2017 年 2 月 のアーカイブ

広島県の公立6か年一貫校 受検と進学の状況

2017 年 2 月 27 日 月曜日

 公立一貫校への受検者が、弊社でも少しずつ増えています。それに応じて合格者、進学者も増加傾向にあります。そこで、今回は広島の公立6か年一貫校である、広島県立広島中学校、広島市立広島中等教育学校の特色や受検者数推移、今年の合格者、進学者などの話題を取り上げてみようと思います。

 公立の一貫校について興味はおありでも、どういう学校なのかをよくご存じないかたもおられるかも知れません。そこで、ごく初歩的なことも含めてお伝えしてみようと思います。

 公立の6か年一貫校は、大きく二つのタイプに分かれます。中学校だけでなく、高校からも入学者を募集する「併設型」と、高校からは募集せず中学校からの入学者を6年間通して教育する「中等教育学校」とに大別されます。広島県では、前者が「広島県立広島中学校・広島高等学校(東広島市高屋町)」、後者が「広島市立広島中等教育学校(広島市安佐北区三入東)」に該当します。

 それぞれの開校年度ですが、「県立広島」は平成16年4月、「市立広島中等教育」は平成26年4月に開校されました。後者は、もともとは併設型の公立一貫校として設立されていた、広島市立安佐北中学校・高等学校が衣替えし、中等教育学校として再出発したものです。

 県立広島は開校当初から多くの注目と期待を集めました。また、最初の卒業生(高校からの入学者)の大学への進学状況もよく、たちまち人気校としてのポジションを不動のものにしたことを筆者も記憶しています。現在、全国には多くの公立一貫校がありますが、同校はその嚆矢の一つと言える存在であり、また指折りの成功例として注目されました。

 同校は、広島県内の公立学校で唯一SGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)に国から指定を受けているように、グローバルリーダーの育成を掲げた教育に特色があります。そのための教育実践として、日本の伝統文化の理解・継承(世界に目を向けるうえでの重要な前提として)、ことばの教育(論理的な思考・表現力を磨き、確かなコミュニケーション力を携えた人間を育成する。中学で「ことば科」を設置)、グローバル社会で生きていくための英語力育成(英語によるディベートの実施、中学で全員英検3級以上をめざす、海外への修学旅行、海外の姉妹校への留学、海外研修など)が掲げられていますが、その成果も各方面から高く評価されています。大学への進学実績も優秀で、昨年度は、東大に3名、京大に5名の合格者が出ています。国立大学の推薦入学枠が拡大された今年度は、早速同校から東大・京大に推薦枠からの合格者があったようです。

 市立広島中等教育学校は今年で開校4年目ですが、中等教育学校への衣替えが決まった段階から、熱心な広報活動を展開されていました。こちらも「将来のグローバルリーダーの育成」を旗印に掲げておられます。同校の教育の特色としてアピールされているのは、「6か年完全一貫教育プログラム」、「立志(LISI)プロジェクト」、「徹底した少人数指導」などです。同校の前身である安佐北中学・高校時代から、すでに大学への合格実績は上昇基調にありましたが、今後のさらなる躍進が期待されています。

 両校への受検志願者(応募者)の推移を簡単な資料で見てみましょう。なお、公立の一貫校の入学者選抜は、「適性検査」と名づけられています。したがって、この検査を受けることを「受検」と呼んでいます。

 

 両校とも、ここ4年間志願者が増え続けています。いち早く開校した県立広島は、JR沿線にあり、寮を備えて県全域から生徒を募集していることから、修道や広島女学院などの私学人気校と並んで県内で最も多くの受検生を集めています。いっぽうの市立広島中等教育は、広島市安佐北区の国道から分かれた団地の中にあり、交通の便が決してよいとは言えません。それでも120名の定員に対して、一昨年、昨年、今年と3年続けて500名オーバーの志願者を集めています。

 次に、弊社会員の県立広島と広島中等教育への受検状況、合格状況、進学状況を過去4年間について振り返ってみようと思います(市立広島中等教育は、4年前が初年度募集)。

 ご覧のように、両校とも弊社からの合格者数が年々増加する傾向を示しています。女子のほうに偏りがちであった受験者数、合格者数、進学者数も、男子の増加でバランスが整いつつあります。

 難易度について言うと、県立広島のほうが設立年度も古く、人気も定着していることもあり、合格を得るのは難しい状況にあります。単純に160名の募集定員に900名余りが受験するわけですから、倍率の高さは驚くべきものがあります。公立一貫校は、合格発表時には定数通りに合格者を出されますから、単純計算では私立の難関校以上の倍率ということになります。無論、合格者全員が入学手続きをするわけではありませんので、一定数の補欠繰上り合格者が出ます。しかし、それでも相当な倍率であり、この学校への入学は相当に困難だと言えるでしょう(弊社からの合格者で、入学を辞退した受検生のほとんどは、広島大学附属、広島学院、修道、ノートルダム清心に進学しています)。

 なお、両校とも義務教育期間内での生徒募集となるため、教科の学力試験による選抜を行っていません。資料の分析や論述などで受検生をふるいにかけています(詳細は、両校のHPにてお確かめください)。したがって、塾での学力テストの成績と入試結果との関連性は、国立・私立中学校の入試ほど高くありません。とは言え、学力試験で成績のよいお子さんの合格率が高いのは間違いありません。特に県立広島については、学力試験でもかなり成績のよいお子さんでないと、合格を得るのは難しい状態です。

 受検者の居住地域は、以前このブログで簡単にお伝えしたとおりです。県立広島は、地元の東広島市域の受検生が全体の半数前後を占めていますが、広島市の安芸区や東区など、JRの電車で通学できる地域からもかなりの数のお子さんが受検しています。そして、合格した場合にも進学校として実際に選んでいます。今年については、男子合格者19名のうち、10名が東広島校の受検生で、9名が他地区からの受検生でした。女子は、合格者20名のうち10名が東広島校の受検生で、10名が他地区からの受検生でした。なお、弊社からの志願状況ですが、県立広島が男女合わせて約100名、広島中等教育が50名余りでした。

 以上のように、公立の一貫校はもはや中学受験の対象校として確固たるポジションを得ています。弊社は基本的に広島の伝統的な私立一貫校への進学を基軸に置いた指導を行っていますが、公立一貫校への進学を希望されるお子さんの増加に伴い、予め公立一貫校への受検希望者を確かめたうえで、基礎学力の育成指導を終えた段階(6年生の8月末~9月頃)から公立一貫校への進学対策指導を行っています。「対策期間が短いのではないか」と思われたでしょうか。心配無用です。弊社では、社をあげて適性検査の内容を十分に研究しています。適性検査の過去問をもとに対策指導をしただけでは、確実な解答を引き出す力は養えません。適性検査への対応力のベースになるのは、何と言っても「確かな教科の基礎学力」と「思考力」です。これらを養うほうが遥かに多くの時間が必要ですし、また重要なことだと弊社は認識しています。

 今のところ、公立一貫校のみの指導コースは設けておりません。これは、需要の数の問題もありますが、それ以上に言えるのは、弊社が「入るための指導」のみを目的とするのではなく、「将来を見据えた指導」を眼目においているからです。中学校進学後に学ぶ内容は、進度の差こそあれ、どの学校においても同じです。そこでの学習を快適に進めて成果をあげるには、確かな基礎学力、揺るぎない学習習慣、自ら学ぶ自律的姿勢、計画的・戦略的に学ぶ姿勢、様々な観点から解決の突破口を引き出す思考力が求められます。それらの育成指導こそ、進学塾に課せられた使命なのだと弊社は考えています。

 また、公立一貫校合格のみに的を絞った指導では、大切な学力基盤を築くための指導が疎かになってしまいます。「短期間に軽い対策のみで受検したほうが、無駄なお金がかからなくて済む」と考えるかたもおありかも知れません。しかし、そういう考えに基づく受検では、そもそも合格自体が難しくなってしまうのは前述した内容でお分かりいただけることでしょう。検査の課題に答えるためには、一定水準以上の教科基礎学力が必要であり、それを養うことは中学進学後の学力伸長にも欠かせないことではないでしょうか。

 「わが子によりよい教育環境を」とお考えになる保護者の方々にとって、今や公立一貫校も立派な選択肢の一つになっています。国立、公立、私立を問わず、それぞれの学校の教育内容についてよく研究し、お子さんにふさわしい進路選択が実現するようサポートしてあげてください。

 なお、今回は広島の公立一貫校入試の様子や、弊社からの受検や進学状況についてお伝えしました。機会があれば、全国的な公立一貫校の動きや受検状況などについてもお伝えしてみようと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験

実りある受験生活の実現に向けて ~2017 5・6年部開講!~

2017 年 2 月 20 日 月曜日

 中学入試の余韻が残るなか、2月18日(土)には2017年度の5・6年部講座の開講式を行いました。この日、多くの校舎では入試を終えた卒業生を送り出すための「卒業会」も実施されており、6年部の指導担当者にとっては慌ただしい1日でした。

 卒業生の子どもたちにとって、これまで塾と言えば勉強をするための場所でしたが、この日に限っては子ども同士で歓談したり、先生と思い出話をしたり、一緒にゲームをしたりする楽しい時間が用意されています。受験生のみなさんには、この日をよい節目にして、もうすぐ始まる中学校生活へと気持ちを切り替えていただきたいと願っています。

 入試というものは、すべての受験生の望みを叶えてはくれません。6年部の指導担当者は、新たな受験生を迎え入れるたびに、「全員の望みが叶うよう、全力で指導しよう!」と決意をするのですが、毎年必ずと言ってよいほど思わぬ失敗に涙する受験生がいます。そんな受験生の心の内を斟酌することを忘れるわけにはいきません。「今度こそ、受験生の子どもたち全員が笑顔で卒業会を迎えられますように!」という思いを胸に、新年度の講座のスタートに臨んでまいります。

 さて、今回は5年部と6年部の新年度講座の開講にあたり、保護者の方々に多少なりとも指針やアドバイスになる情報をお届けしたいと思います。ただし、十分に話題を練ったわけではありません。思いついたことを簡単にまとめたに過ぎません。ご了承のほどお願いいたします

 

① 当分は、“成績”よりも“取り組み”の状態に気配りを。

 4年部までと異なり、5年部に進級すると勉強も本格的なものになります。学習教科も算数と国語に理科や社会も加わり、否が応でも受験を意識させられてきます。6年部に進級すると、受験勉強の本格化は一層進みます。4月末には6年生いっぱいまでの教科書範囲の学習を終え(基礎力養成期を終了)し、5月のGW明けからいよいよ応用力の養成期に突入します。

 4年部ではテストも算数と国語の2教科でしたが、5年部以降は4教科の400点満点で表示されます。これは親にとっても刺激的であり、お子さん以上に一喜一憂されるケースも少なくありません。しかしながら、成績を見ては親が過剰に反応すると、お子さんは勉強以前に親の反応のほうに気を取られ、肝心の日々の取り組みに集中できなくなるケースがあります。まして、成績を落とすたびに叱られると、やる気も自信も失いかねません。

 これは、5年部生のご家庭だけでなく、6年部生のご家庭にも言えることです。「入試まであと1年を切った」とお子さんにハッパをかけても、まだ意識も取り組みも追いついておらず、成績に追い立てられた勉強に陥ってしまう恐れが多分にあるでしょう。

 よい取り組みをすれば、必ず成績はついて回るものです。まずは、成果のあがる取り組みのできる状態にもって行くことが先決です。そこで弊社では、5年部も6年部も開講から当分の間は、「授業を受けるうえで大切にすべきこと」「家庭での計画的学習を確立すること」「テストに備えたまとめ学習のコツを身につけること」など、受験生活を安定軌道に乗せることを主眼にした指導を行っていきます。保護者には、当分のあいだ成績は参考程度に留めていただき、「やるべきことはわかっているか」「やるべきことがどれだけできたか」に関心を寄せながら見守り、お子さんにアドバイスや激励をしてあげていただきたいと存じます。

 開講式においては、カリキュラム表、学習のしかたを説明した冊子、家庭の学習計画表のモデルプランなどをお配りしています。勉強の内容にまで関わる必要はありませんが、どういう勉強をするのかについては知っていたほうが、適切なアドバイスや激励ができるでしょう。特に、学習の計画を立てるときには親も相談相手になり、無理なくやりこなせるプランになっているかどうかを確かめておくことも必要です。

 

② 少しずつ、中学校に関する情報に目を向けさせる。

 受験をめざす以上、親は「受験生としての自覚を!」と期待し、受験での合格をめざした熱心な取り組みを望むものです。

 しかしながら、まだ人生を10年前後しか経験していない小学生の場合、受験の何たるかを十分にわかっているとは言えません。また、国立や私立、公立の一貫校に進学することの意味を理解するのも困難です。無論、将来の人生設計に基づく進路として学校選択を位置づける知識ももち合わせていません。

 それでいて、「○○中学校はどんな学校か」「○○中学校へ行きたい!」という願いや目標意識があるかどうかは、受験勉強に向かう姿勢や取り組みに大きな影響を与えるものです。

 そこで、お子さんが5年生・6年生になるごろから、そろそろわが子の進学先として候補に入れている中学校に関する情報に少しずつ触れさせることもあってよいのではないかと思います。各中学校には充実したホームページがあります。それを定期的に閲覧しながら、学校のトピックや催しなどをピックアップし、ときどき家庭での話題にしたり、公開されている催しに親子一緒に見学に行ったりするのもよいでしょう。

 実際、候補にしている私学の文化祭や体育祭などを親子で見に行き、校風や学校の雰囲気などについてお子さん自身の好みや相性を確かめておられるご家庭も結構あるようです。入試が終わってから行先を決めようとすると、どうしてもじっくり検討する時間が足りなくなりますし、行きたい中学校が少しでも早くから絞られたほうがお子さんのがんばりにも好影響を与えるでしょう。

 

③ 勉強のよさを享受しながらの受験生活の実現を!

 とかく受験勉強というと、親も子も合格のためにやるものと思い込みがちです。しかしながら、前述のようにまだお子さんは受験することの目的についてそんなにわかっているわけではありません。ともすれば、目先の楽しい遊びに心を奪われたり、勉強をさぼりたくなったりするものです。そこで、「早く勉強を始めなさい!」「まだテレビを見ているの!」などと、毎日叱ってばかりになる家庭も出てきます。これが毎日のように続くと、お子さんは「なんで勉強しなきゃいけないの!?」と親に抵抗したり不平を言ったりするようになります。

 いっぽう、勉強の進めかたを手の内に入れ、勉強の習慣がしっかり根づいたお子さんは、「ためにする勉強」という意識よりも、「当然のことをしている」「決めたことをやらないと気が済まない」といった意識で勉強をしています。そればかりか、「わからないことを自分で解決したときの喜びが味わえるから」と言います。

 学習心理学者の文献を拝読すると、「『勉強は何のためにするのか』に対するほんとうの答えは、進学のため、将来のためなどではなく、今学んでいる学習対象の中にあるのだ」と書いてありました。すなわち、ほんとうに勉強に没頭した状態においては、人間は何かのためにそれをしているのではなく、疑問の解決に心が集中し、「知りたいから学んでいる」のだということなのでしょう。

 脳科学者の書かれた書物に、人間が今のように進化したのは、「森の中に暮らしていたサルのなかに、まだ見ぬ世界への好奇心が押さえきれなくなった一群がいて、サバンナに降りて行ったのが始まりだ」というような著述がありました。ここにも、「なぜ学ぶのか」の答えが見出されます。子どもたちが勉強に熱中し、頭脳を鍛えていく原動力は、「知りたい!」という好奇心や探求心なのですね。

 筆者は思います。おそらく、受験勉強ですばらしい飛躍を遂げている子どもは、上述のようなほんとうの勉強を体験しつつ、徐々に受験というものの意味や目的を理解し始め、最終的に勉強の醍醐味の追及を原動力にしながら、受験突破をめざした勉強に没頭するようになるのだと。保護者におかれては、このようなお子さんの成長の流れを視野に入れ、これから1年間、2年間の受験生活を見守っていただきたいと存じます。

 子どもたちにとって、小学校5年生、6年生の1年間は、私たち大人のそれよりもはるかに濃密で進歩の急激な1年間です。この1年間の勉強の充実こそが最も大切なことであり、それが現実のものになったなら、必然的に受験での目標も達成できるのではないでしょうか(無論、入試突破に向けた学習上の作戦については徹底的に研究し、サポートしてまいりますのでご安心ください)。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 勉強の仕方, 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育

2017中学入試 弊社会員の受験状況

2017 年 2 月 13 日 月曜日

 中学入試を終え、受験生たちの進路もほとんどが決まったようです。現在、弊社の会員受験生家庭からお送りいただいた「受験の結果と進学校」の報告書の集計を進めています。進路選択の状況は、全ての会員受験生の進路を確認したうえでお伝えする予定です。

 今回は、弊社の会員受験生の受験校の選択状況に関する簡単な資料をお届けしようと思います。内容は、主要な中学校に、それぞれ会員の何%が受験したか、一人平均何校を受験したかというものです。来年度以降に受験されるご家庭の参考にしていただければ幸いです(弊社は受験校の選定に関与していませんので、家庭単位での受験校選びの参考になると思います)。

 

 

 まず男子から見てみましょう。男子の場合、修道にはほとんどの会員が受験しています。広島の男子受験生に最も人気のある私学の面目躍如といったところでしょうか。広島学院や広島大学附属の受験率ですが、この2校は難関として知られるため、受験するかどうかを学力の状態や合格の可能性から判断された結果であろうと思います。

 附属・学院・修道以外について見てみましょう。このところの受験生減少傾向にあって、全般的に合格を巡る競争が緩和されつつあります。そのため、「念のためにたくさん受けておこう」という考えが弱まり、上述の中学以外の受験校を城北かなぎさのいずれかに限定する家庭が増えました。城北となぎさの受験生が減少気味なのはそのためであろうと考えられます。なお、「城北かなぎさか」の選択においては、男子校か共学かという選択基準とともに、立地条件がかなり作用していると思われます。広島市の中央部、東部、北部地区の受験生は城北、広島市西部や廿日市市の受験生はなぎさを受験するケースが比較的多いという傾向が見られました。

 次に、女子の受験校選択についても見てみましょう。受験率がいちばん高いのは広島女学院で、8割弱の女子会員が受験しました。こちらも男子の修道と同様に、広島の女子受験生に最も親しまれている私学であることが伺える結果です。清心や広島大学附属は難関として知られます。やはり学力状態や合格の可能性を考慮した結果の受験率だと考えられます。

 安田女子中も、男子の広島城北と同じような位置づけにあり、このところ受験者数をやや減らしています。この後の資料でおわかりいただけると思いますが、以前よりも受験生一人当たりの受験校が減少しつつあることも多分に影響していると思われます。ただし、同校は交通の便(JR・アストラムラインの新駅)が改善されたことも影響してか、昨年比では受験生が増えている模様です。広島なぎさについては男子受験生と同様に、広島市の西部、廿日市市に住まいのある会員の受験比率が高くなっています。

 広島市立中等教育学校の設立により、共学志向の女子受験生に新たな選択肢が増えました。その結果、広島女学院、安田といった女子私学や、私立共学校である広島なぎさの受験者数に若干の影響を与えているように見受けられます。男子校の広島城北には今年若干受検者数を減らしましたが、市立中等教育は男子の受け皿にもなりますので、こちらへの影響もあるかもしれません。

 男女共通している傾向は、資料を見ての通り3校受験がいちばん多く、次が4校受験、その次が2校受験という順序になっていることです。かつて受験生が今よりもずっと多かったころには、4校受験は当たり前で、5校受験、6校受験もかなり見られたことを思うと、様変わりを感じさせられます。

 では、男子の受験校選択で気づいたことをお伝えしましょう。男子の場合、1校受験は極めて少数でした。受験校を調べてみると、「この学校以外は考えていない。ダメなら公立へ進学する」という強い意志が感じられました。結果は、合格、不合格の両方が見られました。最初に受けた中学校が本命で、そこに合格した後受験をすべてキャンセルされた受験生がありましたが、これは1校受験に含めておりません。

 2校受験はそこそこの数がありました。個別に調べてみると、学力に覚えのある受験生に見られる傾向としては、「広島学院と修道」という組み合わせがこれにあたります。また、学力的にそこまではいかない受験生の場合、「行きたい学校」と「合格の可能性の高い学校」の組み合わせで2校選んでおられるケースが多かったようです。

 3校受験は、高学力層では「附属・学院・修道」の組み合わせが代表的で、かなり多くありました。私学志向の強い受験生の場合、「学院・修道・城北かなぎさ」というパターンが主流で、これが一番多かったようです。4校以上の受験だと、かなり受験校選択のバリエーションが増えますので、いろいろな組み合わせがありました。

 女子の場合はどうでしょう。女子の1校受験は男子よりも多く見られました。これは男子の場合と違い、安田女子などで専願という形式の受験を利用されるケースがあることによるものです。

 女子の2校受験で目を引いたのは、「附属・清心」の組み合わせです。これは、弊社のトップ層に見られる受験パターンで、「附属の可能性は厳しい(合格発表数が僅か)ものの、合格の可能性があるはず。清心合格には自信がある」といったタイプの受験生が、このような強気の受験をされているようです。無論、違った考えから2校の受験を選択されているケースも見られます。

 3校受験は「附属・清心・女学院」のパターンが代表的です。私学で受験校を組む場合、「清心・女学院・安田かなぎさ」のパターンがかなりの比率を占めます。4校受験となると、男子同様にいろいろな組み合わせが可能になりますから、ここでは割愛します。

 なお、近年は公立一貫校の県立広島や、広島中等教育学校も多数の受検生を集めています。県立広島は東広島市にあるため、弊社では地元の東広島校の受検生が中心となります(地元では大変な人気です)。この中学校を受ける会員は、広島大学附属や清心、広島女学院など、広島市内の有力校と組み合わせる例が多いほか、東広島市にある近畿大学附属と組み合わせるケースもかなり多く見られます。最近では広島市内の校舎に通う会員で、安芸区などの広島市東部(JR沿線に住まいがある)在住の受験生もかなり受けるようになりました。また、以前は共学志向の女子受験生に人気が偏っていましたが、徐々に男子の受検が増えています。合格後、同校への進学を選択する広島市域の受験生も増加しています。

 市立広島中等教育学校は、完全6か年一貫教育の公立学校に衣替えしてから、毎年着実に受検者を増やしつつあります。今年は去年に引き続き、5百名以上の受検がありました。受検するのは、主に安佐南区・安佐北区在住の受験生ですが、これは同校が安佐北区の桐陽台という団地にあり、通学可能な地域がかなり限定されることに起因するものと思われます。同校を受検する会員は、広島大学附属・広島市内の私学(2~3校)との組み合わせが多いようです。比較的受験校が多いのは、同校が公立であることから、学力試験ではない選抜形態(適性検査)をとっているため、合格への見通しを得にくいことも影響しているものと思われます。なお、設立当初は同校を合格しても実際に進学する受験生は僅かでした(ほとんどが女子)が、今年の進路報告書を見ると、男女とも進学先に選ぶケースがかなり増加しています。

 県立広島中学校、広島中等教育学校への進学希望者の増加により、弊社では学力の仕上げ期に入ると、両校の適性検査対策のための指導も各校舎で実施して対応しています。両校への合格者も徐々に増え、今年はいずれも30名以上の合格者を輩出しています。ただし、大学までの学力形成の道筋を踏まえるなら、適性検査対策といううわべの準備に留まらず、確かな基礎学力を備えておくことが重要なのは言うまでもありません。また、適性検査自体も基礎学力なしには受からない内容にシフトしつつあります。これから両校を受検されるお子さんも、学力の基礎をしっかりと固めていきましょう。

 以上、駆け足で弊社会員の受験校選びの様子をご報告しました。これから受験される受験生家庭の参考になれば幸いです。

 

低学年部門の催し案内 「玉井先生教育講演会」2/18(土)

 「玉井式国語的算数教室」の創始者、玉井満代先生の教育講演会を2月18日(土)に開催いたします。玉井先生は国際派のキャリアウーマンで、世界の情勢と子どもの教育をつなぎ合わせ、これから社会に出ていく年齢の子どもの教育について建設的な提案のできる貴重な識者のひとりです。

 玉井式は、インドやシンガポール、マレーシアなど、アジアで諸国で評価され、急速に浸透しつつあります。玉井先生は現在もインドに出張中とのことですが、こうした仕事に従事しておられる玉井先生だからこそ、肌で感じておられることがあると思います。

 このたびの講演会では、「今の小学生が大人になってからの社会を見通し、どのような教育が求められているか」についてお話しくださる予定です。実施日時や会場は当HPにてご案内しています。無料ですので、もしお時間の都合がつけば、ぜひお気軽にお越しください。玉井先生のユーモアに満ちた情熱あふれる講演は、多くの保護者にわが子の教育について明確な指針を与えてくれるとともに、日々の子育てに元気を吹き込んでくれることでしょう。

 なお、この催しは低学年部門の主催ですが、4年生以上のお子さんの保護者で興味をおもちになったかたがおありでしたら、どうぞ遠慮なくお越しください。歓迎いたします。

 

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験

さあ、次の人生ステップへ! ~中学入試終了に寄せて~

2017 年 2 月 6 日 月曜日

 2017年度の中学入試が終わりました。12歳の入試は、おそらく受験生のみなさんにとってこれまでにない不安と緊張の伴う体験だったことと思います。結果は様々でしょうが、全ての受験生の挑戦が終わりました。

 学習塾としての弊社の入試実績は、HPにて公表しています。ただし、この実績数値は受験生のみなさん一人ひとりの汗と涙の結晶というべきものです。毎年のことですが、百点満点と言える結果を引き出したお子さんもいれば、「どうして…」と、声を失うような結果に終わったお子さんもいます。指導担当者一同、このような一人ひとりの結果を真摯に受け止め、より一層質の高い指導めざして精進してまいる所存です。今後とも、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 保護者のみなさんは、わが子の受験までを振り返ってどのような感想をおもちでしょうか。「入試の何たるかを、ほんとうにわかっているのか!?」と、親をやきもきさせたお子さんも、さすがに本番が近づいてくると受験のことを真剣に考えるようになります。そして、やっとのことで受験生らしい表情をしてがんばり始めます。そんなわが子の様子を見て、「ああ、今のような勉強をもっと早くからやってくれたらよかったのに」と、ため息をつかれたおとうさんおかあさんもおられたのではないかと拝察します。

 ともあれ、今まで受験を経験したことのあるお子さんにとっても、その意味を正面から受け止め、結果に思いを巡らせ、気持ちを高ぶらせたり不安に揺さぶられたりする経験をしたのは、このたびの中学受験が初めてだったのではないでしょうか。

 ちょうど、子ども時代を抜け出し、思春期を迎えようとする年齢期の受験です。入試を間近に控えたことで、大人に近づく段階特有の心の高揚や揺れに自分自身が驚いた受験生も少なくなかったと思います。燃え盛る意気込みを見事集中力に変え、最高の結果を引き寄せた受験生もいたことでしょう。そのいっぽう、予期せぬ不安や緊張に我を失い、実力の片鱗すら発揮できないままに入試を終えてしまった受験生もおられるのではないかと想像します。残念無念の思いを噛みしめている受験生の心の内は察するに余り有ります。

 しかしながら、受験までの長い学習生活で培ったものの価値は、志望校に合格したか否かで変わるものではありません。今回の入試では残念な結果になったお子さんも、次の中学校という人生のステージでがんばればよいのです。受験生活で培った学びの姿勢や取り組みは、単に入試突破のためにあったのではありません。これからの長い人生で求められる知的活動の推進力を育むためにもあったのです。中学入試を終えた今、受験したことの意義はそこにあるのだと、お子さんを励ましてあげていただきたいと存じます。

 中学進学後、子どもたちの学習活動においては、これまで以上に主体性や自発性、実行力が求められることになります。だからこそ、中学受験をめざす学習生活で培ったものの重要性について思い起こしてほしいのです。授業の前、テキストの内容に目を通しておくと授業がわかり易かった。授業をしっかりと聞き、板書や気づきをノートに記しておくと、学んだことを確実に吸収できた。授業後やテスト前におさらいをしておくと、テストでよい成績を収めることができた。宿題は、提出日までの日数から逆算して、計画的にやりこなせば慌てずに済むことを学んだ。――これらの体験で得たものこそ、入試の結果にも勝る受験生のみなさんの宝物なのです。

 つまり、これまでの学習生活で得たものが生きてくるのは中学校進学からなのです。言うまでもありませんが、中学、高校、大学と、年齢が上がるごとに学問は高度化し、簡単な暗記などでは通用しなくなります。そのいっぽう、いったん染みついた勉強のくせは、わかっていてもなかなか直せなくなるものです。そこに至って初めて、「大事なことはどの学校に進学したかということではなく、どんな取り組みかたを身につけたかということなのだ」ということに気づかされるものです。

 志望校に受かったお子さんも、残念な結果を受け入れざるを得なくなったお子さんも、「問題はこれからなのだ」という点では同じです。結果を得て安心してしまわず、結果が伴わなかったと言って悲観せず、これからの中学校生活に夢と展望をもって臨んでいただきたいと、切に願う次第です。

 最後に、おとうさんおかあさんにお願いしておきたいことがあります。お子さんがどの中学校に進学することになったとしても、それを心から祝福してあげていただきたいということです。それが、これからのお子さんのさらなるがんばりと成長のために欠かせないからです。たとえ受験の結果が親の期待通りでなかったとしても、次のステップに向けて、まず親が気持ちを切り替えなければ子どもに親の気持ちが伝わってしまいます。お子さんに、がんばりのエネルギーを吹き込んであげてください。

 私どもは、これまでたくさんの受験生を見届けてきましたが、大学進学、社会への参入という重要な節目を高いレベルで通過しているのは、常に前向きさを失わない、努力を積み重ねていくタイプの生徒さんでした。全ての受験生のおとうさんおかあさんに、ぜひそのことを胸に留めていただきたいと存じます。

 これから先には、まだまだお子さんにはたくさんの試練が待ち受けていることでしょう。しかしながら、おとうさんおかあさんの愛情深い見守りと応援があれば大丈夫です。「受験生活を通じて培ったものを、これからの学習生活で生かせば大丈夫だよ」と、優しく温かく励ましてあげていただきたいと存じます。

※今回の記事は、新年度会員募集活動の合間に大急ぎで書きました。不適切、舌足らずな表現の箇所が目につきましたら、事情に免じてご寛容のほどお願い申し上げます。

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カテゴリー: がんばる子どもたち, ごあいさつ, 中学受験