2017 年 11 月 のアーカイブ

学力は“学習意欲”に支えられてこそ輝く その1

2017 年 11 月 27 日 月曜日

 今回から2~3回は、国際的な比較調査、日本の子どもの学習実態調査をもとに、日本の子どもたちの学力の状態や問題点を考えてみようと思います。そのうえで、中学受験指導を専門とする弊社の学習指導に対する考えかたを少しお伝えします。この11月より次年度の前期講座の会員募集を開始していますが、これから入会をお考えくださる保護者に、多少なりとも参考になれば幸いです。

 国際的な学力の比較調査として、OECD(経済協力開発機構)の実施しているPISA(ピザ・ピサ)テストは広く知られる存在です。このテストは2000年以来、3年に1回の割合で実施されています。対象は15歳3カ月以上、16歳2か月以下の生徒(日本では高1生が対象)で、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野の学力が試されています。テスト内容は、日本の試験によく見られる学んだ知識の定着度を問う形式ではなく、学んだ知識・技能の運用力や考える力を試すものが多く、いわゆる「応用的な学力」を問うものが主体となっています。以下の資料を見てください。

 直近の2015年度には72カ国・地域(OECD加盟国35、非加盟国37、地域単位で参加した国もある)が参加しています。結果を見ると、日本の子どもの学力はおおむね高水準にあり、特に問題はないように思われます。

 PISAと並んでよく知られる国際学力比較調査に、国際教育到達度評価学会が実施している国際数学・理科教育動向調査(TIMSS・ティムズ)というのがあります。この調査も、2015年度実施分の参加国が、小学校50カ国、中学校40カ国と、大がかりなものです。TIMSSは日本の学力テストに近い内容のせいか、日本の子どもの成績はPISAよりもさらによい結果を得ているようです。

 このような結果を踏まえ、教育関係者をはじめ各方面から「日本の子どもの学力は国際的に見て高水準にある」とみなされています。実際、データがそれを物語っているわけですから、異論の余地はありません。

 しかしながら、懸案とすべき問題点も指摘されています。それは、前述の学力テストに付随して行われている調査において、日本の子どもに気になる点がいくつか見出されたのです。

 たとえば、PISAにおいては「質問紙調査」という形式で「数学への興味・関心」について調べた結果、日本の子どもはOECD平均よりも低いデータが示されました。以下は、そのときのデータの一部です。数字は、YESと答えた子どものパーセントです。

 数学の勉強への動機づけについても質問が行われています。結果は次の通りです。

 このように、数学のテスト成績は参加国中のトップランクなのに、数学への興味・関心はOECDの平均よりもかなり低い数値を示しています。また、数学を学ぶ動機づけも相対的に弱いことがわかりました。

 他にも気になる点があります。「数学が得意でない」と答えた生徒が52.5%(OECD平均42.0%)、「数学の成績がよい」と答えた生徒が28.2%(OECD平均56.8%)、「数学はすぐわかる」と答えた生徒は24.7%(OECD平均51.0%)いました。日本の子どもは数学がよくできるのに、数学が得意だという自覚がなく、成績にも満足しておらず、簡単だとも思っていないようです。

 さらに、こんな調査結果もあります。「数学の勉強についていけなくなるのではないか」という不安を抱えている生徒が68.7%(OECD平均56.9%)、「宿題をやるときに気が重くなる」という生徒が51.5%(OECD平均29.2%)、数学をやるときイライラすると答えた生徒が42.1%(OECD平均29.0%)いました。このことから、数学への取り組みについても積極性を欠いているということもわかりました。

 日本の子どもは、どうやら勉強ができる割に自信がなく、意欲も低いという残念な傾向があるようです。どうしてこのような状況に至ったのでしょうか。専門家の見解も交え、次回はそのことについて少し考えてみたいと思います。そのうえで、弊社の学習指導で大切にしている考えや指導の実践についてお伝えします。よろしければ引き続きお読みください。

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カテゴリー: 勉強について

模試最終回(12/3)が間近。さあ、総仕上げへ!

2017 年 11 月 13 日 月曜日

 11月も中旬を迎え、来年1月の中学入試に臨む受験生のみなさんは、受験対策の仕上げ学習に一生懸命取り組んでおられることと思います。

 毎年、弊社では受験を控えた6年生児童を対象とした公開模試を実施しています。早いもので、今年も全5回のうちすでに4回を終了しました。残るは、12月3日(日)に予定している最終回のみとなっています。

 模擬試験の最終回が他の4回と決定的に違うのは、試験会場が広島を代表する私学である修道(男子会場)と広島女学院(女子会場)となっていることです。この2校は、広島の男女私立6か年一貫校でそれぞれ最多の受験者数を集める人気校です。おそらく大半の受験生が受験を予定しておられるのではないかと思います。まさに本番と同じ場所で、それも受験の直前に本番の疑似体験をすることができる絶好のチャンスです。

 疑似体験の重要性については、どなたも認識されていると思います。特に小学生の場合、「試験の結果次第で入学できるかどうかが決まる」という、緊張の伴う試験を受けるのはおそらくこれまでの人生になかったことであろうと思います。一度疑似体験をしておけば、そこで首尾よく実力を発揮できても、失敗して悔しい思いをしても、本番で最高の結果を出すための格好の練習の場にすることができるでしょう。

 もしも成績がよければ、「よし、行けるぞ!」とますます士気が高まるでしょうし、「油断すまい」と、気分を引き締め、気分を引き締めて最終チェックに臨んでおけば、本番でも実力発揮が大いに期待できます。また、残念なデータが突き付けられれば、「何がいけなかったのか」「どこに落ち度があったのか」を振り返り、最後の仕上げでがんばれば、本番で同じ轍を踏まずに済むかもしれません。一度似たような体験をしておくことは、人生経験の少ない小学生にとってはほんとうに心強いことだと思います。本番への助走として大いに活用していただきたいと存じます。

 例年、12月に実施している「第5回模擬試験」は、男女ともに広島県西部地区受験生の7割前後が参加されています。まだお申し込みを受け付けていますので、まだ手続きをされていないかたは是非お申し込みください。これからお申込になりたいかたは、本ホームページの案内をご覧のうえ、所定の手続きをしてください。

 なお、年が明けるとすぐに入試がやってきます。模擬試験のデータをもとに最後の詰めを上手にしていく必要があります。模試のデータを点検すれば、入試までの期間の対策の方向性もはっきりとしてきます。ここから約1ヶ月の期間が勝負です。受験生のみなさんには、悔いの残らぬ仕上げ学習をやり遂げるようがんばっていただきたいと存じます。

 さて、弊社の6年部では入試を間近に控えた時期に、「保護者説明会」の最終回(第4回)を実施しています。12月に入ると、「受験校の最終決定」「受験手続の確認」「入試までの指導スケジュール」「入試直前の心得」「仕上げ学習のありかた」など、重要な伝達事項がたくさんあります。これらをまとめてお伝えし、どのご家庭にも入試本番までの仕上げ学習をしっかりとやり遂げていただくための催しです。

 ぜひ、万障を繰り合わせての参加をお待ちしています。以下は開催日程です。念のため、ご確認ください。

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カテゴリー: 中学受験, 行事のお知らせ

家庭学の「授業」は何を意図しているのか

2017 年 11 月 6 日 月曜日

 本日(11月6日)から、「冬期講座」と次年度「前期講座」の会員募集を開始します。そこで今回は、これから受験勉強を始めるお子さんをおもちのご家庭に、弊社の学習指導の特徴についてお伝えしようと思います。入会を検討いただく際の参考になれば幸いです。

 学習塾の指導の軸は何と言っても「授業」です。授業が指導の中心となるのは学校も同じでしょう。ただし、学習塾の授業は入試での合格、進学したい学校への入学を果たすためにするものです。ですから、学習塾の授業というと、「テストでの得点力の向上に的を絞っている」というのが一般通念であろうと思います。

 特に、人気の高い難関中学校を受験する子どもの通う学習塾となると、合格を巡る競争も厳しいですから、「毎日のように通学し、難問の演習指導を中心とした高度な授業が行われるのだろう」と想像されるかたが多いことでしょう。

 そういう学習塾もあるかもしれません。しかしながら、私たちは得点力だけを念頭に置いた授業は、少なくとも中学受験生には適用すべきでないと考えています。というのは、児童期までに身につけた勉強のスタイルは後々まで学力形成の柱となり、よきに悪しきに学力の伸びようを規定するからです。

 家庭学習研究社は、昭和42年の創設期から「中学、高校、大学と、学問を修める過程で順調に力を伸ばしているのはどういう人間か」を調べ、「中学受験までに自ら学ぶ姿勢、自学自習の態勢を築いておくことが、将来の大成につながる」という結論を導き出しました。そして、「入試で志望校合格を得る」ということと、「将来の飛躍を期待できる学びの態勢を築く」ということを、車の両輪のように欠かせない指導の柱として位置づけ、その実践をめざしています。

 以下、家庭学習研究社の「授業」についてもう少し詳しくご説明しましょう。私たちの実践する授業は次のような考えに基づいています。

 

1 勉強の楽しさを享受できる授業を実践する。

 子どもが勉強に意欲を高めるのはどういうときでしょう。「知りたい!」「できるようになりたい!」という欲求が喚起されたときです。一見やる気がなさそうな子どもでも、うまく学習対象に興味をもたせれば、本来もっている知的欲求が必ず頭をもたげてきます。

 私たちが授業で大切にしていること。その第一番目は、「勉強の楽しさ、面白さを味わう体験を子どもたちに提供すること」です。学習対象を、覚えるべきもの、解くべきものと捉えて指導すると、子どもは受け身になり、自ら知りたいと願って考えを巡らす姿勢が育ちません。毎回の授業は、その回の目当てに基づき、子どもに興味・関心をもたせる導入から始めます。「これはテストによく出るから覚えておきなさい」といったアプローチではなく、子ども自身が、「知りたい!」「解き明かしたい!」という欲求をたぎらせるよう働きかけ、結論を導くプロセスの醍醐味を全員が享受できるよう指導しています。

 このような授業を繰り返すことで、子どもたちに「勉強とは面白いものだ」という観念を浸透させると、家庭での勉強も積極的になっていきます。それが、受験勉強が佳境に入ってからの学力躍進につながります。また、先々有意義な学びの人生を送るうえで大切な推進力となってくれるのです。

 

2 授業を通して、子どもたちが筋のよい考えかたを体得できるよう
  指導する。

 家庭学習研究社では、全ての校舎の授業担当者が一致した見解に基づき、「理詰めで解き明かす、筋のよい考えかたを子どもたちが身につけること」をめざして指導しています。理由は申し上げるまでもありませんが、正統で合理性のある考えかたを身につけたほうが、子ども自身納得できるし、先々より高度な学習領域に入ったときにもそれが大きな力になるからです。

 たとえば算数の授業では、毎回テキストの当該単元の柱となる理屈をきちんと習得できるよう、良質の例題を扱い、大人が一方的に説明するのではなく、発問で子どもたちの思考や反応を引き出し、発表や意見、質問を通して誰もが納得する結論へと収束させていきます。このくり返しが、筋のよい思考のできる子どもへと成長させることになります。

 中学受験の算数の魅力は、課題の意味を理解し、筋道立てて考え、簡単な数式によって解を導き出すところにあります。それは、子ども自らの思考によって公式を編み出す作業に他なりません。方程式などを適用して機械的に解く勉強と比べると、はるかに楽しく、また満足の気持ちを与えてくれます。そして、何よりも合理的で美しい解法を体得した、優れた理系の頭脳を育むことになります。

 

3 先々まで運用できる確かな「学習方法」を身につけさせる。

 家庭学習研究社の「授業」の目的として、ぜひお伝えしたいことがあります。それは、毎回の授業の繰り返しを通して、「家庭でひとり勉強のできる子どもの育成を図っている」ということです。

たとえば、算数の例題を扱う場合にも、子どもに家庭で取り組む勉強の手順を体得させることを意識しています。また、講座の初期に基本となるノートのとりかたを指導したら、その後は授業でノートを提出してもらい、フォローしていきます。よいノートのとりかたを学んだ子どもは、受験勉強を効率的に進めることができるうえ、中学進学後もノートを活用して学力を伸ばす姿勢を継続することができます。

 「授業」を軸にした受験対策において、「予習」や「復習」は欠かせません。予習をすると授業がよくわかる。復習をすると、授業で学んだことが整理整頓されて頭に残る。子どもたちがこのことを自覚できるよう、予習や復習の要領をくり返し教えます。これも授業担当者の重要な仕事です。

 以上からご理解いただけると思いますが、弊社の授業は「知識伝授」や「解法の会得」を目的としません。子どもたちが自学自習の方法や姿勢を体得できるよう応援するためにあるのです。そのことの価値は、中学、高校、大学へと進んでいくと子どもたち自身が身に沁みて感じることでしょう。

※「予習」は小学生にとっては難しい面があり、5年生からごく簡単なやりかたを指導していきます。

 

4 互いに刺激し合い、高いレベルをめざして学ぶ環境を提供する。

 上述の内容から、家庭学習研究社は子どもたちの自律的学びの態勢づくりを応援していることがお解りいただけたことと思います。このような指導が浸透していくと、子どもたちは授業においても活発な反応を示すようになっていきます。

 才気煥発な子どもは、自分の考えや解決の糸口について得た気づきをみんなの前で披露したくて、気持ちをうずうずとさせてくるものです。そして、いざ発表して「あっ、そうか!」「なるほど!」とみんなが感心すると、たまらなく満足そうな表情を浮かべます。このような体験を通して、互いが刺激し合い、より高いレベルをめざして競い合う雰囲気ができると、子どもたちの学びはますます活性化していきます。さらには、志望校合格後も全く違和感なく学校の指導環境になじむことができます。中学校での授業は、まさに私たちの学習塾で受けた授業と基本的に変わらないものだからです。

 日々の勉強の積み重ね効果は、家庭での取り組みが支えてくれます。しかし、一人で取り組む勉強に刺激や方向性を与えてくれるのが、みんなで学ぶ場である授業です。この両方がうまく連動すると、子どもたちの学力は着実に高いレベルへと到達していくのは間違いありません。

 

 いかがでしょう。とかく子どもも大人も目の前の目標をクリアすることのみに心を奪われがちですが、もっと先に待ち受けている学びの世界にも目を向け、そこで学力を伸ばしていくために何が必要かも見通したうえで入試突破の方法を考えるべきではないでしょうか。受験勉強の方法を間違えると、目先の入試はクリアできても、その先の中学・高校生活で苦労を強いられることになりかねません。

 中学受験はわが子の将来を見据えて決めたことのはずです。それならばますます入試突破のための勉強のありかたを考えるべきではないでしょうか。そうした発想での受験勉強は、入試の結果の如何に関わらず、将来の伸びしろを形成してくれます。それこそが子どもにとって重要なのだと私たちは考え、上記のような考えに則った学習指導を実践しています。

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念