「朝食」について考えてみませんか?

2015 年 11 月 16 日

 先日、朝の過ごし方について書きました(151019「朝の『ゴールデンタイム』をどのように過ごしていますか?」)が、通常朝の時間帯の中で最も大きな割合を占めることになるのが、「朝食の時間」ではないでしょうか。食事をとっている間はもちろんのこと、お母さんやお父さんが早起きして食事の準備をする時間も含めると、どのご家庭でも朝食にかなりの時間を費やすことになります。
 そのため、「時間がないから、朝食抜きでも仕方ない」という家庭も少なくないようです(私も独身時代は昼夜の1日2食生活を送っていました。もちろん今は違いますが)。
 国立教育政策研究所の調査結果によると、「朝食を抜くことがある」という児童の割合は全体の1割を超えていることがわかっています。以前と比較すると徐々に改善傾向にあるようですが、こうしたデータからは、まだまだ「朝起きてから何も口にしないまま学校に来る」という児童が一定数いることがわかります。

 大人であっても朝食をとらずに1日をスタートさせると悪影響があるといわれますが、発育途中の子どもにとってはそれ以上に大きな問題をいくつもはらんでいます。ここでは、そのうち3点を挙げてみたいと思います。
 まず、子どもの心身を健康な状態に保つための大前提として、1日の生活リズムを一定に保つことは非常に大きな意味をもっています。それは、起床と就寝の時刻をできるだけ統一し、日中はしっかり頭と体を活動させて、1日3回の食事をきちんととるといったことが、規則正しい生活リズムの土台となっているからです。その中で毎日の朝食を抜くということは、この生活リズムの土台となる部分を揺るがすことになりかねません。これが朝食を抜くことの問題点の1つ目です。
 どのような理由があるにせよ、幼少期から不規則な食事のとり方を続けていると、成長の土台となる規則正しい生活リズムを身につけることができない上、人が生きていくうえでの基礎となる生理的欲求を十分に満たすことができないまま心身の成長期を過ごすことになってしまうのです。

 2つ目に、朝食を抜くことは学力面に大きな影響を与えます。
 同じく国立教育政策研究所が行った調査によると、朝食を毎日とる子どもはテストの正答率が高く、逆に朝食をとっていない子どもは正答率が低くなるということがわかっています。この調査では、朝食をとる頻度別に結果をまとめられていますが、その結果からは朝食をきちんととる子どもほど正答率が高くなっていることがよくわかります。
 人の脳は、重さでは体重の約2%程度しかないにもかかわらず、全体の20%近くにもなるエネルギーを消費するといわれています。そして、夕食を食べて就寝した後、睡眠中も唯一のエネルギー源であるブドウ糖を毎時約5gも消費し続けるほど、脳は「大飯食らい」なのです。
 ところが、これほど大量のエネルギーを消費するにもかかわらず、脳にはエネルギーを貯めておくことができません。ですから、睡眠中は肝臓に蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖に変えながら消費することになるのですが、肝臓から栄養補給を受け続けるのにも限界があります。一定時間を越えると新たな食事によってエネルギーを補給しなければならないのです。
 こうして朝起きる頃には、脳は「一刻も早く新たな栄養を与えてほしい」状態になっているというわけです。それにもかかわらず、朝食を抜いて昼まで何も食べない状態を続けてしまうと、栄養が足りないまま無理やり稼働させ続けることになりますから、脳に多大なダメージを与えることになるのは言うまでもありません。

 3つ目に、毎日きちんと朝食をとらないことは、体力面にも悪影響を与えます。
 毎日朝食をとる子どもは、そうでない子どもと比較して体力検査の合計点が高いことが文部科学省の調査によって明らかにされています。これには、身体への栄養補給が十分なされているかどうかという点が関係しているのはもちろんのこと、朝食をとることによって「その日活動する準備ができる」という点も大きく関わっています。
 人は食事をとることによって体温が上昇します。そして、体温が上昇すると体を動かすための準備が整えられます。加えて、きちんと朝食をとった状態で1日の始まりを迎えると、上昇した体温を長時間にわたって維持できるということが医学的にも証明されています。つまり、1日の始まりに朝食をしっかりとっておくことは、体温を上昇させて活動するための準備を整え、これから始まる運動や勉強の効果を十分に高めてくれるのです。

 151116いかがでしょうか?
 加えて、できることなら家族みんなが揃って朝食をとっていただきたいと思っています。ご両親がお仕事や家事でいそがしいなどの理由で、なかなか全員が揃わないという家庭も多く、子どもの「孤食」が問題となって久しいですが、だからこそ、可能な限り朝は家族みんなが少し早起きをして、ゆったりした気持ちで過ごしていただきたいのです(それでも無理な場合はもちろん仕方ないですが)。
 毎日朝食の場で顔をあわせていれば、「今日は調子が良さそうだな」とか「何だか沈んだ表情をしているな」とか、1日の始まりに子どもの様子をしっかり見ることができます。それに応じて、親子で会話を交わせる時間をもつことができれば、親子ともにその後の学校や会社で過ごす時間が心にゆとりをもった有意義なものになるのではないでしょうか。
 もし、朝食を抜くことがあったり、家族バラバラで食べていたり・・・というご家庭は、ぜひこの機会に見直されることをおススメします。

(butsuen)

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達, 子育てについて, 小学1~3年生向け

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