読書傾向と読解力には相関関係がある!?

2017 年 7 月 3 日

 お子さんは本を読むのが好きですか? どんな本を好んで読んでおられますか? 読書時間は1日あたりだいたいどれぐらいですか? 今回の話題は、読書と読解力とに明確な関連性があるのかどうかを話題にとりあげてみました。

 みなさんは、子どもの読書と読解力や国語力とに何らかの関係があると思っておられるでしょうか。小学生と言えば人生で最も語彙の増加が著しい時期です。以前発達心理学者の調査データをご紹介したことがありますが、人間の一生でいちばん語彙の増加率が高い時期は9~10歳(小学4年生)の1年間で、実に前年比40%近くに及ぶ語彙が増えます。また、増加数でいちばん多いのは10~11歳(小学5年生)の1年間で、6300語余りもの新しい語彙を獲得します。そのことと読書には有意な関係があるのでしょうか。

 いつだったか、弊社の教室に通っているお子さんのおかあさんとお会いしたとき、「うちの子はオタク系で、暇さえあれば本を読んでいます」と苦笑いをしておられました。ちなみに、そのかたのお子さんは、マナビーテストで総合1番を取ったことがあり、「やはり、読書は学力に影響を及ぼすのは間違いないのだろう」とそのときは思いました。

 ただ、このような情報では読書と読解力の関係についての確かな根拠にはならないので、何らかのデータ的な示唆の得られる資料がないかと探してみました。すると、電気通信大学大学院情報理工学研究科の猪原啓介先生の著作に、PISA調査の結果に基づき、「読書と読解力の関連性」について指摘しておられる箇所があるのが目に留まりました。参考になるかもしれないのでご紹介してみましょう。

 PISA調査は、2000年に始められたOECD加盟国の15歳生徒(日本では高校1年生)を対象とする国際的な学習状況に関する調査です(一部非加盟国も参加)。ご存知かと思いますが、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3つを調査の柱としています。PISAというと、2003年度の「読解力」調査において、参加40カ国中の平均値に近い14位だったことから、「PISAショック」という言葉が生まれたことが記憶に新しいところです。この結果が公表されるまで、「日本の子どもの学力は高い」というのが一般的認識でしたから、日本中に激震が走るほどの驚きをもって受け止められ、日本の子どもの読解力低下がセンセーショナルに報道されました(直近の2015年度実施分においては、70カ国中の8位)。このPISAショックは、「ゆとり教育路線」の軌道変更に大きな影響を与えたと言われています。

 PISA調査においては、読解力の調査項目に付随して読書状況に関する質問も設けられています。2009年の調査においては、日本の生徒約6000名が参加し、「趣味としての読書」「読む本の種類・頻度」というテーマで質問が行われています。これらの質問は、日本の15歳生徒の読書傾向や読書量がある程度掌握できる資料になるのではないかと思われます。

 まず、「趣味としての読書」に関する調査内容と、その結果を見てみましょう。

質問:「あなたは、普段、趣味としての読書をどのぐらいしますか。当てはまる番号に1つ〇をつけてください。
選択肢:「1.趣味で読書をすることはない」「2.1日30分以下」「3.1日31分~1時間未満」「4.1日1時間~2時間」「5.1日2時間より長い」 ※あとの説明の都合で番号をつけました。

 ここで知りたいのは読書時間と読解力テストの相関関係です。それぞれの選択肢を選んだ生徒の読解力テストのスコアを算出して得られた結果をお伝えしてみましょう。読解力の平均スコアがよかった順に並べると、4(552)→3(550)→5(537)→2(536)→1(492)となりました。

 この結果について、前述の猪原先生は「ここからは、あまりにも読書ばかりし過ぎていると読解力の成績が下がってしまうが、基本的には読書量と読解力の成績には正の相関関係があることが読み取れる」と述べておられます。

 次に、「読む本の種類・頻度」と読解力との関係に関する調査結果を見てみましょう。まずは質問の内容をご紹介しましょう。

質問:「あなたは、次のものを自分から進んで読むことはどれぐらいありますか。(1)~(5)のそれぞれについて、あてはまる番号に1つ〇をつけてください」
選択肢:「まったくか、ほとんどない」「年に2~3回」「月に1回ぐらい」「月に数回」「週に数回」
本の種類:(1)雑誌、(2)コミック(マンガ)、(3)フィクション(小説・物語など)、(4)ノンフィクション(伝記・ルポタージュなど)、(5)新聞

 選択肢のうち、「まったくか、ほとんどない」「年に2~3回」「月に1回ぐらい」を選択した者を「読まないグループ」、「月に数回」「週に数回」を選択した者を「読むグループ」として、二つのグループの読解力の成績が比較されました。そして、その結果が次のようなグラフで示されています(調査を実施した国立教育政策研究所の表<2010>をもとに作成)。

 このグラフをご覧になればおわかりいただけるように、「雑誌」と「コミック」では「読まないグループ」と「読むグループ」で読解力の成績の差はあまり見られないのに対し、「フィクション」「ノンフィクション」「新聞」では、「読むグループ」の読解力は「読まないグループ」のそれよりも明らかに優れていることが見て取れます。

 特にフィクションでは両者のスコアに大きな差が見られます。これには明確な因果関係があるのでしょうか。筆者の憶測にすぎませんが、フィクションを読むことに熱心な子どもは、活字で表現された仮の世界を、想像をたくましくしながらイメージする力に長けており、それが文章読解にも効力を発揮しているのではないでしょうか。

 ともあれ、二つの資料を通じてわかったのは、

ということです。やはり、成長の途上にある年齢期に読書に勤しむということは、活字文化の継承者となるうえでの前提になる大切なことだと言えそうです。

 先ほど、マナビーテストで1番を取ったお子さんのエピソードをご紹介しましたが、本が大好きであるいっぽう、勉強すると決めた時間には集中して取り組んでいるからこそ成果をあげておられるようです。読書を心から楽しむためにはやるべきことをしっかりとやる。このけじめがうまく作用してこその成果でしょう。最近読んだアメリカの心理学者の著作によると、このような自己制御力こそ、人生での成功において最も必要とさせるものだそうです。

 みなさんのご家庭においても、このけじめをルール化するなど工夫し、お子さんが読書を楽しむ毎日を実現してあげてください。小学生の今のうちなら、読書がもたらせてくれる様々な恩恵に浴することができます。


カテゴリー: アドバイス, 家庭での教育

おすすめの記事