2014 年 12 月 のアーカイブ

2014年の終わりに

2014 年 12 月 29 日 月曜日

 早いもので2014年が終わろうとしています。みなさんにとってどのような年だったでしょうか。筆者もこれから今年1年を振り返り、来年に向けて新たな課題や目標を定めていこうと思っています。

 さて、このブログを始めて6年余りが経過しました。すでに書いた記事の数が500回に近づいており、閲覧いただいた数も七十数万ビューに達しています。正直申し上げて、本業の合間に時間を見繕って書いていますので、忙しいときには「やめてしまおうかな」と思ったこともあります。

 お読みになったらおわかりのように、このブログは本来のブログとは違い、かなり重たいテーマを掲げており(堅苦しくてすみません)、文章も長いのが特徴です。したがって、掲載に漕ぎつけるまでに要する時間や労力もかなりの負担になっています。本業に追われているときは書かなくてもよいようなものですが、つい「週1回は更新しないと」というこだわりが頭をもたげ、多少無理をしても書き続けてきました。

 もとより大した文才もない筆者ですが、学習塾としての広報活動の一環としてよりも、知育に関わっておられるかた、なかんずく中学受験を控えておられる保護者に役立つ情報ができればという思いのほうが強く、そのことが書き続けるうえでの支えになっています。筆者自身、子どもの知育や教育、心理学、脳科学系の書物を読むことが好きですし、そうした書物を通して知り得たこと、筆者自身が体験して重要だと思ったことを、ほかの人たちにお伝えするのが好きなのだと思います。

 また、「玉井式国語的算数教室」を介して知り合った学習塾の方々や、教育関係者の方々が読んでくださっていることもブログの継続にあたって励みとなっています。前者については、玉井満代先生が全国の学習塾でこのブログのことをご紹介くださっていることが多分に影響していると思います。玉井先生にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

 さて、今回は年末のあいさつのみで記事を終えようと思っていたのですが、いつもの癖で「もうちょっと何かお伝えしたいな」という気持ちも湧いてきました。ただし、何も心積もりをしていませんでしたので、今頭に浮かんだことを書いてみようと思います。

 筆者の綴ったブログ記事で、今年1年間最も多くのかたが読んでくださったのは、「“しつけ”という言葉のもつ深い意味」というタイトルの記事です。この記事は、2009年の6月に掲載したものですが、いまだに毎日かなりの数のかたが読んでくださっています。

 「しつけ」を漢字にすると「躾」となります。この漢字は中国から伝わった漢字ではなく、日本で漢字に倣って考案された国字と呼ばれるものです。「躾」を分解すると「身」と「美」となります。「身を美しく整える」という意味に解釈できることから、「よくできた漢字だ」と言う人が多いようです。

 しかしながら、「子どもをしつける」という場合の、本来の意味に近いのは「仕付け」という言葉であると指摘されている発達心理学者がおられます。京都大学の岡本夏木先生(故人)です。

 これについては、以前書いたブログ記事でかなり詳しくお伝えしているのでそちらでご確認ください。ともあれ、ここで簡単にふれておきましょう。

 20141229aご存知のように、「仕付け」は着物の形を整えるために仮に縫い付けておくことを言います。なぜ子どもの「しつけ」の意味が、着物の「仕付け」に通じるのかと言うと、着物の完成をもって仕付け糸が外されるという点にあるのだと岡本先生は述べておられます。着物の形が整い完成すると、仕付けの糸はもうそこにあってはならないもの、不要なものになります。それは、ちょうど子どもの成長に伴って「しつけ」の必要性がなくなるのと同じことだと解釈できます。

 とかく、「しつけ」と言うと立ち居振る舞いについて、親が子どもに厳しく関わることを連想しがちです。新聞などに、幼児虐待に関する悲しい事件の記事をしばしば目にします。そして、そういうことをした親がよく「しつけをした」といった説明をしていますが、そうした親のしつけは、本来の意味から外れていると思わざるを得ません。子どもを人間としての望ましい完成形に向かわせようという意図が、全く感じられないからです。

 この「しつけ」という言葉の意味と通じる話になりますが、以前「親と子は何のために一緒に暮らしているの?」(2009年4月掲載)というタイトルの記事を書いたことがあります。

 夫婦は「一生のパートナーシップを築く」という目的のもとにつながる関係ですが、親子はそうではありません。いずれ子どもは親のもとを離れ、自立した生活を営み、そして別の家庭を築くことになります。そのことに照らすと、子育てとは、やがて子どもと別れるためにあるのですね。同じ家族でも、「夫婦」と「親子」では違うのです。

20141229b このことを書いておられたのは、大学の附属病院のカウンセラーをしておられる先生でした。そのくだりを目にしたとき、当時中学生だった息子のことを考えずにはいられませんでした。大学への進学をもって息子と一緒の生活はおそらく終わるでしょう。それまでに残された期間はわずか4~5年です。「息子が一人でちゃんと生活していけるよう、自分は自立に向けた応援をしてきただろうか」と、深く反省したものでした。

 「しつけ」も「子育て」も、結局は子どもの独り立ちのためにするものです。そういう意識を忘れないでいたいものですね。わが子の中学受験にあたっても、「しつけ」や「子育て」の観点から逸脱してしまうと、入試結果よりももっと大切なものを失ってしまいかねません。なぜわが子に中学受験をさせるのか、という原点に立ち返ったなら、結局「子どもの自立した人生」を願うからに他なりません。

 受験生活を見守るなかで、「躾」や「子育て」の原則から外れないよう、親としての平衡感覚をいかに保つかについても、ぜひ忘れないようにしていただきたいと存じます。受験生活が、子どもの成長や自立につながるよう親が配慮すれば、望み通りの受験結果が得られるのはもとより、「親子の信頼関係」も揺らぐことなくますます強化されることでしょう。

 やがてくるわが子の本当の自立の日まで、親はたくさんの苦労をしなければなりません。ですが、これ以上に苦労のしがいのある仕事はないのではないでしょうか。中学受験は子どもの自立に向けた一つの試練です。人間として一段成長したわが子にするよい機会にしていただきたいと切に願う次第です。

 では、よいお年をお迎えください。

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カテゴリー: ごあいさつ, アドバイス, 子どもの自立, 子育てについて

目先の受験結果にこだわらない

2014 年 12 月 22 日 月曜日

 わが子に受験をさせる以上、「最高の結果を」と親は願います。また、たとえ見通しが厳しい状況に至っても、「せめて第二志望には」と、大概のかたは念じるでしょう。それが親心というものです。

 ですが、そういう思いが強過ぎるあまり、テスト対策しか眼中にない生活を子どもに強いると、却って受験がマイナスの作用をもたらすことになりがちです。

 たとえば、受験一色に染まった生活で志望校合格を得たとしても、「もう勉強はこりごりだ」と子どもが心底思ってしまったならどうでしょう。中学入学後、いよいよ本格化する学業の道でうまくやっていけるでしょうか。

 大人にハッパをかけられ、学習メニューの一切合財を大人にあてがわれて受験を通過した子どもは、中学進学後たちまち壁にぶつかってしまいます。進学した中学校の教育環境が高レベルであればあるほど、子どもの自立心や自己統制力、段取り力などが問われるからです。そういう学校の授業は押しなべて高度であり、家庭学習との連動が必須となります。他力本願でやっと受かった生徒は、よほど気持ちを切り替えてがんばらないと取り残されてしまうのは必定です。

 「受からなきゃ、何も始まらないじゃないですか!」――これは、筆者があるおかあさんとの電話のやり取りの際に言われた言葉です。詳しいことは忘れてしまいましたが、「もっと、合格に向けて厳しく指導してほしい。もっとたくさんの問題、難しい問題に取り組ませてほしい」といった要望を受けていたときのことだったかと記憶しています。

 このように、「とにかく目の前の合格を手に入れなければ、子どもの明日は危うい」と思い込んでしまうと、肝心の受験の主役である子どもの現実が目に入らなくなります。「ほんとうに受からなければ何も始まらないのか」「今の取り組みや学力で受かることが、果たしてわが子のためになるのだろうか」といったように、親の思いを客観的に見つめ直すことも必要ではないでしょうか。

 次にご紹介する文章は、20年あまり前に心理学者が書いていたものです。親心の向けかたについて、参考になるのではないかと思います。 

 親はわが子をいい学校や会社に入れようとします。それも無理のないことですが、もしその希望がかなわなかったとして、自分が入った学校や会社を自分の努力で良くする意欲を持った子どもに育てたいものです。

 いまは、子どもをいい容れ物に入れてその優秀さを誇ろうとする傾向が強く、入った容れ物を自分の力でいいものにしようとすることを忘れています。もともと、いい学校や会社はその中の人の努力でそうなったのですから、意欲のある人間であれば、どういう容れ物に入ってもそういう努力をするはずです。

 いい容れ物に入ることができた人は、その容れ物で満足し、そうでない容れ物に入った人はますます意欲を失ってしまう傾向が強いのは、容れ物だけを重視する子育ての姿勢に一つの原因があると思われます。

 近年は少子化が進み、たいていの家庭は子どもが一人か二人です。子ども一人にかかる期待は、かつてのそれよりもはるかに大きいことでしょう。

 一方、今日の子どもたちが参入する社会は、学歴だけで通用する時代がとうに終わり、本物の実力がないとやっていけなくなっています。21世紀の高度な情報化社会、グローバル社会は、「学歴+本物の実力」という難しい要求を若者たちに突きつけています。「英語ができないと通用しない」と言われ、必死に英語をマスターしても、いざ社会に出ると英語ができるだけでは自分を通用させることができず、「本当に必要なのは人間力だ」ということを思い知らされます。

 では、親はどういった視点で子どもの成長を見守り応援すべきなのでしょうか。筆者はそうした方面の専門家ではありませんから、たいしたアドバイスはできません。しかし、中学受験を視野に入れておられるご家庭の保護者なら、どうしても考えるべき問題だと思います。

 筆者が少なくとも思っているのは、「子どもが自分でできる最善の受験対策をして受験に臨ませる」ことが重要だと思います。無論、親子の話し合いや親からの助言は大いに必要です。しかし、親として心配な点にあれもこれもと立ち入るのは、子どもの思考錯誤を通した成長の機会を奪ってしまいかねません。

20141222b 子ども自身の努力を尊重する受験は、ひょっとしたら大人がとりしきった受験よりも結果が伴わないかもしれません。しかし、それでも勉強は子ども自身にやらせたほうが子どものためになると思います。なぜなら、子どもが自分でできる精一杯の学習で得た教育環境こそ、その子どもの中学校入学時点で最もふさわしいものだからです。

 自力で受かった学校なら、授業のレベルは子どもの現実に最もマッチしている可能性が高く、背伸びをする必要がありません。学習の進度についていくことに汲々とすることなく、伸び伸びと学べるでしょう(これは筆者自身、わが子の受験と進学で確信したことです)。「ついていけない」という気持ちに耐えながらの学習生活は、子どもの自信ややる気を確実に蝕んでいくものです。それが子どもの将来にとってどれだけマイナスになることか。

 下の図を見てください。広島の私学は入試日がほとんど重なりませんから、受けたい私学は大概受けられます。また、重複合格した場合、多くの受験生は偏差値の高いほうを選んでいます。その結果、入学時の生徒の平均学力は、学校ごとに切りそろえたかのように違っていることが予想されます。
20141222zu

 しかしながら、入学時の学力差は中学・高校生活を送るうちに変わっていくのが普通です。中学校入学時には、A校の生徒の殆どにかなわなかったC校の生徒が、大学を受験する頃にはA校の優秀な生徒に全く引けを取らなくなっているケースも少なくありません。それは、大学入試の学校別の実績を見れば明らかでしょう(上図は、状況をわかり易くするためにかなり乱暴に単純化して示しています)。

 親が思い描くべきは、わが子が独り立ちをする段階、すなわち大学を出るときの姿ではないでしょうか。いよいよ社会に参入するにあたり、希望に燃えた一人前の成人になっていなければ、学歴も意味を成しません。

 では、子どもの自立への流れはいつ築くべきでしょうか。率直に言って中学校進学後では難しいと思います。なぜなら、このブログの冒頭においても若干ふれたように、レベルの高い教育環境においては、カリキュラムの進行がはやく学習内容は高度です。学習の態勢づくりを一から築き直す余裕はないと思ったほうが賢明でしょう。

 第一、学校に授業を理解できるレベルまで学力面の補充をしてもらったり、家庭学習のメニューを個別に提示してもらったりすることなど不可能です(建て前的には、そういった必要性のない生徒を採っているのが私立の進学校です)。だからこそ、中学受験のプロセスは、自立に向けた成長の場であらねばならないのです。「とにかく合格さえすれば、後は後で何とかなるだろう」といった考えは通用しません。

 いっぽう、自学自習を旨とした学習と受験を通して進学したなら心配無用です。広島の最高峰の私学に進もうが、他の学校に進もうが、自分の力で這い上がれる術(すべ)を身につけた生徒は、与えられた教育環境のもとで必ず輝きを放ちます。たとえ高いレベルの自学自習には至っていなくても、その時点で到達した水準に応じた中学校に進学すればよいのです。

 そうすれば、すべてのお子さんの未来に明るい見通しが立つのではないでしょうか。何よりも、自分を悲観して投げやりになったり、無気力になったりする恐れがありません。親にとってはわが子がいちばん。だからこそ親は、わが子の現状を冷静に見つめ、そうしたことも考慮すべきだと思います。

 無論、受験生一人ひとりにとって、最高の入試結果がもたらされることがいちばんです。誰もがそれをめざして厳しい受験生活を送るのですから。自分でできる最善を尽くした結果、受験校の全てに受かったなら、どの中学校へ進学するかはもはや問題ではありません。どの中学校に進学しても前途は可能性に満ちていることでしょう。

 しかしながら、たとえ進学の希望が叶わなくても、子どもが受験のプロセスを通して自分に手応えを感じたとしたら、何ら悲観することなどありません。この収穫のほうが、長い人生においてはどの学校に進学するかよりもはるかに自分の助けになるものなのですから。

 親はどうしてもわが子の早咲きを願います。また、目の前の関門突破が全てのように思い込みがちです。しかし、子どもの将来に大きな期待を抱くなら、もっと先の能力開花も視野に入れながら、受験の乗り越えかたを考えるべきではないでしょうか。それが、遅咲きで頭角を現した多数の生徒さんを見てきた筆者の偽らざる気持ちです。

 この記事は、わが子の現状に心が揺れておられる保護者のために書きました。小学生の子どもの受験勉強ですから、親が黙ってみていられなくなるのは当然だと思います。ですが、親は何を手助けすべきかを見失うと元も子もなくなってしまいます。受験のプロセスで得られるいちばんの価値は何か。それを、見失わないでいただきたいという思いをお伝えいたしました。保護者の方々にとって、多少なりとも参考になれば幸いです。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 勉強について, 子どもの自立, 子育てについて, 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴

模試の最終回(第5回)が終わりました

2014 年 12 月 15 日 月曜日

 12月7日(日)には、弊社主催の模擬試験の最終回を実施しました。最終回ということで、これまでで一番多くの参加者がありました(男子受験生645名、女子受験生625名)。

 先だってのブログ記事でご紹介したように、今回は修道と広島女学院のご厚意により、両校の校舎を会場としてお借りしての実施となりました。実際の入学試験会場と同じ場所で練習をする体験は、「入試がどんなものか」を体験しておくという意味において、大いに役立ったのではないかと思います。試験会場をご提供いただいた両校には、改めて感謝申し上げる次第です。

 さて、県西部地区の入試解禁日まで余すところ1か月あまりになりました。模擬試験の結果は、できるだけ迅速に受験生のご家庭にお届けいたします。ここでの結果を冷静に分析し、残る日々を有効に活かした仕上げ学習を実行していただきたいと存じます。

 受験本番に向けての準備や心構えについては、昨年のこのブログにてお伝えしたと記憶しています。また、先月17日に掲載した記事においても、いくらかアドバイスをさせていただきました。ですが、初めてわが子の中学受験を経験されるご家庭におかれては、様々な不安のよぎる毎日をお過ごしかもしれません。

 ちょうど先日、知り合いのかたのお子さんが受験されるということで、拙いながらメッセージをメールにてお送りしたところです。今回は、それをベースにして受験生の保護者の方々に励ましの言葉をお伝えしようと思います。

 受験生をもつと、親はいろいろと気が揉めるものです。親の精神状態は子どもにも伝播しがちです。特に子どももナーバスになる今からは、自然体に徹し、受験本番が迫っていること、親の不安をことさら話題にしないことも大切であろうと思います。今から受験終了までは、親は自然な笑顔を旨としてお子さんと接してあげてください(無理なつくり笑顔も無用のもの。ご注意を!)。20141215a

 大人と違って小学生の子どもの場合、毎日の経験の積み重ねを通じて日々随分成長しているものです。1日のもつ意味がとても大きいんですね。筆者もかつて6年生の指導現場に長くいましたが、12月、1月になると、子どもたちの表情や言葉が随分変わってきていることに驚かされたものでした。

 もはや、子どもなりに受験のことを受け止め、「どうしたら受かるか」を一生懸命考えています。親は、自分の不安をわが子にぶつけてしまうのではなく、子どもの様子をさりげなく見守り、必要最小限の手伝いやアドバイスをすればよいのではないでしょうか。

  大分前のことです。1月のある日、所要で弊社の校舎に移動したところ、面談室から6年生と思しき女子児童が涙を浮かべながら出てくるのを見かけました。「受験直前に、受験生を泣かせてはいけないよ」と、冗談交じりに担当者に声をかけたところ、「泣かせたのは僕じゃなく、おかあさんみたいなものですよ」と、困ったような表情をしました。

 なんでも、その女の子の家ではおとうさんが単身赴任中で、おかあさんは受験の結果がよくないとご主人に申し訳が立たなくなると思い悩み、娘さんに「もしあなたが受験に失敗したら、一緒に死のうね」と言ったのだそうです。こうなると、もはや激励どころではなく、娘さんにとっては脅迫まがいの逆効果にしかなりません。「何ということを…」と、しばし絶句したものでした(幸い、入試では志望校に合格したそうです。事件にならなくてよかったですね)。

 さて、話が横道にそれてしまったので、本題に戻ります。最終段階の仕上げで何をすればよいかの判断材料の一つが、前述の模擬試験最終回のデータであろうと思います。仕上げ段階に至って、落とした模試問題の全てをできるようにするのは不可能に近いことです。今からできる範囲の対策で、ものにできるレベルの事項に絞って対策を講じるほうが賢明でしょう。

 模擬試験は失敗を経験しておくためにあるようなものです。失敗したと思えば、どこを失敗したのかを考えるのが当然ですが、そこで親が手を差し伸べるような親子関係もあれば、お子さんがおかあさんの助けを不要とするような関係もあるでしょう。

 自分なりにいろいろ考えて次への対応法を考えられるお子さんなら、もう子ども任せでもよいのではないかと思います。無論、どこをテコ入れすべきか、どういうスケジュールで仕上げていくかについて、親子で話し合える関係なら、それもありだと思います。

 結局、お子さんが入試会場に入ってしまえば、親は何も手伝えません。そのときに、「うちの子なりに精いっぱいやるだろう」という思いに至るよう、今からバックアップしてあげればよいのではないでしょうか。

 先日のブログにも書きましたが、入試は制限時間内に6割、7割とれる子どもを探すためにあります。完ぺきを求めているわけではありません。決められた時間枠のなかで、自分のベストを尽くす。取れる問題をしっかりと取る。そういったつもりで臨めば、気持ちも不安定にはならないし、重圧に負けることもないでしょう。

 なかには、直前まで見苦しいくらいあれこれ取り組む子もいますが、百害あって一利なしです。今までちゃんとやっていれば慌てることはなかったはずです。急に知識を詰め込もうとしても、混乱や不安を助長するだけ。今からの対策は、無理なくできる範囲にとどめたほうが賢明です。

 模擬試験最終回の結果を受け、親子で入試に臨む心構えをざっくばらんに一度話し合えば、あとはわが子が自分で気持ちを定め、自分のできることをしっかりとやり遂げるのを見守ってやればよいのだと心得てください。入試の結果はどう傾くかわかりませんが、そうした親の愛情深い見守りは子どもの心にちゃんと浸透するものです。この入試体験は、親にも子どもにもかけがえのないものになることでしょう。

 お子さんが自分のもてる力を存分に発揮し、悔いを残すことなく入試を終えられますように!
20141215b

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験

叱り上手が子どもを伸ばす! その2

2014 年 12 月 8 日 月曜日

 今回も前回に引き続き、2014年後期第2回目の「おかあさんの勉強会」の様子をご報告します。勉強会のテーマは、「叱り上手が子どもを伸ばす!」(副題:子どもの奮起を促す叱りかたの研究)となっています。

 前回は、わが子を叱ることの難しさの理由として、「冷静にわが子をたしなめるつもりが、いつの間にか感情を高ぶらせて怒ってしまうこと」を取り上げました。親子とは、直接血の繋がった極めて近い間柄です。それがゆえに、親はわが子が反抗してくると怒りがこみ上げ抑えられなくなるのですね。まさに「かわいさ余って、~」という状況になってしまうのです。

 しかしながら、いつも怒りの感情を子どもにぶつけていると、それが子どもの成長にダメージを与えることが心理学者の研究によって明らかにされています。そもそも、親がわが子を叱ろうとするのは、子どもをよりよい方向へ導くためなのですから、本末転倒と言わざるを得ません。

 そこで、「どうしたら怒らずに、冷静に叱れるだろうか」ということを、グループごとに話し合っていただいたところで、前回の記事を終えました。

③ 子どもが素直に耳を傾けるような叱りかたってあるの?

 前回、4・5年部会員生へのアンケート結果をご紹介しましたが、相当数の子どもが叱られると素直に自分を反省し、「ちゃんとがんばろう」という気持ちになっていることがわかりました。

 このことから、弊社の会員家庭のおかあさんは、総じて上手にわが子を叱っておられるご様子です。上述のワーク2での話し合いにおいても、よい意見や提案が出たのではないかと思います。

 こうした話し合いを受け、③では弊社から「子どもの素直な反省を引き出す上手な叱りかたとはどのようなものか」について提案をさせていただきました。ただし、単なるテクニックの伝授では、子どもの成長につながりません。そこで、後期1回目の勉強会でともに考えた「親の健全なリーダーシップ」という観点に立ち、子どもが聞く耳をもつような親の子育てスタンスを再び確認させていただきました。

 20141208a右の図をご覧ください。子育てには4つのスタイルがあり、それらは「あたたかさ」と「厳しさ」のバランスによって決まります。

 「あたたかさ」の度合いは、わが子にどれぐらい愛情を注いでいるかを示します。「厳しさ」の度合いは、親が子どもの生活をどの程度コントロールしているかを示します。

 たとえば、「あたたかさ」の度合いが強く、「厳しさ」の度合いが弱いかたは、「過保護」のカテゴリーに属すると判断できます。あなたもちょっとチェックしてみてください。どれに当てはまりますか?

4つのスタイルにつけられた名前を確認されれば、ある程度どのような基準で名づけられたかおわかりいただけるでしょうが、念のために4つの子育てスタイルについて簡単にご説明しておきましょう。

権威・・・子どもに十分な愛情を注ぎ、基本的に子ども自身のことは子どもの自主性に任せる。ただし、生活面で節度やルールの必要なことは厳しく守らせる。
脅威・・・子どもの意見に耳を傾けず、親が一方的に決めることが多い。子どもの気持ちは省みられないことが多い。行儀はよいが自尊心の欠ける子どもが育ちがちである。
過保護・・・子どもの要求を何でも叶えてやろうとする。子どものことを放っておけない。必要以上に子どもの意志を尊重するあまり、子どもに主導権をとられがちである。
放任・・・自分のことに注意が向かい、子どもに愛情を注ぐ余裕がない。親が仕事中心で子育てに時間をかけない場合も同様。自尊心が低く、問題行動を起こす子どもに育つ危険性がある。

 どの子育てスタイルが望ましいかは、もうおわかりでしょう。「権威型」の子育てです。あたたかさと厳しさのバランスがうまくとれているこのタイプの子育てなら、自主性があり、自己管理のできる自立した子どもに育つ可能性が高いと言えます。

 では、「権威型」の親の叱りかたとはどういうものでしょうか。子どもの自尊心を傷つけることなく、素直な反省心を引き出すような叱りかたがそれにあたるでしょう。ただし、一般論でやりとりしてもなかなかわかりにくいものです。そこで、この勉強会においては、どの家でもありそうな具体的シチュエーションを通して考えていただきました。

 それは次のようなものです。

おかあさんからの報告 (PDF)

 みなさんそれぞれに、「望ましい叱りかたはどういうものか」を考えていただくため、肝心なところは伏せさせていただきました。

 勉強会では、研太君のママがこの場面でどのように言ったのかを、「ワーク3」の課題として提示しました。みなさんもぜひご自身で考えてみてください。お定まりの効果のない叱りパターンではなく、研太君の素直な反省を引き出すためのポイントとしては、次のようなことが考えられるでしょう。

1.お互いに感情的にならないよう話す
2.研太の気持ちも汲み取る(勉強していたのに邪魔された)
3.どこがいけなかったのかをはっきり指摘する
4.研太への愛情が伝わるよう話す

 「どうしてここまで親が配慮しなければならないの?」と、却って憤りを感じるかたもおありでしょうか。いけないときに厳しく叱る。それで万事うまくいけばよいのですが、前述のように子どもの性格をゆがめ、社会的適応性を欠く人間にしてしまう恐れが出てきます。また、親を恨み、生涯ぎくしゃくした親子関係に陥ることもあります。よい親子関係は、親にも子どもにも一生の宝物です。子どもを木端微塵に叱るやりかたは何ももたらしません。

 答えの例としてはこんな具合でしょうか。「計画通り机に着いて勉強していたんだね。それなのに、弟が突然邪魔をしたんだね。だから腹が立ったんだ。研太の気持ちはよくわかる。でも、弟だってあの絵、一生懸命描いたんじゃないかな? せっかく弟が描いた絵を破るのはいけないことだと思う。わかるよね」

④ 子どもの素直な反省を促す叱りかた 3つのステップで叱ろう!

 ③では、「親に望まれるリーダーシップに基づいた叱りかた」を、具体的な場面を通して考えていただきました。最後に、それを踏まえて「叱るときの3つのステップ」をご提案しました。

 今回も大変なボリュームになってしまいましたので、3つのステップの流れを提示するのみとさせていただきます。
20141208b

 小学校の4・5年生は、ちょうど人格が定まってくる年齢にあります。そういう大事なときに、肉体的にも精神的にも負荷のかかる受験生活を送っているのだということを忘れないようにしたいものです。

 お子さんはそれぞれ自分なりの努力をしています。親からみれば十分な取り組みではないかもしれませんが、子どもの努力を認めてやりながら、修正すべきところを一緒に考えてやる。そういうスタンスで受験生活を応援してあげてください。きっと受験までのプロセスで、親の愛情をしっかりと受け止め、立派に成長されるに相違ありません。

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叱り上手が子どもを伸ばす! その1

2014 年 12 月 4 日 木曜日

 今回からの2回は、弊社の4・5年部会員家庭(週3日コース)のおかあさんを対象とする行事、「おかあさんの勉強会」の後期第2回目の様子をご報告します。

 すでに何度も書きましたが、この催しは中学受験生をもつ家庭のおかあさんがたが抱えておられる問題、悩みの原因になりがちな事柄をテーマに取り上げて実施しています。わが子の受験生活の活性化につながる対処法を、おかあさんがたに話し合っていただきながらともに考えていこうという趣旨で行っている、弊社独自の意匠によるおかあさん支援のための催しです。

 今年度の後期第2回目の勉強会は、「叱り上手が子どもを伸ばす!」(副題:わが子の奮起を促す叱りかたの研究)というテーマで実施しました。実は、このテーマでの勉強会は以前実施したことがあります。ですが、少しずつ内容のレベルアップを図っていますので、参考までに今開催分の内容をご報告しておこうと思います。

 今回の勉強会は、後期1回目の「親に求められるリーダーシップとは!?」の続きとして企画しました。というのは、親がわが子に「してよいことといけないことの境界線」を示し、それを浸透させるプロセスにおいて、「いかに叱るか」は、避けて通ることのできない課題になるからです。

 では、今回の勉強会の流れに沿ってご報告してまいりましょう。

① あなたは子どもをどのように叱っていますか?

 親はわが子を自立した人間にしつけるうえで、「ここからここまではよいが、ここからはいけない」という境界線を明確に示す必要があります。そうしたしつけに取り組むことが、親のリーダーシップを確かなものにします。

 それをわが子が素直に受け入れてくれれば問題ありません。しかし、現実はそう簡単ではありません。子どもには子どもなりの考えがありますし、そもそも自己中心的な立ち居振る舞いをするのが子どもというものです。したがって、子どもをもつ親が避けて通れないのが「叱る」という行為です。

 あなたは、わが子が親が示した境界線から逸脱する行為に及んだとき、ちゃんと叱っていますか?また、どのような叱りかたをしていますか?

 筆者にも息子がいます。とっくに成人した今ですが、かつて中学受験生だったころは、ほとんど毎日といってよいほど叱らなければならない状況に至り、どう叱るべきか悩んだものです。理由は今受験生を抱えておられる多くのご家庭と同じであろうと思います。やるべきときにやるべき勉強をしない。その結果、親の期待とは程遠い、残念な成績を取ってくる。まあ、そんな具合だったと思います。

 勉強会では、かつて全国有数の進学校の名物校長だったかたの、「受験生であると思わず、わが子だと思って接するべし。叱るのは親としての義務のようなものである」という言葉をご紹介したうえで、ワーク1を始めました。「ワーク」とは、この催しにおいては「あるテーマ・課題に基づいて、おかあさんがたが話し合ったり意見交換をしたりすること」を言います。

 ワーク1のテーマは、「叱るということの現状を振り返る」というもので、まずは1対1のペアをつくり、「今、どのぐらいの頻度でわが子を叱っているか。どんなとき叱っているか」を互いに報告していただきました。ひととおり現状をお話しいただいた後、数名で構成するグループで「叱ることの難しさをどういうときに感じるか」について、ざっくばらんに話し合っていただきました。20140204b

 ちなみに、みなさんはわが子をどのぐらい叱っておられますか?次のなかから選んでください。

1.ほぼ毎日  2.ときどき(週2~3回)  3.めったに叱らない(週1回程度)  4.ほとんど叱らない

 さて、おかあさんがたに叱ることの現状を振り返っていただいたところで、子どもたちに実施したアンケートの結果をご紹介しました。アンケートの内容は、叱られる頻度、おかあさんに叱られることをどう思うか、叱られる理由、叱るおかあさんに言いたいこと、などです。結果をちょっとご報告してみましょう。叱る頻度については、先ほどのみなさんの答えと比較してみてください。

アンケート結果(PDF1.6MB)

 アンケートの(1)の結果を見ると、「めったに叱らない」おかあさんが結構おられることに驚き感心しました。上手に子育てをしておられるのでしょう。(2)の結果については、頷けるものがありますね。おかあさんに叱られてうれしい子どもなんていません。しかし、おかあさんが叱る理由はおそらく筋が通っているのだと思います。だから、圧倒的多数のお子さんが「だいたいはがんばろうと思う」と答えているのではないでしょうか。それにしても、「いつもがんばろうと思う」というお子さんが結構な数おられることには感心させられました。おかあさんの愛情や期待がお子さんにしっかりと伝わっているのでしょうね。

 叱られる理由ですが、4年生に見られる「成績が悪い!」というのは、筆者としては気になるところですが、他の理由のほとんどは筋の通った理由だと思います。おかあさんがたは立派ですね。なお、おかあさんがたには「成績を理由に叱るのは避けてください」と、このブログでも再三お伝えしています。がんばったのに成績が振るわないことが多いのが受験勉強だからです。こうした理由で叱られることが続くと、子どもは“自信”や“やる気”という、学力形成で最も重要なものを失ってしまいかねません。

 「叱ってくるおかあさんに言いたいことは?」という質問に対する答えを見ると、思わずにっこりとしてしまいます。子どもたちの素直な気持ちが実によく伝わってきます。また、叱られることに反発したものの、実は後で反省している子どもの様子がよく伝わってきます。

② 叱るはずのつもりが、怒っていることはありませんか?

20140204a 図書館や本屋で子育てに関する本を手に取っていると、子どもの上手な叱りかたをテーマに掲げた本を多数見かけます。この種の本は、日本人が書いたものだけでなく、外国のかたが書いたものも数多く見られます。

 その理由として考えられるのは、日本に限らず世界中の親が「叱るということは難しいことだ」と考えているからではないかと思われます。では、なぜ親にとってわが子を叱ることが難しいのでしょうか。

 答えはここで申しあげるまでもないかもしれません。わが子に対しては親に特別な思い入れがあり、黙ってみていられなくなるものです。そんなわが子が反抗してきたら、冷静に対応できるでしょうか? おそらく、ほとんどのかたは感情的になり、怒ってしまうのではないでしょうか? そう、冷静に叱るはずが、怒ってしまうのです。親が怒ると、子どもはもっと感情を露わにします。そうして、無益な言い合いが繰り広げられることになりがちです。

 おかあさんが怒ってしまう理由は、いくつか考えられます。たとえば次のようなことです。

・疲れ ・せかされている ・失望している ・決まりに関する衝突
・子どもに邪魔をされる

 おかあさんは忙しいのです。そんなおかあさんにとって、わが子がしっかり何でも自立してやってくれればどんなにか救いになるでしょう。しかし現実は逆になることが多いものです。

 おかあさんのわが子に対する期待。それは言葉では言い表すことができないほど大きいのではないでしょうか。受験をさせるのも、そんな大きな期待の表れです。ところが、いざ子どもを塾に通わせてみるとどうでしょう。ちっとも期待通りがんばってくれません。期待がやがて失望に変わってくると、わが子の現状に対する我慢にも限界が来てしまいます。決まりに関する衝突も、これらと無縁ではありません。勉強をすると決めたはずの時間になっても、相変わらずテレビにかじりついている状態が続くと、注意だけでは終わらなくなってしまうのが親というものです。

 しかしながら、親が感情的になって叱ってよいことは一つもありません。親が後味の悪い思いをするだけならまだしも、子どもの健全な成長にとって大きなマイナスになってしまうのです。

 心理学者の調査によると、よく怒る親の子どもは、怒りをコントロールできる親の子どもよりも、怒りっぽく、反抗的で、人の言うことを聞かない傾向が強いという結果が示されています。また、学校の成績も振るわず、社会に出てから必要とされるコミュニケーション能力や感情の抑制能力にも欠けるという報告がなされています。

 では、いったいどうしたら怒らずに、冷静に叱ることができるのでしょうか。ここまでともに考えてきたところで、ワーク2に移りました。

 ワーク2の最初の課題は、二人一組のペアで行いました。まずは、「叱るだけのつもりだったのに、いつの間にか怒ってしまった」場面を思い出し、全員メモを取っていただきました。そのうえで、その内容を互いに相手に報告してもらいました。また、なぜ怒ってしまったのかを思い出し、理由を相手に話してもらいました。そこまでを全員が終えると、今度は数名単位のグループをつくり、「どうしたら感情を抑えて叱れるようになれるだろうか」というテーマで、話し合ってもらいました。

 子どもを冷静に叱れない。それは、ほとんどのおかあさんが抱えておられる悩みのようでした。親として必ず体験する、乗り越えるべきハードルなのですね。
 

 予定よりもだいぶ長くなってしまいました。後半は、次回お伝えしようと思います。

 

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カテゴリー: 中学受験, 子育てについて, 家庭での教育, 行事レポート