2013 年 12 月 のアーカイブ

2013年の終わりに

2013 年 12 月 30 日 月曜日

 子どもの1日は長いと言われます。人生経験が少なく、日々の体験を通じて新しい刺激をたっぷりと吸収するからでしょう。いっぽう、大人は毎日やるべきことがいろいろあり、スケジュールに追われて時間を過ごしています。日々の体験を新鮮な気持ちで受容するゆとりはなく、あれやこれやと七転八倒している間に1日が終わってしまいます。

 これを1年間というスパンでとらえても同じことが言えるでしょう。子どもにとっての1年はとてつもなく長い時間ですが、われわれ大人にとっては1年などあっという間であり、「ああ、気がつけばまた一つ年をとったのだなあ」と思うことの繰り返しです。まさに“光陰矢のごとし”です。

 ただし、最近の子どもは毎日やることが多いようで、時間に追われるように感じるという点では大人とそんなに違わなくなっているのかもしれません。

 今年ももはや残り二日となりました。世の中の動向は慌ただしく、この先どうなるのかという不安を抱く人も少なくありません。新聞を見ても、消費税の増税問題、原発の再稼働の動き、集団的自衛権の問題、特定秘密法案の国会通過、普天間飛行場の移設、中国や韓国など隣接国とのきしみなど、国としての大きな問題やわれわれ国民の生活に深く関わる様々な問題が、毎日誌面から消えることはありません。来年こそは、未来に希望のもてるよいニュースがたくさん聞ける年にしたいものですね。

 さて、今年の7月に「本ブログのビュー数が45万件に達しました」とご報告いたしましたが、あれからさらに8万あまりの閲覧があり、53万ビューを超えました。ブログ開設時には思ってもみなかったことです。20131230_a進学塾のブログなのに、主として子育てに焦点を合わせた記事を書いており、それが予想外の大きな反応をいただいた原因かもしれません。実際、子どもの「自立」「やる気(意欲)」「自信」といったテーマを掲げている記事が、最も多く読まれています。

 なぜ子育てに関わる記事をメインに据えているのかと言いますと、「小学生の受験には、子育ての視点が不可欠だ」という意識があるからです。中学受験は12歳の子どもの受験です。受験準備のための学習は平均して2年あまり。弊社では、ゆとりをもった受験対策をという意図で4年生からの3年間で受験対策を行っています。

 この受験準備にあたる9~12歳という年齢期は、人間としての特性が定まっていく段階にあります。どのような学力観に基づき、どのような受験勉強をするか、どのような受験生活を送るかが、以後の学力形成のみならず、人生の歩みに多大な影響を及ぼします。そのことの重要性を思うと、「受かるためならどんな方法でもよい」という気持ちには到底なれません。

 一部の資質面で突出したお子さんなら、それこそどんな受験対策であろうと順応してやりこなせるでしょう。たくさんの難問を目の前にすると、闘志ややる気がどんどん湧いてきて、片っ端から克服していけるお子さんもいます。

 しかしながら、大多数のお子さんにとって受験勉強は相当な負担です。方法を間違えると、勉強に対する受け止めかたや、勉強に向かう姿勢が歪んでしまうおそれもあるでしょう。本ブログに興味をもってくださった保護者の方々には、「受験に至るプロセスこそ、子どもの人間形成を左右する重要なものなのだ」という認識のもと、毎日の取り組みを通してお子さんが成長していけるようご配慮をお願いいたします。

 子どもが大きな目標をもち、親がそれを応援して見守る。この経験は、子どもにとっても親にとってもかけがえのないものです。子どもにも、親にも楽しいことよりも辛いことのほうがたくさんある生活になりがちですが、悩みながら共に苦労することで、子どものなかに親を信頼し尊敬する気持ちが育ちます。親が一貫した姿勢で優しく厳しく激励すれば、それはお子さんの人間形成に多くのよい影響をもたらすことでしょう。

20131230_b

 まだまだ心もとない点の多い小学生ですから、親にはもどかしい思いが絶えずつきまといます。しかし、「どうすればわが子の奮起と実行を引き出せるか」を考え、様々な働きかけに腐心することの繰り返しが重要なのです。それによって、子どもの“自立”という子育ての一大テーマを成就することができるのですから。

 今年は、「絆」という言葉を随分耳にしましたが、お子さんの中学受験を介して親子の絆が深まれば、それこそ受験の結果以上の大きな収穫ではないでしょうか。だいいち、この収穫さえ手に入れれば、お子さんの人生の歩みも自ずと見通しが立ってくるでしょう。

 なお、合格に向けた作戦は、私たち学習塾(進学塾)が必死で研究して取り組むべき重要なテーマです。家庭学習研究社は、昭和42年の創設以来、「小学生が無理なく取り組める勉強で、いかにして進学の希望を叶えるか」ということに照準を合わせて活動しています。今後とも、そのことに全力で取り組んで参りますので、ご理解ご支援の程よろしくお願い申し上げます。

 それではよい年をお迎えください。

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カテゴリー: ごあいさつ, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念

サンタクロース追跡作戦

2013 年 12 月 24 日 火曜日

 みなさんに質問です!

20131216ブログ_1.3

 この質問は、ある会社が実施した宅配サービスに関する意識調査です。みなさんは、どれを選ばれたでしょうか?

 なぜこの質問を取り上げたかといいますと、お気づきかと思いますが、今日がクリスマス・イブだからです。ちなみにこの調査は、実際には実在する13項目の宅配サービスの中から選んでもらうという調査だったのですが、その結果は、

20131216ブログ_2

 日常の手助けとなる「家事代行サービス」が第一位でした。そして、「サンタクロース」は第五位でした。(㈱アイシェア調査より)

 サンタクロースは、アニメのキャラクターたちとは異なり、1年中、街にありふれているわけではありません。それなのに、日本中、世界中の多くの大人・子どもたちに親しまれ、楽しみの1つとなっています。子どもたちは、プレゼントを心待ちにし、おかあさん・おとうさんは、サンタクロースに扮して、喜ばす側かもしれません。多くの人が一緒になって、時を共有し、心を通わす素敵なイベントです。

 ここで1つサンタクロースにまつわる素敵なお話をご紹介いたします。

 1954年のクリスマスイブ。ここは、アメリカの北米防空司令部の管制室です。アメリカ・カナダの上空を監視するための施設。もしも、レーダーに不振な光点が現れたなら、直ちに戦闘機を発進させて迎え撃つ、物騒な任務を担当しているのです。

 さて、その夜の担当司令官は、ハーリー・シャープ大佐。静かな管理室の電話が、突如鳴り響きました。緊急のホットラインの電話が鳴っています。

「大統領からか!? それとも将軍から!?」

シャープ大佐は、はじかれたように受話器を掴むと、なんと電話の相手は子どもでした。

すると、その子はこう言いました。

「あの~サンタさんはどこにいるか、おしえてほしいの」

 実は、地元の百貨店の新聞広告に記載された「サンタさんホットライン」の電話番号が間違っていたのです。その間違った電話番号こそ、北米防空司令部の番号だったのです。

 シャープ大佐は、思いもよらない“緊急事態”に頭を悩ませました。けれど、大佐はこの“任務”の重要性を直ちに理解し、管制官たちに告げました。

 「管制官全員へ。北極上空のサンタクロースを追尾せよ。」

 そして、管制官たちは、一人、また一人と

 「了解!」

 とにっこりうなずきました。

 こうして、そのイブの夜、司令官と管制官たちは次々と電話をかけてくる子どもたちに

 「今、サンタはロッキー山脈のロブソン山を通過中だよ」

 などと伝え続けました。

20131224_santa

 このサンタ作戦は、「ノーラッド・サンタ・トラッカー」と命名され、クリスマスの特別任務として、今も行われています。今年も、特設サイトが設けられ、WEBでサンタの居どころを確認することができます。もちろん、電話での問い合わせにも応じてくれます。特設サイトは日本語表示もできますので、ぜひお子さんと開いてみてください。

ノーラッド・サンタ・トラッカーHP:http://www.noradsanta.org/

 merry_christmas1つの新聞広告から始まった「サンタ作戦」。子どもに夢を与えてくれる素敵な作戦です。いつかは、「サンタクロースはいないんだ」と幼いお子さんも思う日がくるかもしれません。けれど、大人になったとき、「サンタクロース、信じてたんだよな」「これもらったな」そんな心に刻まれた思い出は、心の奥にずっと残ります。楽しかった思い出、嬉しかった思い出、そんな心を揺さぶられる様々な思い出が、子どもを成長させます。

 ぜひ、子どもたちだけでなく、ご家族みなさんの思い出に残る“特別な日”となりますように心より願っています。

<参考>
アイシェア 「ユニーク宅配サービスランキング~求められているのはどんな宅配サービス?」

(yasumoto)

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カテゴリー: 子育てについて, 家庭での教育

勉強と成果の関係を読み解く

2013 年 12 月 16 日 月曜日

 もうじき2013年も終わります。受験をめざしている6年生のお子さんは、あと1カ月あまりで入試に臨むことになります。今からの毎日を最大限に活かし、悔いの残らぬよう最後の調整をしていただきたいですね。

 どのお子さんも、本音を言えば“不安”と闘っています。どんなにできるお子さんだって小学生の子どもです。大人でも何かの試験となると緊張を強いられるのですから、不安と無縁の中学受験生などいるはずがありません。

 もうすでに落ち着かない気分に襲われ、「落っこちたらどうしよう」などと無用の心配に振り回されているお子さんはいませんか?そんなお子さんには、「無駄なことを心配してもしかたがない。今やるべきことを最後まで大切にしていこう!」と、励ましてあげてください。おとうさんおかあさんには、そういったメンタル面の配慮が重要な時期です。

 間もなく「冬期講座」が始まります。冬期講座では、重要事項の最終点検を行いますが、受験生にとってもっと大きな意味をもつ講座です。それは、仲間と一緒に入試への最後の備えをすることで、「みんなで受験するんだ!」という意識が生まれ、平常心のもとで受験に向かう態勢が整ってくるということです。

 保護者の方々におかれては、これまで以上に気遣いの多い毎日となりますが、お子さんが心身ともに最高のコンディションで入試を迎えられるよう、サポートをよろしくお願いいたします。

 さて、今回の記事は「勉強と成果の関係」について書いてみようと思います。誰でも勉強したら、それがすぐに学力の向上につながり、テストの成績が上がっていくことを期待します。しかし、現実はどうでしょう。おそらく、そんなうれしい体験をしたお子さんは少ないのではないでしょうか。

 大学で教職課程の講義をしておられる先生の著作に、おもしろいことが書いてありました。勉強って、やればできると思ったら大間違いで、「やっても、やってもできないのが勉強だ」というのです。しかし、それでもへこたれずにやっているうちに、ある日突然のごとくできるようになるというのです。では、そのあたりの記述をちょっとご紹介してみましょう。

 勉強は、突然できるようになります。それは、昨日まで乗れなかった自転車に乗れるようなものです。それを私は「湯船の法則」と呼んでいます。(中略)

 私が中学生の頃は、湯船を洗い、水を張り沸かすというのが日常的な風呂でした。親に言われて、湯船を洗い、栓をして水を貯める。ところが、じっと見ているときはなかなか貯まらないくせに、テレビなんかを見ているとあっという間に貯まってしまい、溢れて親に怒られるということがあったんですね。

 20131216_grafこれと勉強とのどこが似ているかということですが、実に似ているのです。入れている水は勉強の量だと思ってください。入れていることを意識しているときには、なかなか貯まらないように、勉強していると思い続けているときは、力はつかない。ところが、勉強しているという意識がないくらいに自然に勉強を続けていると、突然分かるのです。できるのです。溢れる瞬間を感じることができるのです。

 では、いったい何時その溢れる瞬間を感じとることができるのでしょうか。きみたちが興味をもつのは、この溢れる瞬間でしょう。私の答えは、「分からない」というものです。「そんな無責任な!」と言われても、これははっきりと「分からない」という以外ありません。

 なぜでしょうか。主な理由を3つあげます。

一、流す水の量がわからない。
二、もともと湯船にどのくらい水が貯まっているか分からない。
三、湯船の大きさが分からない。

 一に関して言えば、あなたがどのくらいの時間と質で勉強しているのかが分からないということです。ですが、質の高い多くの勉強をすれば、早く溢れます。

 二に関して言えば、私立中学受験をめざしてがんばってきていた人、定期考査の前だけがんばっている人、クラブを引退してからがんばろうと思っている人といろいろいるわけで、いままでどれくらいの学力が貯まっているか分かりません。ですが、予め多く貯まっていれば、早く溢れます。

 三に関して言えば、あなたの器の大きさが分からないということです。器が大きければ、入れても入れても溢れません。入れる時間がかかる大きな器のことを、「大器晩成」というのです。しかし、中には水を入れ続けることをしないでいて、「時間がかかるな、オレは大器晩成だ」と言う人がいますから注意してください。

 どうでしょう。「人を煙に巻くような話だ」と思われたでしょうか。とは言え、「なるほど」と思う人も多いのではないでしょうか。

 流す水の量は、「正しい勉強法を身につけ、計画的に取り組み、決めた時間は集中して取り組む」ということを繰り返せば、自ずと増えるでしょう。一見成果は上がっていないように見えても、実際には少しずつ着実に力はついているのです。ですから、やがては必ず成果が閾値(いきち)に達して表面化します。目先の成果に振り回されず、着実に努力を積み重ねていれば、必ず湯船に水が溢れるときが来るのです。

 もともと湯船にどれくらい水が貯まっているかわからないという問題について。弊社の会員の話ですが、4年生、5年生のころはそこそこよい成績を取っていたお子さんで、6年生になってから成績が振るわなくなる例が結構あります。これは勉強の内容が難しくなり、それまでのように何となく勉強するだけではやりこなせなくなるからだと思います。楽しいばかりだった塾通いが、いつの間にか辛くなり、苦しむお子さんも出てきます。ところが、そういうお子さんの入試結果が意外とよいのです。

 それは、基礎が身についていたからであろうと思います。6年生になって入試レベルの勉強をしていると、「わからない」と壁を感じたとしても、実は基礎はしっかりとしているので、「あと少し」のところまできていたのです。つまり、水の量はかなり入っていたのです。弊社では、4・5年生の基礎力養成期でゆっくりじっくり土台を固めていきます。そのときには、水が貯まっていっているのだという実感が得られないかも知れませんが、実は水が着実に貯まっていっているのです。

 湯船の大きさは、誰にも分からないものです。また、分かるはずもありません。人間の脳は学習によって変貌します。何かの課題を「理解したい」と思って努力を繰り返せば、それが新しいシナプス回路の形成につながり、やがてその種の課題を解決するための思考の仕組みが整っていきます。それが絶え間なく繰り返されていくことで、はじめは思いもよらなかったことが分かるようになったり、できるようになったりするのです。資質面よりも、そうした学びが人間の器を大きくするのだと思います。20131216_a

 いつ水が溢れるか分からない。それが途中の挫折を招くことになりがちですが、それを乗り越えることですばらしい成果が得られるのです。このような経験をした人間は、生涯学びの人生を送ることができます。「やがて湯船の溢れるときがきっと来る」――そう信じて、コツコツ学び続けるよう、是非お子さんを励ましてあげてください。小学生のものごとへの取り組みは、親の働きかけ次第で決まります。自分という器を大きくするための努力を奨励することこそ、小学生をもつ親の重要な務めであろうと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 勉強について, 子どもの発達, 家庭での教育

国語力が人生の鍵を握る?

2013 年 12 月 9 日 月曜日

 ある日、手元にある本を何となく手にとっていると、「人生の成功率は国語力に比例する」といったようなくだりが目に入ってきました。

 これは、だいぶ前にアメリカで行われた大がかりな調査の結果を紹介するものでした。ちょっとご紹介してみましょう。なにしろ、35万人以上に及ぶ大変な数の人たちにテストを実施した結果の結論だというのです。さすがアメリカはやることのスケールが違いますね。

1.多くの言葉の意味を正確に知っていることが、他のどんな特性よりも社会生活における成功の原因である。
2.それぞれの職場での地位と上下と収入の多少の割合は、ほとんどその人の国語力に正比例している。
3.国語力と学校の成績、すなわち、学力とはほとんど正比例する。

 筆者は、小学校、中学校、高校と、国語がいちばん得意でした。しかしながら、この結論に当てはまるような人生を送っているとは言い難い現状です。「ほんとかな」などと考えていて、ふと気づいたことがあります。「ここで言う国語力の尺度は、日本人の多くが連想する“読解力”重視のテストによるものとは、だいぶ異なるのではないか」ということです。

 1209_aたとえば、アメリカでは小学校入学前から小学4年生にかけて、“ショー・アンド・テル”と言われる話しかたの教育が行われています。幼稚園でこうした教育の時間が週1回あり、「自分の大好きなものを家からもってきて、それについてみんなの前で説明する」といったようなことを子どもたちがしているそうです。これは、“プレゼンテーション能力”の育成を意図したものでしょう。こうした能力も、この国語力に含まれているのかもしれません。

 そういえば、以前イタリア語の同時通訳者のかたに、メールで学力をつけるための要件としてどんなことがあるかお尋ねする機会がありました。そのとき、音読・朗読の重要性を指摘され、「イタリアでは、試験も口頭で行われます」と述べておられたことを思い出します。これも、話す力(プレゼン力)、聞く力が、学力(知的能力)と深いつながりをもつという考えに基づく指摘だったのでしょう。

 1209_bご存知のように、国語力は“読む”“書く”“聞く”“話す”という4つの要素が軸になっています。日本の教育においては、このうちの“読む”に大きな比重が置かれています。近年は、“プレゼン力”を育てる教育を謳う学校が増えていますが、このような力も含め、上記の4つの要素をバランスよく携えることが今日の国際化社会では必須になるのではないかと思います。

 とまあ、ここまで書いたようなことを頭に思い描いたものの、話が発展しそうにないので書くのをやめてしまいました。ところが、そのあと読んだ本に、読むことに傾倒するのを戒める著述があったので、それにやや触発され、続きを書こうとパソコンのキー・ボードを叩くことになりました。

 その本には、次のようなことが書かれていました。お書きになったのは有名な言語学者です。

 聡明とは、耳がよくきこえ目がよく見えるという意から判断力が優れていることをあらわすことばだが、目より耳をさきにしているのがおもしろい。ふつう人が頭のよいのは目がよくものを読み解くからのように考えている。耳などたいしたことはないとぼんやり考える。学問は目でするものと決めてしまって、耳で得た知識を耳学問などとおとしめる。賢者は明によってすぐれているときめてしまっているけれども、聡明は耳の賢さを目の賢さよりも上にしているのである。古人の直観である。

 この学者は、「大昔より日本では中国大陸から優れた文物を採り入れて文化を発達させてきたが、わけても中国の典籍(書物)を読むことが最も重要な勉強だった」と述べておられます。それはみなさんもよく知っておられることと思います。そうした経緯から、長らく日本では読むことが勉強の中心となり、会話の力が省みられないまま今日に至ったようです。「したがって、ことばの基本は音声である、などということは誰も考えなかったようで、鎖国が解けて欧米文化が導入されるようになった明治以降も、ことばは音声のことばで、文字はそれを記録する手段であるという言語学の“いろは”をはっきりと知る人はほとんどいなかった」というのです。

 このような流れもあり、かつて小学校教員養成のために設立された師範学校においても、“読み”“書き”は重視されたものの、“会話”はほとんど目を向けられなかったようです。第二次大戦後、アメリカのGHQがこうした状況に驚き、前述の4つの要素を並行して伸ばす国語教育をするように指示したそうです。しかし、すぐに元の木阿弥に戻ってしまったのです。以上は、前述の言語学者の著述に基づくものです。

 読む力重視の国語教育は今も変わりません。それでいて、日本の子どもの読解力の低下が近年しきりに喧伝されています。特に2003年にOECDが行った国際学力到達度調査(PISA)で、日本の子どもの読解力が14位に落ち込んだときには、「PISAショック」と騒がれたのは記憶に新しいところです。先日、2012年の同じ調査で、日本の子どもの読解力が前回(2009年実施)より順位を一つあげ、65カ国(地域)中の4位になったと新聞で報道されていましたが、学習塾の指導現場から見ると、子どもの読解力が回復しているという手応えはあまりありません。前述のような総合的な意味での国語力という点においてはどうなのかも知りたいところですね。

 さて、ここからが筆者からこの記事をお読みのおかあさんがたにお伝えしたいことです。お子さんが小学校に入学されるまでは、おかあさんがお子さんのことばの先生でした。そのことばは、主に“話しことば”です。日々の生活における会話を通して、お子さんは新しい語彙の大半をおかあさんから身につけていたのですね。また、正しいことば遣いや理路整然とした話しかた、相手の目を見て最後まで聞き届ける姿勢も学んだことでしょう。

 しかし、小学校に上がり、文字(書きことば)を正式に習い始めると、いつの間にかお子さんとの会話の時間が減り、お子さんがおかあさんとの会話を通して“話す力”“聞く力”を磨いていく経験が少なくなってしまったのではないでしょうか。

 1209_c子どもの知的能力の源泉は、家庭でのおかあさんとの会話にあります。“書きことば”の学習が始まってからも、家庭での会話の重要性はいささかも衰えるものではありません。話す力、聞く力を磨くことと、“読む力”“書く力”を伸ばすことの、両方が噛み合ってこそ豊かな学力、知力が涵養されるのです。

 親子一緒の会話の重要性は、これまで何度となくお伝えしました。お子さんが、中学受験をめざして勉強されている家庭においても、この会話の時間が削られることがあってはいけないと思います。“話す力”“聞く力”は、目先のテスト結果には繋がりませんが、お子さんがたの成長とともにその重要性を増していきます。冒頭でご紹介したアメリカの調査結果は、そういった意味で大いに参考になるのではないでしょうか。

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カテゴリー: 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育

ほめかた次第で子どもは変わる! その2 

2013 年 12 月 5 日 木曜日

 今回も引き続き、後期第2回「おかあさんの勉強会」の様子をご報告しようと思います。勉強会のテーマは、「ほめかた次第で子どもは変わる」です。

 前回は、この催しの前半をご報告しました。子どもをほめるということは、簡単そうで簡単ではない面があります。

 たとえば、以前の記事でも書きましたが、「あなたのような優秀な息子をもって、おかあさんはうれしいわ」など、「~な子ども」というような形容でほめるのはよくないと言われています。

 なぜなら、『優秀な子』という言葉に縛られ、常に「優秀だと思われる結果を残さねば」と、子どもが精神的に追い込まれてしまうおそれがあるからです。このように言われた子どもは、「課題を自由に選んでよい」とされたとき、失敗を怖れて易しい課題を選択するようになるなど、却ってその子の成長にとって好ましくない状況に至ってしまいます。

 また、子どもの現状に不満があるとき(このケースが圧倒的に多いのですが)、ちょっと親が言いかたを間違えると喧嘩になり、つい「売り言葉に買い言葉」で、わが子を否定するような発言に及ぶことがあります。そういうときのおかあさんの言葉を、子どもは他のどんな言葉よりもよく覚えているものです。本意でない言葉が子どもを傷つけ、親子関係がギクシャクしてしまうといったようなことも、“なきにしもあらず”です。

 親子は理屈を超えた愛情で繋がっていますが、互いの関係が近すぎることが揉め事の原因になりがちです。相手への思いやりや配慮を欠いてしまうのです。

 20131209aおかあさんにしてみれば自分がお腹を痛めて産んだ子どもです。我知らず指示・命令口調になるのもわからないではありません。しかしながら、子どもも小学4~5年生ともなると自分なりの考えをもっており、親の言いなりにはなりません。ことあるごとに反抗するわが子をもてあまし、「うちの子をほめるなんて無理」と嘆いているかたはありませんか?そういうおかあさんは、「親の接しかたが、子どもの側からどう見えるか」を冷静に考えてみる必要があるのかも知れません。

 ともあれ、「わが子には、立派な人間になって欲しい」と思うのが親というものです。「ほめることでわが子が自信をもち、何事にもがんばれるようになるのなら、何とかしてほめてやらねば」――そう思ってこの勉強会に来ておられるおかあさんもおられることでしょう。

 さて、そこでわが子のどういうところを切り口にほめるかについて、弊社からいくつかの提案をさせていただきました。その内容は前回お伝えしましたが、どの方法においても根本にあるのは、子どもにOKサインを送って自信をもたせるという意図です。親ならではの観察眼で子どものよい点を見つけ、それを伝えることで自信とやる気を取り戻させようということです。

 前置きが長くなってしまいました。弊社からヒントをお伝えしたところでストップしてしまいましたね。このあとはワーク2に移りました。このワークは、これまでに考えてきたことを踏まえ、「ほめ上手になるために一歩前進しよう!」という趣旨で行いました。

 具体的には、ここまで一緒に考えてきたことを踏まえ、グループごとに反省点や気づきを話し合ってもらいました。そしてそのあと、「これから子どもをほめるにあたり、どんなことに留意しようと思うか」について、頭に浮かぶことをみなさんに2つ~3つ書いていただきました。書き終えたら、その内容を順番に発表してもらいました。全員が話し終えたら、最後に「何をどうほめたら、子どもが変わるか」について、自由に話し合う時間を設けました。

 ここまでの流れで、ほとんどのおかあさんが気づかれたことと思いますが、ほめるという行為は子どもをコントロールするためにあるのではありません。ほめることで、子どもに自分のしたことのプラスの面にフィードバックを与え、子どもの内なる向上心を呼び覚ますためにあるのです。

 小学校4~5年生の子どもは、まだ親を全面的に頼り、親への信頼の気持ちを失っていません。いつも口答えをしているお子さんだって同じです。今のうちにこそ、親はわが子をほめることで望ましい成長へと向かわせてやらねばなりません。また、わが子をほめてやることの必要性は、子どもが何歳になろうと必要なことであろうと思います。

 ワーク2が終了したところで、次は子どもたちのアンケート結果の続きをおかあさんがたにご紹介しました。その内容は以下の通りです。
20131209

 どうでしょう。アンケートには、子どもたちの本音がたくさん語られていると思います。アンケート結果を解説する際、校舎の責任者は、「『やればできるじゃないか』というほめかたは、自分達も普通にしていますが、子どもによっては嫌だと感じるんですね」と感想を述べていました。この記事をお読みのかたも、同じように思われたのではないでしょうか。

 おそらく、これを書いたお子さんは「自分はできない人間だと思っているから、うまくやったときにそんなほめかたをするんだろ!」と言いたいのだと思います。子どもにもプライドがあるのです。親に自分を低く見積もられていると感じるから、そういうほめられかたはうれしくないのです。

 また、「勉強のことをもっとたくさんほめて」という言葉がありますが、これは、「自分の勉強のプロセスをまるごと見ていて欲しい」という願望であろうと思います。成績だけでほめるのではなく、自分ががんばっているときには、それを見届けてほめて欲しいのでしょう。

 子どもの本音を一つひとつ点検していくと、子どもは親に納得のいくほめられかたをしてもらうことを強く望んでいることがわかります。そのどれにも純粋な気持ちが感じられました。

 最後は、子どもたちの本音に接したところで何分かみなさんで話し合っていただいて終了となりました。時間があれば、まだまだお伝えすべきことはあったのですが、忙しいおかあさんがたですから、弊社からの「補足資料(まとめ)」をお渡しして終了としました。その資料を以下にご紹介しておきます。

≪子どものモチベーションを高めるほめかた≫(PDF 982KB)

 2回に渡って「おかあさんの勉強会」の様子をご紹介しましたが、参考になる点はあったでしょうか。ほめることは、親子間以外にも人間関係の潤滑剤として重要です。みなさんがほめ上手になれば、きっと周囲の方々のやる気に多大な影響を与えるでしょう。ぜひ、ほめて人を元気にしてあげてください。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達, 子どもの自立, 子育てについて, 家庭での教育, 行事レポート