2017 年 7 月 17 日 のアーカイブ

ポジティブな自己暗示で“やれる自分”を取り戻す!

2017 年 7 月 17 日 月曜日

 試験やスポーツなど、順位や勝敗を競うような場面において、あなたは「きっとやれるさ!」とポジティブに考えて臨むほうですか? それとも、「今回はダメかもしれない」と、ネガティブな心境に追いやられるほうでしょうか。

 どちらがよい結果につながるかは言うまでもありません。悪い結果を予測すると、頭も体も機能が低下し、得られるはずの結果を取り逃がしてしまいがちです。まして入学試験など、結果次第でその後の人生の歩みが変わる可能性のある重要な場面では、誰だってドキドキ緊張しますし、ネガティブな心理と闘うことを強いられます。こういう場面に強いタイプの人間でありたいものですね。

 しかしながら、おそらくこのブログを読んでくださっているかたのほとんどは、「私は本番に弱い」「勝負ごとでつい緊張し、失敗をしてしまう」と、自分のことを嘆いておられるのではないでしょうか。筆者自身、「私は本番で緊張しない。勝負事に強い」と胸を張っている人をついぞ見たことがありません。「よい結果を得たい」という願望が強ければ強いほど、よくない結果に対する不安が頭をもたげてくるのが人間というものなのでしょう。

 これは日本人に限ったことではありません。結果を得たい重要な場面を前にすると、国や人種を問わず人間はプレッシャーや不安などのネガティブな心理との闘いを余儀なくされます。それをどう押しのけるか、心の強さや心理コントロールの力が問われるわけですが、その微妙な個人差が成否を分けることになります。

 また、人間は自分の所属する集団の特性や、一般通念から見て不利なデータを示されると、実際の能力よりもパフォーマンスが低くなると言われます。この現象は「ステレオタイプの脅威」と言われるもので、ちょっと例を挙げてご説明してみましょう。

 アメリカで、次のような実験が行われました。60代、70代、80代の人たちを集め、年齢構成や能力が均等になるよう配慮した二つのグループに分けました。片方のグループには、「人間の記憶力は年齢とともに低下する」という内容の記事を読むように指示し、そのあとで単語の記憶力を試すテストをしました。同じテストを、テストの前にその記事を読まなかったグループにも実施しました。すると、前者は単語を44%しか記憶していなかったのに対し、後者は58%を覚えていたそうです。また、女子の大学生を対象とした数学の難問を解くテストでは、女子学生たちに「自分は女性である」ということを意識させる働きかけをしただけで、なんのほのめかしも受けなかった女子学生グループよりも成績が悪くなったと言います。

 「自分(たち)は、それが得意でない」という情報を前もって与えられると、パフォーマンスが落ちるのなら、その逆はどうなのでしょう。「自分(たち)はそれが得意である」と思うことでパフォーマンスを上げることはできないのでしょうか。

 これに関して、ヘルスコミュニケーションの専門家である蝦名玲子(りょうこ)先生の著作のコラムに、次のような興味深い記事が掲載されていました。

 自信があるとき、人は身体を開き、自分のパワーを見せつけるように大きく見せる「力強いポーズ」をとるものです。陸上で1位になった選手、サッカーでゴールを決めた選手、部下を叱る上司、子どもを叱る親や教員などはみんな、胸を張り、手を広げたり、腰のところに両手を置くスーパーマンのポーズをしたりして、大きく見せています。

 逆に、自信がないとき、人は身体を閉じ、「弱いポーズ」をとります。猫背になり、手や足を組んだり、うなだれたりして、まるで他人にぶつからないようにするように、小さくなるものです。

 社会心理学者のエイミー・カディ博士の研究では、2分間、「力強いポーズ」をとると、それだけで「テストステロン」という支配性ホルモンが増え、「コルチゾール」というストレスホルモンが減ることを確認しています。そして自信をもって、アサ―ティブに自分の気持ちを表現するようになり、ストレスを感じにくくなったのです。

 一方、2分間「弱いポーズ」をとると、テストステロンが減り、コルチゾールが増えたという結果が得られました。そして、内気になり、ストレスを感じやすくなったのです。

 さらに興味深いのは、これが研究室の中だけではなく、人生を左右する大事な局面でも使えることが確認された点です。カディ博士は、2分間、一方のグループには「力強いポーズ」を、もう一方のグループには「弱いポーズ」をとってもらい、その後、何を言っても無表情な面接官による就職面接を受けてもらうという研究もしました。その結果、事前に「力強いポーズ」をとっていた人たちのほうが全体的に高く評価され、「採用したい」と言われたといいます。

 身体と心はつながっています。身体は心を変化させ、心は行動を変えさせ、行動は結果を変えます。このことを忘れずに、テストや受験、体育祭や文化祭など、何か大切なイベントのまえに子供が自信を失くしているようであれば、2分間、「力強いポーズ」をとるように伝えましょう。すると、その2分間で、体内物質が変化し、心もついてきてくれるはず!

 「力強いポーズ」――これは試してみる価値がありそうですね。人間のパフォーマンスと体内で分泌されるホルモンとには強い相関関係があると言われます。「力強いポーズ」が自分を肯定的に表現する姿勢を促し、パフォーマンスを高めます。それが自信につながり、やる気や実行力のもととなる体内物質を分泌させる。こういったプラスの循環を生み出すのです。

 小学生の子どもは、親の働きかけ次第でどんなふうにも変わっていきます。この「力強いポーズ」を2分間試みること、それを促してみてください。そして、子どもの変化に応じてタイミングよくほめ、子どもの自信が高まるようサポートしてみてはいかがでしょうか。また、親が率先して「力強いポーズ」を実践し、自然とお子さんがそういったしぐさを実行するよう促してみるのもよいでしょう。親なら誰だって、わが子が何事も自信をもって積極的に取り組んでくれることを願っているものです。今回の情報は、こうした成長への流れを築くきっかけにできるかもしれませんね。

 子どもが期待通りに行動していないと、まして、注意の声に反発したりすると、親はつい懲らしめの言葉を浴びせがちです。しかし、これは逆効果にしかなりません。この夏休みから、前述の蝦名先生が「2分間で自信を高める魔法のような方法」と述べておられる、このポーズをお子さんに試してみませんか? それは、わが子への関わりをプラスの方向へと転換するよい契機になるでしょう。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて