2012 年 10 月 9 日 のアーカイブ

受験の追い込み期が到来しました

2012 年 10 月 9 日 火曜日

 10月の声を聞くと、空気もひんやりとしてきて、受験シーズンの到来が近いことを予感させられます。なかなかやる気が表に現れなかったお子さんも、受験への意識が足りなかったお子さんも、さすがに気持ちの引き締まった勉強をするようになってくるのが6年生の秋です。

  これから受験までは、学力の仕上がり具合をみながら、足りない部分を補強したり、苦手払拭のための最後の対策を講じたりしていくことになります。

 こうした学習に欠かせないのが模擬試験です。模擬試験で得たデータが、各教科・各単元の仕上がり状況をもっとも的確に教えてくれるからです。弊社では、6月を皮切りに6年生の仕上げ学習に指針を与えるための模擬試験を開始し、9月からは月1回のペースで12月まで合計5回実施しています。

 模擬試験はその名の通り、ほぼ本番に準ずる試験ですから精度が問われます。問題の作成は難度の高い仕事であり、専門のスタッフがかなりの日数をかけて綿密な検討を重ねながら作成しています。この模擬試験は公開制で、他塾の受験生にも参加いただいています。9月に実施した2回目の試験では、男女とも4百数十名の受験生が参加しました。

 出題範囲を明示しない実力試験(小学校課程の全範囲が出題範囲)ですから、それぞれの教科の仕上がり具合が如実に結果となってあらわれます。それだけに、試験を受けるときの子どもたちの表情も引き締まったものになります。この時期からの1日あたりの勉強は、以前の2~3日分に相当するぐらい密度の高いものになっていきます。

 入試が日に日に近づくことを実感するこれからは、親も一喜一憂の毎日を余儀なくさせられます。模擬試験の結果がよければ、親子共々元気が湧いてきます。お子さんは、「さあ、追い込みに向けてがんばるぞ!」と意気込みを増幅させ、親は、「さあ、これからだ。がんばって!」と、期待を募らせながらハッパをかけることになります。

 問題は、結果が思わしくなかったときです。ちょっとしくじった程度ならまだしも、思いもしない点数や順位をとったときには、お子さんも自分を取り戻すのに時間を要するほどのショックを受けることがあります。そんなとき、親はどう対応すべきなのでしょうか。

 筆者自身、かつて愚息を家庭学習研究社に通わせましたが、模擬試験の結果が思わしくなく、どう励ますか悩んだことがあります。詳しくは覚えていませんが、うまくフォローできなかったことだけが記憶に残っています。毎年、多くのご家庭がこれに似た体験をしておられるのではないでしょうか。

 ある年の10月末頃だったでしょうか。保護者面談をしたとき、「おたくのお子さんは、自分なりの考えをもっているタイプです。成績や勉強の内容については、もう何も言わないほうがよいと思いますよ」とおかあさんに申し上げました。息子さんは性格的に激しいものをもっていたので、親が何か言うと猛反発することが予想されたからです。

  「わかりました。もう、成績や勉強のことで息子に何か言うことはやめます。あとは健康を祈るだけです。先生、よろしくお願いします」そう言っておかあさんはお帰りになりました。

 それから数日後の授業中、筆者が子どもたちに「受験勉強のことで、親と揉め事はないか」と聞いたことから騒ぎが起こりました。「模試の成績がもとでおかあさんと大喧嘩になり、おかあさんに回し蹴りを食らった!」と、大声をあげた男の子がいました。それは、先ほどご紹介したおかあさんの息子さんでした。「えっ、あのおかあさんが回し蹴り?」美しく上品なそのおかあさんの記憶と結びつかず、しばらくは信じられませんでした。

 しかし、すぐに考えを改めました。おかあさんは、叱るのを必死で堪えておられたのです。しかし、口よりもものを言うのが目です。おかあさんのがっかりした目つきを見て、息子さんはいても立ってもいられなくなり、「どうせ文句が言いたいんだろ!」と機先を制してしまったのではないでしょうか。(あとで、それが事実であることが分かりました)

  「では、親はどうすればいいの?」と思われたでしょうか。心配無用です。それぞれの親子関係のありのままに、接すればいいのではないでしょうか。ただ、反省を促すのに感情的にならないことです。また、子どものやる気を否定するようなことを言わなければいいのです。親が心配するのは、当たり前のことなのですから。

 弊社のある校舎で、私学に通う卒業生たちを招く会がありました。そのとき、「受験生の頃、おかあさんに注意されたり叱られたりしたとき、どう思いましたか?」という質問があったのですが、先輩たちは一様に「嫌だった」と答えていました。しかしその一方で、「自分のためを思って、自分を心配して言ってくれたのだ」と受け止めており、「今では感謝している」とも述べていました。

 子ども自身が成績不振で落ち込んでいるとき、親からさらに反省を求められるのはどのお子さんだって辛いもの。そんなときはつい反発するものですが、みんなわかっているのですね。

 先ほどの回し蹴りのお子さんですが、彼も無事志望校に合格しました。様々な試練を乗り越えての中学受験。親子の衝突もありますが、それは関係が近すぎるゆえの互いの甘えもあるのかも知れません。でも心配無用。お子さんは十分わかっています。親の愛情はうっとうしくも、ありがたくもある。そうした経験を乗り越えて、さらに親子の絆は深まっていくのですね。

 入試本番まであと3ヶ月ほどになりました。子どもたちにとって、生涯最初の試練がやってきます。

 

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カテゴリー: がんばる子どもたち, アドバイス, 中学受験