2011 年 10 月 のアーカイブ

将来の方向を自ら見つけだせる子どもに

2011 年 10 月 31 日 月曜日

 前々回、その前の回と、「将来何をめざすべきかわからない」「大学で、何を学んだらよいかわからない」など、自分が歩んでいく人生の方向が見えなくて悩む子どもについてお伝えしました。

 ただし、「自分が進むべき人生の方向が見つけだせず、苦しむ体験を回避するにはどうしたらよいか」については、何もお伝えしていません。「そこが知りたい」という保護者のかたも多いかもしれません。親なら誰しも、わが子には壁に突き当たってもがき苦しむ思いをさせたくないと思うものです。妙案があればよいのですが・・・・・・。

 ですが、こ れは難問です。「こういう方法で子どもを育てたら、こういう人間に成長する」といったような、単純な図式で語れるようなことではありませんし、それが実現するとしても、根拠となるデータも見当たりません。「自分は何に向いているのか」「どんな職業につくべきか」「大学で 何を学ぶべきか」などについて早くから答えをもっている人間など、おそらくほとんどいないことでしょう。子どもたちは、人生のプロセスで誰しもこの種の問題にどこかで行き当たり、紆余曲折を経てそれを乗り越えているのだと思います。

 ともあれ、 親としては、進むべき道を見出せず、悶々とするような思いをわが子にさせたくないものです。人生の進路を選択していくうえで悩み が生じるのは当たり前のことです。ですが、それを逞しく乗り越えていけるような人間に育てておきたいと、親なら誰しも思うのではないでしょうか。

 ここから先は、筆者の学習塾体験と、筆者が学んだ学問領域の知見などに基づいて書いてみます。「違う」と思われても結構です。親として、わが子を育てていく方向性を少しでも明確にしていくうえでお役に立てば幸いです。

 めざす学校に進学し、その後も元気いっぱいの学校生活を送っているのはどんなタイプの子どもだったでしょうか。

  1. 1) 中学校に入ってから入りたいクラブややりたいことがある
    子ども
  2. 2) 大学で学びたいこと、やりたいことを早くから見つけ出していた生徒

 1)についてですが、「ぼくは○○中で、鉄道クラブに入りたい」「○○中に合格できたら、サッカー部に入るんだ」など、入試のだいぶ前から楽しげな表情で語っている子どもがいます。そういう子どもは、合格する確率が高いだけでなく、入学後の活動状況も良好です。

 中学受験をする前から「弁護士になりたい」と言っていた子どももいました。その子は、中学受験は失敗したのですが、初志貫徹のものすごい意志や信念をもっていたのでしょうか。東大の法学部に進学しました。筆者など、大学への進学結果を知ってから、その子が将来の夢を語っていたのを思い出し、目頭を熱くしたものでした。

 2)について。中学・高校生になると、学ぶ科目も多様化し、自分の得意不得意も詳しくわかってくるものです。さらには様々な情報網をもち、興味ある分野もいろいろできてきます。目先の成績をあげるための努力にエネルギーを注ぐだけでなく、教科・科目のその向こうにある世界を探索するような行動や勉強もすべきでしょう。たとえば、「この分野は、こういう学問・研究に支えられている」といったような知識です。「流体力学に興味がある」と言っていた生徒は、船舶や航空機の分野をいろいろ調べているのを見たことがあります。

 大学への進学が、やりたい勉強分野ではなく、やりたいスポーツで決まってくることもあるでしょう。かつて担当していた生徒が、ある私学で水球に取り組むようになり、その流れから水球に伝統がある慶應に進学したという話を、その学校の先生から聞いたことがあります。こういうケースも大変多いと思います。大学での部活と将来の職業選択は、本来無関係なものですが、伝統のある大学のクラブは就職のルートももっています。そういうことで将来が決まることもあるでしょう。

 総じて言えることですが、中学受験、中学・高校生時代を上手に乗り越え、将来に向けて着々と準備を整えている子どもは、考えや行動に主体性のある子どもです。以前書いた、自己統御のできる子どもと言ってもよいでしょう。

 自分の知りたいことや目標をもち、自分から行動していく姿勢をもった子どもが、自分のなりたいものや進むべき道を見出しやすいのは、当然と言えば当然です。今中学受験の準備にあたっておられるお子さんについて言えば、成績ばかり気にして勉強するのではなく、今している勉強の中にあるおもしろさに気づくような勉強ができていればいいですね。「この単元のこれが好き。なぜなら・・・・・・」と言ったように、勉強に主体的な関わりをしているお子さんは、さらに勉強が本格化してから、知りたいことやりたいことが明確になってくるのではないでしょうか。

 いつも当たり前のことばかり書いてしまいますが、「とりあえず合格したら、しばらくは遊べる」などといった勉強に子どもを走らせると、もっと勉強を要請される年齢になったときに、学ぶ理由をもてない人間になりかねません。学びの中に、楽しさや喜び、励み、充実感を感じ取れる子どもにしたいものですね。おとうさんおかあさんには、わが子の受験勉強の応援を、そういった視点からしていただけたらありがたく思います。

 受験結果の重圧に苛まれることなく、元気よく入試に挑戦する子どもにしましょう。そうすれば、自ずと人生を主体的に切り開いていく人間に成長していくのではないでしょうか。

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カテゴリー: 子どもの自立, 家庭学習研究社の特徴

「おかあさんの勉強会」が始まりました

2011 年 10 月 24 日 月曜日

中学受験生の家庭で、一番負担を強いられるのは誰でしょうか。無論、受験生である子どもも遊びたい盛りに毎日勉強に取り組むのですから、大変といえば大変です。

 しかしながら、ほんとうに大変な思いをしているのはおかあさんかも知れません。受験に無頓着なわが子を心配してあれこれ働きかけたり、成績不振に陥ると心配して塾に相談したり、やる気を失っているときには怒りを抑えて励ましたり、毎日の食事を通して健康に気を配ったりと、おかあさんは気の休まる日がないと言ってもよいほどです。

 ある調査によると、わが国においては子育てに関わる仕事の8割以上はおかあさんが引き受けておられるそうです。ただでさえ大変なのに、そこへ受験生活のサポートが加わるのですから、その苦労は並大抵ではないことでしょう。

 そんなおかあさんがたの負担を軽減し、少しでもお子さんの受験生活が望ましい方向に向かうよう支援したい。そんな思いから企画したのが「おかあさんの勉強会」という催しです。対象者は、弊社の4・5年部「週3日コース」生の家庭のおかあさんがたです。

 この勉強会では、中学受験生をかかえた家庭の親に求められる配慮やサポートのありかたを、おかあさん同士の話し合いや励まし合いのやりとりを交えながら、ともに考えていきます。いわゆる「参加型」の催しで、ワークショップ的な手法を採り入れています。

 この秋は合計2回、各校舎の指導担当者の司会進行によって、校舎単位で行います。第1回は「やる気を引き出す叱り方」、第2回は、「9歳、10歳の節を乗り越える」というテーマとなっています。先日、筆者は五日市校で行われた第1回目の勉強会に同席させてもらい、会の様子を拝見させていただきました。参加者は10数名ぐらいでしたが、最後まで和気あいあいとした雰囲気で、おかあさんがたの楽しい声が教室に響き渡っていました。

 同じ悩みや問題を抱えている者同士ですから、互いの苦労を本気で汲み取る姿勢がどなたにもあります。それに元気づけられるせいか、深刻なムードなど皆無で、笑顔や笑い声が絶えない会となりました。この会を通して、日々の子育てや受験生活の応援に元気が湧いてきたなら、それがおかあさんがたにとっても、この催しに足を運んだ一番の収穫になるかも知れませんね。

 さて、後期第1回の「やる気を引き出す叱り方」ですが、「叱っても効果がない。もっとよい叱り方はないものか」「叱ると、つい感情的になり、後味の悪い思いをする。何とかならないものか」など、わが子叱ることについて難しさを感じておられるおかあさんが多いことから選んだテーマです。
 これは世界中のどの国においても共通の親の悩みですが、叱ると感情が高ぶり、ふだん押さえているわが子への不満が噴出して怒りと化し、それを抑えきれなくなってしまうようです。外国の教育者が書いている本を読むと、「叱るとき、親の怒りをいかに静めるか」というテーマだけで20ページ以上も割かれていました。叱ると怒りの感情が噴出するのは、どの国の親も同じなのですね。

 この催しにおいては、おかあさんのメンタルトレーニングの方法を提示し、いかに冷静さを失わずに叱るかついて共に考えていただきます。また、上手に子どもを反省へと導くための手順として、例を提示し、参考にしていただきます。これから実施が予定されている校舎のおかあさんで、興味をもたれたかたは今からでも構いません。ぜひ参加してみてください。きっと元気が湧いてきますよ。

 また第2回目の「9歳、10歳の節を乗り越える」ですが、こちらは子どもの精神面の成長をどう促すかという内容になっています。

 9歳、10歳の節とはどういうものかについては、以前このブログに記事を書きました(9歳の壁)。これまで300回近く書いた記事のなかで、一番多くの方々に読まれているものです。現在も、毎日のようにどなたかが読んでくださっています。関心のあるかたは、ぜひ読んでみてください。

 なぜこれを勉強会のテーマに据えたのかと言うと、中学受験の合否を分ける大きな要素の一つだからです。たとえば国語の物語文において、子どもの精神面の成熟度が正解を得られるかどうかを決定づけることがあります。行動や仕草、言葉から、その人物の本心や性格などを読み解く問題の場合、受験生の学力だけでなく、大人に近い思考ができるかどうかも正解にたどり着くための重要なポイントになります。表面に見える人物像に左右されず、人物の真相をつかめないと正解できません。

 このおかあさん勉強会では、「どうしたら子どもの思考から大人に近い思考へシフトアップできるか」をテーマに、家庭でできる働きかけについて共に考えていきます。実際の入試問題を例に挙げながら、幼いタイプの子どもが犯しがちな勘違いと正解とを比較し、子どもの発想と大人のそれとの違いを明らかにしていきます。

 「うちの子は、まだ幼稚さところが多分に残っていて心配だ」――そんなおかあさんは、ぜひ参加ください。第2回は、いずれの校舎においても受付可能です。

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カテゴリー: お知らせ, 子育てについて, 家庭学習研究社の理念, 行事のお知らせ

中学受験後に子どもを待っている世界

2011 年 10 月 17 日 月曜日

 中学受験を経て私立や国立の中学校に進学した子どもが、経験しがちなカルチャーショックがあります。「あれ、今までと違う。どうしたらいいんだろう」と、子どもが戸惑うことがあります。それは、なんでしょう。どういうことでしょうか。

 中学受験までの勉強は、多くの場合塾任せ、大人任せです。小学生ですから、まだ何をどうやったらよいのか自分で判断できませんから、しかたありません。

 「ああしなさい、こうしなさい」「いついつまでに、ここをやっておきなさい」「○ページから○ページまで覚えてきなさい」「ここは、こうやって解くんだ・・・・・・」

 こんな調子で塾の先生に指導され、とにかくそれについて行くことが子どもにとっての勉強であることが多いものです。そうなると、おそらくほとんどの子どもは中学校に入ってから戸惑うことでしょう。なぜなら、私立にせよ、国立にせよ、子どもが受験して入った中学校では、いずれも「自主性ある人間」であることを前提にして教育が行われるからです。

 これはある意味で当たり前のことです。学校は学力をつけるためにのみあるのではありません。社会に出てから自立した人間として活動し、あらゆる環境の中で自分というものを見失うことなく主体性をもって生きていける人間としての土台を築く場です。集団の中で自分を位置づけ、通用させる努力をしていく場所です。一人ひとり手取り足取り面倒を見てもらえるはずがありません。

 ですから、子どもは中学校に入った途端、そこがこれまでのやりかたや考えかたを180度転換させないとやっていけない世界であることに気づかされます。もともと家庭教育が自主性を重んじるものであれば、子どもも「中学校というところは、何でも自分で考えて行動するところなんだ」と理解し、いち早くこの新しい環境に適応していけるでしょう。どの子どももそうであれば問題なく、中学校でやっていけるはずです。

 ところが、現実はどうもそういうわけにはいかないようです。勿論、いち早く適応し、学校の先生の期待するような行動をとれる子どももいます。しかし、受験生時代に受験勉強中心の生活を送っていた子どもは、自分でやるべきことは何かを考え、自発的に行動するような姿勢を育てていません。

 それどころか、宿題やレポートなどの提出を要請されても、期限までにどのようにやり遂げるべきかを自分で考えて準備することができず、提出が滞るケースもあるようです。

 小学生の場合、受験の何たるかをろくに知らない段階から受験生活に入ることが多いものです。そこで、親も塾も子どもの受験勉強や受験生活の様々な面を先回りし、場合によっては強引なくらい引っ張ってやる必要がないではありません。

 しかし、そのさじ加減こそ、大人が最も注意しなければならないことです。子どもの自立学習を掲げる弊社ですが、「自分でやりなさい」と言いさえすれば子どもが自分でやるなら苦労はありません。弊社にわが子を通わせたなら、大概のおとうさんおかあさんはすぐに気づかれることでしょう。子ども任せではなく、子どもが自ら勉強を管理し取り組むようにさせることが、いかに大変なことかを。

 ここでは、弊社が子どもの自立学習をどう支援しているかについては書きません。また、通ってくださるお子さんのすべてに、自立勉強の姿勢を築くことをめざしていますが、それがどれほど難しいことであるかも承知しています。

 大事なことは、おとうさんおかあさんも、指導にあたる学習塾も、子どもがやがて足を踏み入れていく世界がどのようなものかをしっかりと理解し、それをわきまえた応援をすることではないでしょうか。受験生活を何の問題もなしに乗り切る子どもはいません。いや、むしろいろいろ挫折感を味わったり、壁に突き当たったりしながら、子どもは様々なこと学びとっていきます。ですから、「受験勉強や受験生活を通じて、いかにして子どもを自立した人間に近づけていくかを、子どもを見守る大人の共通の認識にすべきだと思います。

 そのプロセスにおいて、勉強の習慣をつけておくことや、自分で考えながら勉強を組み立てること、要領よくてきぱきとやるべき勉強を片づけていくことを、子どもに少しでも学ばせることが必要なのではないでしょうか。

 中学入試までに、自立に向けた到達点は子どもによって様々だと思います。しかし、自立に向けた流れを築いておけば、中学校で戸惑ったり、自信を失ったりすることはありません。受験を視野に入れておられるご家庭には、今のわが子の勉強ぶりを見て、そういう流れが少しずつできつつあるかどうかをチェックしてみてください。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強の仕方, 子どもの自立, 家庭での教育, 家庭学習研究社の理念, 私学について

自分に合った進路がわからない

2011 年 10 月 11 日 火曜日

 前回、「つきたい職業が見当たらない」という高校生が増えているということについて書きました。その原因について、筆者の想像を少し書きましたが、実際のところはよくわかりません。教育社会学者の先生がたには、是非実相について調査研究していただき、教育現場での対策に向けた動きをつくっていただきたいと思います。

 ところで、職業への夢はあっても、それに足る能力がなければ夢は実現しません。そこで、どうしても勉強が必要になるわけですが、つきたい職業が明確で目標になっていれば、勉強もがんばれるでしょう。しかし、それが定かでない子どもはいろいろ悩むものです。

 先日、弊社の経営者から聞いた話をご紹介してみましょう。それを通じて、小学生から、中学生、高校生にかけての子どもの学びのありかたについて、もう一度考え直すきっかけにしてしていただけたらと思います。小学生のお子さんをおもちの方々にとって、もうすぐ人ごとでない問題になることだと思います。

 先日、弊社の経営者と打ち合わせをしていたら、次のような話題が出てきました。私立一貫校の高校1年生だったと思いますが、進路についての悩みを相談してきたそうです。何でも、文理の選択をする時期が近づいてきたが、将来の就職のことを考えて理系に進むことを決心したものの、本来理系タイプの人間ではないと思っているので、気持ちがしっくりしないというのです。

「自分の望みでないコースに進んでも意欲が湧いてこないし、物理など難しくていくら勉強しても全然わかりそうもない。わからない勉強、自分に向かない勉強をいくらしても、満足できる大学進学結果は得られないだろうし、この先いったい自分はどうしたらよいかわからなくなった」というようなことを語ったそうです。

 以前読んだ新聞に、大学生の就職状況は戦後最悪の状態にあるという記事が載っていましたが、それでも文系学部よりは理系の学部のほうがずっとよかったように記憶しています。就職に有利な理系に進むほうが利口で賢明なのかもしれません。とは言え、どの教科も人並み以上できる生徒ならいざ知らず、本来は文系タイプで、物理がサッパリわからないという生徒の場合、どうなのでしょう。

 弊社の経営者は、こうアドバイスしたそうです。

「きみは、話し上手で社交性があるし、実際に友だちも多くて人気者だ。人間として魅力があると思うよ。就職のことを気にしているみたいだが、企業というのはものづくりや研究にばかり人が必要わけではない。第一、つくった商品が売れなければ企業は成り立たない。文系の人間だからこそ活躍できる分野はいっぱいあるじゃないか。 私が一般企業の採用担当者なら、コミュニケーション能力、表現力に長けたきみのような人間を採用すると思うよ。勉強を就職の手段として嫌々やったのでは成果はあがらない。きみは明らかに文系タイプだからそっちに進み、がんばればいいじゃないか」

 すると、その生徒は

「先生、今の話は僕を元気づけようとして、お世辞で言ったんじゃないですか」と言い、確かめるような目つきをしました。

「気休めを言っても、きみのためにはならない。私は率直な気持ちを話しただけだ」

 経営者がそう言うと、明るい表情をして家に帰ったそうです。それからしばらくして、その生徒さんの親から電話があり、「子どもが元気を取り戻し、ハツラツと勉強をするようになりました」とお礼を言われたそうです。

 この話のように、就職のために学ぶコースを曲げなければならないとしたら、学生時代の意義は薄れてしまいます。方便としての勉強ほど味気ないものはありません。それでは本末転倒というものです。また子ども自身、大学生活において意欲も元気も湧いてくるはずがありませんし、人生の意義も見失ってしまいかねません。

 こうしてみると、自分は何をしたいのかよりも、どういう進路をとれば有利かを早期から考えて学ぶことが、果たして幸せなことだろうかと疑問を感じてしまいます。

 無論、高校生までの勉強は、人間として偏らないようバランスをとることも必要です。しかし、先ほどの生徒の場合、まず自分に手応えを得、自信をつかむことが必要です。文系に進んだ後、国立の大学をめざすことになれば、理系の教科の勉強も相応にがんばれるようになるものです。

「将来つきたい職業がわからない」「自分にあった進路がわからない」――これは気持ちの揺れとしては、ほとんどの高校生に存在するものです。つきたい職業が常に明確であるはずはありませんし、自分の進路の方向が早くからわかっている生徒はそういるものではありません。ですが、それに振り回されていつまでも悩んだり、ふんぎりがつかなくなったりすることは、できるだけ避けたいものです。

 これをお読みの方々は、ほとんどが小学生の保護者のかたであろうと思います。やがて、わが子も中学・高校生となり、将来の進路について考え始めるときがくるでしょう。そのとき、うまくこの関門を突破して人生の足がかりを築いてほしいものですね。

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カテゴリー: がんばる子どもたち, 子どもの自立, 家庭学習研究社の理念, 教育者とは

就きたい職業が見つからない

2011 年 10 月 3 日 月曜日

 誰にも、子どもの頃にあこがれた職業があると思います。おとうさんおかあさんはどうだったでしょう。子どもの頃、「大人になったら、○○になりたい。 ○○のような仕事をしたい」などと思ったことはありませんか? 覚えておられるでしょうか。

 また、お子さんのほうはどうでしょう。将来なりたいものを夢に描いておられるでしょうか。子どもは将来の夢を語ると目を輝かせ、元気になります。ぜひ一度、家族揃っているときの話題にしてみてはいかがでしょうか。

 子どもは、まだ世の中にどんな職業があるのかをよく知りません。乏しい知識や狭い世界のなかから、あこがれるものを答えるのですから、「何になりたい?」と聞かれると、返事はどうしても似通ったものになります。また、将来その職業につく可能性も極めて薄いものです。しかし、あこがれの職業を思い描くことから、漠然とではあれ進んでいく道が方向づけられることもあるものです。

 ここで、2009年にランドセルの素材メーカーが実施したアンケートの結果をご紹介してみましょう。

大人になったらどんな職業につきたい?  (調査対象:4000人)

どんな職業につきたいか、小学生編

 小学生の場合、「将来何になりたいか」と聞かれたなら、単純明快にあこがれている職業の名を答えることでしょう。しかしながら、そのあこがれは年齢が上がるにつれて現実と摺り合わされ、実現の可能性も含めたものに変わっていきます。それはそれで子どもたちの成長の表れであり、無理もないこととです。

 しかしながら、最近は気になる現象が起こっているようです。それは、「なりたいものがない。見当たらない」という子どもが増えているのです。

 ベネッセの調査によると、2004年には「就きたい職業がある」と答えた生徒が高校1年生で64.8%、高校2年生で68.7%いたのに対し、2010年には高校1年生が48.4%、高校2年生が53.0%に減っているそうです(2009年の調査対象:6319人)。

 一昔前には子どもたちはいろいろな職業にあこがれ、その名前を口にしていました。なれるかなれないかはともかく、職業へのあこがれをもつということは若者にとってとても重要なものだと思います。それが発端で、様々な努力をしていき、最終的な職業が決まっていくことも珍しくないからです。

 このような現象が見られるようになった原因は何でしょうか。近年は不況が長引き、企業の雇用状況が芳しくありません。「希望しても、どうせ無理だろう」と諦めてしまうのでしょうか。また、どんな職業に将来性が高いかということが、専門家ですらわからない時代になっています。何をめざしていいのか、それ自体がわからない時代になってしまっているのでしょうか。

 またこんなことも考えられるでしょう。子どもにとって、親がかりの生活は便利で快適なものです。今日の時代は楽しい遊びならいくらでもあるし、おいしいものにも事欠きません。そんなこんなが、子どもの自立願望を減退させ、「できるなら仕事などしたくない」といった風潮をつくっている面もあるかもしれません。

 以下は、高校生のなりたい職業の上位リストをあげたものです。ベネッセによる2004年と2009年の調査比較です。

高校生のなりたい職業ベスト5 (性別)

高校生のなりたい職業

 上表のように、いわゆる3Kと言われるようなきつい仕事をきらい、手のきれいな仕事、立場や収入にリスクの少ない職業に人気が集まっているのではないかと思われます。そういう傾向の良し悪しについては論じることにはあまり意味がないかもしれません。世情が子どもたちのそういう志向性を生み出しているのであり、今はそういう時代と言うしかありません。

 やはり問題に思うのは、「就きたい職業が見つからない」ということのように思います。未来の担い手である子どもたちが、職業へのあこがれをもてないとしたら、今の時代は生きていくうえでほんとうに魅力の乏しい時代ということになってしまいます。このことについては、機会を改めてまた書いてみたいと思います。

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カテゴリー: 子どもの自立