2011 年 4 月 4 日 のアーカイブ

受験生活で親が忘れてはいけないことは?

2011 年 4 月 4 日 月曜日

 毎年のことですが、4月を迎えると幼稚園では入園式が、また小学校から大学までのほとんどの学校では入学式が行われます。私事ですが、筆者の愚息も大学へ進学しました。

 子どもが家元を離れるまでの期間は、意外と短いものなんだということを、子どもがわが手を離れて初めて思い知った次第です。ガランとしたわが子の部屋に入ると、感慨よりも寂しさを禁じ得ませんでした。

 わが子が家を出るとき、「新たな門出だ。おまえには未来と希望がある。ほんとうの勉強は今からだぞ」と握手をして送り出しました。しかし、実際にわが子が家を出てしまうとこの体たらくです。わが子の存在は、自分のなかで大切な部分を占めていたのですね。我ながら情けない話です。親の「子離れ」ができていなかったのかもしれません。

 以前ご紹介したことがあるかと思いますが、ある本に「子育ては、何のためにするものだと思いますか。子どもと別れるためにするものなのですよ」というくだりがありました。大学病院でカウンセラーをしておられる有名な先生の言葉です。今年の春、筆者は改めてこの言葉をかみしめることになりました。

 今、わが子を家庭学習研究社の教室に通わせておられる保護者の方々に、また、毎日子育てにがんばっておられるおとうさんやおかあさんに、改めてこの言葉を贈りたいと思います。わが子が自分の手元を離れるまであと何年あるでしょうか。実は、そんなに長い期間は残されていません。もしお子さんが10歳であれば、あと8年もすれば大学生です。多くのお子さんはおそらく家を離れ、遠くで大学生活を送ることになるでしょう。

 さて、先ほどの話に戻ります。「子育ては子どもと別れるためにするもの」という言葉の意味についてです。時期が来たら、どの家庭でもお子さんは親のもとを離れるのは分かり切ったことです。ただ、そのときに親としてどういう気持ちになるかが重要ではないでしょうか。「この子は、何とかやっていくだろう」という気持ちになれるよう、悔いのない子育てをしておかねばなりません。

 では、悔いのない子育てとは何でしょうか。それは、一言でいえば「子どもを精神面でも行動面でも自立させること」ではないかと思います。

 先日、広島の私立一貫校の教頭先生とお話しする機会がありました。そのとき、「入学試験に受かる学力をつけておくこと以外に、貴校に入学する前に準備しておくべき大切なことは何かありますか」とお尋ねしたところ、「自分で考え、自分で行動できるようになっておくことです」という答えが返ってきました。

 最近は、何でも親が手出し口出しし、自分でやる姿勢の欠落した生徒さんが多いのだそうです。受験勉強も生活面も、みな大人に取り仕切られて私学に受かっても、後が続かないのだそうです。「社会に通用しない人間では、学力はあってもどうにもなりません」とおっしゃっていました。

 もう一度、先ほどの「子育ては子どもと別れるためにするもの」という言葉に立ち返って考えてみましょう。子どもの独り立ちの準備に向けて、親として様々な配慮が必要なのは、子育てをしている最中のまさに“今”なのですね。

 受験勉強を塾任せにしたり、親が深入りしたりしたのでは、いつまで経っても自立はままなりません。また、生活習慣の自立は、どの私学でも口を揃えて「最も重要なことだ」とおっしゃっています。受験生活を最優先するあまり、子どもの毎日の生活に関わる諸々のことが自立とほど遠い状態にあると、受験突破には何とか漕ぎつけても、中学・高校生活が立ちゆかなくなってしまうのです。

 こうした点に鑑みると、受験生の親としての務めは、「受験勉強の応援」というよりは「受験勉強を含めた、わが子の全体的な自立への配慮」であろうと思います。何でも自分のこととして受け止め、自分で考え判断し行動できる人間になれるよう、勉強面以外にも心を配り、サポートしてあげてください。

 私たち家庭学習研究社は、「子どもを鍛えて合格させる」というのではなく、「子どもが自立勉強の手だてを獲得できるよう応援する」のが役割であると認識し、ご家庭の自立に向けた子育てと連動して学習指導を行っています。

 18歳の春、「少々の困難に負けず、何とかやっていけるだろう」という期待をいだいてわが子を送り出せるよう、今のうちに親として何をしておくべきかをお考えいただくきっかけにしていただけたなら幸いです。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの自立, 子育てについて