2014 年 3 月 のアーカイブ

あなたは子どもを叱るのが苦手? その2

2014 年 3 月 31 日 月曜日

 前回は、子どもを叱ることは子育ての重要な側面の一つだということを踏まえ、効果的な子どもの叱りかたについて考えてみました。

 叱るということに関して、筆者は特別な考えや見識は持ち合わせていません。そこで、「“叱る”をテーマに書いてみよう」と思い立ってから、手もちの本を点検して参考になりそうな記述を探しました。

 筆者の目に留まったのは、ユダヤ系アメリカ人の女性(教育関係者)の書かれた家庭教育に関する本でした。子どもを叱ることの難しさの一つは、「怒りの感情を、いかにコントロールするか」ということであるという点を踏まえ、そのことだけで数十ページも割いて詳しく説明されていました。

 感情的に叱った後、親は後悔と自己嫌悪の気持ちに苛まれ、そのせいでしばらく子どもに甘い態度で接してしまう。子どもはそうした親の感情の揺れを見透かしてか、ますます親の意に添わない行動をとる。その結果、以前に増して声を荒げて子どもを叱りとばしてしまう。こうしたことの繰り返しに悪戦苦闘しているのは、日本の親だけではないのですね。

  しかしながら、そうした一見悪循環に見える状況を通して親も成長するのだと、前述の本の著者は述べておられました。ちょっとご紹介してみましょう。

 一生懸命努力して、怒りをコントロールできるようになったのに、またもとに逆戻りするようなことがあると、がっかりして欲求不満に陥ってしまいます。しかし、進歩に後退はつきもの、遅かれ早かれ出てくる現象です。しかも、逆戻りするたびに、怒りの原因となった考え方のおおもとに気づくようにもなります。気づくことで、人はどんどん成長し、自分を変えていくことができるのです。 

 叱った後は気が滅入る。そのために叱るのをためらう。そういう傾向が強い人は、ぜひ勇気を出して「わが子のために叱る」ということを実践していただきたいと存じます。次は、叱ることで生じる心の負担を少しでも軽くするためのアドバイスです。多少なりとも参考になるかもしれません。

20140331

 1ですが、なるべく楽天的に構えるくらいの気持ちでいないと、子どもの反抗にあうとストレスが溜まってしまいます。子どもは親とは別の人格をもった存在ですから、親の思い通りになるわけがありません。そのことを前提として子どもに接したなら、感情に振り回されることはなくなります。「自分も紆余曲折あって今日に至ったのだから、子どもだってやがては必ずよくなる。焦らずじっくり子どもに話して聞かせよう」という、気持ちのゆとりをもつことが大切ですね。

 2ですが、これは子どもを甘やかすわけではありません。ちゃんとやらない理由が子どもにもあるのだろうと認めてやりながら、親がどうしてほしいのかを伝えるほうが、子どもは素直に親の言うことを聞くようになるからです。子どもに落ち着いて冷静な判断をさせるための方策です。

 3は、叱った後落ち込むような人にとって必要な考えかたではないでしょうか。「言い過ぎた」「叱っても反抗を招いただけ」「何回叱っても効果がない」など、叱る効果が得られない状況は様々にあるでしょうが、そのたびに落ち込んでも何にもなりません。正面切って親の気持ちを伝えていれば、それが子どもに伝わらないはずがありません。叱るのを失敗しても失望せず、「少なくとも、私の思いは通じたはずだ」と自信をもちましょう。

 4は、「子どもに反発されるのが辛い」人のための心の持ちかたです。子どもに激しい言葉で言い返されるのが嫌で、つい大目に見てしまう人はおられませんか。これでは我が儘を助長するだけです。また、叱られることに免疫がないと、普通の人なら受け流すようなちょっとした言葉に傷つく人間になりかねません。「これは、子どものためなのだ」という信念をもち、きっぱりと叱ってやりましょう。その場では効き目がないように見えても、子どもは心のなかではちゃんと反省します。

 「叱りかた」について、印象に残っていることがあります。典型的な優等生で、注文をつけることがないほどのすばらしい男の子(6年生)がいました。ある日の授業で、たまたま「おかあさんに叱られるか」が話題になったとき、大概の子が、「勉強しようと思うときに叱ってくる」とか、「成績が下がるとすぐに叱られる」などと興奮気味に話すなかで、彼だけは少し違うことを言いました。

 「ボクも、母に叱られることがあります。でも、勉強のことでは叱られたことはありません。約束を守らないなど、筋の通らないことをしたときに叱られます」というのです。「そういう育てかたをするのが、子どもを優秀にする秘訣なのか」と、感心したことを記憶しています。

 その後、彼のおかあさんにお会いすることがありました。いかにも優しげでソフトな印象のおかあさんでした。「ボクを叱るときのおかあさんは恐いです」と、彼は語っていましたが、「優しいおかあさんの一言が恐い」のは、「おかあさんが感情を交えず、筋の通った叱りかたをされるからだろう」と、今さらながら思います。なお、これは蛇足ですが、彼は広島最難関の私学を含め、受験校の全てに受かりました。

 とかく親は、叱るときに声高になりがちですが、大切なのは子どものためを思い、筋の通った叱りかたをすることなのですね。それが、子どもの心に響くのでしょう。叱るべきときは、ためらわずに叱ればよいのです。問題は、感情のコントロール。これまでの叱りかたを振り返りつつ、上記の4つのアドバイスを参考にしてわが子のためになる叱りかたを工夫して見てはいかがでしょうか。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

あなたは子どもを叱るのが苦手? その1

2014 年 3 月 24 日 月曜日

 子どもは現実認識が甘く楽観的です。親の目からは、やるべきことをやらないでいるのに平気でいるように見えます。これは、まだ人生経験が少ないうえに親の庇護のもとで不自由なく暮らしているわけですから、いくらかはやむを得ないことかもしれません。

   しかしながら、それが原因で親(特におかあさん)はストレスを溜めることになりがちです。まして、わが子が受験生であるような場合には、ほとんど毎日叱りたい衝動との葛藤に明け暮れることになりかねません。何しろ、やるべきことが山ほどあるというのに、TVやゲーム三昧のわが子が目に前にいるのですから。

  ところで、あなたは叱ることについてどう思われているでしょうか。「叱るべきときには、きっちり叱っています」とおっしゃるかたもおありでしょう。しかしながら、「叱るのは苦手です」とおっしゃるおかあさんも少なくありません。なぜでしょうか。

  おそらく、「感情をコントロールするのが難しい」ということが、理由の大きな要素ではないかと思います。子どももある程度の年齢になると、叱りかたによっては強い反抗の姿勢を見せるようになります。そこで、気がつくと親も興奮して感情をむき出しにしていることも少なくありません。そんなことが何度もあると、大概のおかあさんは叱るのをためらうようになってしまいます。

 ところが、そうやって叱るべきときに叱らないでいると、子どもがどんどんひどい状態になっていくことは避けられません。外ではある程度自己抑制を利かせられるお子さんでも、おかあさんがそういった調子だと、家では言うことを聞かなくなってしまうケースもあるようです。

 そこで今回は、わが子を叱ることについて書いてみようと思います。まず、叱ることは親にとって必要かどうかですが、外国人の書かれた書物に印象に残る言葉がありますので、ちょっとご紹介してみましょう。なお、内容はだいぶ短く調整しています。

叱ることは子どもにとって必要なことである。子どもには叱ってもらう権利があるのだ。愛情を込めて子どもを叱ろう。そうすれば、子どもは「親は自分のためを思ってくれている」と感じる。叱っても、愛情が伝われば、子どもは突き放されたとは決して思わない。

  「叱られることは子どもの権利である」という言葉が印象に残ります。これを親の立場から受け止めると、「わが子を叱るのは、親の大切な義務である」と言えるでしょう。そう、叱ることは子育てで欠かすことのできない重要な行為なのです。問題は、「いかにして感情を上手にコントロールするか」ということではないでしょうか。

 親はいかにして冷静に子どものいけない点を叱り、子どもの素直な反省を引き出すか。このことは、多くの親に突きつけられた問題であろうと思います。そこで、これに関して有効な手だてとなりそうなものをいろいろな文献に当たりながら、簡単にまとめたのが次のような方法です。

 叱ることは、絶対に子どものためになる。そういう信念をもったうえで、下記の3つのステップを踏んで叱るのです。20140324

 まず1ですが、感情混じりに叱らないための、また子どもを感情的にしないための方策として、「子どもの行為を具体的に指摘する」ということが重要でしょう。子どもにとっても、「おかあさんが何について叱っているのかがわかれば、冷静に受け止めることができるでしょう。

 次に2ですが、「親として子どもの行為をどう思っているのか」を冷静かつ率直に伝えることが必要です。このとき、できるだけ落ち着いた声で、静かに話すのがよいようです。親が声を荒げると、子どもはたちまち冷静さを失ってしまいます。静かに話された言葉は、子どもの心に浸透するものです。親としてどう思うかを伝えられた子どもの大半は、「親のほうが間違っている」とは思いません。

 そして、ここで少し子どもに考える猶予を与えます。そうすれば、子どもはどうしたらよいかを自然と考えるでしょう。問題をこじらせ、親子関係を悪くするのは、「一方的になじられ、自尊心をずたずたにされるような叱られかた」だと言われます。子どもの自己調整機能を働かせるためにも、少し間をおくのです。

 そして3のように、「問題はどこにあったのか」を確認したうえでサッパリとした明るい雰囲気のもとで切り上げるのです。

 以前書いたことがあると思いますが、子どもは叱られること自体を拒否しているわけではありません。筋の通った叱られかたなら、むしろ歓迎なのです。またそこには、「尊敬できる親であって欲しい」という願いもあります。叱られるべきことをしたのに叱られない。これこそ子どもにとっては親の愛を確かめられない、どうしようもなくさびしいことではないでしょうか。

 以上の3つのステップで、明るく子どもの気持ちを改めさせる、効果的な叱りかたを実践してみませんか?「そうは言うけど、やっぱり自信がない」というおかあさんもおられるでしょうか。そういうおかあさんに必要なのは、叱ることへの気持ちの負担を軽くすることかもしれませんね。近々、そういう点に的を絞ってもう一度叱ることについて書いてみようと思います。

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成績に反映される学習の取り組み その2

2014 年 3 月 17 日 月曜日

 5・6年部の学習がスタートして約3週間が経過しました。4年部の学習も開講して1週間になります。お子さんは、毎日の学習にしっかり取り組んでおられるでしょうか。

 今回も、前回に引き続き身になる家庭学習のありかたについて考えてみようと思います。弊社は、受験勉強を通して、子どもたちが「自学自習」の態勢を築いていくことを、指導の重要な柱の一つに位置づけています。

 以前(前々回の記事)お伝えしたように、自学自習の姿勢を確立することは大学で学ぶ目標の一つでもあります。社会に出てからの長い人生を充実させられるかどうかは、学びの自立を達成しているかどうかにかかっているからでしょう。小学生のうちにその基盤を築いておけば、先々に向けて明るい見通しが立ったと言っても過言ではありません。実際、数え切れないほど多くの卒業生が見事にそれを実現しています。

 20140317a 学びの自立を果たすうえで欠かせないのは学習の習慣づけです。習慣づけに成功するかどうかの鍵を握る要素の一つが、実行可能な、成果のあがる「学習計画」を立てることです。学習計画はお子さんの学年に関わらず、親子で一緒に立てるものだと心得てください。基本的にはお子さんが計画案をつくり、親がその妥当性について感想や意見を言い、そうして親子の話し合いで決定するのがよいでしょう。既に何度もお伝えしましたが、お子さんが「自分で立てた計画だ」と思っているかどうかは、計画の実行の度合いに大きな影響を及ぼします。

 学習の習慣づけがうまく行くと、決めた時間になったらテキストを広げるのが当たり前のようになっていきます。そうして、勉強の流れができることで様々な恩恵がもたらされていきます。

 まずは、机に向かうときの苦痛にも似た重たい気持ちが緩和されます。TVにしがみついたり、ゲームから手が離せなかったりと、なかなか勉強に取りかかれないお子さんが多いなか、決めた時間に机に向かえることは大変心強いことではないでしょうか。

 また、これも何度か書いたことですが、勉強が習慣化されるにつれ、勉強の面白味が子どもなりにわかっていきます。それが学習活動に不可欠な「意欲」へとつながっていきます。勉強でよく言われるところの「意欲が先か」「習慣が先か」の問題は、間違いなく「習慣化することが先」なのです。

 日々の家庭学習の方法に関しては、「学習の手引き」という冊子で基本的なことをお伝えしていますが、通学コースのお子さんには毎回の授業を通じて、「家庭で何をどう勉強すればいいのか」「効果的なノートのとりかた」などについて少しずつ指導していきます。当面は、指導担当者の指示に沿ってがんばってみてください。

 そうして、一定の期間取り組んでいると、やがて「勉強とは、このようにやるものだ」というお子さんなりのスタイルが整っていきます。そこまでいけば、ほぼ受験生活は軌道に乗ったと言えるでしょう。これも、勉強が習慣化してこそ到達できることで、是非それをまずもって目標においていただければと思います。

 これは、確たるデータを整えたうえでの話ではないのですが、早くから勉強の習慣をつけておくことがいかに重要なことかを思い知らされる情報があります。弊社の低学年部門には、「ホームワーク・コース」という家庭勉強で基礎学力の定着と学習の習慣化を図るコースがあるのですが、このコースを利用されたご家庭のお子さんの学力が非常に高いことに気づきました。

 昨年の5年部会員のなかに約20名の出身者がいますが、彼ら彼女らのマナビーテストの平均点が驚くほど高いのです。しかも、4教科すべて好成績なのです。ある回では、4教科総合平均262点に対し、311点という高い平均点を示していました。これは、「学習の習慣を根づかせることの大切さ」を物語っているのではないでしょうか。このコースでは、「やり残しのプリントが溜まる」という理由で退会されるご家庭もあります。その一方、最後まで粘り強くお子さんを励まし、サポートしておられる保護者がおられます。それがこんなにもすばらしい成果を引き出しているのですね。

 なお、これは通学コースについても同じで、指導担当者は「ホーム・ワークに、おかあさんの大きな花マルやほめ言葉がいつも書き込まれている家庭のお子さんは、1年間で見違えるほど力をつけていますよ」と報告してくれます。「親が子どもの勉強に関心をもち、熱心にサポートしてこそ、子どもの学習習慣はしっかりと根づくのだ」ということを教えられますね。

 では、高学年になってからでは、親の応援は効果がないのでしょうか。そんなことはありません。4年生、5年生、6年生に限らず、小学生のうちは親の見守りと応援が欠かせないものです。

 20140317b特に大切なのは、子どものノートを見ること。おそらく、親が満足するようなノートではないでしょう。しかし、気になる点を注意したり叱ったりする前に、是非お子さんの努力の跡を見届けてほめてあげてください。子どもの取り組みの様子はすべてノートでわかるものです。お子さんは間違いを自分で見つけ、その間違いを同じノートの別の場所でしっかりやり直しているでしょうか。授業での板書をきちんとノートに書いているでしょうか。調べたことがらをノートにメモしているでしょうか。

 前述のように、未熟な小学生のことですからノートを見た親の大半は落胆します。しかし、そこからが親の重要な出番です。まずは子どもの取り組みを大いにほめてあげてください。そのうえで気になる点について、「これは、どうしてこんなふうに書いたのかな?」などと尋ねながら、修正すべき点に気づかせるのです。

 無論、それ以前の問題として、「字が汚くて読めない」といった状態のお子さんもいるでしょう。その場合も、癇癪を起こして叱るのではなく、丁寧に書くよう繰り返し促してあげてください。随分前のことですが、6年生の秋になっても、ほとんど読めないような字を書くお子さんがいました。「一度、左手を机の上に添えて書いてみなさい」と言って書かせたところ、かろうじて判読可能な状態になったことを今でも覚えています(驚いたことに、彼は広島最難関の私学に進学しました)。頭の回転に、手が追いついていなかったのでしょうか。

 ともあれ、ノートは子どもの学習の現実を映す鏡のようなものです。ノートがよければ子どもの勉強もよい方向に向かっていると思って差し支えありません。予習(5・6年)の段階、授業の段階、授業後の復習の段階、2週間のまとめ学習の段階、それぞれの段階の学習の様子が親にはっきりとわかるノートになるのが到達目標です。そこまでたどり着けば、必ず成果につながる勉強になっているでしょう。ノートに○(マル)がいくつあるかなど、問題ではありません。意味のある勉強の跡がノートに記されているかどうかが問題なのです。

 今回も話が長くなってしまいました。今のうちに、学習の習慣づけをはかり、望ましい勉強のやりかたが身についたなら、入試対策の勉強の土台が築けたことになるでしょう。まずはそこをしっかりと固めていきましょう。

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成績に反映される学習の取り組み その1

2014 年 3 月 10 日 月曜日

 先週のブログでは、「開講してからしばらくの間は、学習の習慣を定着させたり学習方法を身につけたりすることに眼目をおき、テスト成績は参考までに留めてください」とお伝えしました。学んだことが身になるような流れを築くには、学習基盤を整えることがまずもって必要だからです。

 しかしながら、誰でも勉強したからにはテストでよい成績をとりたいものです。特に進学塾では、学習の成果を試し、データを取るために頻繁にテストを行います。このテストの結果を気にしないで勉強するお子さんはほとんどいないと思いますし、まして親は無関心でいられるはずがありません。

 このことを踏まえるなら、「開講後の1~2ヶ月間においては、お子さんが『家庭学習研究社の学習環境になじみ、その方針に沿った学習を通して、テストでも一定の成果が得られるようになることが当面の目標です」と、お伝えしたほうがよかったかもしれません。家庭学習研究社の提供する学習環境のもとで、所定の勉強をやりこなせるようになれば、自ずとテストの結果も伴ってくるのは間違いのないことですから。

 ただし、テスト(成績)には、常識のある親をも変えてしまう魔力のようなものがあります。はじめは、優しくわが子の勉強を見守っていたおかあさんが、やがて「何でこんな点をとってくるの!」「あなたのような成績の子は、私の子どもじゃないわ!」と、感情を露わに叱ってしまうような事態に至ることも、ないではありません。そうなると、子どもにとっては努力の積み重ねが先か、テスト結果を得るほうが先か、わけがわからない混乱状態に陥ってしまいます。

 そんなことにならないために、本日は敢えて開講直後の段階で「うまく行かない例」をお伝えしておこうと思います。同じお子さんが、勉強のちょっとした誤りで、伸びるものも伸びなくなってしまう例を通して、「勉強で成果をあげるにはどうしたらよいのか」について、今の段階から理解しておいていただきたいのです。

 20140310aA君の例(5年生)
 A君は、まじめに予習や復習をやってくるお子さんです。成績はまあまあですが、他の活発なお子さんと比べると勉強に元気がないのが気になります。しかし、特に目に見える問題がないので、指導担当者も彼には何も言いませんでした。やがて、春も終わりが近づくにつれて段々成績が下がってきました。あるとき、指導担当者はA君の勉強ぶりに覇気がなく、成績が下がってきた理由に気がつきました。授業中、練習課題などを一緒に考え、子どもたちに発表させたり、解説を加えたりしているとき、A君は消しゴムでノートに書いていた自分の式や答えを消し、書き直して赤鉛筆で○(マル)をつけていました。(後で調べたところ、ノートに間違いがあると親に厳しく叱られるらしく、それが嫌であんなことをしていたのでした。)

 20140310bBさんの例(5年生)
 Bさんは、まじめでがんばりやさんです。予習や復習も一生懸命やってきています。ところが、講座が進んで学習内容が難しくなってきた秋が深まる頃、段々と成績が下がってきました。「これではいけない」と、次のマナビーテストに備えて、これ以上ないほどがんばったそうです。それなのに、成績は全く上がる様子はありません。そして、また次のテストでも同じような状態が続きました。まじめなBさんは、いよいよ友だちとの遊びも全て断り、ひたすらがんばりました。それなのに、今のところ成績は上がる気配がありません。

 A君の事例も、B君の事例も、親の関わりがあるかないかの違いはあるにせよ、「勉強は、まちがいに気づくことから始まるのだ」という重要な原則がないがしろにされている点では根っこは同じです。どういうことか、少しご説明してみましょう。

 A君のような事例を、4・5年生の算数担当者から度々耳にすることがあります。親としては「迂闊なミスをしないように」、「一つひとつの課題がしっかりとやりこなせるように」という期待から、×(バツ)を戒めておられるのでしょう。しかし、本来バツであったものをごまかして○(マル)にしたのでは勉強した意味がありません。自分がどこで躓いているのかを知る手がかりは、ノートへの書き込みにあったはずです。それを消したのでは、自分の思考のプロセスを辿り直すことは不可能です。また、それ以前の問題として、親に叱られるのを恐れながらの取り組みでは、伸び伸びとしたしなやかな思考が発揮されようがありません。

 Bさんの事例は、せっかく一生懸命努力しても成果につながらない勉強の典型的なものかもしれません。たくさん問題を解くことに熱心なのはよいとしても、Bさんは躓いたところを見直したり、解き直してみたり、なぜ間違えたのかを調べたりするような学習が嫌いでした。テストでよくない点をとったら、そういう自分の答案を見直すのが嫌でやり直すことも避けていました。自分ができるところを熱心にやっても、それはすでに身についていることです。Bさんに必要な学習は、間違えているところに目を向け、それを克服する取り組みだったのです。

 以上のように、勉強は間違いに気づくところから始まります。また、どこまでがわかり、どこからわからないかを確かめることからがほんとうの勉強の始まりです。ノートにやった問題の○(マル)つけは、わかっていることを確かめるだけでなく、自分がわかっていないところがどの部分かを明確にするためのものでもあるわけです。「予習」→「授業」→「復習」→「テスト前のまとめ学習」の過程において、たくさんの間違いや理解不足が発見され、それを考え直し、学び直すことこそが勉強なのです。つまり、間違いを見つけることから学びは始まるのに、上記の二人はそのいちばん大事な学びの要素が欠けていたのです。そこを改めれば、毎回のテストの結果は自然と上昇基調に向かうのは間違いありません。

 A君のような例に多少なりとも思い当たる節のあるご家庭におかれては、間違いが見つかったら、そこからがほんとうの勉強なのだという考えのもと、お子さんが自分でやり直しをすることを奨励し、それをやり遂げたときには大いに誉め称えていただきたいと存じます。

 また、Bさんのように「間違いを嫌がってやり直しを避ける」傾向のあるお子さんのご家庭にも、「間違いの発見からほんとうの勉強が始まるんだよ」と、お子さんのやり直しのための勉強を奨励していただきたいと存じます。

 このことからもおわかりいただけると思いますが、予習(5・6年)を完璧にやってくることが重要なのではありません。授業の前に、自分でわかるところとわからないところを仕分けできているかどうかが重要なのです。また復習で重要なのは、惜しいところでつまずいていたり、もう少しでわかりかけていたりした部分や、ミスをしていたところの取り組みです。テキストの全部の課題を理解する必要はありません。

 要するに、今の時点で割ける時間のなかで、できる精一杯をすればよいのです。やがて、また同じ単元の学習機会がやってきます。そこでまたがんばればよいのです。

 なお、4年生にはノートの○つけを保護者にお願いしています。お子さんはまだ正誤についての正確な判断が難しいためです。その○つけは、叱るための時間ではなく、わが子をほめて励ますための時間になるようお願いします。20140310cまた次回書きますが、そうやって家庭学習の根がしっかりと張ったなら、お子さんの受験に向けての見通しが俄然明るくなっていきます。

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はじめが肝心 ~開講直後の親のケア~

2014 年 3 月 4 日 火曜日

 中学入試が終わり一息ついたのも束の間、すぐさま2014年度の講座が始まりました。2月22日(土)に、5・6年部が開講したのに続き、3月8日(土)には4年部の講座も開講します。

 何につけても、“はじめが肝心”と言われますが、中学受験対策の学習に取り組む子どもたちについても、講座のスタート期は非常に重要です。塾に通っての受験勉強の要領をいち早く身につければ、授業は楽しくなるし、家での勉強にも弾みがつきます。成績面で成果が現れれば、自信がつくし意欲も湧くという好循環も生じることになります。

 いっぽう、その逆もあります。どのような習い事や学習においても、最初はごく基本的なことから始めますから、「これぐらいなら簡単にできる」と思ってしまうお子さんがいるものです。ところが、そうやって努力を怠っていると、やがてうまく行かないこと、わからないことがどんどん増えていきます。気がついたときには、順調にがんばっているお子さんに大きく後れをとっているということが少なくありません。

 こうした現象は、人生のあらゆる局面で直面する問題ではありますが、小学生の子どもたちにとってはまだ未体験のことで実感が湧かないものです。お子さんが、こうした失敗をしないためにも、私たち大人が一人ひとりに目を行き届かせ、地に足についた学習の実現に向けて応援していく必要があるでしょう。

 新年度の開講から1~2カ月は、「受験生活を軌道に乗せる」ということを目当てに指導を行っていきます。すなわち、いずれの学年においても「授業の受けかた」「家庭勉強の進めかた」など、受験学習における基本的なことを身につけるための指導に力を注ぎます。この段階に、2週間をサイクルとする学習の流れを理解し、授業と家庭学習がうまく噛み合うような学習生活を実現することがいちばん大きな目標となります。

 保護者のかたには、開講当初の成績は参考程度に留め、お子さんの取り組みがしっかりとしたものになりつつあるかどうか、学習の習慣が定着しつつあるかどうかという視点からお子さんを見守り、サポートしていただくようお願いいたします。

 この時点での学習は、あまり高度なことはやりませんし、深い内容も扱いません。その代わり、入試までの学習を支えるための基盤を築くという、より重要な役割を担っています。保護者におかれては、お子さんがテストで何点をとってくるかよりも、「わが子は、望ましい学習の構えを築きつつあるかどうか」という視点を大切にしていただくようお願いいたします。

 なぜそういうことが重要であるかについて、若干補足をさせていただきます。このところ、弊社の6年部会員の入試合格状況、進路選択の様子についてこのブログでご紹介しました。受験での合格を得られるかどうかについては、この10年で大きく様変わりしています。日本でも有数の歴史や伝統を誇る、修道や広島女学院などの私学に合格することもさほど難しいことではなくなっています。たとえば、今年度の入試において弊社から修道へ131名、広島女学院へ128名が合格しています。この合格者数は、6年部男子会員女子会員の半数を超えるものであり、「会員のうち、半分以上のお子さんが受かっている」ということを示しています。無論、全員がこれらの学校を受けるわけではありませんから、合格率に換算すればもっと高い数値になるでしょう。

 こうした中学入試の実状、さらにはどんどん易しくなりつつある大学への関門のことを念頭に置くならば、「受かるのはあたりまえのことだ。問題は、いかにして内実面をしっかり整えるかにあるのだ」ということが、おわかりいただけるのではないでしょうか。一流とされる学校の名前を手に入れることのみに振り回されるのではなく、本物の知性と教養を修めた人間になるためのステップを踏んでいくことこそ、最も大切にすべきことだとお考えいただきたいと存じます。それがうまく行けば、当面の中学受験はもちろんのこと、将来の展望において見通しが立ったも同然です。

 最近、ある著名な文化人の著作を読んでいたら、大学で学ぶことの目標について書いてありました。そのなかで筆者が注目した内容は、次のようなものでした。

20140305b 大学で学ぶことの目標は、「学びかたを学ぶこと」と、「自立した学習者に成長していくこと」の二点にある。

 大学での学びの目標として掲げられた2つは、まさに弊社が中学受験対策の学習を通じて子どもたちが身につけるべきことと定めている内容とピタリ符合しています。無論、その到達レベルはかなり違っているかもしれません。しかし、学習という行為を通して体得すべきことの本質は同じことなのです。

 たとえば、弊社で実施する授業の根本にある目当てについてお伝えしてみましょう。弊社の授業においては、「毎回、毎回の授業を通して、勉強とはどのようにするものか」ということを子どもたちに気づかせることを念頭に置いています。基本に叶った学びかたとはどういうものかを授業を通して教え、確かな学習方法の身についた子どもの育成を意図しています。20140305

 また、そういう指導と連動し、「家庭で自学自習のできる子どもの育成」に向け、指導のシステムに工夫を凝らしています。たとえば、通学日の翌日は家庭学習の日と定め、家での一人勉強のできる子どもになるよう配慮しています。そのため、テキストにも小学生なりの自立勉強ができるようになるためのいろいろな配慮が施されています。さらには、学んだこと、努力したことの成果が見えるようにするため、2週間に1回の割合で「マナビーテスト」という呼称の単元テストを実施しています。

 人間の性格面や行動面の特性の大半は、小学生までの体験や教育で培われたものだと言われます。入試をめざした学習生活において、小学生の子どもたちが多大な時間とエネルギーを投入するわけですから、それが人間としての器の形成に反映されないはずがありません。そのことの重みを弊社では正面から受け止め、「子どもたちの望ましい成長に資する学習指導の実践」を全指導担当者が肝に銘じて日々の指導にあたっています。

 保護者の方々におかれては、お子さんの毎日の取り組みに関心を寄せ、上手に励まし、学びを通して成長していける受験生活の実現に向けて応援と見守りをしていただくよう、重ねてお願い申し上げます。

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