“習慣力”が子どもの勉強を楽にする! その2

2015 年 7 月 21 日

 前回に引き続き、前期第2回目の「おかあさんの勉強会」の内容や様子をご報告します。おかあさんの勉強会は、一方向的な説明会スタイルでもなく、1対1の面談スタイルでもなく、おかあさん同士の話し合いの機会を採り入れた、双方向的なコミュニケーションの場です。おそらく、全国の学習塾ではあまり見られないユニークな催しであろうと自負しています。

 さて、勉強会の報告に移りましょう。前回は、いくつかのチェック項目の結果を通して、「わが子の学習習慣はどの程度根づいているか」をご家庭ごとに診断していただいたところで終わりました。

 学習の習慣づけの現状を振り返っていただいたのは、学習の習慣化を図るプロセスで勉強の面白味が少しずつ分かるようになり、それがやがて学習意欲へとつながっていくからです。勉強というと、すぐさま「意欲が大切」と思いがちですが、こういう発想で親がわが子にアプローチすると、たいがい注意や叱責という形になり、逆効果を招いてしまいます。学習を習慣化する場合も親の関わりが必要ですが、こちらのほうが子どもへの働きかけがずっと自然体で行えます。ぜひ試みていただきたいですね。

 実は、日本人は物事を成就させ、安定した結果を引き出すための方策として、昔から“習慣化”という手法を用いてきました。同じことを毎日のように繰り返し、無意識のうちにできるようになる。それが、何をやるにつけ効率よくやり遂げること、安定した結果を得ることにつながるからでしょう。

 そこで次の話題、③「習慣化はものごとを成功させる一番の方法」へと進めていきました。習慣化によって物事をうまくやり遂げるようになるということが、われわれ日本人にとってはおなじみの方法であり、誰でも成果をあげられるのだということに気づいていただくことを意図しました。

 20150721a学校では、朝礼、朝の授業前読書、全員での瞑目、一斉清掃、夏休みのラジオ体操など、規律正しい行動を根づかせたり、物事への取り組みの定着を図ったりするために、“習慣化”という手法を頻繁に用いています。これをお読みくださっている人のなかにも、何らかのことを習慣化させ、日課として定着させているかたがおられるのではないでしょうか。ちなみに、筆者は毎日早朝に起床し、40分の「ジョギング&ウォーキング」をしています。今では、降雨の日は残念で物足りない気分になるほどです。

 習慣について書かれた本に、「習慣化は、日本人のメンタリティに合った方法である」という著述があります。この本の著者によると、メジャーリーグで長年活躍しているイチロー選手は、朝の起床から夜の就寝までの様々な行動をルーティン化し徹底的に繰り返すことで、試合での安定したパフォーマンスを得ているとか。

 ただし、この方法はどうやら日本人だからこそ実行できることのようで、他のメジャーリーガーがイチロー選手の好成績の秘密としてその話を聞くと、例外なく「1日や2日ならともかく、毎日続けるなんてとても無理だ」とあきらめるそうです。

 少し脱線話のようになりましたが、こういう話もその日の勉強会ではおかあさんがたにご紹介し、「習慣化は日本人に合った方法です。習慣化がうまくいくと、毎日の家庭学習にリズムが生まれますから、安定した学習成果が得られるようになります。さらに、毎日決まった日課、ルーティンをこなすことは、精神面の安定と自信につながり、テストなどの緊張する場面でも普段通りの自分の力を発揮できるようになります」などのことをお伝えしました。

 習慣化の効能についてお話ししたところで、ワーク2へと移りました。このワークでは、「家庭学習でルーティン化すべきものは何か」をテーマに掲げました。

 受験生活において、毎日ルーティンとして取り組むべきものとして何があるか。このことについては、家庭ごとに掌握度が違っているかもしれません。親がどこまで関与するかはともかく、わが子がその日その日に取り組むべきことを知らなければ、いつ何をサポートすべきかの判断もままなりません。そこで、ワークではまず、おかあさんがたにマナビーテスト(2週間ごとに実施されるテスト)終了から次のマナビーテストまでの2週間に、家庭学習として何をすべきかをリストアップしていただき、表に書き入れていただきました。

 記入が終わったら、一人ひとり順にリストアップした内容をグループ内で発表していただきました。他の人がリストアップしていたことを挙げ損なったり、勘違いに気づいたりされたかたもあったと思います。このワークで、曜日ごとの家庭学習の課題が明確になれば、ルーティン化に向けた具体的な方法を検討することができるでしょう。

 ワークを通じて、わが子の毎日の学習課題を改めて具体的に確認し、「うちの子は、結構大変な勉強をしているんだな」と思われたり、「もう少ししっかりと掌握しておけばよかった」と反省されたりしたおかあさんもあったかもしれません。そのことも重要なことです。わが子の学習すべきことがわかっていれば、より的を射たアドバイスができるのですから。

 さて、いよいよこの日の最後のテーマ、④「行動の習慣化を促進するための作戦」に移りました。「習慣化」は、物事への取り組みをレベルアップさせたり、何かを成功に導いたりするうえで有効な方法であり、しかも日本人のメンタリティに合っているという話をご紹介しましたが、実際にどう習慣化するかとなると、これもまた簡単ではないと思われるかたも少なくないでしょう。

 そこでこの項では、ルーティン化を図るための作戦を弊社から二つほどご紹介しました。一つは、毎回のマナビーテストへの挑戦に絡めて、「小さな目標」を掲げるということです。またもう一つは、小さな目標の達成を促進させるためのルーティンをいくつか考え出すことです。

20150721bb もう少し具体的にご説明しましょう。まず一つ目の「小さな目標」ですが、努力の継続によって達成可能であり、お子さんに励みや自信が得られるような目標を、親子の話し合いで定めましょう。これと同じような提案を、「学びの飛躍をこの夏に!」というイベント(6月19日に西区民文化センターにて実施)でしていますが、その際は夏期講座を軸とした夏休みの学習のなかから目標を見つけ出すことをご提案しました。

 このブログを読んで、もしも参考にしようと思われたら、夏休みの学習に向けて小さな目標を掲げるほうがよいかもしれませんね。たとえば、「算数:夏期講座の最終日のテストで平均点を超える!」という数値目標のようなものでもよいですし、「夏期講座の授業後の復習を、全教科必ずする!」という毎日の積み重ねの努力にスポットを当てたものでもよいでしょう。大切なのは、がんばれば実現可能なレベルの目標で、お子さんの励みとなる目標になっているかどうかです。

 二つ目の「何をルーティンにするか」ですが、小さな目標の達成を促進するために必要なことは何かを吟味し、継続的に努力を続けていくべきものをリストアップし、その中から絞り込むとよいでしょう。たとえば、「国語の読解力向上」を目標として定めた場合、小学生ですからテスト成績に直結するテクニック的なものに目を向けるより、読みの力を底上げしていくことに目を向けるべきです。そこで、テキストの文章の「音読」「段落分け」「要約」などの練習などを候補に挙げるのもよいと思います。

 これらは、いずれも「面倒だ」といってお子さんが嫌がる作業です。だからこそ読解力が育たないのですが、できるだけ取り組みの敷居を低くし、やれる範囲に留める代わりに毎日するよう促してみてはいかがでしょう。そして、少しでもがんばっていたら喜んでやったり、音読などは聞いてやるといったような協力も親には必要なのではないかと思います。

 報告が長くなってしまいました。おかあさんがたとともに、小さな目標を達成するためのルーティンについて一緒に考えたところで、ワーク3「『小さな目標』設定 → 達成するためのルーティンを考える」に取り組んでいただきました。このワークでは、わが子の現状を振り返り、仮に目標とすべきは何かを考え、その目標を達成するために必要と思われるルーティンをいくつか挙げる練習をしていただきました。

 「小さな目標の設定」→「目標達成を促進するために、いくつかのルーティンを決めて実行する」――これは、弊社の会員家庭ならずとも、この夏休みにぜひ試みていただきたいことです。そうして、習慣づけから物事の達成への流れが築けるということを実感されれば、これから先の学びの生活においても大いに役立つのではないでしょうか。

 ワークの終了後は、各校舎の校舎長のまとめの言葉でこの日の勉強会を終了としました。

 これで「おかあさんの勉強会」の報告は終了ですが、最後に4・5年生という時期に大切にしたい習慣としてあげたいのが「基本的生活習慣」です。これが自立していないお子さんは、学習の習慣化もままなりません。前述の教育社会学者は、基本的生活習慣として具体例を6つ挙げておられましたので、ご紹介しておきましょう。

「朝、しっかりご飯を食べる」
「夜更かしをしない」
「朝、決まった時間に起きる」
「テレビを観たり、ゲームで遊んだりする時間を一定の枠内に
 収められる」

「宿題をきちんとやれる」
「前の日のうちに、翌日の学校の準備ができる」

 どうでしょう。以上のような基本的な生活習慣が自立しているということが、実は「勉強に向いた人間になる」ということを意味します。勉強面でのがんばりを利かせるには、生活面での基盤を健康的でしっかりとしたものにするのが前提だからです。こうした面を今一度親子で振り返ってみませんか? もしも、上記の6つのうちの半分以上に問題点があったなら、先にこちらのほうに目を向けるべきだと思います。

 勉強のエネルギーは、生活習慣の自立から生まれます。この夏休みを、生活習慣の改善に充てて成果をあげたなら、秋からの学習に明るい見通しが立つことになります。今からでも決して遅くありません。物事の成就は、基盤づくりから果たせるものです。その必要性のあるお子さんについては、生活習慣から状況を変えていきましょう。

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