2015 年 11 月 のアーカイブ

人生に彩りをもたらす私学教育 ~その2~

2015 年 11 月 30 日 月曜日

 今回も前回に引き続き、弊社主催のイベント(11月13日:「私学教育の真の魅力とは!」)で基調講演をしていただいた、修道中・高等学校校長の田原俊典先生のお話の内容をご紹介します。以下の記述は、田原校長が語っておられるというスタイルでまとめたものです。

 さて、次は人間の器が定まってくる思春期の子どもの教育についての重要な考えかたをご紹介します。みなさんは、“ビッグ・ロック”の話をご存知でしょうか。お手元の資料の写真のところ(このブログでは、イラストでご紹介します)をご覧ください。
20151123a

 この写真(イラスト)は何を私たちに伝えてくれるでしょうか? ちょっとわかりにくいかもしれませんね。 器のなかに、大きな岩と、砂利や砂、水を入れるとします。これらを満杯にするためには、どんな工夫が必要でしょうか?

 結論を言いますと、いちばん大きな岩を何よりも先に器に入れるということです。もしも、砂利や砂を先に入れてしまうと、下の写真(イラスト)のように、岩は器からはみ出てしまい、なかに入れることはできなくなってしまいます。
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 器に入れるものを、子どもたちが人生で学んでいくべきものにたとえるなら、大きな岩こそいちばん大切にすべきものです。この大きな岩を最初に器に入れることをしないと、子どもたちはそれを永遠に失ってしまうのです。なぜなら、さして重要でないものを自分の器に満たしてしまうと、子どもたちの人生は、つねに自分にとって一番重要なものに割く時間を得ることができなくなるからです。

 人生を有意義なものにできるかどうか。それは、まずもって大きな岩を自分の器に入れるかどうかにかかっています。私学は、宗教教育、躾、生徒指導などにおいて、“精神性”を軸に置いて指導しています。たとえば修道は、“生徒の自主性”を育てることを重要視しています。なぜなら、自主性を育てることが私たち修道の教育目標の一つである“リーダーの育成”にとって必須となるからです。

 子どもの自主性は、自然と育つものではなく、意図して働きかけてこそ育つものです。将来ひとかどの人物に成長する子どもは、早くから小さくまとまってはいません。放っておくとどうなるかわからない。そんな子どもを中1中2で厳しく鍛え、自主性の前提となる要素を築いていく。そうして6年間かけてじっくりとリーダーとしての資質を磨いていきます。このように、修道にとってのビッグ・ロックは、“自主性の涵養”と言ってもよいでしょう。

 リーダーにふさわしい自主性を身につけるまでのプロセスは多様であり、どの生徒にせよ順風満帆ではありません。そこで、先ほど申し上げたように、私学は中・高一貫という条件を活かし、6年間の成長過程を熟知した教員集団が生徒一人ひとりを静かに見守っていきます。つまり、手を差し伸べるのではなく“待つ”のです。

 とかく大人は子どもが育つのを待つことができず、手を貸してしまいます。心理学者の河合隼雄さんは、「さなぎは人が触ると死んでしまう」ことを例にあげ、「子どもの思春期に親が手をかけすぎると人としての成長を奪ってしまう」ということを著書で述べておられます。これは、子どもを立派に育てるにはどうしたらよいかを教えてくれる話ではないでしょうか。

 このように、“待つ”覚悟と勇気をもつことこそ、教育において最も大切なことです。こうした視点を私学がもち、一致団結して教育にあたっていることが、公立の学校との決定的な違いだと私は考えています。

 最後になりますが、私たちの教育現場から証明できる事実を通して、私学にわが子を託すことの価値について感じ取っていただければと思います。

 近年、「日本人には、自己肯定感が欠けている」ということがしばしば話題にされています。以下にご紹介するのは、2009年に日本青少年研究所が中高生を対象に調査した結果です。

「自分をダメな人間だと思うか」という質問に対し、YESと答えた生徒の割合

・米国 = 14.2%
・中国 = 11.1%
・日本 = 56.0%

 この結果をどう思われるでしょうか。「日本人は謙虚な民族だから」ということはあるにせよ、あまりにも低すぎる自己肯定感に驚いてしまいます。こうした自己認識は、今日のようなグローバル社会においては何かと支障をきたすのではないでしょうか。

 修道の生徒の特徴の一つに、友達の長所をリスペクトするという精神性があります。これは修道の長年の伝統と言ってよいかもしれません。生徒同士、互いに長所を認め合う。それによって、生徒の誰もが自己肯定感をもった存在に成長できる環境が保証されているのです。

 この自己肯定感があって初めて、自分で物事を判断し行動していく姿勢、すなわち自主性が備わることになります。つまり、自己肯定感を育む教育環境こそ、修道のめざす教育の実践にとって絶対条件となるものです。集団が形成されるあらゆる場面でリーダーが自然発生的に現れるという事実は、この自己肯定感を育む教育風土や伝統が連綿として受け継がれているということを物語っていると思います。

 私学には、固有の建学の精神があり、長い歴史のなかでそれぞれがめざす教育の実践を通して社会に有意な人材を送り出してきました。本日の話が、そうした私学教育のよさをいくらかでもお伝えできる場になったなら幸いです。

 本日会場にお越しいただいた保護者のみなさまも、立場は違いますが、私と同じように教育者の範疇にある大人の方々だと考えています。子どもたちの未来のために、今大人たちが何をすべきなのか、ともに考えていきましょう。最後までご清聴いただき、まことにありがとうございました。

 田原校長は、私学の校長を務められる傍ら、私学連盟の重職にも就いておられます。よって、この講演においても自校のことだけでなく、「私学教育のよさはどこにあるのか」という広い視点に立ち、私学という教育環境がどういうものか、そのよさはどこにあるのかを語っていただいたと思います。

 当日は、たくさんの保護者に参加いただきました。また、修道の田原校長には、この催しのために忙しいなか時間を割いていただきました。心より感謝申し上げます。

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人生に彩りをもたらす私学教育 ~その1~

2015 年 11 月 26 日 木曜日

 11月13日(金)には、弊社の主催で「私学教育の真の魅力とは!」とタイトルのイベントを開催しました。今回は、修道の田原俊典校長にお願いした、その日のイベントの基調講演の内容をかいつまんでお伝えしようと思います。

 田原校長に講演をお願いするにあたり、「私学で過ごす6年間が、生徒の人生の歩みに大きな影響を及ぼす」という視点から、「人生に彩りをもたらす私学教育」という演目で講演していただくことにしました。では、早速お話しいただいた内容をご報告しましょう。

 以下は、「田原校長がお話しになっている」という形式での記述となっています。ご了承ください。

 今日の社会において企業が人間に求めているものは何でしょうか。それは“多様性”です。企業の生き残りに必要なのは、様々な状況において多様な能力を発揮するユーティリティに長けた人間だからです。今日の社会は、日に日に変動しつつあります。このように常に変動する社会に対応する力は、どのような教育環境のもとで養われるのでしょうか。

 そこでまず、私学という教育の場がどういう成り立ちをもっているのかをご説明しておこうと思います。私学は、個人が私財を投げ打ってつくった学校です。何のためにそのようなことをするのかというと、国を興すために“有為な人材を育成する”という大きな目標があったからです。特に、私学の創成期には“リーダーの養成”ということが叫ばれていました。世の中を引っ張っていく人の育成をめざしたのです。このことからもわかるように、明確な建学の精神があるのが私学なのです。これは修道のような男子校のみならず、女子校も同じです。

 このように、私学は私人の財産をもとに設立された学校で、運営は公費(国や地方公共団体からの補助金)だけでなく、通学者の家庭から支払われる授業料等の学納金、および寄付金などで行われています。これに対し、公立学校は地方公共団体が設立者であり、運営に必要な費用は全て公費で賄われる点で大きな違いがあります。こうした成り立ちの違いから、公立学校が国の定めた範囲の教育しかできないのに対し、私学は公費による補助を受けながらも、自分たちの思う教育を行っているという点で大きな違いがあります。

 また、教員も公立学校は異動があるのに対し、私学の場合はその学校の先生になりたい人が集まっており、基本的に異動・転勤がありません。

 このことからもおわかりいただけると思いますが、私学にはそれぞれ明確な志があり、先生もその私学の構成員として、自校の教育理念の実現に向けて一生生徒の教育指導に当たります。そこに、根本的な違いがあるのだとご理解ください。

 続いて、子どもたちの未来と私学教育という視点から話を進めてまいろうと思います。少子高齢化に伴い、2030年には65歳以上の人口が32%になると言われています。当然、生産年齢人口は減少していきます。つまり労働力が著しく不足する時代が訪れようとしています。

   このことへの対処として、10年~20年後には約47%の仕事が自動化されると目されています。つまり、人間が行ってきた仕事の約半分を機械が行う時代になるのです。たとえば、医療においては診断結果をコンピュータに打ち込めば、治療法もデータで引き出せるようになります。昨今、車の自動運転化が話題にされていますが、交通もほとんど自動化されます。教育においては、講義もインターネットを利用すれば無料で受けられるし、20151123MOOC(ムーク)と呼ばれる無料オンライン公開講座も世界中に広まりつつあります。さらには、スカイプを利用すれば、無料で世界中の人と何時間でも論議に花を咲かせることも可能になります。また、感性が重要視される料理の世界においても自動化が進みつつあります。たとえば、IBMで開発されたワトソン君というソフトは、おいしい料理のレシピをつくることができます。 

 このように自動化がどんどん進みつつある時代においては、偏差値ではかれる学力は意味がなくなるでしょう。一つの価値観による教育では、時代の流れに到底対処できません。

  では、このような時代の訪れに合わせた教育とはどういうものでしょうか。自動化の時代になっても人間に求められる能力。それは個々のクリエイティブな能力、すなわち“創造性”を育む教育こそこれからの時代に求められるのではないでしょうか。

※長くなりそうですので今回はここまでとし、残りは次回にご紹介します。

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親のほめかたに物申す! ~子どもの本音~

2015 年 11 月 19 日 木曜日

 すでにこのブログで何度もご紹介していますが、弊社の4・5年部会員家庭の保護者を対象とした催しに、「おかあさんの勉強会」というのがあります。

 中学受験は小学生の受験です。したがって、受験を乗り越えるには保護者の方々、とりわけ家庭で接することの多いおかあさんの適切なサポートが必須となります。「おかあさんの勉強会」は、子どもの日々の学習がストレスなく、そして効果的に行われるためのバックアップの方法についてともに考えていくための場として企画した催しです。

 毎年春と秋に2回ずつ実施していますが、今年の秋は、「第1回:成績アップは効果的復習から!」「第2回:ほめかた次第で子どもは変わる!」というタイトルを掲げ、各校舎で実施しました。一昨日、三篠校の第2回目の勉強会が行われましたが、これををもって秋開催予定分を全て終えました。

 筆者はこの催しの企画立案者です(今秋実施分は、2名の広報担当者がプランに基づいて作成しました)。そういった理由もあり、実地検証をして今後に生かすという目的で、ある校舎の勉強会のフォローに出かけました。今回は、第2回の内容(わが子をいかにほめるか)に関して思ったことがありますので、それをお伝えすることにしました。

 まずは、みなさんに質問です。小学生のお子さんをおもちのかたへ。あなたは、お子さんをどのぐらいの頻度でほめておられますか?次のなかから当てはまるものを選んでください。

1.ひんぱんに(毎日のように) 2.かなり(1日おきぐらい) 3.ときどき(週1~2回ぐらい) 4.ほとんどほめていない

 勉強会においても、おかあさんがたにほめることの現状を振り返っていただくため、同じ質問をしました。それに対する答えですが、筆者がサポートで参加した校舎では、2または3と答えたかたが多く、1や4は、ゼロもしくはおられてもごく僅かでした。

 では、肝心の子どもたちはどう思っているのでしょうか。この催しの実施にあたり、4・5年生の任意にピックアップしたクラスのお子さんを対象に、「おかあさんがどのぐらいほめてくれるか」(上記の質問を子どもに向けてしたもの)を調べてみました。すると、3の「ときどきほめてくれる」が157人でいちばん多く、次に多いのが2の「1日おきぐらいにほめてくれる」で84人でした。ちなみに、1の「毎日のように」は57人、4の「ほとんどほめてくれない」は52人でした。だいたいおかあさんがたの答えと一致していますが、1が結構多くてうれしい半面、4も相当数あり、「おかあさん、もっとほめてよ!」という子どもたちの声が聞こえてくるようでした。20151116a

 ところで、筆者が今回注目したのは、子どもたちへのアンケートで集めた生の声でした。ちょっとご紹介してみましょう。「うれしくないほめられかたはどういうものか」という質問に対するコメントです(抜粋したものをご紹介します)。

1.話の中身がなくて「すごいね」ばかり言う
2.おおげさなほめかた
3.最初は全然ほめていなかったのに、おとうさんがほめ出したら     
  おかあさんもまねしてほめる

4.友達やきょうだいと比較してほめる
5.最後にため息をつくほめかた
6.「まだまだよ」と言いながらほめる
7.「がんばっていても、あなたができているときは他のみんなも
  できている」

8.「他の人のほうががんばっているけど、あなたもまあまあ
  がんばったね」

9.「やればできるじゃん」
10.ほめながら次の課題を出してくる

20151116b これらのコメントの内容を吟味すると、「子どもって鋭いな」「子どもだからとバカにできないな」と思わざるを得ません。ただほめられさえすればうれしいわけではないのですね。

 たとえば、9の「やればできるじゃん」といったほめかた・励ましかたは、親だけでなく学習塾の指導担当者もしてしまいがちですが、これはNGです。なぜでしょう。それは、日頃「実力がない」と思われていることの裏返しと子どもが受け取るからです。

 ほめ言葉がマイナス効果を生み出す点として、心理学の専門書に「容易な課題の遂行に対してほめてしまうと、(子どもに)低能力を推測させることになる」とあります。子ども自身が手ごたえを感じていないのに、「やればできるじゃないか」と言われると、子どもは「自分は能力がないと思われているんだ」と感じてしまうのですね。

 筆者自身にも心当たりがあります。随分前のことですが、入試が近づいたのを意識して子どもたちの奮起を促そうと、「きみたちはやればもっとできるんだ!」「最後まであきらめずにがんばろう!」といった趣旨のことを一生懸命語ったことがあります(成績が下のクラスだったため、「喝を入れてやろう」と思ってのことでした)。すると、「先生の話を聞いていると、なんだか受からないような気がしてきたよ」と反応する子どもがいました。他の子どもの顔を見ても、ちっともうれしそうではありません。

 一瞬面食らったのですが、すぐに「しまった」と思いました。子どもたちは、「自分たちに力がないから自信をつけさせるために、先生はあんな言いかたをしているのだ」と受け止めたのです。まさに図星と言わざるを得ません。「なんで子どもたちの気持ちを理解し、上手に励ましてやれなかったのか」と今でも後悔が残ります。

 1や2のようなほめかたも、子どもが小学校の中学年以上になると注意が必要です。どんなほめられかたでも喜ぶ子どももいますが、見え透いたほめかた、無理のあるほめかたを見破ってしまう子どもも少なくありません。ですから、4の「ほとんどほめていない」という現状は問題がありますが、そうかと言って無理にほめても効果が得られるわけではありません。

20151116c 5・6・7・8は、いずれも同じような親の心理が子どもから見透かされそうなほめかたです。すなわち、「一応ほめてくれてはいるが、ほんとうはちっとも満足していない」ということが子どもにもはっきりわかってしまうのですね。前述の心理学の専門書には、「『勉強をもっとさせよう』という隠れたメッセージ(勉強の強制)としてフィードバックが働くと、自発的な意欲が阻害される」とありました。こういうほめかたは、精神的な成長が遅れ気味な子どもにも親の本音がわかりますから、どういったタイプのお子さんにも効果がないばかりか逆に作用してしまいかねません。

 10の「ほめながら次の課題を出してくる」といった親の行動も、「もっとがんばらせたい」という親の意図が透けて見えるため、却って子どもの意欲が減退してしまうまずいほめかただと言えそうです。親の気持ちはわかるのですが、ほめられた喜びが意欲に転化する流れに親自らブレーキをかける行為に他なりません。

 最後に、4の「友達やきょうだいと比較してほめられる」のがなぜ子どもにとって嫌なのかについて。身近な人間と比較されると、比較された対象がいつも目の前に存在するわけですから意識しないわけにはいきません。特にきょうだいと比較された場合、必ず次のような連想をするのではないでしょうか。

 「今は自分がほめられているけれど、次は逆に自分と比較してお姉さんがほめられるかもしれない」

 「明日は我が身」という諺がありますが、立場を裏返してとらえるのが人間です。ほめるときにも、叱るときにも、他と比較するのではなく、子どものしたこと(努力のプロセスと引き出した結果)を指摘するほうが効果的です。

 ずいぶん長くなってしまいました。機会があれば、次は子どもが喜び意欲を高めるほめかたの例をとりあげてみようと思います。

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「朝食」について考えてみませんか?

2015 年 11 月 16 日 月曜日

 先日、朝の過ごし方について書きました(151019「朝の『ゴールデンタイム』をどのように過ごしていますか?」)が、通常朝の時間帯の中で最も大きな割合を占めることになるのが、「朝食の時間」ではないでしょうか。食事をとっている間はもちろんのこと、お母さんやお父さんが早起きして食事の準備をする時間も含めると、どのご家庭でも朝食にかなりの時間を費やすことになります。
 そのため、「時間がないから、朝食抜きでも仕方ない」という家庭も少なくないようです(私も独身時代は昼夜の1日2食生活を送っていました。もちろん今は違いますが)。
 国立教育政策研究所の調査結果によると、「朝食を抜くことがある」という児童の割合は全体の1割を超えていることがわかっています。以前と比較すると徐々に改善傾向にあるようですが、こうしたデータからは、まだまだ「朝起きてから何も口にしないまま学校に来る」という児童が一定数いることがわかります。

 大人であっても朝食をとらずに1日をスタートさせると悪影響があるといわれますが、発育途中の子どもにとってはそれ以上に大きな問題をいくつもはらんでいます。ここでは、そのうち3点を挙げてみたいと思います。
 まず、子どもの心身を健康な状態に保つための大前提として、1日の生活リズムを一定に保つことは非常に大きな意味をもっています。それは、起床と就寝の時刻をできるだけ統一し、日中はしっかり頭と体を活動させて、1日3回の食事をきちんととるといったことが、規則正しい生活リズムの土台となっているからです。その中で毎日の朝食を抜くということは、この生活リズムの土台となる部分を揺るがすことになりかねません。これが朝食を抜くことの問題点の1つ目です。
 どのような理由があるにせよ、幼少期から不規則な食事のとり方を続けていると、成長の土台となる規則正しい生活リズムを身につけることができない上、人が生きていくうえでの基礎となる生理的欲求を十分に満たすことができないまま心身の成長期を過ごすことになってしまうのです。

 2つ目に、朝食を抜くことは学力面に大きな影響を与えます。
 同じく国立教育政策研究所が行った調査によると、朝食を毎日とる子どもはテストの正答率が高く、逆に朝食をとっていない子どもは正答率が低くなるということがわかっています。この調査では、朝食をとる頻度別に結果をまとめられていますが、その結果からは朝食をきちんととる子どもほど正答率が高くなっていることがよくわかります。
 人の脳は、重さでは体重の約2%程度しかないにもかかわらず、全体の20%近くにもなるエネルギーを消費するといわれています。そして、夕食を食べて就寝した後、睡眠中も唯一のエネルギー源であるブドウ糖を毎時約5gも消費し続けるほど、脳は「大飯食らい」なのです。
 ところが、これほど大量のエネルギーを消費するにもかかわらず、脳にはエネルギーを貯めておくことができません。ですから、睡眠中は肝臓に蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖に変えながら消費することになるのですが、肝臓から栄養補給を受け続けるのにも限界があります。一定時間を越えると新たな食事によってエネルギーを補給しなければならないのです。
 こうして朝起きる頃には、脳は「一刻も早く新たな栄養を与えてほしい」状態になっているというわけです。それにもかかわらず、朝食を抜いて昼まで何も食べない状態を続けてしまうと、栄養が足りないまま無理やり稼働させ続けることになりますから、脳に多大なダメージを与えることになるのは言うまでもありません。

 3つ目に、毎日きちんと朝食をとらないことは、体力面にも悪影響を与えます。
 毎日朝食をとる子どもは、そうでない子どもと比較して体力検査の合計点が高いことが文部科学省の調査によって明らかにされています。これには、身体への栄養補給が十分なされているかどうかという点が関係しているのはもちろんのこと、朝食をとることによって「その日活動する準備ができる」という点も大きく関わっています。
 人は食事をとることによって体温が上昇します。そして、体温が上昇すると体を動かすための準備が整えられます。加えて、きちんと朝食をとった状態で1日の始まりを迎えると、上昇した体温を長時間にわたって維持できるということが医学的にも証明されています。つまり、1日の始まりに朝食をしっかりとっておくことは、体温を上昇させて活動するための準備を整え、これから始まる運動や勉強の効果を十分に高めてくれるのです。

 151116いかがでしょうか?
 加えて、できることなら家族みんなが揃って朝食をとっていただきたいと思っています。ご両親がお仕事や家事でいそがしいなどの理由で、なかなか全員が揃わないという家庭も多く、子どもの「孤食」が問題となって久しいですが、だからこそ、可能な限り朝は家族みんなが少し早起きをして、ゆったりした気持ちで過ごしていただきたいのです(それでも無理な場合はもちろん仕方ないですが)。
 毎日朝食の場で顔をあわせていれば、「今日は調子が良さそうだな」とか「何だか沈んだ表情をしているな」とか、1日の始まりに子どもの様子をしっかり見ることができます。それに応じて、親子で会話を交わせる時間をもつことができれば、親子ともにその後の学校や会社で過ごす時間が心にゆとりをもった有意義なものになるのではないでしょうか。
 もし、朝食を抜くことがあったり、家族バラバラで食べていたり・・・というご家庭は、ぜひこの機会に見直されることをおススメします。

(butsuen)

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イベントのご案内「私学教育の真の魅力とは!」

2015 年 11 月 9 日 月曜日

 ここ数年、11月には私学教育のよさや特長についてお伝えするイベントを開催しています。なぜこの時期かと申しますと、11月が弊社の次年度講座の会員募集のスタート時期にあたり、ご家庭においても受験や学習塾通いを意識され始めるころだからです。そうしたタイミングに合わせ、「私学とはどういう教育をするところか」をお伝えする催しを実施すれば、受験生活の開始に備えて情報を収集されるかたのお役に立つのではないかと考えた次第です。20151109

 一昨年は修道と広島女学院、昨年は広島学院とノートルダム清心と、男子校と女子校それぞれ1校ずつ声をおかけし、男女私学2校の校長先生のジョイント形式による催しとしました。今年はどのような催しにしようかといろいろ考えたのですが、修道の田原校長お一人にお願いし、たっぷりと時間をかけて「私立学校の教育」についてお話しいただくことにしました。

 こうした趣旨ですので、田原校長には修道の教育についてのみならず、「私立学校とはそもそもどういう教育の場なのか」という根本に基づいたお話をしていただき、お子さんが男子か女子かに関わらず保護者の参考にしていただけるよう配慮した催しとなっています。

 このイベントは、「私学教育の真の魅力とは!」というタイトルで、11月13日(金)に広島ガーデンパレス(JR広島駅新幹線口より徒歩約6分)を会場に実施します。実施要領に関しては、当ホームページにご案内していますので、そちらでご確認ください。なお、対象者は来春小学4~6年生になる児童の保護者となっていますが、趣旨や内容に興味をおもちになったかたならどなたにお越しいただいても歓迎いたします。お気軽に足を運んでいただければと思います。

 さて、当日の大まかな構成と概要についてお伝えしておきましょう。全体を3部に分けて、なるべくテンポがよくインパクトのある催しにしたいと考えています。

第1部:基調講演「人生に彩りをもたらす私学教育」

 そもそも私学はどういった経緯で誕生したのでしょうか。広島の私学に目をやると、修道は江戸時代の広島藩の藩校に源を発しています。広島学院やノートルダム清心は、第二次大戦直後、原爆で焼け野原となった広島の復興を願うイエズス会の方々(団体はそれぞれ異なります)によって設立されました。また広島女学院は、明治の初期に砂本貞吉牧師によって創設された聖書と英語の私塾が学校としての出発点となっています。

 このように、私学は個人や団体の建学理念をバックボーンとしている点で共通しています。これらが学校としての個性に深く関わっており、その学校出身者ならではの“味”を醸成しているのだと言ってよいでしょう。そしてそれぞれの私学の教育理念には、「いついかなる時代にあっても、人間として生きていくうえで大切にすべきものを携えた人間の育成」という視点が根底にあるという点で共通しています。こうした私学ならではの教育特性は、そこで6年間学ぶなかで一人ひとりの生徒に浸透し、個々の人生の歩みに有形無形の影響を及ぼします。

 話者の田原校長は修道という私立学校の校長であるだけでなく、広島の私学連盟の要職に就いておられる教育者です。また、広島の私学界きっての卓越した話術の持ち主です。自校の教育だけに限らず、私立学校が輩出する人間の特色についてわかり易くお話しくださると思います。私学についての有意義な視点を得られるまたとない機会になることでしょう。

第2部:私学の魅力ウォッチング!(映像)

 普段は見ることのできない、私立学校の校舎内の様子や生徒さんの学校生活、部活やさまざまな行事などの様子を映像でご紹介します。この映像は、修道中学校の藏下教頭が作成されたもので、約15分というボリュームたっぷりの内容となっています。したがって、映像はすべて修道の紹介ということになりますが、私学の学校生活がどういうものかをイメージするうえで大変役立つと思います。
※ご紹介する映像は、修道の「学校説明会」で使用されたものと同じものです。

第3部:校長先生に「そこが聞きたい!」

 「私学って、結局公立学校と比べてどこが違うの?」という疑問をもたれるかたにとって、このコーナーはきっと明確な答えを提供してくれる場になると思います。

 たとえば、「私学生徒の愛校心と一般の公立学校の生徒の愛校心に違いはあるの?」「私学は学費の負担が大きい。それでも私学を選ぶメリットはどこにあるの?」「私立は男女別学が多い。そのメリットはどういうところにあるの?」など、一般的な学校の説明会では学校から切り出してもらえない情報も含め、進学の特性やよさについてより詳しく知ることのできるコーナーにしたいと考えています

 また、入試では必ずしも希望通りの結果が得られるとは限りません。「もしも志望校に受からなかったとき、親はどう対処したらよいの?」「私学で成績上位者になれなかったら、肩身が狭い思いをすることはないのか」、といったようなことについても田原校長にアドバイスをしていただく予定です。

 第3部まで終了した段階でいくらか時間が残るようなら、会場からの質問も受け付ける予定でいます。今小学校6年生の子どもたちが高校2年生生になる2020年には、大学入試改革が実行され、今の知識偏重型入試が大きく変わると言われています。

 こうした大学受験の様相の変化を踏まえ、中学・高校生活をどのような学校でどのような生活を送るべきか。そうした観点からも、今回の催しを通して私学進学の意義を考えてみてはいかがでしょうか。

 それでは当日、みなさんのご来場をお待ちしています。

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