2013 年 6 月 のアーカイブ

子どもの学習意欲は親次第 ~おかあさんの勉強会2~ 前半

2013 年 6 月 24 日 月曜日

 「おかあさんの勉強会」は、4・5年生の「週3日コース」会員家庭のおかあさんを対象とする催しです。春に2回、秋に2回のペースで実施していますが、先週水曜日に全予定を終了しました。

 ワークショップ形式の催しを学習塾が行うケースは少なく、教育方面での数少ない実施例(筆者が実際に体験)を参考に、「中学受験生のおかあさんを励ます催し」として3年前から始めたものです。今春は200名近いおかあさんに参加いただき、ようやく定着した感があります。

 第2回は、「子どもの学習意欲は親次第」というテーマを掲げ、子どもの学習意欲に大きな影響をもつ親の働きかけのありかたをともに考えてみました。

 「どうしたらわが子の学習意欲は高まるのか」ということは、中学受験生をもつ保護者の共通の関心事です。特に、家庭学習の自立を重視している弊社会員のご家庭ならなおさらであろうと思います。事実、このブログで閲覧数が最も多いのは、「学習意欲」、「やる気」、「自信を植えつける」、「勉強好きにする」などの言葉がタイトルについた記事です。

 さて、勉強会の内容をご紹介しましょう。勉強会は3~5人のグループをつくり、グループ内で話し合う形式をとっています。

 恒例のことですが、「アイスブレーキング」と呼ばれる自己紹介ゲームから始めました。ワークショップでは「話しやすい雰囲気」が大切です。そのための趣向がアイスブレーキングです。その内容ですが、お子さんの学年と性別、お名前をご紹介いただいた後、各自「自分が家庭生活で心に留めていること」を漢字一字で表現し、そこに込められた思いをメッセージにしていただきました。グループによっては笑い声が響き渡るほど盛り上がり、すぐに仲良くなられている様子でした。

  ① 子どもの学習意欲は、どんなときに高まる?

 子どものやる気を引き出す方法を知るには、「どんなときにやる気を出すのか」を確かめるのがいちばんです。そこで早速ワーク1に移り、この話題について話し合っていただきました。ワーク1は、次のような流れで進めていきました。

 1.自分の子どもは、どういうときにやる気になったことがあるかを思い出す。そして、その理由を考えてみる。そして、それを各自メモする。

 2.グループ内で、それぞれに思い出したことを発表する。他の人の発表内容をメモする。

 3.司会役を決め、グループで「子どもはどういうときにやる気を出すのか」を話し合う。

 この話し合いは、いずれの校舎でも活発に行われたようです。この段階で、気分が明るくなるおかあさんもおられたらうれしいのですが。

 ところで、子ども自身はどんなときにやる気が出ると考えているのでしょうか。それを知るため、全校舎の4年生と5年生の1クラスずつを任意に選び(合計約300名)、アンケートを実施してみました。質問内容は、

 1.勉強のやる気が高まるのはどんなときですか?

 2.やる気がなくなるのはどんなときですか?

 3.おとうさんやおかあさんにかけられた言葉で、うれしかったのはどんな言葉ですか?

 というものでした。1と2は選択肢で、3は自由記述で答えてもらいました。実は、この答えを全て点検すれば、もう後の話は無用になると言ってよいほど、子どもたちの思いや現実が明らかになりました。

 1の「やる気が高まるとき」については、いちばん多かったのは「成績が上がったとき」で、次は僅差で、「難しい問題が解けたとき」「親にがんばっているねとほめられたとき」「親に成績をほめられたとき」の三つが並びました。

 その次はかなり離されて、「友だちよりよい成績がとれたとき」「家族で楽しい時間を過ごしたとき」でした。

 2の「やる気がなくなるとき」は、いちばん多かったのは親からの言葉かけの影響で、「叱られたとき「もっとがんばれと言われたとき」「こんなんじゃ、塾を辞めたらと言われたとき」「今の成績じゃダメだと言われたとき」などでした。次に多かったのは、子ども自身の勉強状態が原因で、「成績が上がらないとき」「問題が解けなかったとき」「宿題が多いとき」などでした。

 3の「親からの声かけでうれしかった」のは、「がんばっているね、とほめられ激励されたとき」が圧倒的多数(79名)でした。次は「すごい!やったね!などと成績をほめられたとき」(24名)でした。

 この二つの本質は似て非なるものです。同じほめられるのでも、結果を見てのことか、プロセスを見てのことかでは、子どもの受け止めかたが全く違うのです。努力を認めてほめてもらうことが、いかに子どもにとって励ましになるかを如実に示していますね。また、努力をほめるのなら、親も頻繁にほめたり声をかけたりするチャンスがありますが、成績をほめようとするとそのチャンスは限られてしまいます。どのお子さんも、勉強に取り組んだ結果の成績ですから。

 自由記述ですから、いろいろな回答があります。その一つひとつを見ていると、子どもの気持ちがよく伝わってきます。ここでご紹介できないのが残念なくらいです。

 この調子でご紹介していると、とてつもなく長くなりそうですね。今回はここまでで終わります。

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私学紹介イベントを実施しました ~その2~

2013 年 6 月 20 日 木曜日

 前回に引き続き、6月16日(日)に実施した私学紹介イベント、「私学がきみを呼んでいる!」をご紹介します。今回は、後半(第2部)の「私学で夢を叶えよう!がんばれ中学受験生!」の内容や様子をご紹介します。

▲応援エール ▲応援エール

 後半の初っぱなは「制服紹介」です。女子受験生にとって、各私学の制服が「どんなデザインや色をしているか」は、大きな関心事でしょう。また、私学の女子生徒さんも心得たもので、ステージでくるっと回ってポーズを決めてくれたりします。男子の受験生は、女子ほどには制服に関心はないようでしたが、それでも先輩の格好いい制服姿に見入っていたようでした。

 中3の生徒さんが各校3名ずつおられるので、一人は冬服、もう一人は夏服、三人目は間服、もしくは部活のユニホームなど“何でもあり”ということにしました。というわけで、三人目の服装がユニークで子どもたちの目を惹きつけた学校もありました。たとえば修道の生徒さんは、ワンダーフォーゲル部の山登りの格好で登場し、頭上にはチカチカと輝くサーチライト。子どもたちをあっと言わせていました。こうしたパフォーマンスは、直接は私学紹介に関係ないかもしれませんが、その私学の生徒さんへのイメージ形成にもつながります。実際、その生徒さんは自由闊達で威勢のよい“修道生”のイメージをしっかりと後輩たちに印象づけていました。

sannkaku ▲制服紹介(清心中)

sann ▲制服紹介(修道中)

 

 制服の紹介コメントは、各校の先生がたが務めてくださいました。さすが先生です。みなさんとても上手に自校の制服を説明してくださいました。なかには、カバンも生徒さんにもってこさせ、制服に絡めて制カバンの特徴などを説明される先生もおられました。このコーナーは、女子には特に興味を惹きつけていた様子でした。

 制服の紹介が終わると、先生と生徒さんには席に着いていただき、後半の正式な最初のプログラムである、「先輩からの受験アドバイス」を始めました。

 ただし、ただ先輩からのアドバイスを話していただくのでは面白味に欠けます。そこで、「受験生活でこんなことがあった?」という質問を5つ掲げ、それぞれについて○か×のプラカードを掲げて答えてもらいました。この質問コーナーは、「受験勉強あるある」と題して行いました。たとえば、「今やろうと思っていたとき、親に『早く勉強しなさい!』と叱られて腹が立ったことがある?」という問いかけに対して、全員に○か×で答えてもらうという形式です。

 どの質問も、今受験生活を送っている子どもたちの家庭で起こりそうなものだったためか、質問を紹介するたびに、また生徒さんがたが○×で答えるたびに、子どもたちのワッという歓声が漏れてきました。生徒さんがたに○×で答えてもらう前に、まずは会場の受験生たちに「○なら手を挙げて」と呼びかけました。その後で生徒さんがたが答える形式にしたせいか、より会場の受験生の反応が大きかったように思います。、

 全部の質問が終わると、このプログラムのメインテーマである、「先輩からの受験アドバイス」の内容に沿って、中3生のみなさんに受験当時を思い出していただき、後輩に向けて有用なアドバイスをしていただきました。

sannkaku ▲会場のみんなに質問

sann ▲先輩たちの〇×回答

 次のプログラムは、「先輩のおすすめ勉強法」です。3年前に受験を経験した先輩たちから、教科ごとの勉強のコツを伝授してもらいましたが、どの先輩も「後輩たちのためだから」と、丁寧に要点を整理して説明してくださり、受験生の子どもたちは熱心に聞き入っていました。特に、「苦手克服の方法」は、誰もが直面する問題です。女子はメモをとる受験生が多く、とても参考になったようでした。

 先輩たちからおすすめの勉強法を伝授してもらった後は、「先生からの受験アドバイス」のコーナーに移ります。こちらは毎年の入試の傾向や、来年度の見通しなどを踏まえ、「こういう問題が毎年出ています」「こういう勉強をしておきましょう」などという具体的なアドバイスもあり、受験生も保護者も熱心に耳を傾けていました。

▲先輩からのおすすめ勉強法 ▲先輩からのおすすめ勉強法

▲先生からの受験アドバイス ▲先生からの受験アドバイス

 

 さて、いよいよフィナーレです。私学ごとに先生と中3の生徒さん3名、合計4名でパフォーマンスを交えて受験生を励ますエールを送ってくださいました。受験生の気持ちをここでグンと惹きつけて終わろうと、どの私学の先生、生徒さんも工夫を凝らした方法で受験生の子どもたちを激励してくださいました。

▲女学院中による応援メッセージ ▲応援メッセージ(女学院中)

▲なぎさ中による応援メッセージ ▲応援メッセージ(なぎさ中)

 

 これで、全てのプログラムが終わりました。午前・午後ともちょうど2時間の催しで、受験生とは言え小学生にはやや長い時間でしたが、ほとんどのお子さんが退屈そうな素振りを見せず、最後までこの催しを楽しんでくださったように感じました。

 来年は入試に臨む子どもたちです。催しを楽しみながらも、「あの学校に行きたい!」「がんばるぞ!」と、やる気を高めるきっかけになればと念じつつ催しの終了となりました。

 最後に。この催しは、弊社のアピールの場としては位置づけていません。来年の入試が終わり、いよいよ進学先が決まったなら、それ以後はそれぞれの私学の生徒になる子どもたちです。ですから、受験する子どもたちが私学をよく理解し、あこがれの気持ちを抱くきっかけをつくるための行事であることを第一義に定めてこの催しを実施しました。

 そういった趣旨に、私学の先生がたが賛同してくださったからこそ、「子ども目線の、子ども中心の行事」になったのだと思います。私学の先生がたには、心より御礼申し上げる次第です。

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私学紹介イベントを実施しました ~その1~

2013 年 6 月 19 日 水曜日

 6月16日(日)には、恒例の私学紹介イベント「私学がきみを呼んでいる!」を実施しました。この催しの対象者は、弊社の6年部会員親子です。

全体

▲各校舎責任者挨拶   

 6年生の6月は微妙な時期です。まだ入試への明確な目標意識は育っていないお子さんが多く、それでいて受験までの期間は半年ちょっとしか残されていません。6年生になったことで、しばらくはがんばっていたお子さんも、6月頃には中だるみに陥ることが多いものです。おりしも、梅雨の訪れとともに蒸し暑い日が多くなり、季節的にも勉強に好条件とは言い難い時期となっています。このように、6月は受験勉強を活性化するのを難しくする条件がいくつも重なってきます。

 そんなとき、「私学っていいな!」「この学校の、この先輩のようになれたら!」というふうに、私学や私学の先輩たちにあこがれの気持ちをもつ機会が得られたならどうでしょう。それをきっかけに、勉強の取り組みが引き締まったものになるかもしれません。

 私学紹介イベントは、こうした考えもあって6年生の親子を対象に、6月という時期を選んで実施しています。前述のような事情から、出し物は堅苦しさのないものをメインに据え、子ども目線で楽しめるような内容を工夫しています。

 私学を紹介する以上、私学の先生や生徒さんを招いたほうがより親しみも湧きますし、学校の雰囲気や特徴をより理解しやすくなるでしょう。そこで、ご紹介する私学から、それぞれ先生1名、中学3年生3名(基本的に弊社の卒業生)にお越しいただいています。なぜ中3かというと、高校生では年が離れすぎているし、中1・中2ではまだ受験生が憧れるようなプレゼンが期待できないからです。

 参加校は、男子が広島学院、修道、城北、なぎさの4校、女子が清心、広島女学院、安田、なぎさの4校です。今年は、女子の部を午前に、男子の部を午後にして実施しました。

 ここ2~3年は、基本的に同じプログラム編成で行い、前年度までの反省点を踏まえて受験生が飽きずに楽しめる催しになるよう工夫を加えています。そのせいでしょうか。終了後のアンケートにはネガティブな反応は殆どなく、多くの受験生や保護者に喜んでいただける催しになったと思います。

 私学の先生がたも、「学校説明会と違って受験生が相手であり、子どもに分かる話が必要なのだ」と心得ておられ、楽しい話をテンポよくしてくださったことも、好評の要因だったと思います。

 さて、当日のプログラムですが、以下の通りです。

第1部:これであなたも私学博士!?

 ●映像による学校紹介

 ●参加型クイズ&トーク

~アトラクション~

 ●午前安田女子中学校バトン部

 ●午後広島学院ジャグレンジャー

第2部:私学で夢を叶えよう、がんばれ受験生!!

 ●制服紹介

 ●先輩からの受験アドバイス

 ●先輩のおすすめ勉強法

 ●先生からの受験アドバイス

 ●受験生への応援メッセージ

 開始にあたっては、弊社の全ての校舎の責任者がステージに立ち、リレーで受験生へのメッセージをお伝えしました。そして、いよいよプログラムにしたがってイベントが動き始めます。

 第1部のスタートは、「映像による学校紹介」です。映像の内容は、学校のたたずまい、登下校の様子、授業の様子、昼食の様子、クラブ活動の様子、体育祭や学園祭の様子、先生紹介などですが、ただ映像を流すのではなく、映像の流れに沿って各学校の生徒さんがナレーションをしてくださいます。この生徒さんのナレーションは、単に役割を果たすのというのではなく、受験を経験した先輩として後輩を激励する気持ちとともに、「わが校へぜひ来てください」というメッセージが含まれており、受験生や保護者の気持ちを惹きつけるものでした。

▲広島女学院の映像紹介 ▲広島女学院の映像紹介

 

▲修道の学校紹介 ▲修道の映像紹介

 

 第1部の後半は、「参加型クイズ&トーク」です。各学校にまつわるクイズを出題し、会場の受験生にグー・チョキ・パーの三択で答えてもらう形式ですが、クイズの問題は各私学の先生と相談して決定したユニークもので、答えを発表すると同時に歓声やため息が漏れる楽しいコーナーとなりました。おとうさんやおかあさんにも参加を呼びかけたところ、かなり多数のかたが応じてくださいました。

▲問題を映像で出題 ▲問題を映像で出題

 

▲参加型クイズならではの盛り上がり ▲参加型ならではの盛り上がり

 

クイズが終わると、いくつかのクイズの内容について私学の先生方が説明を加えてくださいました。この説明も、おとうさんやおかあさんより受験生を意識したもので、子どもたちは熱心に耳を傾けていました。なかには、このクイズを通して学校の特徴がよくわかるものもあり、おとうさんやおかあさんの反応も上々でした。

 これで前半のプログラムは終了ですが、休憩に入る前にアトラクションを楽しんでいただきました。アトラクションは、毎年各校のもち回りでクラブ活動の成果を披露してもらう内容となっています。今年は女子が安田女子中のバトン部のみなさんに、男子は広島学院のジャグレンジャーのみなさんにご協力をいただきました。

アトラクション1

▲いきいきとした演技で会場を魅了

アトラクション3 アトラクション2

▲素晴らしいジャグリングの腕前

 アトラクションは、一見イベントの内容とは無関係に見えるかもしれません。しかし、そうではありません。かつて受験を体験し、その学校へ入学した生徒さんたちがクラブ活動を通してすばらしい演技技術を身につけ、それを今から受験する後輩たちに見せることで、「あとに続いてきなさい!」と励ましているのです。

 また、ただ黙々と演技を見てもらうのではなく、部員がクラブを紹介したり、練習の様子を説明してくれたりします。そしてまた、受験を乗り越える元気を吹き込もうとしてくれます。それが子どもたちにとっては先輩へのあこがれの気持ちを引きだし、受験に向かうモチベーションを高めてくれるのです。

 アトラクションが終わると、会場に大きな拍手が響き渡りました。

 

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もって生まれた能力は変えられない?

2013 年 6 月 17 日 月曜日

 保護者面談をしているとき、「うちの子は、能力が足りないのでしょうか」と言われることがあります。また、お子さん自身も、「ボクは頭が悪いんだ」といったような発言をすることがあります。

 がんばっても結果が伴わないと、誰でも自分の能力に疑念が湧いてくるものです。おそらく、大概の人はそれに似た体験をしておられると思います。

 ただし、自分の能力を否定しても何のプラスにもなりません。そこで、「もう少しがんばってみよう」、「あきらめたら終わりだ」などと思い直し、再びがんばり始めます。こんなふうに、人間は自らを励ましながら目の前の壁を一つひとつ乗り越えていくのでしょう。

 ところで、勉強の成績は、頭の“でき”で決まるのでしょうか。専門家(東京大学で遺伝子を研究しておられる先生)の著書に参考になる記述がありましたので、ご紹介してみます(以下は、簡単に趣旨をまとめたものです)。

 勉強にせよ仕事にせよ、「どういう方法なら能率が上がるか」を知ることがまずは大事です。その自覚がないと、いつまでも要領の悪いやりかたしかできません。その人なりに覚えやすいやりかた、勉強法、仕事の方法があるのです。

 ただし、どのような方法にせよ、それなりに時間をかけて努力することは必要です。能率よく勉強や仕事ができる人は、そうなる以前に膨大な時間と労力を費やしています。そうした努力が下地になって、短時間でできるようになるのです。脳の働きから見れば、何度も何度もその複雑な回路をつなげることを繰り返すことで、最も効率のよいつながりかたを覚えていくからです。

 つまり、脳が省力化できる段階までもっていけば、効率のよい勉強や仕事ができるようになるのです。脳だって、最初はどうしても苦労するのです。

 生まれつき知能が高い人も、それを発揮できるようになるには努力が必要です。また、平均的な知能の人でも、努力すればかなりの能力を発揮できるようになります。一般社会レベルでの「頭がよい人」、「仕事ができる人と」というのは、もともとの能力にさほど違いはありません。努力の量にかなり比例していると言ってよいのではないかと思います。

 生まれつき頭がよい人というのは、ある能力が働きやすい遺伝子をもっていて、それに対して、ある能力が不得意な人は、それが働きにくい遺伝子をもっていると考えられます。しかし、働きにくい遺伝子をもっていたとしても、繰り返し努力することで、その遺伝子のスイッチがオンになって、働きやすくなります。

 ですから、自分の能力の得意不得意をきちんと自覚することが大切です。不得意だからと、その能力を訓練しなければ、決して遺伝子のスイッチはオンにならず、一生その能力は発揮できないままです。その一方、たとえ不得意な分野でも、努力や訓練次第で遺伝子をオンにできるのです。

 この先生は、「遺伝子のオン、オフを上手に切り替えられるかどうかは、勉強と環境が決めている。そのことを認識することが、『頭のいい人』になれる第一歩です」と述べておられます。

 お子さんの勉強に照らして考えてみましょう。算数の得意不得意は、ある程度生まれつきの能力が関与しています。しかし、努力や訓練しだいでは、だれでも「算数ができる子ども」と言われるレベルには到達できるのです。

 はじめはさっぱりわからなかった問題も、取り組みかたを工夫したり、繰り返し考え続けたりしているうちに、やがてわかるようになるのです。その算数課題を解き明かすためのシナプス回路が形成され、やがて電気が通るようになるからです。それが、スイッチオンの状態です。

 では、子ども一人ひとりに合ったやりかたは、どうやって見つけるのでしょうか。ここが難しいところですが、たとえば集中力がもたないタイプの子どもは、小刻みに休憩をとるのもよいかもしれません。遊んだ後のほうがやる気の出るタイプなら、短い遊びの時間とセットにして勉強の時間を設けるとよいかもしれません。取りかかりの悪い子どもなら、おかあさんが時間になったら声をかけてあげるのもよいかもしれません。遊び道具が気になるタイプの子どもなら、そういった類のものをきれいに片づけてから勉強するとよいかもしれません。何につけ積極性が足りない子どもなら、家の手伝いをさせてほめ、「役に立っている」という自覚と自信をもたせるのもよいかもしれません。

 いずれにしても、成果を引き出すための絶対条件は「努力の継続」です。ただし、子どもにただ「努力しなさい」と言ってうまくいくなら苦労はありません。子どもが「努力してみよう」と思うようになるまでが一苦労で、親の上手な働きかけが必要です。お子さんの現状が気になるおとうさんやおかあさんは、いろいろ試みてはいかがでしょうか。

 たとえば、ときどきおとうさんが、「一緒に算数の勉強をしてみよう」などともちかけてみてはどうでしょう。教えるのではなく、一緒に勉強するというスタイルで算数の話題をやりとりしながら、テキストの練習問題の考えかたについて意見交換をするのです。そういう時間をいっしょに過ごすことで、お子さんが「算数っておもしろいな」と感じるようになれば、勉強の取り組みが確実に変わってくることでしょう。そうなれば、スイッチがオンになるまでに時間はかかりません。

 繰り返し取り組めば、誰でも以前できなかったことができるようになる。それは、筆者自身が自ら体験していることです。

 筆者は広報の仕事をしていますが、入社前には人前でプレゼンをするなど思いもしませんでした。大勢の人を前にすると、緊張で胸がドキドキ高鳴り、足はふるえるような有様でした。しかし、仕事となればしかたありません。段々と場数を踏むにしたがって、「どうしたら熱心に聞いてもらえるか」を考えるゆとりももてるようになり、そのための勉強もするようになりました。そうして、気がつくと1~2時間程度なら何人を前にしても平気で話す人間になりました。経験と努力(と言うのもおこがましいですが・・・)が、脳の働きや適性をつくり変えたのでしょう。

 文章を書く仕事も同様です。書くことは、「きらいではないが、得意でもない」程度でしたが、チラシや案内書、保護者を対象とする催しの案内状や資料など、おびただしい量の文章を苦労しながら書いているうちに、その面白さに目覚め、それと同時に教育や心理学、脳科学系の本をたくさん読むようになりました。今ではこの仕事を天職と受け止め、毎日楽しくやらせていただいています。

 子どもの「苦手」の多くは、「食わず嫌いだ」と言われます。算数の面白さを知る体験が不足しているから、算数が得意になれないに過ぎないのです。つまり、脳に適性がないどころか、向いている可能性だってあるのです。まして、勉強や体験次第で如何様にも変われる年齢にあるのですから、「テストの成績が思わしくない」とか、「やりたがらない」といった理由でその方面の能力をあきらめるのは早計に過ぎる話です。

 子どもはまだ人生経験がわずかです。理屈よりも好き嫌いといった感覚的な要素に流され、その結果自分の能力を開発し損ねるおそれもあります。だからこそ、大人は子どもを励まし、もって生まれた才能が埋もれてしまわないようにしてあげたいものですね。

 少し長くなってしまいました。おとうさんおかあさんにおかれては、「脳は人生を通してつくりあげていくものだ」という観点に立ち、粘り強いサポートでお子さんの可能性開花に向けた努力を引き出してあげてください。

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夏期講座の受付を開始します

2013 年 6 月 10 日 月曜日

 本日(6月10日)より、夏期講座の受け付けを開始します。例年6月第1週の月曜日に受け付けを始めていますが、今年は第1月曜日が3日でした。時期的に少し早いと判断し、第2週の月曜からにしました。

 現会員のご家庭には、夏の講座の案内や資料等をお届けしています。日程等を御確認のうえ、期限内に手続きをしていただきますようお願いいたします。この手続き期限は、夏の講座のクラス編成や指導体制の準備などの必要性から設けたものです。もし、ご都合等で期限内の手続きが困難なご家庭がおありでしたら、お手数ですがその旨を通学校にご連絡いただきますようお願いいたします。

 4・5年生の「夏期講座」は、前期の学習に引き続いてカリキュラムを進行させていきます。ただし、平日はほぼ毎日通学しますので、通常よりも学ぶ内容は豊富です。また、毎日授業と家庭学習を反復させていくことにより、勉強の習慣やリズムを築いたりするうえで非常に有効な講座です。夏の講座でグンと学習状況が好転するお子さんがおられるのはそのためです。

 6年生の夏休み中の講座については、このブログで「第2回保護者説明会」のご紹介をした際にかなり詳しくお伝えしました。夏休みから、いよいよ実際の入試問題への挑戦が始まります。

 この夏休みからの通学を検討されているかたは、まずは校舎か本部事務局に資料をご請求ください。夏の講座の参加に必要な「案内」や「申込書」などの資料一式をお送りします。もし、通常講座の内容など、より詳しい情報をお求めの場合、お申し付けいただいたら「年間総合案内書」などの資料も合わせてお送りいたします。

 なお、チラシなどでもお伝えしていますが、塾通いを検討中の家庭が多い4年生に限り、「会員選抜試験」を受けなくても、お申し込みになればどなたにも夏の講座に参加いただける制度を設けています。親も子どもも決心がつかないご家庭は、「塾がどんなところか、わが子に体験させてみよう」「受験勉強になじめるかどうか、ついていけるかどうか試しに通ってみよう」といったように、“お試し”的に参加してみてはいかがでしょうか。もしもお子さんの反応がよいようなら、引き続き秋からも通っていただければと思います。夏期講座では、「実力判定テスト」を行いますが、一定の成績をあげられた場合、秋の講座からの会員資格を提供する制度もあります。

 塾選びにあたっては、ウェブや資料などで情報を入手するだけでなく、塾の指導担当者から直接話を聞くのも有効です。弊社では夏の講座の募集にあたり、各校舎とも「入会ガイダンス」という呼称の説明会を実施しています(呉校のみ、申込制で個別対応の催しを実施)。この催しは各校舎長が担当します。ご質問も遠慮なく。今夏の実施日程は以下の通りです。

2013夏期「入会ガイダンス」実施日程

校舎

1回実施日時

第2回実施日時

三篠校

6月22日(土)15:00~16:10

6月28日(金)14:00~15:10

※日時を変更しました。

己斐校

6月14日(金)10:30~11:40

6月26日(水)10:30~11:40

広島校

6月14日(金)14:00~15:10

6月29日(土)14:00~15:10

五日市校

6月18日(火)14:00~15:10

6月27日(木)14:00~15:10

東広島校

6月15日(土)13:30~14:40

6月29日(土)13:30~14:40

 

 前述のように、呉校のみ個別対応型の催しをしています。「中学受験ガイダンス」という呼称の催しで、呉校の校舎長が個別でご質問やご相談に対応します。

 さて、今回の記事は事務的な内容に終始してしまいました。そこで、最後に夏の講座の重要性についてお伝えしておこうと思います。

 夏休みは、子どもが大きく変わる可能性をもった特別な休暇です。なぜ子どもが変わるのか。ここで言う「変わる」は、概ね「成長を遂げる」という意味ですが、逆の可能性もあります。約40日間にも及ぶ長い休暇ですから、よきに悪しきにその過ごしかた一つで子どもの生活スタイルやものごとへの取り組みが一変してしまうのです。

 ある年、後期講座の開始直前に筆者のところへ親子で訪ねてこられた家庭がありました。応対に出てみると、お子さんが泣いています。どうしたのかと思ったら、夏休みに友だちと遊んでいるうちに、勉強をするのがイヤになったようでした。おかあさんに、「先生、『もう塾へ行かない』と息子が言いだしたんです。何とか説得してください」と懇願されました。

 このお子さんは、夏期講座に参加している期間はソコソコがんばっていたのですが、講座のない時期にすっかり勉強を投げ出してしまい、友だちとの遊びに毎日時間を費やしたのがまずかったようです。

 夏休みに入る前に、必ず親子で40日間の行動計画を立てましょう。夏休みの講習期間は、「授業」と「家庭学習」をリズムよく連動させていけば、必ずどのお子さんにも一定の収穫があります。問題は講座のない日、講座のない期間の過ごしかたです。朝の早起き→ラジオ体操→涼しい時間帯の自習といったように、学習成果のあがるよい流れをぜひ頭に置いて計画を立ててください。ここが大変大切なポイントです。

 受験する意志のしっかりとしたお子さんの場合、先ほどのお子さんとは逆に、学力面で進境を見せる例がたくさんあります。以前このブログに書いたことがありますが、6年生から受験勉強を始めたお子さんが、「遅れを取り戻さなきゃ」と、常に自分を励ましながらがんばり続け、夏休みを境に一気に頭角を現してきたことがあります。最終的には、全体のトップに近いところにまで漕ぎつけました。そして、入試では受験校の全てに受かりました。

 学習のメニューや難度のステップアップ戦略についてはお任せください。進学塾としての40数年のノウハウがあります。勉強時間はそれほど変わりがないのに、成果に雲泥の差が生じることがあります。その理由の多くは、子どもの勉強への向き合いかたです。それをよくする可能性も悪くする可能性も一番高いのが、この長い夏休みなのです。

 とは言え、遊びたい盛りの年齢で、身体の発達の著しい時期の子どもたちですから、体を動かすスポーツや遊びの時間も重要です。1日のスケジュールをメリハリのあるものにし、うまく気持ちを切り替えながら勉強できるよう配慮してあげてください。バランスのとれた行動計画は、やはり親のアドバイスがあってこそできあがるものです。お子さんの言葉にも耳を傾けながら、一緒に考えてあげてください。

 小学校の4~6年生の子どもは、生意気を言ったり反抗したりすることもありますが、基本的に親を信頼し親を頼って生きています。まだまだ親の影響力が絶大な時期なのです。お子さんの言い分をよく受け止めながらアドバイスをすれば、大概は親の考えに沿った行動をしてくれるものです。頭ごなしに命令せず、「一緒に考えよう!」を合い言葉にしましょう。そうやって行動の計画を立てたなら、お子さんにとっては押しつけられた計画ではなく、自分で立てた計画です。実行に移そうとがんばるに相違ありません。

 夏休みが始まったら、毎日さりげなく見守り、タイミングよくほめたり励ましたりを継続しましょう。お子さんが、この夏をがんばり通したなら、素晴らしい収穫を手にすることができます。

 今年の夏が、お子さんにとって素晴らしい“成長の夏”になりますように!

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