えたりでは、子どもの自立になりません。

 弊社の経営者は、「家庭学習研究社は子育て塾だ」とよく言います。中学受験のプロセスを、子どもの自立に向けた習練の場ととらえているからです。

 こうした私たちの考えにご賛同いただけるご家庭には、是非お子さんを預からせていただきたく思います。子どもの自立のプロセスはもどかしく、親には辛いものです。しかし、得られる成果は莫大だと言えます。大切なのは、どの学校に進学するできるかだけではありません。どういう姿勢を培ったうえで中学生になるかは、もっと大切なことだと思います。格差社会が広がりつつある今日、子どもに自ら学ぼうという姿勢を植えつけておくことは、これまで以上に重要な大人の責務になりつつあるのではないでしょうか。

 今年1年、10万人をだいぶ越える方々が本ブログにご訪問くださいました。ありがとうございました。より質の高い役立つ情報をご提供できるよう、来年もがんばってまいりたいと存じます。それではよいお年を。

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カテゴリー: 家庭学習研究社の特徴

“学ぶ力”は教室にみなぎる笑顔から

2010 年 12 月 27 日 月曜日

 2010年も、余すところあと僅かになりました。中学受験を目前に控えた6年生のご家庭におかれては、新年をいつもと違う緊張の面もちで迎えられることと思います。悔いの残らぬ受験となるよう、体の健康や心のコンディションには十分気をつけてあげてください。

 年が明けると、すぐさま2011年度の会員募集活動が始まります。1月4日には、広島、呉、東広島のほぼ全域で会員募集のチラシを折り込みます。そして、その週の週末から毎週「会員選抜試験」を実施します。また、学習塾としての弊社の特色を知っていただくため、各校舎で「入会ガイダンス」という呼称の催しを行う予定です。どの校舎でも2月いっぱいまで数回実施します。これから入会を検討されるご家庭は、是非足を運んでみてください。

 今日のブログは、1月4日に折り込むチラシに書いた記事をご紹介してみます。2011年度の会員募集では、当社の推進する「学ぶ力を育てる学習指導」を切り口に広報活動をしています。このチラシにおいてもそれに関連する内容で弊社の理念をお伝えしました。

 教室の子どもたちに、「勉強は楽しい?」と尋ねてみました。さて、子どもたちはどう答えたでしょう。残念なことに、「楽しい」と「楽しくない」という答えが半々くらいでした。

 今度は、「塾って楽しい?」と尋ねてみました。すると、間髪を入れずに「楽しい!」という声が返ってきました。これはどういうことでしょう。

 子どもたちは受験をめざして勉強しています。内容は決して易しくありません。考えても、考えてもわからないことだってあります。勉強が楽しいばかりでないのは当然かもしれません。

 そんな子どもたちの勉強を、力強く後押ししてくれるもの。それが“学ぶ力”です。学ぶ力とは、学習意欲、好奇心、計画性、学習方法、集中力、継続力、他者と学ぶコミュニケーション力などです。これらは入試での出題対象にはなりません。しかしながら、一人ひとりの学習の推進力となり、学びの成果を保障してくれる大切なものです。

 では、入試で問われるのは何でしょう。多くの場合、学んで得た知識や技能です。受験指導をする者が気をつけなければならないのは、知識や技能の獲得に直接働きかけ、子どもを無理に鍛えたり暗記を強要したりすること。これでは学ぶ力を育ちませんし、勉強も塾も嫌いになってしまいます。

 そこで、再び「塾が楽しい!」という言葉に立ち返ってみましょう。勉強は楽ではないが塾は楽しい。それは、みんなで一緒に考える、互いにやりとりをする、先生の興味深い導入に聞き入る、解決の道筋を見出して手を挙げる、他者の勉強ぶりに刺激を受けるなど、やらされ勉強では経験できない手応えや躍動感があるからです。だから楽しいのです。

 教室中に弾ける笑顔。この笑顔こそ、授業を通じて子どもたちが楽しい時間を共有し、学ぶ力を育んでいることの証(あかし)です。家庭学習研究社はこの笑顔を大切にし、一人ひとりの学ぶ力を育てながら、それぞれの志望校へと子どもたちを送り出しています。

 学ぶ力の重要性については、以前行ったイベントの報告に絡めてお伝えしました。学ぶ力は、テストで直接問われるものではありません。しかしながら、子どもたち一人ひとりの学習活動を牽引してくれる偉大な力です。

 このチラシでは、学びの力となる要素のうち、「コミュニケーション」にスポットを当ててみました。「他者とのコミュニケーションが学ぶ力になる」と、いきなり言われてもピンとこない人も、この記事をお読みになればその重要性がおわかりいただけるのではないかと思います。

 ある教育心理学者は、学ぶ力としてのコミュニケーション力を、次のように説明しています。

  1.  ・先生が授業で話していることを理解できる力
  2.  ・どこがわからないかを自らはっきり表現して先生に質問できる力
  3.  ・友だちと教えあったり学びあったりするときのコミュニケーション

 今回の記事は、三つ目の要素に関わる点を切り口にして書いたものです。受験勉強を、合格点をとるための競争という側面ばかりに目を奪われると、他者と関わりながら学ぶなかで培われる大切なものを見失いがちです。先生の話に耳を傾ける、知りたいことをきちんと質問できる、友だちを教えあったり励まし合ったりする力。こうした姿勢や能力も、よく考えると子どもの学びを後押ししてくれる大切なものです。

 これらを培うことをしないで入試を突破したとしましょう。中学に入ってから、自分の力で学習を推進することができるでしょうか。訓練や暗記に偏った勉強をしていると、先生の講義を聴く姿勢が身につきません。学習対象について自分で考え、どこがわからないかを整理して先生に質問するといったこともできません。さらにはともに学ぶ仲間と情報交換をしたり励まし合ったりすることもできません。

 コミュニケーション力は、人間力の根幹をなすものであり、人間だけに与えられたすばらしい能力です。親御さんや学習塾は、成長期の受験生活でこの大切なものを子どもたちが育めるよう、ぜひとも配慮してあげたいものです。

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カテゴリー: がんばる子どもたち, 中学受験, 入塾について, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念, 行事のお知らせ

6年部「保護者説明会」の最終回にて

2010 年 12 月 20 日 月曜日

 先日まで、弊社の各校で「6年部 保護者説明会」を行っていました。「保護者説明会」というのは、弊社の会員家庭の保護者にお集まりいただき、学習スケジュールや受験対策の進捗状況、ご家庭にお願いしたい配慮などについてご説明する催しです。各校舎で学年ごとに定期的に行っています。

 6年部は入試を控えているということで、1年間に都合4回行っていますが、今回はその最後にあたり、入試直前の受験対策の内容や、入試1週間前・入試当日におけるご家庭の配慮事項などについてお話しするのがその目的です。

 先日、ある校舎の保護者説明会に招かれ、ゲストでお話しさせていただく機会がありました。いつもお子さんが学んでいる教室が会場でしたが、さすがに入試が目前に迫っていることもあり、8割近いご家庭の保護者の方々が出席しておられました。

 保護者のお顔を拝見すると、入会を検討していただくための催しや、4年部の保護者説明会などで目にする保護者の方々の表情とはまったく違っています。2年、3年近い入試準備期間を経て、いよいよ本番が近づいた時期の保護者の集まりですから、一種独特の緊張感や熱気が教室に漂っていました。

 教室はぎっしり満員でしたが、平日だったせいもあり、ほとんどはおかあさんがたでした。おかあさんがたと向きあう形で着座していましたので、全員のお顔がよく見えました。そのいずれもがよい表情をされており、「ここまで辿り着いた親ならではの、万感の思いがあるのだろう」と、ここに至るまでのご苦労に心から敬意の気持ちを抱かずにいられませんでした。

 さて、指導を担当している者の話が終わり、いよいよ筆者の番がやってきました。まずは、「とうとう、最後の保護者会になりましたね」と申し上げ、「親としてどうでしたか。受験生活のフォローは大変でしたか」と全員に尋ねてみました。「受験がお二人目、三人目のかたはどうですか」と申し上げると、あるおかあさんが、「一人目は無我夢中で終わりました。二人目ということになると、その経験を踏まえて今度はいろいろ考えてしまいました」というようなことをおっしゃいました。その通りだと思いました。わが子の受験は何人目であろうと、親としての大変さには変わりないのです。

 筆者の担当は、「入試1週間前の親の心得」「入試当日の配慮事項」です。しかしながら、筆者は細かなことを丁寧に説明するのが苦手です。必要なことは、当日配布した資料に詳しく書いてありますから、「今日はおかあさんがたを元気づけて帰っていただこう」と考え、そういった趣旨の話を中心にさせてもらいました。

 入試直前になると、さすがにどのお子さんもナーバスになっています。おとうさんおかあさんにお願いしたいのは、成績のことや入試での合否の可能性のことなどはもう話題にせず、お子さんが入試に向きあい、全力を出し切れる状態に導いてあげることです。そこで、次の二点について強調させていただきました。

1.どんな結果が待っていたとしても、わが子をまるごと受け入れてやろうという決意をしてください。

2.わが子が平常心を保てるよう、親としてできる限りの心遣いをしてあげてください。

 中学入試は、わが子が人生でおそらくはじめて突き当たる大きな試練です。子どもが大きな試練に突き当たったとき、いちばんの支えになるのは「自分への信頼の気持ち」「自分への自信」です。それを育んでくれるものは、何と言っても「親は自分を愛してくれている。自分を信頼してくれている」ということを実感する体験です。

 緊張のさなかにあるとき、親が不安を口にしたり、子どもにあれこれ命令したりするのと、親が泰然自若として大きな心でわが子を支えてやるのとでは、子どもの心のありように大きな違いが生じるのではないでしょうか。親の愛情に包まれたお子さんは、入試の緊張を乗り越え、立ち向かう勇気を手にすることができます。

 また、本番が目前になってから勉強について親が指示を出すと、「あれもやっていない。これもわかっていない」と子どもは不安になります。そうなると、不安が不安を呼び、落ち着いて勉強できなくなるどころか、思考停止の状態に陥ってしまいます。「これからは、親は勉強のことにはなるべく関わらず、子どもが平常心を保てるよう気遣いをしてあげてください」とお願いしました。

 ところで、おかあさんがたを元気づけるには、希望のもてる話を実例でお話しするに限ります。また、危うく大失敗に終わりそうな状況を乗り越える話がふさわしいものです。そういう話をしたつもりでしたが、大変な状況があったところまでお話ししたところで終わってしまい、「危機を乗り越えてちゃんと受かったのですよ」というフォローをするのを忘れてしまいました。会の終了後に思い出したのですが、まさに後の祭りでした。申し訳ありません。

 始まりがあれば、必ず終わりがあります。受験生活を始めたからには、やがて入試というものに挑戦する日がやってきます。来るべき本番で禍根を残さぬためにも、今親として何をわが子にしてやるべきかを考え、しっかりとサポートしてあげてください。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念, 行事レポート

おかあさんが一緒に落ち込まない

2010 年 12 月 13 日 月曜日

 入試が近づいてくると、受験生のお子さんはもとより、見守っておられる親御さんも平常心を失ってしまうことがあります。これは女のお子さんとおかあさんの関係において多く見られることですが、お互いの不安をそのまま口に出してしまい、それがますます心理状況を悪くするケースがあります。

 たとえば、わざわざ口にしなくとも子どもが十分に自覚しているのに、おかあさんがまるで念を押すかのようにそのことを口に出しておっしゃることがあります。

「この成績じゃ、志望校への合格はあり得ないよね、ハー(ため息)・・・・・・」「こんなんじゃ、どこも受からないかもよ。どうする?」など、これ以上ないネガティブな言葉を漏らしてしまうおかあさんもおられるようです。

 心を許している相手には本音を言いたくなるのが人間です。しかしながら、成績が下がっていちばん不安に陥っているのは他ならぬわが子。そのわが子に状況の厳しさを語るのは酷と言うしかありません。おかあさんには、「誰よりも自分がわが子を元気づけなければならない立場にあるのだ」と自覚し、お子さんの不安を助長するようなことのないようお願いしたいものです。

 ある年の1月、所用があって校舎に立ち寄ったとき、ちょうど面談を終えた6年生の女の子が面談室から出てきました。見ると、その女の子は泣いています。さっそく担当者に「ちょっと、ちょっと、もうすぐ入試なんだから、泣かせちゃだめだよ」と冗談めかして注意を促しました。すると、面接の担当者は「とんでもない。泣かせたのは僕ではなくて、あの子のおかあさんみたいなものですよ」と切り返してきました。

 なんでもその女の子の家では、おとうさんが単身赴任で遠方に出張しておられ、おとうさんの留守中に中学受験を迎えることになったのだそうです。ところが、入試が近づいてくるうちに成績が下がり始めました。そこで動揺したおかあさんが、娘さんに「このままじゃ、○○中学受かりそうもないね。落っこちたらおとうさんに申し訳が立たないから、一緒に心中しよう」と言ったらしいのです。

 もはや、こうなると励ましでもアドバイスでもなく、脅迫です。おかあさんにしてみれば、不安を少し大げさに表現しただけのことかもしれません。あるいは、檄を飛ばすつもりだったのかもしれません。しかし、言われた娘さんがどう思うかについて、もっと想像力を働かせるべきだったのではないでしょうか。普段は明るい性格のお子さんでも、自分の進路が決まる人生初めての試験ですから、親が思うよりもずっとナーバスになっているのですから(なお、そのお子さんは無事に合格しました)。

 ずいぶん前のことですが、6年生の女子クラスを担当していたときのことです。いつも明るくて爽やかな笑顔を浮かべている、クラスのムードメーカーのような役割を果たしてくれていた女の子がいました。ところが、入試が近づいてくるうちにその子の様子が変わってきました。何かにつけとげとげしい反応を示したり、イライラをぶつけるような態度をとったりするのです。

 そしてついには、「いくらなんでも、態度が悪すぎる」と、こちらも我慢の限界に達するような出来事が起こりました。「もはや放っておけない」と思い、翌日家に電話をしてみました。するとおかあさんが出られ、「先生、いいときに電話をしてくださいました。実は娘が寝込んでしまったんです。元気づけてやってくださいませんか」とおっしゃいました。

 電話に出た彼女は、もはやどんな激励の言葉も効き目がないほど、元気を失っていました。初めて経験する入学試験の重圧に、日に日に気持ちが追い込められ、とうとう耐えられなくなってしまったのです。そのことに気づくのがあまりにも遅すぎました。「何でもっとその子の心の状態に気づき、早く対処してやれなかったのか」と、今でも悔やまれてなりません。

 親が常に先回りして心配するのが中学受験です。しかし、入試本番を前にしたら、もはや親は心配の言葉を発するべきではありません。子ども自身が、重圧や不安と必死に闘っているのですから。「親はどんな結果も受け入れてやる」――そういった、泰然自若とした態度でお子さんの最後のがんばりを見守ってあげていただきたいと思います。

 わが子を、人生で最初の試練にベストコンディションで送り出す。それが、大詰めにおける親のいちばんの仕事であろうと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 子育てについて

子どもの“学ぶ力”をいかに育てるか 弊社イベント報告2

2010 年 12 月 6 日 月曜日

 前回は、先日広島、東広島、呉で実施した催しについてご報告しました。この催しは、例年冬期講座と次年度前期講座の会員募集の開始に伴って行っているものです。今年は、「中学受験は子どもの学ぶ力を育てる場」というタイトルを掲げ、これから中学受験準備の学習を始めるご家庭、中学受験準備の最中にあるご家庭の保護者の方々にお話しさせていただきました。

 弊社は中学受験指導を専門に手がける進学塾です。当然、ご家庭とお子さんの夢を叶えるべくがんばっているわけですが、合格だけにこだわり、合格を得ることだけを目当てにした指導をして受かっても、子どものためにはならないことを、数多くの事例を通じて痛感してきました。

 「イベント報告1」でご紹介したように、入試では出題できないけれども、子どもの学力形成に欠かせないのが“学ぶ力”です。この学ぶ力があってこそ、自分の力で学力を伸ばしていくことができます。中・高一貫校で失速する子どもの多くは、能力が及ばないのではなく、自らの学習を管理し、自ら進めていく姿勢や力を欠いていたからです。このことは、当ブログで何度もお伝えしてきました。

 学ぶ力を支える主要な要素は、学習意欲、知的好奇心、学習計画力、学習方法、集中力、持続力、コミュニケーション力などです。これらは重要であるにもかかわらず、入試で問われることはあまりありません。現在の入試制度では出題することが難しいからです。

 しかしながら、テストに出題されなくても、学びを牽引していく力を育むことは何にもまして重要です。それをしなかったばかりに、中学進学後に伸び悩む生徒が後を絶ちません。私たちは、こうした現実があるのに、合格最優先の指導をするのは望ましくないことだと考えています。

 現在私たちが行っているのは、「知識・技能の獲得→合格」をめざす指導ではなく、「学ぶ力の育成+知識・技能の獲得→合格」をめざす指導です。

 子どもの学ぶ力を育てるにあたっては、様々な角度から受験対策のありかたを検証する必要があります。たとえば学習のシステムやテキスト。これらは、子どもの学習のやり方や質を決定しますから、徹底的に吟味されるべきものです。そこで、イベントでは弊社の教材開発課の担当者が、学ぶ力を育てながら中学入試で合格できる学力を身につけていくために、どんなシステムやテキストによる指導をしているのかについてご説明しました。その内容は、大まかには次のようなものです。

1.通学日数
 勉強の基本は自学自習である。塾で学んだ次の日は、必ず家庭で勉強をしていただきたい。そのため、弊社は週3日通学生を原則としている。

 

2.テキスト
 小学生の子どもが自分で勉強するには、テキストが子どもの成長度に合っていなければならない。そこで弊社はテキストをすべて自社制作している。

 

3.復習をシステム化
 学習したことを定着させるために復習は欠かせない。そこで、復習を子ども任せにするのではなく、テキストに復習を組み入れている。

 

4.学習意欲
 易しすぎず難しすぎず、考えるに値する質の高い課題。それを提供することで、子どもの興味や意欲を引き出す。

 

5.テストと資料
 進学塾である以上、入試での合格を得ることも重要である。そのためのテストや資料に関する研究も徹底して行い、毎年高水準の実績をあげている。

 中学受験は、人生経験の浅い小学生の受験です。「子どもはまだ自分でものを考えられないのだから、大人が手引きをしてやらねば」と大人は誰しも思います。しかし、だからといって勉強のほとんどを大人が取り仕切ってしまっては、子どもの学ぶ力は育ちません。

 面倒で忍耐を伴いますが、少しずつ勉強の自立を促し、手を貸すのは必要最低限に徹することが必要です。子どもが自分で学んでいけるようになるための試行錯誤を体験させてやるのです。学習塾としては、いささか不親切と思われるかもしれませんが、こうした方針とそれによって得られる成果をご理解いただいたうえで、お子さんを預からせていただきたいのです。

 子どもたちが学ぶ力を養っていくプロセスは、決して辛いものではありません。むしろ逆で、楽しそうです。理由ははっきりしています。自分の進歩に手応えを得ながら学ぶことができるからです。やらされ勉強にはない、「自分の学びの主役は自分である」という実感があるからです。

 次回は、学ぶ力を育てる授業をどのように実践しているかについて書くつもりでしたが、どうも話が堅苦しくなってしまいそうです。弊社の授業については、イベントの報告とは違った切り口でいずれご紹介しようと思います。
 

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