受験に”失敗”しない親の心得

2012 年 12 月 24 日

 親は、わが子に対して大きな期待をいだくものです。「今、改めてその期待がどういうものか考えてみてください」と申し上げると、どんなことが思い浮かぶでしょうか?

 おそらく、中・高一貫校への進学を視野に入れておられるご家庭ですから、少なくとも学力形成や知的能力の成長については期待が大きいことでしょう。

  家庭学習研究社は進学塾です。当然お預かりするお子さん方の進学目標達成、すなわち中学受験での合格に向けた指導をしていきます。おとうさんおかあさんの期待が実現するよう、お子さん方の学力形成を応援しています。

 ただし、40年以上も学習塾の活動を続けていると、中学校に受かった後、どういうお子さんが伸び、どういうお子さんがうまく行かないかということもわかります。

 なかには、「とりあえず、合格させてほしい。後のことはそのときに考えるから」とおっしゃる保護者もおられます。しかし、そういう要請に応えようとすると、子どもの実状や気持ちを考えず、大人が無理やりやらせる勉強、大人主導の勉強を子どもに押しつけることになりがちです。

 無論、それは一概にいけないとは言い難い面もあります。小学生に大学受験生のような目標感をもたせるのは無理ですし、子ども任せの勉強ではがんばり切れません。また、まだ大人の言うことを素直に聞いてくれる年齢ですから、大人の指示や命令でやらせたほうが効果を引き出しやすいものです。

 ですが、こういう方法こそ、子どもが中学進学後伸び悩む原因になっているのです。この11月、広島学院と修道の校長先生をお招きしたイベントを実施しましたが、そのときにも「中学校に入ってから行き詰まる理由をお尋ねしたところ、「合格したら、あとは遊んでいい」といったように、目の前にある受験を乗り切ることだけを考えた受験に警鐘を鳴らしておられたと記憶しています。

  こういうやりかたをすると、自発的な勉強など到底できない人間になってしまいかねません。実際、校長先生が中学で失速した例として、ゲーム三昧の生活に浸っているうちに勉強に戻れなくなった生徒さんの話をしておられました。

 前述のように、家庭学習研究社は中学受験塾として40年以上活動しています。そして、その活動を始めた当初からこの問題に行き当たりました。「いくら合格しても、子どもの成長につながらなければ意味がない」――そう考えた弊社の経営者は、「受験勉強を通じて、いかに子どもを自立させるか」という目標を掲げ、その実現に向けた指導を学習塾としての方針として貫いてきました。

  しかしながら、先ほどの例のように「受かったらいくら遊んでもいいから」といった働きかけを保護者のかたがされたなら、弊社の方針を徹底することなど到底できません。

 やるべきことがあるのにがんばれないわが子。それを見ていられない気持ちはわかるのですが、そこがまさに“我慢のしどころ”なのです。

 4年生から約3年続くお子さんの受験生活。それは、親にしてみれば、ほんとうに忍耐と辛抱の連続する日々といっても過言ではありません。しかし、ままならぬわが子の受験生活で親が忍耐に徹することは、それだけの価値のあることだと思います。子どもは、親の辛抱強い働きかけがあってこそ、少しずつ自立に向けて成長していけるのですから。

  最近は、親の辛抱が足りないように思います。たとえば、まだ4年生のうちから、「うちの子に見込みがないのなら早くそう言ってくれ」といったようなことをおっしゃるおとうさんがおられます。しかし、少し考えればわかるように、学習習慣、学習姿勢といった一生を支える価値のあるものは、おいそれと身につくものではありません。

  また、受験勉強も、すぐに先を読んでしまうのは、早計に過ぎると思います。子どもが成長していく過程は、一人ひとりみな違うのですから。ぜひ、そのことについてご理解いただき、辛抱強い見守りと応援をお願いいたします。うまくいったなら、お子さんは一生ものの財産を手に入れたのだと申し上げても過言ではありません。

  最後に、「親の我慢」について少し具体的にお伝えしてみようと思います。

1.指示や命令で子どもを動かさない。「どうしたらいいと思う?」と、子どもに相談する。そうすると、子どもは自然と親の意向に添った行動を選ぶものである。このほうが実行につながる。
2.子どもの取り組みをしっかりと見守る。ただし。何かしているときに口を挟まない。
3.子どもをタイミングよくほめる。ほめる理由は、以前よりがんばっているとき、自発的にやっているときである。結果より姿勢を評価しているということを、無言で示すことが重要である。
4.思い通りにがんばってくれなくても切れない。やらないときには理由があるものだ。どうしたのか尋ね、明るく励まそう。
5.どんなときにも子どもを信頼してやる。子どもは「親に信頼されている」と感じたら、必ずがんばるものだ。親には辛抱が必要だが、それが子どもから親への信頼につながる。

 筆者は、中学受験でいちばん重要なのは“親子の信頼”だと思っています。互いの信頼があれば、親は無用な手出しを控えることができますし、子どもも自立に向かって動き始めます。

 この信頼関係が6年生までにできあげれば(いや、いつであろうと遅くはないのかもしれません)、がっかりするような受験結果にはなりません。仮にどういう結果になろうとも、お子さんの将来は間違いなくよい方向へ進んでいくことでしょう。

  中学受験は、親子で立ち向かう受験です。受験生の子どもは親を全面的に頼りにしています。だからこそ、親のサポートで自立に向かわせるのですね。親子の強い信頼関係を背景にした受験に失敗などありません。

 

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