2017 年 9 月 25 日 のアーカイブ

母と娘の関係はわかりやすい?難しい?

2017 年 9 月 25 日 月曜日

 よく「男の子の子育ては手がかかる」といわれます。実際にお母さん方から「男の子は何を考えているのかわからない」といった声を耳にすることもあります。一方、「女の子は育てやすい」のかと言われれば、全般的な気質や性格面の男女の違いはあっても、そんなことはありません。「男の子は難しい」「女の子はわかりやすい」という感覚は、きっと長い時間育児に携わることの多いお母さんの実感にもとづくものが大きいのでしょう。
 そこで、今回は同性であるお母さんと娘さんの「母娘関係」について考えてみたいと思います。

 異性である息子さんとの関係は、お母さんの側にも「わかりあえない部分があっても仕方ない」という気持ちは少なからずあるものです。また、お子さんの側にも、お母さんへの甘えはあっても、べったりし過ぎない良い意味での距離を保つ感覚があります。ですから、「うちの息子は甘えん坊で困る」「なかなか言うことを聞かなくて・・・」ということはあっても、最終的にはある程度割り切って考えられるケースが多いはず。
 ところが、同性である母と娘の場合はそうはいきません。自覚の有無は別として、どのお母さんの意識の中にも「同じ女性なんだからわかりあえるはず」という考えがあるからです。もちろんこれが母娘の強いつながりを育む土台にもなるわけですが、この感覚が度を過ぎて「理解できるはず→どうしてわからないの」となってしまうと、つい娘に自分の考えを強引に押しつけたり、過去の自分を重ねて娘にも同じように振る舞わせようすることになりがちです。実際、中学受験を控えたご家庭でも、こうした母娘間のトラブルは少なくありません。

 母親と娘の関係は、互いの心理的距離や信頼度などによって、大きく4つに分類できるといわれます。
 1つめは、「依存型」です。母娘間の信頼関係を築けておらず、適度な距離を保って離れることもできていないタイプの母娘関係です。お母さんのタイプとしては、子どもより先に気づいて何でもやってしまう人や、子どもの行動に何でも口を出してしまう人が多いとされています。この場合、「お母さんはどう思うか」が子どもの行動基準になってしまい、母親の顔色や反応を見ながら行動するようになるのが特徴です。
 2つめは、「密着型」です。信頼関係は築けているが、適度な距離を保つことができていないタイプの母娘関係です。母娘ともに素直な性格である場合が多く、いわゆる「友達親子」といわれる母娘関係の多くもこのタイプに含まれます。一見良好な関係に見えますが、子どもが母親を信頼しているが故に、もし自分の意見が他にあっても「お母さんが言うなら」と比較的素直に従いますから、実際には母親の希望通りに子どもを動かしていることが多くなります。そのため、「依存型」と同様、子どもを精神的に自立させることが難しいタイプです。
 3つめは、「疎遠型」です。母と娘が離れることはできているが、互いの信頼関係がないタイプの母娘関係です。母親のタイプとしては、子どもとの適切な距離感をつかめず、必要以上に子どもを突き放してしまう人や、子育てより自分の趣味ややりたいことを優先させてしまう人が多いとされます。この場合、子どもは母親不信を抱えることになり、情緒が不安定になったり社会性が未成熟のまま年齢を重ねたりするケースが多くなります。
 4つめは、「自立型」です。母と娘が適度に離れることができており、信頼関係も築けているタイプの母娘関係です。母娘関係のあり方としては、これが理想的なかたちといえます。互いに相手を一人の人間として尊重し、意見を聞きあい、信頼しあえる関係です。ただ、状況や環境などによっては「依存型」や「密着型」に変わることありますから、必要に応じて関係性を見直すことも大切です。

 もしかしたら、上の4つのタイプ分けをご覧になって、「うちは『自立型』じゃないわ」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。でも、ご心配なく。こうした母娘関係は、お子さんの年齢や発達段階などによって変わるものです。誰でも産まれてきたときには完全な「依存型」ですし、おそらく、お子さんが小学3~4年生になる頃までは「依存型」や「密着型」の傾向のあるご家庭が多いと思います。そこから、プレ思春期と呼ばれる時期に入る5年生以降、少しずつ母娘関係に変化が生じるという流れが一般的ではないでしょうか。

 ただし、幼い頃からあまりに依存や密着の傾向が強いと、いくらお子さんが年齢を重ねていっても「親離れ・子離れ」ができず、お互いを尊重する「自立型」の関係を築くことはできません。
 大切なのは、お母さんが母娘関係の現状を冷静に把握し、子どもの成長に応じて少しずつ掛ける手を離していくこと。わが子を温かく見守り続けることは、子どもが何歳になっても変わりませんが、お子さんを信頼して口や手を出すのは少しずつ減らし、お子さんとの距離を適切に保つ意識をもって接してあげてください。
 母と娘の関係は、非常に結びつきが強く、かたちを変えながら一生続いていくもの。そして、その土台は、本格的な思春期を迎える前、小学生の時期までに築かれます。お母さんが主体となって、ぜひお子さんと良好な関係を築いてくださいね。

(butsuen)

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カテゴリー: 子どもの発達, 子どもの自立, 子育てについて