日本の男子の問題点を検証すると…

2017 年 1 月 10 日

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 正月は、子どもにとって年中行事として欠かせない楽しみの一つです。しかしながら、中学入試をめざす6年生の子どもたちには入試本番が目の前に控えています。どの受験生も、今年に限ってはお雑煮を食べ、お年玉をもらったあとは正月気分もそこそこに、入試に向けた最後の点検や調整に気持ちを切り替えておられることでしょう。泣いても笑っても受験生活はあと残りわずかの期間です。悔いののこらぬよう、しっかりがんばっていただきたいですね。

 さて、今回は年末のテーマに引き続き、男子の問題を話題にとりあげました。前回は外国における男子の問題についてご紹介しましたが、今回は日本のそれについて書いてみようと思います。

 外国の男子に関わる問題は、主として少年期の男子にまつわるものでした。しかしながら、日本で問題とされてきたのは、どちらかというと青年期の男子に見出される問題です。そういうと、なかにはすぐに思い当たったかたもおありでしょう。いわゆる、フリーターやニートと呼ばれる青年が増えている問題です。ご存知かと思いますが、フリーターというのは、15~34歳の年齢(学生や主婦を除く)で、就職せずに自らの意志でパートやアルバイトをして生活している人のことで、ニートは同様の年齢、同様の立場にあり、仕事をせずに求職活動もしていない人のことをいうようです。

 フリーターやニートは、本来は男子のみに適用される言葉ではありません。なぜ男子が問題視されるのでしょうか。それは、相応の年齢に達したら、「男は結婚して家庭をもち、一家の主として働いていてこそ一人前である」という観念が根強く日本社会に残っているからだと言われています。こうした男性中心の見かたに基づく社会の揺らぎ。それが表面化した問題だということなのでしょう。

 日本の青年男子に関わる問題も、その原因は欧米と同じように大きく二つに分類されています。一つは、“若い男性の堕落”という批判的な視点に立ったものです。「働く意欲の欠如」「親に寄生している」などの若者批判がこれに該当するでしょう。もう一つは、欧米の少年の逸脱の理由に対する見かたと同じく、男子を被害者的な視点でとらえたものです。たとえば、女子の優遇、男子の不利といった観点から、男子が不当に差別されているとみなす人たちがいます。

 この問題も、素人が深入りすると誤解や不勉強で読者を混乱させかねません。ここまでに留め、そろそろ今回予定していた内容に移ろうと思います。このブログをお読みくださっているかたの多くは、小学生をおもちの保護者であろうと思います。よって、日本における男子の問題を、学齢期にある子どもに焦点を当てて考えることのほうに興味がおありであろうと思います。

 この話題に着目したきっかけは、大学の先生の著作が目に留まったことでした。その先生によると、欧米の学齢期にある男子の問題は日本の子どもには無縁かというと、そんなことはなく、前回ご紹介したドイツの子どもの学力低下の問題と同様のことが日本においても見られるそうです。それについて言及されている著述部分をご紹介してみましょう。

 ( 前略 )ドイツで男子を敗者とみなす言説が台頭するようになったきっかけの一つが、2000年のPISAにおいて男子の成績がふるわなかったことであった。実はこれまでに結果が公表されている過去5回のPISAの結果を見てみると、日本でも、成績がふるわないのはどちらかといえば男子の方であることがわかる。「科学」の平均点については、第5回(2012年)では男子が女子を有意に上回ったが、残りの三回では統計的に有意な男女差は見られない。ところが、「読解力」については、他のほとんどの参加国と同様に、過去5回とも平均点が男子のそれを有意に上回る結果となっているのである(国立教育政策研究所2015)。

 ( 中略 ) 学校生活において女子よりも男子に積極性がない傾向は、深谷昌志らが首都圏の中学生1500人を対象に行った質問紙調査の結果からもうかがえる。中学生に自己評価を求めたところ、「その場を仕切るタイプ」(男子26.1%<女子31.9%)、「意志が強い」(男子46.9%<女子53.3%)という、積極性をイメージさせると同時にどちらかといえばこれまで男性的と見なされてきた項目においても、女子の方が肯定する割合が高くなっている。また、「友だちをまとめるのがうまい」(男子16.3%<女子20.7%)、「納得がいかなければ先生にも文句を言う」(男子32.2%<女子37.0%)、においても、それほど大きな差ではないものの、女子の方が肯定する割合が高くなっている。一方、自分の現状に対する満足度という点では、男子の方が高い傾向が見られ、「学力」(男子30.4%>女子18.8%)、「性格」(男子46.0%>女子33.0%)、「友達関係」(男子70.9%>女子63.3%)のいずれにおいても男子の方が満足度が高くなっている。これらの結果から、深谷らは「元気な女の子」と「ほどほど志向の男の子」という対照性を確認している(ベネッセ教育研総研2003:深谷2003)。

 引用部分の内容について確認してみましょう。PISA(ピザ)というのは、OECDが3年おきに15歳児を対象として実施している国際比較テストのことで、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野で調査しているものです。OECD加盟国だけでなく、非加盟国も多数参加している大がかりなテストです。

 先ほどの引用文にある、2015年のPISAテストの結果が直近の調査ですが、それによると読解力については、日本の男子も西欧諸国の傾向と同じく、男子のほうが女子よりも点数的に下回っています(全参加国で、同様の結果が示されていました)。また、男女の平均点の差は、調査参加国の全てのなかで4番目に少ないものでした。男子の正答率は、62%で、女子のそれは65%でした(文部科学省・国立教育政策研究所のHPによる)。

 こうしてみると、読解力においては男子が女子より劣るのは世界共通の現象のようです。日本の男子は女子との差がかなり少ないほうだということもわかりました。

 また、「その場を仕切るタイプか」「意志が強いか」といった性格面での自己認識では、女子のほうに積極性が感じられるのに対し、男子はその点において女子ほどにないという結果が示されています。かつてなら、この二つの項目は男子のほうに高いポイントが出ているはずでした。男女平等の原則が浸透しつつある近年の傾向なのでしょうか。そのいっぽうで、男子が高ポイントを得ている項目もありました。「学力」「性格」「友達関係」などでは、男子のほうが満足指数が高くなっています。

 さて、この結果だけを見ると、日本の場合は「男子の問題」を深刻に受け止めるほどのことはないようにも思えてきます。しかしながら、すでに書いてきたように、「男子は女子より思考が幼稚」「男子のほうが読解力で劣る」というとらえかたは、かなり一般的なものになっています。また、真面目にコツコツがんばる傾向のある女子のほうが、中学、高校、大学においても学力面で優位に立ちつつあることも報告されています。

 また、これは筆者の思い込みかも知れませんが、自分の「学力」や「性格」「友人関係」を肯定的にとらえるのは、男子のほうが単純で幼稚であることの裏返しのようにも思います。自分を肯定的に受け止めるのは決していけないことではありません。それどころか望ましいことです。しかしながら、現実が伴っていない男子が多いのではないでしょうか。

 たとえば、前回からの話題を取り上げるきっかけとなった書物の著者(関西大学教授の多賀太先生)によると、「学業面以外での、いくつかの反社会的行動や社会的不適応を引き起こす割合も、女子よりも男子で高い傾向が見られる。たとえば、少年鑑別所入所者に占める男子の割合は女子の8倍以上であり、少年院の入院者に占める男子の割合は女子の9倍以上である。不登校やひきこもりは圧倒的に男子のほうが多い傾向にある。さらに、2014年の19歳以下の自殺者に占める男性の割合は69.3%と三分の二以上を占めている」と述べておられます。

 こうしてみると、学童期の男子に見られる諸問題は、西欧に限らず日本でも看過できないレベルに達しています。その割に、日本では青年期の男子の問題のほうがクローズアップされているのです。なぜなのか。それについては、前出の先生もご自身の考えを述べておられましたが、今回はとりあえず問題が現実にあるということをお伝えしたところで終わろうと思います。

 ただし、学童期の男子の問題のうち、読解力の不足を中心とする男子の問題について、最後にひと言お伝えしたいことがあります。

 まず、就学前の段階での親子の会話生活を大切にしてください。また、読み聞かせを男子の子どもには特に励行してください。人の話を聞くこと、自分の考えを発信すること、物語の世界を楽しむこと。これらが、プレリテラシーの段階でとても重要な働きをします。言葉や思考に堪能な子どもにするだけでなく、親子の信頼関係、心の安定した子どもにするうえでとても大きな作用を果たすからです。

 また、小学校に入ってからは、音読を上手に仕向け、声に出して本を読むことを励行させてください。音読が軌道に乗るまでは、親子交替で読む、親が範読するなどの工夫をお願いします。そうして、声に出して滑らかに読めるようになれば、黙読へとよりスムースに移行できます。黙読がしっかりとできる子どもは、自然と本読みになります。語彙の充実、より深い読みへの移行、思考力の向上、学力アップとよい循環が約束されていきます。

 こうしたことについて触れると、限りなく文字がかさんでいきますので、ここまでで終わらせていただきます。ともあれ、男子の問題は幼少期からの親の関わりで未然に防げるものです。「うちは関係ない」と思わず、わが子にできることを精いっぱいしてあげてください。

 男子の問題については、筆者自身もう少し勉強して、再び話題にとりあげてみたいと思っています。


カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

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