テストの効能に関する新たな知見

2013 年 9 月 9 日

 会員保護者には周知のことですが、弊社の会員生(4・5・6年生)は、1週おきに「マナビーテスト」という単元テストを受けています。その子どもたちに、「テストをどう思う?」と聞いてみたとしましょう。どういう答えが返ってくるでしょうか。

 おそらく、子どもたちは「楽しみだ」と「イヤだ」が相半ばの反応を示すのではないかと思います。弊社の教室に通う子どもたちは、中学受験をめざしています。一般の小学生よりはずっと勉強のできる子どもたちです。テストに備えた勉強をほぼ毎日していますから、「つぎはよい成績をとりたい!」という意気込みをもって勉強しているのが普通です。

 では、なぜ「イヤだ」と思う子どもがいるのでしょう。それは、塾での成績が絶対評価だけではなく、相対評価でも示されることに起因するのではないかと思います。つまり、点数だけでなく、集団内での順位が成果の指標になります。しかも集団は、勉強のできる子どもで構成されています。

 ですから、頑張っても成績が上がるとは限りません。逆に成績が落ちることも少なくありません。そういう状態が続くと自信も揺らぎますし、「テストがイヤだ」という受け身の気持ちにもなるでしょう(こうした事態に対する親のケアについても、このブログで何度か書いています)。

 テストを上手に活かした勉強については、今年の3月25日に掲載した「テスト成績をどうとらえるか」を参照いただければ幸いです。

 さて、前置きが長くなりましたが、今回は「テストの効能」を話題に採り上げてみました。一般に、テストは、「今の学力状態をチェックするもの」「わかっていること、わかっていないことを明確にするためのもの」「努力の成果をみるためのもの」などと思われていると思います。ところが、割と最近になって、テストの意外な効能が指摘され、注目を集めているようです。その内容を知ると、これがまたごく当たり前のことなので、筆者は「今までなぜ気づかなかったのだろう」と思ったほどです。

 勿体をつけてしまいました。そのテストの効能とは、「学習した内容を長期記憶として脳に定着させる」ということです。これはアメリカの学者の研究によって発表されたもので、おおよその内容は以下の通りです(日本の大学の先生の著作から引用させていただきました)。

 

 大学生にテキストを7分かけて読ませた。その後で大学生は2群に分けられ、一方の大学生は再び7分かけてテキストを読み直した。もう一方の大学生は、テキストの内容を思い出して書き出すというテストに7分間取り組んだ。その後で最終テストを実施したところ、7分間の復習をした群よりも内容を思い出して書き出すテストに取り組んだ群のほうが、成績がよかったのである。復習やテストから最終テストまで2~7日の日数が空いている場合に、この効果は特に顕著だった。すなわちテストにより学習内容の長期記憶化が促進されたのである。

ブログ用グラフ(20130829)

 

 なぜテストに記憶を促進する効果があるのでしょうか。記憶しているかどうかを試すのがテストのはずです。それについて、この研究結果を紹介している日本の大学の先生は、「前に一度読んだテキストをもう一度読むよりは、思い出そうとするほうが、多くの心的エネルギーを要する。これがテキストの学習を促進したと考えることができる。あるいは、人が長期記憶に覚えている内容は、常にスムーズに思い出せるわけではない。テストを経験することで、知識を思い出す練習になったと考えることができる」と述べておられます。

 確かに、テストを受けたことのある人は合点がいくでしょうが、テストの最中は大変な集中力を発揮し、既習事項で今問われていることに関する情報を記憶から引き出そうとします。ご存知かと思いますが、学習や体験によって得られた情報は、すべて脳の奥深くにある海馬と呼ばれる部位に送られます。 

 海馬は、刺激として強い情報を重要と認識し、長期記憶として加工します。ですから、テストによって経験済みの情報を頭に想起させ、改めて重要であることを確認させる効果を引きだしたということであろうと思います。

 弊社では、一つの単元を基本的に2週間かけて学びます。2週間、授業と家庭勉強を交互に繰り返し、そして2週目の週末土曜日にテストを実施しています。このテストは、2週間の学習成果を確かめるとともに、全員で競い合う形式になっています。ですが、このテストを通して、学んだことのなかで重要な内容を想起することで、長期記憶として定着させていたのですね。

 さて、前出の日本の大学の先生は、日本の児童・生徒がテストをどのようなものと捉えているか(テスト観)について、4つの代表的な例を紹介しておられました。その4つは以下の通りです。

 

1.改善的テスト観・・・テストは、自分の苦手なところを指摘してくれるものだ。

2.誘導的テスト観・・・テストは、学習計画を立てるのに役立つものだ。

3.強制的テスト観・・・テストは、勉強を強制してやらせるためのものだ。

4.比較的テスト観・・・テストは、勉強のできる人とそうでない人を分けるためのものだ。

 

 この4つのなかで、どれが子どもの学力形成にとって望ましいでしょうか。お気づきと思いますが、1と2が望ましいと言えます。1のような考えに立った子どもは、自分の弱点を確認し、それを補うための努力をするでしょう。また、2のテスト観に立った子どもは、テストに備え、見通しをもった対策を怠らないでしょう。一方、3や4のテスト観に立つと、勉強やテストに対してネガティブな受け止めかたが染みつくおそれがあります。

 中学受験をするかどうかに関わらず、子どもたちはテストと無関係ではありません。改善的テスト観や誘導的テスト観に立った学びをすれば、勉強に手応えが生まれ、ますます頑張ろうという意欲も育つでしょう。

 たとえば、次のような意識のもとで勉強をしていけば、望ましいテスト観は次第に浸透していくでしょう。テストの前にやるべきことは何か。いつまでに何をやっておくべきか。それを念頭に計画的に学ぶ。テストの結果がわかったら、理解の不十分なところはどこかを確かめる。そして、そこをしっかりやり直す。

 テストを軸にして、このような学習の流れができたらいいですね。このような意識をもって学ぶことを、ぜひ子どもたちに浸透させたいものです。


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