就きたい職業が見つからない

2011 年 10 月 3 日

 誰にも、子どもの頃にあこがれた職業があると思います。おとうさんおかあさんはどうだったでしょう。子どもの頃、「大人になったら、○○になりたい。 ○○のような仕事をしたい」などと思ったことはありませんか? 覚えておられるでしょうか。

 また、お子さんのほうはどうでしょう。将来なりたいものを夢に描いておられるでしょうか。子どもは将来の夢を語ると目を輝かせ、元気になります。ぜひ一度、家族揃っているときの話題にしてみてはいかがでしょうか。

 子どもは、まだ世の中にどんな職業があるのかをよく知りません。乏しい知識や狭い世界のなかから、あこがれるものを答えるのですから、「何になりたい?」と聞かれると、返事はどうしても似通ったものになります。また、将来その職業につく可能性も極めて薄いものです。しかし、あこがれの職業を思い描くことから、漠然とではあれ進んでいく道が方向づけられることもあるものです。

 ここで、2009年にランドセルの素材メーカーが実施したアンケートの結果をご紹介してみましょう。

大人になったらどんな職業につきたい?  (調査対象:4000人)

どんな職業につきたいか、小学生編

 小学生の場合、「将来何になりたいか」と聞かれたなら、単純明快にあこがれている職業の名を答えることでしょう。しかしながら、そのあこがれは年齢が上がるにつれて現実と摺り合わされ、実現の可能性も含めたものに変わっていきます。それはそれで子どもたちの成長の表れであり、無理もないこととです。

 しかしながら、最近は気になる現象が起こっているようです。それは、「なりたいものがない。見当たらない」という子どもが増えているのです。

 ベネッセの調査によると、2004年には「就きたい職業がある」と答えた生徒が高校1年生で64.8%、高校2年生で68.7%いたのに対し、2010年には高校1年生が48.4%、高校2年生が53.0%に減っているそうです(2009年の調査対象:6319人)。

 一昔前には子どもたちはいろいろな職業にあこがれ、その名前を口にしていました。なれるかなれないかはともかく、職業へのあこがれをもつということは若者にとってとても重要なものだと思います。それが発端で、様々な努力をしていき、最終的な職業が決まっていくことも珍しくないからです。

 このような現象が見られるようになった原因は何でしょうか。近年は不況が長引き、企業の雇用状況が芳しくありません。「希望しても、どうせ無理だろう」と諦めてしまうのでしょうか。また、どんな職業に将来性が高いかということが、専門家ですらわからない時代になっています。何をめざしていいのか、それ自体がわからない時代になってしまっているのでしょうか。

 またこんなことも考えられるでしょう。子どもにとって、親がかりの生活は便利で快適なものです。今日の時代は楽しい遊びならいくらでもあるし、おいしいものにも事欠きません。そんなこんなが、子どもの自立願望を減退させ、「できるなら仕事などしたくない」といった風潮をつくっている面もあるかもしれません。

 以下は、高校生のなりたい職業の上位リストをあげたものです。ベネッセによる2004年と2009年の調査比較です。

高校生のなりたい職業ベスト5 (性別)

高校生のなりたい職業

 上表のように、いわゆる3Kと言われるようなきつい仕事をきらい、手のきれいな仕事、立場や収入にリスクの少ない職業に人気が集まっているのではないかと思われます。そういう傾向の良し悪しについては論じることにはあまり意味がないかもしれません。世情が子どもたちのそういう志向性を生み出しているのであり、今はそういう時代と言うしかありません。

 やはり問題に思うのは、「就きたい職業が見つからない」ということのように思います。未来の担い手である子どもたちが、職業へのあこがれをもてないとしたら、今の時代は生きていくうえでほんとうに魅力の乏しい時代ということになってしまいます。このことについては、機会を改めてまた書いてみたいと思います。

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カテゴリー: 子どもの自立

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