男子の読書と女子の読書の違い

2014 年 9 月 29 日

 いつだったか、男の子と女の子の違いについて若干ふれたことがあると思います。以後、男女の性差に関する本をあたっていると、ちょっと興味を惹かれる本に出合いました。男の子と女の子の読書の違いについて書かれた箇所にが目が留まったのです。著者はレナード・サックス氏(医者・心理学者)です。

 ただし、こうした性差に関する本のなかには科学的根拠に欠けるものや思い込みや誤りに基づくものもあるようです。一応読み通してみたのですが、きちんとした裏付けのもとに書かれた本であり、内容的にも参考になると思いましたので、ご紹介することにしました。

 ある研究によると、「10代の女の子では、ネガティブな感情と結びついた脳の活動は、言語を理解し生み出すのに使われるのと同じ部位、つまり大脳皮質に集中している」そうです。一方、「10代の男の子では、ネガティブな感情と結びついた脳の活動は、扁桃体に集中している」そうです。扁桃体は、脳の古い部分にあり、大脳皮質(脳の高次機能を受けもつ)と直接的なつながりはないと言われます。

 ここで注目したいのは、「大脳皮質」は主として言語的情報を扱う部位であり、「扁桃体」は感情に関わる部位だということです。このことは、男女の学びの様相を大きく異なるものにするでしょう。前述のサックス氏によると、「『もし………たら、どう感じますか?』という形の質問は、ほとんどの男の子にはあまり効果がない」そうです。なぜなら、この問いに答えるには、扁桃体の感情に関わる情報と大脳皮質で扱う言語的情報とを連携させなければならないからです。男の子をおもちのかたは覚えがありませんか? 男の子は、感情に強いインパクトを受けたとき、口数が少なくなると言います。

 感情と言語が結びついた女の子と、感情と言語の連動性が希薄な男子との違いは、読書傾向の違いにも反映されます。

 ここまでお読みになって、「だから女の子は、繊細な心理描写を描いた作品や、心の葛藤を描いたような話を好んで読むんだな」と、合点がいったかたもおられるでしょう。男子はどうかというと、冒険ものや、実際に起こったできごと、もしくはそう思わせるようなリアルでドキドキするような話が好きです。こうした男女の好みの差について、著者のサックス氏は次のように説明しておられます。

 女の子はたいていフィクションを好む。――短い話でも小説でも。だが男の子はノンフィクションを選ぶことが多い。戦争や冒険など実際にあった出来事や、宇宙船や爆弾や火山といったものの仕組みを図解入りで説明した本などだ。20141006

 「女の子は、登場人物の動機や行動を分析できるような本を好む傾向があります。男の子はアクションが好きですね」ニューヨーク州ルイス郡の教師、ヴィクトリア・エアハートはそう語る。「女の子と男の子では、興味をもつ読み物がちがっている」シカゴのロヨラ大学の教育学教授、ジュディ・ヘインも同意見だ。「女の子が好きなのは、登場人物がひと夏にどんな経験をするか、どんな苦悩を味わうかといったタイプの話。男の子が好きなのは、男性が主人公の、血わき肉躍るタイプの話だ」「男の子がほんとうに共感するのは、戦争やさまざまな苦闘を描いた話です」ともエアハートはいう。「男の子は人生を戦いとみているので、戦争の話は彼らのそうした性質に訴えるのでしょう」

 こうした男女の違いを踏まえ、子どもたちが喜んで手にするような本を上手に差し向けたら読書活動はより活発になるでしょう。しかしながら問題もあります。

 たとえば、男の子にも女の子にも勧めたいような本が少ないという現実があります。また、子ども向けのノンフィクションを扱った本はごくわずかです。あってもあまり売れないので、すぐに絶版になるのだそうです。こうした状況は、日本でも同じではないでしょうか。 

 また、アメリカのある州の小学校低学年向けの本の少なくとも8割は、「女の子向けのフィクション」だとか。その理由は、女の子向けのフィクションが最良の本だからというわけではなく、本を選定する立場にある学校の先生の9割以上が女性であり、それらの先生にとって女の子向けのフィクションが魅力的に映るからです。

 こうしてみると、児童向け図書の多くが女子児童には歓迎されやすいフィクションであり、男子児童の好むノンフィクションものが少ないという現実があるようです。無論、フィクションを好む男の子もいますが、そういう男の子は精神年齢が高いのが普通です。そのレベルに漕ぎつけるまでの読書体験として、ちょうどよい本をいかに見つけ出すかが、その後の男の子の読書活動に多分に影響するでしょう。

 筆者はかつて4~6年生向けの児童図書を紹介するため、毎週の日曜日は大概図書館に通ったり、在庫数の多い書店をのぞいたりしたものです。そのときも、圧倒的多数を占めていたのは女性作家による創作児童文学でした。そういった類の本のなかにも「これはいいな」と思う本がたくさんあり、ずいぶん紹介したものです。

 しかし、ノンフィクションものはほんの僅かであり、また伝記や図鑑などの本もあまり豊富ではありませんでした。男子が本を女子ほど読まないことの原因はいろいろあるでしょうが、男子が読みたがる本が出回っていないということもその一つなのだと、今改めて思います。

 秋が次第に深まってきました。どうでしょう? たまには親子で図書館に出かけてみませんか? さすがに家庭とは比べ物にならないほどの蔵書がありますから、丁寧に探せば男の子が興味をもつような本も見つかると思います。また、親の目に留まらないタイプの本を子どもが自分で見つけ出すこともあります。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。


カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達

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