2015 年 12 月 10 日 のアーカイブ

男の子を育てるのは大変??

2015 年 12 月 10 日 木曜日

 先日、息子を男子校に通わせているあるお母さんが、学校の魅力として「宇宙人(=わが子)を人間にしてくれるところ」という非常にユーモアのあるコメントをされていました。それを受けて、今回は男の子を育てることについてのお話をさせていただこうと思います(「うちには女の子しかいないよ」という方は、ご参考までにお読みいただければ幸いです)。

 昔からよく「子育てにおいて、より手がかかるのは男の子」だといわれてきました。確かに、赤ちゃんのころには熱を出しやすいとか、気に入らないことがあるとすぐに癇癪を起こすとか、会話ができるようになってからもなかなか親の言うことを聞かないなど、一般的にいわれる子育ての「難しさ」は男の子の方が大きいのかもしれません。
 ただ、男の子・女の子どちらの子育てもそれ相応に大変で、男親の私から見れば「女の子も十分手がかかるぞ」と思います。ですから、「男の子の方が・・・」という感覚は、きっと長い時間育児に携わることになるお母さんの実感にもとづくものが大きいのではないでしょうか。お母さん方にとっては、同性である女の子よりも、異性である男の子の子育てに難しさを感じる場合が多いはずですからね(もちろん「そこが楽しい」というお母さんもいらっしゃいますが)。

 そんなお母さん方から聞かれるのが、「ほめて育てたいけど、うちの子のどこをほめればいいのかわからない」という声です。
 片づけもせずに身の回りのものはいつも使いっ放し、言われないと宿題にも取りかからない、毎日のように忘れ物はするし・・・という現実を前にして、何度叱っても効果がないとなると、「ほめるところがあったら、誰か教えてほしい」とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。実際、当社に子どもを通わせている保護者の方からもそうした声が聞こえてきます。
 あくまでも一般的な話(+私の経験)ですが、概して男の子は多動で落ち着きがなく、言葉で表現することが苦手で、口より先に手が出てしまう傾向が強いものです。そして、他人から見れば「訳の分からないもの」に夢中になって、時間を忘れて没頭するタイプが多いのも男の子の特徴といえますね。

 ですが、男の子には、上記のような「手のかかる」点が多い反面、数字や科学系に強く、記憶力に優れていて、色々なことを合理的・客観的に考えられる・・・などの良い面もたくさんあります。
 先に挙げた「口より先に手が出てしまう」という点に関しても、男の子が生まれながらにもっている衝動性や暴力性の高さによるものですから、活かし方・発揮の仕方次第で、それを上手に活用することが可能です。これをうまくコントロールすれば、男の子ならではの非常に高い集中力を発揮したり、短期間で爆発的な力を発揮したりすることにつなげることもできるわけです。入試や競技など真剣勝負の場で「本番に強い」「不測の事態にも臨機応変に対応できる」という男の子の特性もここに通じているのでしょう。

 ただし、どんな環境でどんな生活をしていても、いつの間にか自然とコントロールできるようになるのかといえば、そんなことはありません。男の子が自らの衝動性を上手に操れるようになるためには、幼いころから「訓練」を積み重ねる必要があります。
 「訓練」というと大げさですが、幼いころから自分の気持ちをきちんと言葉にして伝えたり、感情の昂りをスポーツや芸術活動など目に見える形で表現したりといった、適切な形で自らの感情を表現する取り組みを、どれだけ積み重ねながら成長できているかを意味しています。「そんなことは誰でもやっている」と考えられがちですが、核家族化が進み、人との関わりが減少している今の子ども達の中には、こうした経験が不十分なまま年齢を重ねていってしまう子が思いのほか多いのです。

 151210②もちろん、わんぱくでやんちゃ盛りの男の子には、何でもやらせたい放題にするのではなく、「重し」になる存在も必要でしょう。問題のある言動に対しては、当然きちんと叱らなければなりません。
 しかし、叱ることが大半を占め、子どもの言動を抑えることに重きを置いてしまうと、いつまで経っても自分の感情をコントロールする術を身につけることができないままです。将来、年齢的には十分に「大人」なはずなのに、思い通りにならないと感情を抑えられない、計画立てて動こうとしない、自分が興味のあることしか取り組まない・・・といった状態にもなりかねません。大切なのは、親が「重し」の役割を果たせなくなった後ですから。

 基本的な親の姿勢として、明確な「叱るべき基準」を自分の中で決めておいていただきたいと思います。例えば、身に危険が及ぶようなことをしたとき、他人を傷つけるようなことをしたとき、約束を守らなかったときなど、「これをしたときには叱る」と親がはっきり決めておいて、その場合には毅然とした態度で叱らなければなりません。逆にいえば、この基準に触れるもの以外は(例え親が理解できないものであっても)、広い心でまずは受け止める姿勢が必要だということです。

 普段の生活の中で子どもが口にする意見にきちんと耳を傾け、子どもへの言葉のかけ方を工夫して、自分の思いを吐き出せるような場や環境を整えてあげてください。もちろん親の考えを伝えることは必要ですから、まずは子どもの意見を聞いた上で、「お母さん(お父さん)は、こう思うんだけど」と少し工夫して柔らかく伝えられるといいですね。
 休みの日の行動に関しても、親が最初から制限するのではなく、親子で一緒に計画を立てましょう。勉強や習い事だけでなく、時には色んな場所へ出かけ、様々な人と関わって多くの経験をさせることも成長の糧になります。その場その場で色々な人やものに出会うと思いますが、子どもが親の思いと違うところに興味を示したとしても、(余程問題のあるものでなければ)子どもの興味関心を認めて、まずは見守る姿勢をもってあげてほしいと思います。

 お母さんにとっては、「自分には理解できない」という思いに捉われてしまうことが多いかもしれません。しかし、少し視点を変えて、男の子の「聞き分けがなく、落ち着きのない」(宇宙人のような?)面をじっくり観察してみてください。きっとそれが単なる欠点ではないことに気づかれるはずです。そして、どうすればその面を「主体性があり、行動力がある」という長所に変えることができるのか、工夫しながら日々働きかけてみてはいかがでしょうか。
 「これは『訓練』なんだ」と思えば、わが子の言動に対するイライラも少しは軽減するかも?しれませんよ。

(butsuen)

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カテゴリー: 子育てについて, 家庭での教育, 小学1~3年生向け