今さら音読? いえ、今こそ音読!

2013 年 4 月 1 日

 

   学習のなかで、“読む”という行為は大きなウェートを占めています。実際、小学校での学習においては、すべて「教科書」を読むことが基本となっています。学習塾での勉強も、国語は言うに及ばず、算数も、理科も社会も、「テキスト」を読むことなしには成り立ちません。

 ところが、近年は“読む”ことを苦手にしている子どもが増えています。ただでさえテレビが茶の間を席巻して久しいのに、それに加えてゲームや視聴覚メディアが子どもを取り込んでいます。それらは一概に悪いと決めつけるべきものではないにしても、子どもが活字から遠ざかってしまうのを放置していると、子どもの読みの力の上達がままならなくなるのではないでしょうか。

 特に男子の場合、テレビやゲーム漬けの生活に陥りやすいうえ、机について読書に勤しむ習慣が身につかない子どもが多く、活字を通して情報を得たり、それをもとに考えたりするのを苦手にすることが多いものです。

 6年生になっても相変わらず読むことがままならないようでは、能力を云々する以前に「活字をまともに読めないから勉強が成り立たない」ということになりかねません。これでは受験対策は空回りするばかりです。

 すでにこのブログでご紹介したかと思いますが、4・5年生は人間の生涯で最も語彙の獲得が著しい時期です。この時期を活かすには、まず活字を読んで情報を得るための態勢をしっかりと築くことが求められます。そうでなければ、本の世界を楽しむこともできませんし、読むことを通じて新しい語彙を増やしていくこともままなりません。

 次の資料は、子どもの語彙増加の様子を知ることのできる有名な資料です。これによると4年生頃が語彙増加率で、5年生頃が語彙増加数で生涯最高の数値を記録することがわかります。大人はこのことを踏まえ、子どもの読みの態勢づくりにもっと十分な配慮や後押しをすべきではないでしょうか。

 

  

  小学生の語彙増加の状況        (発達心理学の文献より)

 

 

 

学年

(年齢)

1年生

(6-7歳)

2年生

(7-8歳)

3年生

(8-9歳)

4年生

(9-10歳)

5年生

(10-11歳)

6年生

(11-12歳)

年間語彙

獲得数

1,271

2,305

3,602

5,448

6,342

5,572

語彙量

6,700

7,931

10,276

13,878

19,326

25,668

増加率

19.0%

28.0%

35.1%

39.3%

32.8%

21.0%

 

 読みの態勢が不十分な子どもは、読むことを苦痛に感じるものです(子どもは、“たいぎい”とよく言いますが、読むのを負担と感じなければ積極的に本を読もうとするものです)。逆に、活字を読む態勢を築いた子どもは、読むことの負担が少ないため、本を楽しむことや読書を通じて知識を得たりすることに熱心になります。これが読みのさらなる習熟、知識や思考力の拡充、ひいては高いレベルの学力の獲得につながります。

 今、お子さんが4・5年生のご家庭はどうでしょう。読みの力は順調に伸びているでしょうか。読書をすることが生活の一部として定着しているでしょうか。4・5年生の時期に語彙が急速に増加する様子を、「語彙の爆発」と呼ぶ学者がいます。中学受験生の子どもにとって、この「語彙の爆発」という現象と無縁なままの中学入試突破はあり得ません。その意味において、読む力を育てることは、中学受験生にとって受験対策の要と言えるほど重要なものです。

 語彙の爆発を通して、小学生には少し難しいと思われる文章の読解も初めて可能になります。抽象性を帯びた表現の意味の類推も、一定以上の語彙を伴ってこそ可能になります。今、まさに子どもは大人の思考への脱皮をしていかなければならない時期に来ているのです。

 ここまでお読みになって、「うちの子の状態はどうなんだろうか」と心配になったかたもおありかもしれません。子どもが活字を読んで知識を得る態勢を築いているかどうかを知るには、“音読”をさせてみるよいということを以前ご紹介したことがあります。もしご心配なら、一度さりげなくお子さんに音読をさせてみてはどうでしょう。もしも読みの態勢づくりが順調に進んでいるなら、滑らかに上手に音読ができるでしょう。

 「今さら音読をさせるなんて悠長すぎる」と思われるかたもおありかもしれません。しかし、上手に音読ができないお子さんが、滑らかで正確な黙読ができるようになることはありません。ですから、読みの熟達に向けて避けて通れないのが音読なのです。

 音読が上達すると、それに比例して黙読の態勢も整っていきます。当然、学習において読むことの負担は軽減され、それが学習の理解を高めるという好循環の流れができていきます。これは書物に書かれていたことですが、たとえ6年生の秋からでも、音読をまじめに取り組めば3カ月位したら学習効果につながるそうです。ですから、「今さら音読なんて」と思わずに、ぜひお子さんに取り組ませていただきたいですね。

 音読の素材は何でも構いません。学校の教科書でも、弊社の国語テキストでも、マナビーテストの国語の素材文でも、一般の児童向け図書でも結構です。親がそばで聞いていて、「随分うまくなったな」と思える状態に漕ぎつければ、きっと学習全般に好影響をもたらすことでしょう。

 音声の言葉は生活の場で自然と身につきますが、文字の言葉を自在に使いこなせるようになるには、意図的な準備が必要です。その準備の違いが、読みの能力、学力に多大な影響を及ぼすことになります。そのことについて、このブログに書いたことがありますが、来週以降にもう一度書いてみようと思います。

 

  

 

 

 

 

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カテゴリー: アドバイス, 勉強の仕方, 子どもの発達, 家庭での教育

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