2017 年 5 月 のアーカイブ

“家庭学”を知っていただくための催し

2017 年 5 月 29 日 月曜日

 肌に心地よい柔らかな春の日差しが、いつの間にか眩しくギラギラした夏の日差しに変わろうとしています。それもそのはず、もう6月なんですね。

 毎年、弊社では6月の上旬から夏休みの講座の会員募集を始めています。今年は6月5日(月)から参加の申込受付を開始いたします。低学年部門の講座は、通常の講座と同様に申込順に受け付けます。また、4・5年部は、夏の講座に限り、入会のための「会員選抜試験」を受けなくても、申し込まれたらどなたも受講していただくことが可能です(各校舎とも、定員に達したら締め切ります)。

 なお、6年部は半年後に入試を控えており、夏休みからはかなり実戦的な入試対策へとギアを上げていきます。したがって、お試し的に受講いただく制度はご用意しておりません。夏の講座からの入会を希望されるかたは、各校舎で毎週土曜日に実施する「会員選抜試験」(算数と国語の学力試験)をお受けください。この試験で一定の成績をあげたかたは、夏の講座から会員として通学いただけます。「夏期会員選抜試験」は、6月10日(土)を皮切りに夏の講座直前まで毎週土曜日に実施します。

 夏の講座に関する具体的な案内は、月末頃に当ホームページに掲示します。また、お問い合わせ・資料請求をされたかたには、6月初めごろ夏の講座の案内や申込書等ご家庭にお送りします。

 さて、今回は夏の講座の募集開始にあたって実施する二つの催しをご案内します。趣旨や内容をご確認いただき、興味をおもちになったかたはぜひ参加いただきますようご案内申し上げます。

① 2017「夏のおかあさんセミナー」<小1~小6児童の保護者対象> 無料

 中学受験の勉強で成果をあげるための前提として、受験生の子どもに求められるのは何でしょう。それは、自分のことを自分でやれる自律性です。そして、その大本となるのは確かな生活習慣です。そこから、自立した学びの芽が育ちます。この流れを上手に築くことが、中学受験を逞しく乗り越える子どもにし、さらに将来の飛躍へといざなってくれるのです。

 本催しは、夏休みに子どもの生活と勉強のありかたを見直し、それを起点にして成長の流れに好循環の連鎖を引き起こす方法をご提案するために企画しました。自らを律することのできる人間へと成長しながら中学入試を突破すれば、先々ますますの成長や飛躍が期待できることでしょう。また、子どもが望ましい成長を遂げるには、親の関わりが大変重要な役割を果たします。本催しでは、将来の大成までを視野に入れ、親の子育てスタンスや夏の講座期間中のサポートなどについてもお伝えします。

 現在お子さんが弊社の教室に通っておられるかどうかは問いません。また、入会を視野に入れておられるかどうかも問いません。興味をおもちになったなら、どうぞお気軽にお越しください。

2017「夏のおかあさんセミナー」 実施要領

対  象/小学1~6年生児童の保護者
     ※おとうさんの参加も歓迎します。
日  時/6月16日(金)10:30~12:00
会  場/西区民文化センター3F
     大会議室A
     (広島市西区横川新町6-1)
     ※JR横川駅南口前。
主な内容/1.がんばれる子どもにするための条件
      生活習慣の改善、読みのスキルアップなどを提案します。
     2.児童期の学びが子どもの人生を決める!?
      将来のため、どんな学びの経験が必要かを提案します。
     3.親が変われば子どもの勉強も変わる!
      子どもの意欲を向上させる親のありかたを考えていきます。
参加方法/予約や申し込みの必要はありません。お気軽にお越しください。

② 2017「夏期入会ガイダンス」<小4~小6児童の保護者対象> 無料

 夏休みは、講座のスタート時と並んで、中学受験対策の学習を始めるうえで最もふさわしい時期の一つです。夏休みから始めることの利点は、学校への通学のない長い休暇を利用できるので、毎日の学習スケジュールを立てやすく、受験勉強に専念できる点にあります。

 この夏休みというタイミングを活かし、受験態勢をいち早く整えれば、秋からの受験生活に確かな見通しも整ってきます。そこで弊社では、以下の日程で「夏期入会ガイダンス」を開催いたします。この催しは校舎単位で実施し、各校舎の責任者が指導の方針や内容についてできるだけわかり易く保護者の方々にご説明いたします。まずはこのガイダンスに参加してみてください。家庭学習研究社の受験指導がどういうものか、おおよそのことがお解りいただけると思います。

 中学受験が高校・大学への受験と異なるのは、人間として未完成な児童期の子どもの受験だということです。そのことは、子どもの成長につながる受験を実現すれば、子どもの将来の大成に向けた確かな土台を築けることを意味するでしょう。逆に、間違った受験勉強や生活を子どもに押し付けると、将来の能力開花につながる道筋を台無しにしてしまう恐れもあるのです。

 「入会ガイダンス」では、こうした「子どもの望ましい成長」という視点に立った受験指導をどう実践し、どんな成果をあげているかについて、各校舎の責任者が詳しくご説明します。中学受験は、進路を決めるための単なる手段などではなく、将来の大成に向けた貴重な足がかりを築く場になるのだということが、きっとご理解いただけると思います。どうぞお気軽に参加ください。

2017「夏期入会ガイダンス」 実施要領

対  象/小学4~6年生児童の保護者 
     ※お子さんの中学受験を視野に入れておられる保護者。
日  時/下表を参照ください
会  場/弊社各校舎
主な内容/1.夏から始める中学受験対策 重要な3つの柱
      「学習習慣」「学習意欲」「学習方法」の重要性を
      お伝えします。
     2.将来の飛躍を見通した学習指導とは!?
      “家庭学”での受験勉強が将来どう役立つかをお話しします。
     3.夏休みから始める受験対策のガイドライン
      各学年の夏休みの講座について簡単にご説明します。
     4.中学入試の実状・弊社の合格状況 他
      近年の受験状況について、基礎的なデータをお届けします。
参加方法/予約や申し込みの必要はありません。お気軽にお越しください。

※呉校は、個別対応の「中学受験ガイダンス」という呼称の催しを実施します。受験と夏の講座への参加に関わる相談に応じる催しです。電話申込制です。
※東広島校においては、「入会ガイダンス」のほか、呉校と同様の個別対応の催しも実施します。期間は6月27(火)~7月15日(土)です。

 児童期は、子育てやしつけにおいても大変重要な段階にあります。ただ塾に子どもを預けて勉強の手ほどきをしてもらう、鍛えてもらう、という発想だと、子どもの成長に関わるべき親の出番が見えてこなくなりがちです。

 “家庭学”に子どもを通わせての受験生活とはどういうものか、親はどう関わればよいのか、上記の催しはこれらについて具体的な情報をお届けするための催しです。受験の結果も、子どもの成長も伴う充実した受験生活を実現しませんか? 弊社は、そのためのお手伝いをする学習塾であると自負しています。

 入試に受かっても、子どもの学びの姿勢や生きかたに問題が生じては意味がありません。せっかくの受験が台無しになってしまいます。ご家庭の保護者と私ども学習塾とが互いに同じ視点に立ち、子どもたちの豊かな学びと有意義な人生の実現にむけて、ともに協力してまいりましょう。

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受験勉強は今どうなっていますか?

2017 年 5 月 22 日 月曜日

 2017年度の前期講座が開講して約3ヶ月(4年部は2か月半)が経ちました。進学塾への通学が初めてのお子さんも、今ではだいぶ慣れてきたことでしょう。

 ただし、“ナレ”は“ダレ”にもつながります。開講間もないころの程よい緊張感が薄れてくると、いつの間にか勉強が惰性に流れてしまうお子さんがいます。逆に、何もかもが初めての経験で戸惑ってばかりだったお子さんが、1~2カ月もすると学習の要領がつかめてきて、今では勉強への手ごたえを感じておられるケースもあるでしょう。一人でも多くのお子さんが、毎回のマナビーテストを楽しみに意欲的な学習生活を過ごされることを念じています。

 今回は、お子さんの勉強ぶりに「もうちょっとがんばれないものか」「勉強がマンネリに陥りつつあるのではないか」と、少し心配をされているご家庭の保護者に、受験生活の活性化に向けた提案をさせていただこうと思います。

 すでに何回もお伝えしましたが、小学生までの子どもの学習意欲を支えているのは、「学習から得られる達成感」や「目標を達成したいという気持ち」ではありません(無論重要な要素ですが)。それよりも、「親に認めてもらいたいという願望(低~中学年)」や「親の期待に応えたいという気持ち(中~高学年)」が、子どもの前向きな学習を実現するうえでより大きな作用を果たします。それは子どものもつ精神的な世界が未熟であり、全面的に親を頼って生きているからに他なりません。

 このことを踏まえるなら、「やる気が見られない」「惰性に陥っている」「実行力を欠く」など、わが子の勉強に対する親の不満があったとしても、それは必ずしも子どものせいとばかりは言えません。「子どもの現実は、親を鏡に映したようなものだ」と言われるように、親の生きかたや子どもへの関わりかたが原因である可能性が多々あります。ですから、「子どもの学習意欲は親次第なのだ」と思っていただくとありがたいです。わが子の受験生活に関心を寄せる親の姿勢が大切なのです。親がフレッシュな気持ちを失えば、当然子どもの勉強も惰性に陥ってしまいます。

 では、具体的に親(特におかあさん)はどういう点に気をつければよいのでしょうか。

①子どもの努力やがんばりを信じて見守る

 子どもは親に信頼されていると思うと張り切ります。長い受験生活は、親の信頼という後押しあってこそ乗り切れるものです。子どもがやるべきことをしない。注意する。叱る。無理やりやらせる。これを繰り返すと、親子の信頼関係は崩れ、子どもの意欲喪失につながってしまいます。

 「でも、ちゃんとやっていないのに信頼するなんて」と思われるかたもおありでしょう。しかし、その考えかたは生産的ではありません。子どもは親次第なのです。親が「今からだってやれるはず」という信念をもてばやる気に灯は灯ります。一度親子で受験勉強についてじっくりと話し合いましょう。成績のことより、毎日の取り組みを大切にすることが親の願いであることを、優しく丁寧に伝えてあげてください。

 そのうえで、改めて決心していただきたいのです。それは、「わが子のがんばりを信じる」こと、そしてもう一つは、「指示や命令で子どもを動かさない」こと。親がその覚悟で見守っていれば、親の気持ちは必ずお子さんに伝わります。お子さんの意欲が高まれば、成績は必ず回復してきます。

 お子さんの立場に立って考えてみましょう。おかあさんが「できないのではないか」と不安がっていると感じたり、「どうせやらないだろう」と思っていると受け止めたりしたなら、勉強のモチベーションは下がることはあっても上がることはありません。

 改めて親子で学習計画を確認、調整し、「ちゃんとやれるよね」と信頼の気持ちを伝えてあげてください。無論、自立の度合いやしっかり度は、お子さんそれぞれに違います。親の期待する勉強とはどういうものかをお子さんに伝え、お子さんが「やる!」と決めたことをやらせればよいのです。

②少しずつの進歩を期待し、忍耐強く見守る。

 受験のための塾通いをしていても、受験生らしい自覚に基づく勉強が実現するのはもっと先(6年生の後半になってから)のことです。それが多くの小学生の現実です。

 ですから、「子どもとはそういうものだ」と思ってください。焦ってはいけません。まずは、「塾へ通うのが楽しい」「○○の勉強はおもしろい」といったように、勉強を受け入れ、嫌がらずに(できるなら、楽しいと思って)取り組むようになることを当面の目標にしましょう。私たちも、そういうつもりで指導していきます(6年生には、その段階に応じた対応をしています)。

 無論、子どもにもメンタル・コンディションがあります。やるべきことをやらなかったときには、どうしたらよいでしょうか。そういうときこそ忍耐が必要です。問いつめたり、叱ったりしないことです。きっとがんばれない理由があります。子どもの言い分に耳を傾けてやりましょう。「どんなときにも親は信頼できる」お子さんがそう思ったなら、決して勉強を投げ出すようなことはありません。

 受験生の親は、受験が終わるまでストレスとの闘いは避けられません。しかし親が辛抱し、子ども自らの取り組みを引き出すべく粘り強く働きかけた受験に失敗はないと断言できます。わが子の中学受験とは、どの親にとっても忍耐と辛抱の連続体なのです。

 子どもの現実を目の当たりにすると、ほとんどの親は「こんなことでは」と、ペシミストになりがちです。しかし、取り組みのよい子どもの親のほとんどはオプティミストです。「今はまだまだできていないけれど、きっとやれるようになる」という希望を失わないでください。そういう親の姿勢は必ず子どもに伝わり、「親の期待に応えよう」という気持ちが次第に高まってきます。

③努力を指標に見守り、ほめることを忘れない。

 はじめは気持ちよく応援していたおかあさんが、突如として様変わりすることがあります。それは、お子さんがテストの成績をもらって帰ってきたときです。

 成績がよければ、おかあさんは上機嫌になり、余裕をもってお子さんに接することができるでしょう。問題は悪い成績をもらったときです。そんなとき、ポーカーフェイスでわが子に接するのは難しいものです。子どもの成績を見たおかあさんが突如として猛烈教師になる。そんな話を聞くことがあります。

 しかし、それをしてしまうとお子さんの自立勉強は崩れるし、勉強への前向きな気持ちが引っ込んでしまいます。さらには親への不信感をもたせることになります。また、親が教え始めると、当面の成績は上がるケースもありますが、それをすると受験の意義は大きく損なわれてしまいます。

 大切なのは、親が焦らないことです。そして、出発点のとき以上に、子どもが楽しく学ぶこと、意欲をもって学ぶこと、日々の勉強をちゃんと計画通りやり遂げることが大切なのだということを自らに言い聞かせ、愛情深く応援してあげてください。

 そして、子どものやる気を高めるために、大いにほめることを心がけてください。「成績が悪いのにどうやってほめるのか」とおっしゃるかたもおられるかもしれません。そういうおかあさんには発想の転換をお願いします。成績が上がったらほめるのではなく、がんばりを引き出すべくほめるのです。具体的には、日々予定していた勉強をちゃんとやっているとき、いつもよりも熱心に学んでいるとき、勉強以外のことでもがんばっているとき・・・・・・ほめるタイミングはいろいろあります。

 テスト結果でほめようとすると、親がわが子をほめるチャンスは少なくなります。しかし、努力を評価軸に置いたなら、ほめる回数は格段と増えるのではないでしょうか。親のそういう見守りがお子さんに通じないはずがありません。

 中学受験は、子育ての最中にある子どもの受験です。まだ親がかりの年齢にある子どもの受験生活は、“しつけ”と切り離して考えることはできません。そこで、最後に、“しつけ”とはどういうものかをともに考えて終わりたいと思います。

 外国の有名なカウンセラーは、次のように語っています。

 多くの親はしつけの目的について誤解している。彼らはしつけの目的は子どもをコントロールし、何が何でも子どもに言うことを聞かせることだと信じている。この目標は間違っているし、とうてい達せられるものではない。しつけの目的はコントロールすることではなく、協力を得ることである。協力とは、子どもが親の意向に従うことを自らの意思で選択する、という意味だ。

 望ましいしつけとは、子どもとのパートナーシップを築くことです。押しつけるのではなく、子どもの側から自発的に「親の期待に沿った行動をしよう」と思うような関係を築くことです。

 そのことをこれから心の隅に置いて、お子さんの受験生活を応援してあげてください。感情的に叱ったり、無理やり言うことを聞かせたりするような、親にとっても辛い受験生活になるとお子さんのためにもよくありません。お子さんの受験を子育ての仕上げにするつもりで、自立に向けた見守りと応援をすることが、お子さんにとってもいちばんよいことではないでしょうか。きっとお子さんは、学力を身につけるだけでなく、人間力にも秀でた立派な人間に成長されることでしょう。

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受験生よりも苦労の多いおかあさんのために

2017 年 5 月 15 日 月曜日

 中学受験に長らく関わってきた筆者ですが、指導の現場に立っていた若い頃には、大概6年生の男子のクラスを担当していました。そのせいか、やんちゃで口答えが多く、親の期待通りにがんばってくれないわが子に苛立つ保護者の様子を随分たくさん拝見したものです。

 これは、受験生がしつけの終わっていない年齢の小学生であることから必然的に生じることであり、見守り応援しておられる保護者、とりわけおかあさんがたの苦労は、並大抵のものではありません。おかあさんがたには、「どうにかしてがんばってほしい」「何とか希望の中学校に受からせてやりたい」という強い願望があります。しかし、当の受験生である子どもの年齢が、受験を理解しベストな学習生活を送るには若すぎるのです。

「このまま今のような状態では、とても志望校合格は覚束ない」――こんなふうに、大人は先を読んで考えます。わが子の無自覚で無頓着な勉強ぶりは、やがて心配を通り越してストレスと化し、さらには毎日のように叱っては親子喧嘩といった状態に至ることさえあります。そうした話を多数聞きましたし、現実に指導を担当していたお子さんの家庭でも、同様の問題がたくさんあったことは想像に難くありません。

 無論、数えきれないほどたくさんの面談も行いました。おかあさんがたと面談をすると、家庭での学習生活や親子関係の状況がかなり詳しくわかります。若い頃には、塾で掌握していたつもりの子どもの実態が、おかあさんとの面談で全く現実と異なっていることを知って驚かされるとともに、自分の見立てや認識の甘さを思い知らされることがたびたびありました。面談は家庭との連携体制を築く貴重な機会であり、勉強の場であったとつくづく思います。

 おかあさんと直接お会いし、お子さんの学習についていろいろとお話しすると、それをきっかけにして何かあったときに双方とも連絡をとり易くなります。面談を終えてしばらく経った頃、家庭でお子さんと大げんかになり、困ったおかあさんからサポートを依頼する電話を受けたことを思い出します。「先生の言うことなら何でも聞きます。うちでは先生が絶対なんです。今息子を電話口に出させますから、先生叱ってやってください!」と依頼され、どう言ったものか困ったことを思い出します。あの頃、おかあさんがたの心の内にある苦しみをどれだけ理解していたでしょうか。今更ながら未熟だった自分を申し訳なく思わずにはいられません。

 ところで、弊社には「おかあさんの勉強会」という呼称の催しがあります。この催しは、筆者が現場での指導から退いたあと、「受験生を抱えているおかあさんがたを元気づけるよい方法はないものか」と、いろいろ考えた挙句具体化したものです。一対一で何でも話し合える催しなら「面談」があります。塾の方針や指導の流れを説明する催しは「保護者説明会」などいろいろあります。

 個別に話し合える場、一方向で多数の方々に情報を提供する場、この二つの形式の催しは弊社だけでなく、どの学習塾にもあります。これらの形式では満たされないニーズに応えられる催しはないものか、おかあさんがたの毎日の子育てに元気と指針を提供できる方法はないものかと、いろいろ思案しました。その結果、受験生をもつおかあさん同士が語り合える、双方向性に基づいた催しを思いつきました。そして、この形式で世界中に広まっているのが「ワークショップ」であることを知り、ワークショップに関する情報を集めたり、自ら参加して体験したりし(様々な人生の悩みを抱えた人たちが参加しておられました)、最終的には自らワークショップのファシリテーターの資格(公的資格ではありません)を取って、この催しを企画するに至った次第です。

 今年度の「おかあさんの勉強会」は、前期・後期各1回実施する予定です。前期は、いずれも6月に実施を予定しています。「週3日通学コース」の会員家庭向けには各校舎にて、また「土曜コース」の会員家庭向けには三篠校にて開催いたします。以下は、勉強会のおおよその概要と実施日程です。

★2017年度 前期 「おかあさんの勉強会」概要

テーマ/「愛ある声かけが子どもを動かす!」(副題:子どもの奮起を促す言葉の研究)
対象/4・5年部会員の保護者
主内容/1.あなたはどんな“声かけ”をしていますか? 2.あなたの“声かけ”のパターンをチェックしてみましょう 3.子どもはおかあさんの声かけをどう思っている? 4.反省と修正を促す声かけ、自信とやる気を吹き込む声かけ
進行方法/司会者の進行と説明に基づき、グループごとにテーマに沿った話し合いをします。緊張を要する「発表」などはありません。楽しい話し合いを通じて、おかあさんがたに受験生活の充実に向けた気づきを提供できるよう趣向を凝らした催しです。
参加方法
「週3日コース」会員…校舎でチラシが配布されたら、電話予約のうえ、申込書を前日までに校舎窓口にご提出ください。
「土曜コース」会員…チラシが配布されたら、本部事務局に電話予約のうえ、申込書を当日会場の窓口にご提出ください。

 最後に、この催しに込めたおかあさんがたへの応援の気持ちについて少し書かせていただこうと思います。

 冒頭でお伝えしたように、中学受験はしつけの終わっていない段階にある小学生の受験です。受験生活を始めたばかりの4、5年生は、受験とその後に控える中学校生活とを結びつけて考えられるだけの人生経験をもちあわせていません。必然、勉強ぶりはおかあさんがたから見れば能天気で無自覚で頼りなく見えるものです。

 しかし、この段階こそ、親がわが子に深く関われる最後のチャンスなのです。中学生になると思春期が訪れ、親子間の心理的な距離は今よりもずっと離れていきます。言えば口答えをするけれども、親に全面的に頼って暮らしている今のうちにこそ、毎日の生活を通して人間として身につけておくべきことを教えておかなければなりません。無論、受験勉強にどう取り組むかも、決して子育てと切り離して考えるべきではありません。

 あからさまな例で恐縮ですが、たとえばおかあさんが「受験勉強が何より優先されるべき。生活上の面倒はすべて自分が見て、とにかく勉強だけに専念させよう」と思い、それを実行したとしたらどうなるでしょう? ひょっとしたら、この作戦が功を奏してお子さんは志望校の一つに受かるかもしれません。しかし、中学校に進学したなら、お子さんはもはやおかあさんの手を借りて問題を乗り越えることなどできません。生活面の自立も、勉強の自立もままならないお子さんには、乗り越えるに難渋する様々な問題が次々に立ちはだかることでしょう。

 よく言われることですが、苦労して手に入れたものほど価値があるものです。自分で算段して学ぶことを子どもに教えるにあたっては、当の受験生よりも親のほうに多くの負担が伴います。手っ取り早い方法を採りたい気持ちに打ち勝ち、辛抱強くわが子の自立に向けた応援をしていくには、同じ条件でがんばっておられる方々と交流するに限ります。この勉強会で、同じ立場にあるおかあさん同士が苦しみを分かち合い、互いに元気や勇気を吹き込むことができれば、随分違ってくるのではないでしょうか。

 「おかあさんの勉強会」にぜひ参加してみてください。きっと何かが変わると思います。長いようで短い受験生活。悔いの残らぬものにしてくださいね。

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 行事のお知らせ

子どもの将来のための知的基盤づくり

2017 年 5 月 1 日 月曜日

 今回は、前々回の話題の続きです。少し堅苦しい話になるかもしれませんが、中学受験準備の段階の家庭教育の重要性、そして、「どのような学習で入試を突破すべきか」という重要な内容に関わる話題ですので、最後まで目を通していただければ幸いです。

 近年、欧米においては学業成績の良し悪しを決定づける要因として、学習に向き合う姿勢や、日常的な習慣など、いわゆる「非認知的特質」が注目されているということを前々回はご紹介しました。こうしたファクターは、知的能力の高い集団において、個々の力量差が少ない場合に、成果の違いを生み出す大きな要因になると言われています。

 この「非認知的特質」がどういうものかをもう少し具体的にご紹介しましょう。たとえば、「勤勉さ」「粘り強さ」「自制心」「やり抜く力」「知的好奇心」などです。これらは、中学受験の準備学習においても重要な働きをすることについては、みなさんもおそらく同意されることでしょう。やる気や粘り強さ、実行力などが強ければ強いほど勉学の成果があがるのは疑いないことだからです。

 ところが、中学受験の助走において、上記のような「非認知的特質」が顧みられず、子どもを時間的にも空間的にも枠に閉じ込め、無理やり勉強させるスタイルの受験勉強がしばしば行われていると聞きます。なぜでしょう。それは、子どもが年齢的に未熟で、自分自身で勉強の段取りをつけたり管理したりすることが難しく、合格を得るには大人が指揮監督して勉強させるほうが、学力を確実に伸ばせると思われがちだからかも知れません。

しかしながら、前述の「非認知的特質」は、子どもの人格が定まってくる年齢までに家庭教育で形成されるべきものです。そこのところを親は見失うべきではありません。

 前述のように、「非認知的特質」が学業の成否を分けるのは、大学での高い水準の学び、高度な研究機関での学びなど、個々人の所属する集団全体のレベルが高くなったときです。ですから、中学受験や高校受験、一般的な大学の入学試験などにおいては、必ずしも絶対的な違いを生み出すわけではありません。中学受験の場合、合格をめざした受験対策のイニシアチブは大人の側にあり、「無理やりやらせる」という方法、つまり「認知的特質」に偏った受験指導が一番手っ取り早いのです。実際、それで「合格」が得られるし、この方法に内在する問題点は当面表面化しません。だから、「鍛えて通す」といったスタイルの受験指導がいまだにはびこっているのでしょう。

 ただし、子どもの将来という見地に立つと、この方法の問題点に目を向けないわけにはいきません。学問が高度なレベルで必要とされ、少々の努力では立ち行かない条件に至ると、その人物の学問に対する向き合いかたや取り組みの姿勢がことの正否を決定するようになります。高い次元の学びの世界では、受動的な取り組みで得た知識や技能は通用しません。目的の遂行に向けて戦略を編む能力、様々な角度から解決法を検証する柔軟な思考、簡単にあきらめない粘り強さ、自らを納得させたいという強い探求心などが大きくものを言うようになるのです。

 以下は、だいぶ前に拝見した教育社会学者の著作で提示されていた学力モデルを視覚的に表現したものです。一本の若木を構成する部分を、学力を支える部分になぞらえてわかり易く説明されています(なお、イラストは弊社が作成したものです)。この図を見ていただくと、「非認知的特質」の重要性がよくおわかりいただけるでしょう。

 この学力モデルでは、学力の要素を3つに分けています。仮に「A学力」「B学力」「C学力」と名づけておきましょう。Aは、木の葉の部分に、Bは幹や枝の部分に、Cは根っこの部分に対応しています(この表現は、上記の大学の先生が使用されていたものをそのまま借用しました)。

「A学力」=「知識」「理解」「技能」など
  ペーパーテストで簡単にはかれるような、点数化し易い学力。
「B学力」=「思考」「判断」「表現」など
  ペーパーテストではかりにくいが、テストの結果に大きな影響を及ぼす学力の要素。
「C学力」=「意欲」「関心」「態度」など
  点数化困難だが、他の学力要素の基盤として重要な働きをする要素。

 この学力モデルを提唱された大学の先生によると、三つの学力は文字通り一体となってひとつの学力の樹を形づくっています。一つでも欠けていたら、生きた樹にはなりません。また、たとえ三つがそろっていても、いずれかが脆弱であれば健全に育ちません。

 子どもが習得する個々の知識や技能が、一枚一枚の葉っぱに相当します。それらの存在は個別に見たなら取るに足りません。しかし、生い茂った葉っぱは総体として大きな力を発揮します。葉は太陽の放つ光の受容体となり、光合成によって植物の成長に不可欠な栄養分をつくり出します。

 葉は、環境の変化や四季の移り変わりで枯れたり、生えかわったりします。学習で得た個別の知識も同じことです。それらは忘れても一向に構いません。大切なのは、必要に応じて知識を更新したり、新しいジャンルの知識をつけ加えたりしていくことです。葉は、樹の生命が続く限り、絶え間なく更新されていくものなのです。

 「葉」と「根」をつなぐ「幹」や「枝」にあたるのが、思考力・判断力・表現力などからなる「B学力」です。伸びやかな思考力や確かな判断力は、いわばしっかりと伸びた存在感をもつ幹です。また、私たちの目を楽しませてくれる枝ぶりのよさは、豊かな表現力にたとえられるでしょう。

 葉から根へ、あるいは根から葉へと、水分や養分が受け渡しされることで幹や枝は育っていきます。それは、子どもたちが習得した知識や技能を、自らの生活や生きかたとの関連で使いこなしていく過程を通じて、しっかりとした思考力や判断力や表現力を育んでいく流れと照応します。

 根っこは葉っぱと違って、通常は目に見えません。地中に隠れています。しかし、その根っこは、その樹の存在自体を支えるという重要な役割を果たしています。「意欲」「関心」「態度」などがこの根に相当するでしょう。その子がもつ意欲や関心、あるいは生活態度は、ぱっと見ではなかなかわかりません。じっくり付き合ってこそだんだんわかるものです。

 また、根は地面にしっかり食い込んで樹を支えるだけでなく、成長に不可欠な水分や養分を絶え間なく吸収する役割も果たします。そうした意味において、根は「アイデンティティ」という語で表されるような、樹という生命体の根源的な部分をも表示していると言えるでしょう。

 前述の「非認知的特質」は、地面に埋もれて見えない「根っこ」に相当することに気づかれたと思います。表面には見えてこないけれども、実は若木をすくすくと成長させるうえで欠くことのできないものです。この根っこを育てるべきは、わが子が小学生の今のうちであり、たとえ中学受験というものが目の前にあっても、決しておろそかにすべきではありません。

 いや、むしろ受験のプロセスでこそ、この「根っこ」たる部分に栄養を送り、知力を大きく伸ばすための基盤を築くべきではないでしょうか。このことは、「自学自習」「自ら学ぶ姿勢」を受験勉強の柱とする弊社のアイデンティティとも深く関わることです。弊社では、このことを一人でも多くの保護者にご理解いただき、学びへの高い志向性や、しっかりとした取り組みの姿勢を育てながら入試での志望校突破を実現したいと考えています。

 今回の記事が、お子さんの中学受験をお考えの保護者の方々に、新たな視点を提供できたなら幸甚です。

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