ほめた方が上がる? 叱ったほうが上がる?

2013 年 9 月 16 日

 さて、“上がる”とは何が上がるのでしょうか?そう、お察しのとおり子どもの成績です。今回の話題は、「子どもの成績は、ほめられたときのほうが上がるのか、それとも叱られたときのほうが上がるのか」を話題にしてみました。これをお読みのかたは、どう思われるでしょうか。

 筆者は、まず自分の経験に基づいて考えてみました。基本的にはほめられたほうが意欲につながり、以後の勉強を活性化させるので成績も上がると思います。しかし、なかには「叱られたほうが発憤する」というタイプの子どももいます。弊社の会員児童へのアンケートにおいても、そう答える子どもが一定数いました。ですから、一概に決められない面もあります。

 無論、叱ったほうが成績向上につながるという結論が出たとしても、頑張らせようと意図的に叱るのも考えものです。ですから、あくまで子どもに及ぼす心理的影響と、以後の学習の取り組みの変化といった側面で考えてみてください。

 これからが本題です。以後にご紹介する話は、ずいぶん前に外国で行われた心理学の実験とその結果です。ただし、日本の大学の先生が「モチベーションの変化」について書かれた著作で紹介しておられたもので、いわゆる“孫引き”の資料です。その実験は、ほぼ1世紀前に行われたものだそうです。これには驚きました。

 実験は、小学校の4年生と6年生を集めて行われました。全員に5日間テストを実施したのですが、1日目にまず算数のテストを受けさせ、そのテスト結果から成績、年齢、男女比がうまく均等になるようにして4つのグループをつくりました。4つのグループは、称賛グループ、叱責グループ、放任グループ、統制グループ(後述)です。

 称賛グループ 称賛グループとは、文字通りほめてその反応をみるためのグループです。このグループの子どもたちには、2~5日目のテスト前に、教室で実験者が一人ずつ名前を呼び、その都度前回のテストの結果がよかったことを告げ、全員の前でほめ称えました。そして、次も頑張るように激励しました。

叱責グループ  叱責グループとは、叱ってその反応を確かめるためのグループです。このグループの子どもには、実験者が称賛グループの後で同じように一人ずつ名前を呼び、全員の前で前回のテストの結果がよくなかったこと、ミスが多かったことを告げ、厳しく叱りました。

放任グループ  放任グループとは、称賛グループや叱責グループと同じ教室にいるものの、二つのグループへの実験者の対応を見ているだけで、何も言葉かけをされなかったグループです。

 最後の統制グループとは、先にご紹介した3グループとは別の教室に入れられ、何の情報も与えられずにただテストを受けただ統制グループけのグループです。実験をする際、何もしなかった場合のデータを取り、実験で得られたデータと比較照合するために用意されたグループです。放任グループと違うのは、同じ教室に入れられず、他の子どもがほめられたり、叱られたりする様子を全く見ていなかった点です。

 さて、4つのグループの結果はどうなったでしょうか。

 

4つのグループの算数テスト成績推移

  1日目 2日目 3日目 4日目 5日目
称賛グループ 11.81 16.59 18.85 18.81 20.22
叱責グループ 11.85 16.59 14.30 13.26 14.49
放任グループ 11.84 14.19 13.30 12.92 12.38
統制グループ 11.81 12.34 11.65 10.59 11.38

 

 結果を見てみましょう。まず称賛グループから。テスト成績は、回を追うごとに向上しています。そして、最終回の成績は、他のグループを圧倒しています。

 叱責グループはどうでしょう。2回目は成績が上がりました。成績は称賛グループと全く同じです。ところが、その後がいけません。3回目以後は段々右下がりになっていき、最終回は称賛グループに大差をつけられてしまいました。叱られることは、1回に限っては凄くインパクトがあり、子どもの目を覚まさせるのですね。しかし、繰り返し叱られると嫌気がさしたり慣れたりしてしまいます。つまり、その場しのぎの効果は得られるが、継続的にモチベーションを引き上げる効果は得られません。

 3つめの放任グループは、2回目こそ少し成績を上げましたが、後は右下がりに終わってしまいました。推移の様子は叱責グループに似ていますが、常に叱責グループよりも成績は下回っています。これは何を意味するのでしょう。他の子どもがほめられたり叱られたりしている様子を見て、「自分も頑張らねば」と多少の刺激は受けたのでしょう。しかし、自分に関心をもってくれる人がいないことは、やる気にダメージを与えるのか、がんばりが利かず失速してしまいました。

 最後の統制グループですが、このグループが2回目以降のテストで常にいちばん成績が振るいませんでした。何も指標とするための情報がなく、しかもほめられることも叱られることもない状態が、いかに人間にとって辛いことかを教えられるような気がしますね。

 この実験は心理学に関わる人にとってはお馴染みで、長く伝えられているものだそうです。そして、「ほめることの大切さ」についての根拠として様々な形で活かされてきました。ほめられると子どもは元気が出ます。また、「頑張ったらうまく行くだろう」という希望のある予測を立てることができます。わが子を頑張らせるには、「ほめる」ということが基本になるのは疑いのないことのように思います。

 ただし、ほめれば必ず効果があるわけではありません。よいほめかたもあれば悪いほめかたもあります。そのことは、このブログで既に書いています。また、今回の記事を書く際に参考にした書物の著者(大学の先生)も、「ほめられたらかえってモチベーションが下がることがある」と指摘しておられます。近いうちに、その内容をご紹介してみようと思います。

 


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