2017 年 12 月 のアーカイブ

受験生家庭の保護者のみなさまへ ~2017年の終わりに~

2017 年 12 月 29 日 金曜日

 早いもので、気づけば2017年も残りわずかとなりました。みなさまの今年はどんな1年だったでしょうか。今受験生を抱えておられるご家庭は、ご自身のことよりもお子さんのことに気持ちを傾け、「入試を無事に突破できるように」と注力されておられることでしょう。

 筆者もかつて経験しましたが、わが子の中学受験は特別です。こんな経験は2度あるものではありません。きょうだいがおありだったとしても、お子さん一人ひとりの人生での中学受験はただ一度きりです。12歳という、まだ幼さの残る年齢での受験は親にとって誠に気がかりなもので、あれやこれやと気にかけては心配したり、声をかけたり、手を貸したりすることになります。

 これが高校への受験、大学への受験となると、もはや親が介入できない面もありますし、子ども自体がそれを許してはくれません。だからこそ、親としてはこの中学受験というセレモニーの大団円に向けて後悔の残らぬよう、精一杯の応援をしてやりたいのではないでしょうか。

 受験が終わると、子どもは次の人生のステップへと進んでいきます。そうしてまもなく思春期が来て、また一段と親との距離が開いていきます。広島は地方都市ですから、そのわずか数年後には大学入試を終えて親の手を離れ、大都市圏などで一人暮らしを始める確率も高いことでしょう。そのときまでを見通すと、わが子と一緒に生活する残り少ない日々の尊さに思いを致さないわけにはいきません(6年余りという年月は、本当に短いものです)。どうかお子さんがベストコンディションで入試に臨むまで、悔いの残らぬよう気を配ってあげてください。

 中学受験は、子どもにとっては人生で未体験の大きな挑戦です。それゆえに入試本番が近づくまでは実感がわかないために必死で受験勉強に取り組むことができず、親をイライラさせたお子さんも多かったのではないかと思います。しかし、入試まで2週間、3週間と後がなくなってくると、急に緊張が込み上げて落ち着かないお子さんも出てきます。

 親の本当の役割は、ここから入試終了までのフォローや対応なのです。お子さんがやっと入試に向けて本気になったときこそ、体調管理や心のコンディションがこれまでよりも数段重要な要素になってくるからです。いよいよ入試への秒読みが始まるこれからの毎日は、気持ちを落ち着けて悔いなきコンディション調整が果たせるよう、「普段通り」の生活や会話を心がけてあげてください。

 なお、正月は受験の合格祈願で遠方にお出かけのご家庭もおありかもしれませんが、くれぐれもお子さんが風邪などひかれませんようお気をつけください。中学受験生のご家庭におかれては、来年の入試終了後に大いなる喜びと安堵の日が訪れますことを心より念じております。

 みなさま、よい年をお迎えください。


カテゴリー: ごあいさつ, 中学受験

受験生活のスタートに向けて ~親の視点を明確に~

2017 年 12 月 25 日 月曜日

 今年も残り少なくなりましたね。冬休みに入り、早速弊社においても「冬期講座」が始まりました。年が明けるとまもなく受験シーズンに突入しますが、学習塾にとっては次の年度の開講に向けた会員募集の最盛期を迎えます。今、塾選びを検討されているご家庭、弊社への通学を検討くださっているご家庭もおありでしょう。

 そこで、今回は「わが子の受験生活、受験勉強をどのような視点で親が見守り応援すべきか」について、保護者にお考えいただく機会になればと思い、そうした切り口から弊社の考えをお伝えしてまいります。

 受験は文字通り、「希望する学校に入学する資格を得るために試験を受ける」ということです。しかしながら、中学受験の場合は人間として完成の域には程遠い12歳の子どもが受験生ですから、どんな受験生活や受験勉強を経験するかが受験の結果はもとより、その後の子どもの知的成長や人生の歩みにも少なからぬ影響を及ぼします。したがって、望み通りの入試結果を得ることだけでなく、さらに先を視野に入れた受験のありかたを保護者がお考えになり、親の方針にフィットする学習塾を選択されることが肝要だと思います。合格を引き換えに失うものが大きくなる危険性は避けたいものです。

 まず、わが子の受験勉強開始にあたっては、「学力は生まれつきの資質に大きく作用される」という考えは望ましくありません。こういう考えに基づいてわが子の勉強を見守ると、運悪く勉強の成果が得られなくなったときに負の連鎖に向かいがちです。

 4年生までの子どもは、「がんばれば、成績は上がるものだ」と教えられると、素直にその言葉を信じてがんばろうとします。しかしながら、どの子どもも同じようにがんばっているわけですから、必ずしもよい成績がとれるとは限りません。元気の萎(しお)れるような成績を取ることだってあります。そこで、だんだんと、「自分は頭がよくないのかもしれない」という疑念に苛まれることも生じてきます。そんなとき、「もっとがんばれないのか」→「なんでこんな成績を取るんだ!」→「おまえには能力がないんだ」などと親や周囲の大人からネガティブな対応を受けると、余計に子どもは自分の能力に対して懐疑的になってしまいます。そうして、5年生の頃なると、「どうせやっても無駄です。ぼくは頭が悪いから」というような子どもも出てくることになります。

「がんばったなら、がんばった分だけ成長できるのだ」という信念を親はもつべきです。そして、その思いを強く子どもに伝え続けるべきです。成績が下がったなら、「必ず原因があるはず。点検してみよう」と子どもと一緒に振り返り、逃げないで努力を続けるよう励まし続けるべきでしょう。

 実際、筆者は多くの受験生家庭を見てきましたが、親をはるかに凌駕するほどの学力の持ち主になったお子さんは数えきれないほどいます。親が適切な学習環境をわが子に与え、わが子の努力を上手に引き出すような見守りや応援をすれば、子どもはいくらでも高い知力を獲得できるのです。物事をよいほうへと向かわせるには、このような考えを貫くことが重要ではないでしょうか。

 これに符合する話をちょっとご紹介しましょう。以下は、国立遺伝学研究所の所長を務めておられた先生のおっしゃった話です。

いろいろなところで講演をすると、そのあとで、「私の頭の悪いのは治らないのでしょうか」というような妙な電話のかかってくることがよくあるんですよ。そういうときは、「遺伝子が決めている以上のことはできません」と言います。たとえば、サルの真似をして、木から木へ跳び移ることはできないでしょうし、サルに言語を教えても、人間のように言語を操って思考して何かをするところまではできません。やはり、遺伝子で決めている範囲を逸脱することはできない。それは厳然たる真理だと思います。

 ただし、遺伝子が決めている範囲をすべて使っているかというと、実はほとんど使っていないと思うんですよ。僕だって、もし優れた指導者に出会えば、全然違う才能を発揮して、俳句のお師匠さんか何かになっていたかもしれません。そういう才能を発揮するような環境にいなければ、その才能があることも知らずに死んでいくわけです。( 中略 )

  自分が遺伝的にもらった才能というのは、自分が思っているよりはるかに広い。それを開拓するのが、学習するということです。たとえば、勉強するとか、体験するとか、教育を受けるとかすることなのです。だから、遺伝子で決まっている範囲を超えられないからといって、悲観する必要は全然ない。

 それでも食い下がる人には、「あなたは今までに、せっかく与えられた自分の才能の1パーセントしか使っていない。もう1パーセント使ってごらんなさい。あなたの才能は2倍になります」と言います。すると、皆安心して電話を切ります。これは冗談みたいですが、真実に近いと思います。

 どうでしょう。人間は自らに備わった能力のうち、ひとかけら程度しか生かせていません。もしも努力を怠らなければ、1%を2%ぐらいにはできるはず。そういう信念でおとうさんおかあさん自身も前向きに生き、そしてお子さんにもそういった考えで接し、努力を奨励しながら応援すべきでしょう。

 弊社の「受験体験記GET」に、「努力はきみを裏切らない」というフレーズを合言葉にしてがんばったお子さんの手記が載っていたことがありますが、その言葉は全ての受験生に当てはまるものだと思います。このような考えで勉強に取り組めば、自らの可能性を自ら開発していける人間に育つことは間違いありません。

 すでに何度もお伝えしましたが、中学受験での結果は子どもの全能力を判定するものではありません。中学受験はどちらかというと早熟タイプのお子さんが有利です。しかし、受験生のなかには奥手でゆっくりと成長するタイプのお子さんも多数います。大切なのは、目先の受験結果を得ることに心を奪われ、子どもに過重な肉体的精神的な負荷を課さないことです。子どもの心身の健全な成長という視点から見守り、その時点でできる最大限の努力を引き出すようなバックアップをお願いする次第です。

 くれぐれも気をつけたいのは、親がつねに先回りをして考え、一貫性のない指示をしては失敗を繰り返すことです。これではお子さんの将来の大成に向けた可能性の芽を摘んでしまいかねません。また、親への尊敬の気持ちや信頼を損なってしまう恐れもあります。温かく、我慢強く、泰然自若としてお子さんを見守り応援してあげてください。もしもそれが徹底できれば、お子さんの受験はマイナスに作用することはありません。

 弊社は、このような考えかたに同調してくださる保護者と連携し、子どもたちの将来の大成を視野に入れた学習指導を実践してまいります。お子さんが年齢を重ねるほどに自らの器を大きくしていく、そんな流れを想定し、ともにお子さんの成長を促してまいりたいと存じます。

 2018年度の講座は2月に開講(4年部は3月)いたします。保護者のお考えと一致するようなら、弊社への入会をぜひご検討ください。よろしくお願い申し上げます。


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玉井式の「年長児体験授業会」を開催しました

2017 年 12 月 18 日 月曜日

 12月16日(土)には、弊社の広島校で年長児を対象とした玉井式の「体験授業会」を開催しました。事前の宣伝と言えば、ホームページでの告知のほか、チラシに小さく案内を載せただけでしたが、予想を上回る数の申し込みをいただきました。アニメーションの活用など、お子さんの年齢に即した講座のように受け止めてくださったからでしょうか。

 当初は10名程度のクラスを二つ用意すれば十分と思っていたのですが、反響が予想外に多かったため、結局「定員12名×3クラス」を設けることにしました。その増設分もすべて埋まり、熱気を感じる催しにすることができました。

 玉井式にはいくつかの講座がありますが、弊社が導入しているのは「国語的算数教室」です(興味をおもちのかたは、ホームページで内容をご確認ください)。この講座は、年長から小学3年生までを対象としていますが、弊社では小1~3のお子さんをお預かりしています。この催しは、来春小学1年生になる子どもたちと保護者をお招きし、この講座のよさに触れていただくために実施したものです。

 さて、子どもたちはまだ塾や授業について客観的な判断ができませんから、保護者には授業を見ていただく前に「説明会」を実施し、玉井式をご理解いただくためのポイントをご説明ました。ただ漫然と授業をご覧いただくよりも、授業の仕組みや意図を知っていただき、どういう観点に立って授業を見ていただきたいかをお伝えしました。いっぽうの子どもたちですが、初めて足を踏み入れる塾ですから緊張しておられます。そこで、はじめは教室の雰囲気になじんでいただくため、「折った紙にはさみを入れたらどんな形ができるかな?」(後の授業で扱う内容とリンクしています)など、クイズのような課題に取り組んでもらいました。

 保護者で教室がギュウギュウ詰めとなった説明会では、全員が熱心に耳を傾けてくださる様子が感じられ、説明を担当した筆者も、保護者の熱気に後押しされたかのように、予定外のことまでたくさんお話しすることになりました。

 教室の準備完了の知らせを受け、取り急ぎ説明会を終えると、保護者には教室へ移動していただきました。それから、授業の柱となる「ものがたり算数」と「かたちの形」の参観へ。授業の様子ですが、どの子も学びのスタイルが新鮮だったせいか、アニメーションに釘づけになり、学習課題に一生懸命取り組んでいました。どのクラスにおいても、子どもたちの行儀のよさに感心したしだいです。

 ここで誤解を避けるために申しあげておくと、いくらアニメーションを介した学習といっても、子どもたちが意図した学習をやりこなし、成果をあげるには、先生のしっかりとした授業プランや進行の技術が不可欠です。特に、課題に思考を巡らせ、解決に向けた糸口を発見し、解を得るまでのプロセスは、子どもたちの頭脳が躍動する貴重な時間です。この流れをきちんとフォローする先生の存在が、指導の成果を引き出しているのは言うまでもありません。子どもたちが「ああ、楽しかった!」と満足する授業を提供できるかどうかは、やはり何と言っても先生の情熱や技量しだいなんですね。

 実際、今回の「体験授業」においても、先生の導入説明や問いかけ、誘導が上手でなかったなら、子どもたちの反応は引き出せなかったと思います。慣れない学習の場での緊張もありますから、先生の語りかけが適切でなければ、子どもたちが学習対象となる課題の意味を理解し、解き明かしたいという気持ちは湧いてきません。初めは控えめだった子どもたちの反応も、徐々に積極的なものになり、最終的にはほぼ全員が一生懸命に課題に取り組みながら、発表することにも積極的な姿勢を見せるようになりました。こういう体験を連続的に1年間したなら、お子さんの内面には驚くほどの変化が生じることでしょう。

 今回の授業の内容ですが、「ものがたり算数」ではアニメーションの物語を楽しんだあと、物語の内容についておさらいをし、そのあとは今回のメインテーマである「4までの数」と「時計の読みかたの原則」について学んでもらいました。また、「かたちの形」では、図形のアニメーションキャラクターである「さんかくん」の案内に応じて、折り紙にはさみを入れてどんな形ができるかを学んでもらいました。

 さて、僅か1回の授業だったものの、子どもたちにとってはこれまで体験したことのない刺激的な時間になったのではないかと思います。ここで、低学年時の学習に対する玉井式と弊社の共通した見解をお伝えしておきたいと思います。

 玉井式は「9歳までの才能開発」を謳っていますが、決して単純な早期教育に走っているわけではありません。「他の子より早く難しいことを覚えたりできるようになったりする」ということをめざしているのではなく、「どの子にも本来宿っているはずの資質が花開くために必要な刺激を当てる」ことを意図しています。たとえば、図形に対する感覚的素養は、小学校の3~4年生までの生活や遊び、学習の体験を通して磨かれますが、そういった体験をしないまま高学年になると、図形課題に取り組む際に求められる感覚が養われていないために、「わからない」で終わってしまう危険性があります。

 また、小学校への入学は「リテラシー社会への正式な参入」を意味しますが、ひらがなや漢字に触れる体験をすでに幼児期からしているお子さんが大半を占めているのが現実です。その割に、読解力が伸び悩むお子さんが多いのはなぜでしょうか。これは、覚えること自体に追われて、文字の本来の機能に気づかせ、実生活での応用体験につなげる指導が行われていないからではないでしょうか。次の絵を見ていただくと、その意味がおわかりいただけるでしょう。

 これは専門家の書物にあった指摘ですが、小学校入学までにたくさんの文字や漢字を覚えていた子どものアドバンテージは、2年生になるころにはほとんどなくなってしまうそうです。理由は、先行体験をしていた子どもは知的興味に基づく勉強をしていたのではなく、大人に言われたから、親がほめてくれるから学んでいたに過ぎないからです。いっぽう、先行体験はあまりなくても、正式に文字を学ぶ体験から文字の果たす役割や利便性に気づいた子どもは、この便利な文字・漢字というものを使って自分の思いを伝達することに強い興味を抱きます。たとえば、「おかあさんに手紙を書こう!」といったように。こうした経験は、人間が文字を発明するに至った歴史的な経験を、子ども自らがするということに他なりません。だからこそ、すばらしい勢いて文字・漢字の習得が進んでいきます。その結果、わずか1年もすると、先行体験の豊富だった子どもを抜き去ってしまうのです。

 「国語的算数教室」という呼称は、文章読解の力がつく算数の教室という意味で命名されています。その内容に触れていただくとご理解いただけると思いますが、漢字をたくさん覚えさせたり、語彙の増強に力を入れたりしているわけではありません。難解な文章を読ませることを意図しているわけでもありません。アニメーションの続きを文章化し、子どもたちに「アニメのお話の続きはどうなるのかな?」という興味や知りたいという欲求を引き出しながら、自然と長い文章に食いついて読み通す姿勢を築いていきます。その結果として読解力が身につくのです。

 小学校低学年までの子どもの学習は、「知りたい」という気持ちや「楽しさ」が背景となるべきものです。そうでなければ毎日の継続は成立しませんし、意欲が伴わないために成果も上がりません。「玉井式国語的算数教室」は、アニメーションの楽しさを、ただ「楽しい」で終わらせずに、「もっと知りたい!」という子どもの知的欲求を上手に刺激していきます。そうして、学習体験を意味のあるものにしていくとともに、子どもに備わる資質を顕在化させていきます。そういう意図に基づく講座なのです。

 今回参加くださったご家庭はもとより、「玉井式国語的算数教室」に関心を寄せてくださっているご家庭のご入会を心よりお待ちしています。2018年度の開講は3月を予定していますが、2月には弊社の全校舎で新1~3年生のお子さんを対象とした「体験授業会」を開催いたします。こちらにもぜひ参加していただければと思います。


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学力は“学習意欲”に支えられてこそ輝く その3

2017 年 12 月 11 日 月曜日

 前回は、学習意欲が高まるのはどういうときかについて、小学生から高校生までの子どもを対象とした調査の結果をご紹介したところで終わりました。

 今回は、「やる気を失うのはどういうときか」について、前回と同様に国立教育政策研究所内「学習意欲研究会」による調査結果をご紹介してみようと思います。なお、お伝えするのを失念しておりましたが、この一連の調査は、東京都と岐阜県の一部の地域で合計約1400名を対象に実施されたものです。

 この調査データを見ると、小学生から高校生まで年齢に関係なく、子どものやる気がなくなる理由は基本的に共通していることがわかります。

 子どものやる気を左右するのは、教育の場では何と言っても授業なのですね。「授業がつまらない」ことがどの年齢層の子どもにとってもやる気がなくなるいちばんの原因となっていることがわかりました(小学生、中学生、高校生とも、理由の第1位)。これは、教育現場に立つ者(無論、私たち学習塾の指導担当者も含む)が肝に命じておくべきことだと痛感します。

 前回ご紹介したように、小学生、高校生の「やる気になる」理由として、「授業がよくわかるとき」(小学生・中学生校生第1位、高校生第2位)や、「授業がおもしろいとき」(高校生第1位、中学生第2位、小学生第3位)だったことと考え合わせると、子どもたちの知的興味を引き出す上手な授業の実践がいかに子どものやる気に大きな影響を及ぼすかを思わずにはいられません。

 なお、「授業がわからないとき」にやる気を失う割合は、小学生よりも中学・高校生のほうが高くなっています。これは、授業を理解できていないことが成績、ひいては進路選択に影響することを慮ってのことかも知れません。小学生の場合、まだそこまで先を見通して考える思考が育っていません。そのあたりが数値に表れているのでしょう。

 そのほか、子どものやる気がなくなる理由として見逃せない、興味深い項目があります。それは、「家族の仲が悪かったりしていやなとき」というものです。小学生で第2位、中学生で第3位、高校生で第5位にランクされています。

 子どもというものは、親子の関係が良好なときには気持ちが安定し、自分が何を期待されているのかを考えるゆとりが生まれます。まして家庭内が建設的な雰囲気に包まれていると、気持ちが高揚し「がんばろう!」という意欲が湧いてきます。この傾向は、大人(親)の影響力が強い低年齢層ほど強いもので、小学生の保護者の方々にはぜひ心に留めておいていただきたいことです。

 家庭内の雰囲気が子どものやる気に強い影響を及ぼすのは、おそらく思春期(一般には中2前後)までだと思います。思春期を通過し、子どもが精神的に親から独立すると親の干渉を嫌がる傾向が強くなります。「やる気がなくなる」理由のうち、中学生の第4位に「母親に『勉強しなさい』といわれたとき」、高校生の第3位に「母親に『勉強しなさい』といわれたとき」、第4位に「父親に『勉強しなさい』といわれたとき」が入っているのは、こうした理由によるものだと思われます。

 もう一つ、親などがほめたり励ましたりすることが、子どものやる気に与える影響についても調べられていますので、ご紹介しておきましょう。

 この資料は父親対象の調査のみとなっていますが、おそらく母親を対象に行っても傾向としてはさほど大きな違いはないのではないかと思われます。調査結果ですが、父親に勉強のことでほめられたとき、小学生で「とてもやる気になる」が50%強、「やる気になる」が40%近くありました。つまり、父親にほめられると大半の子どもがやる気になるということがわかりました。

 中学生はどうでしょう。「とてもやる気になる」が15%強、「やる気になる」が50数%でした。まだ親にほめられることの影響力は強いものの、小学生ほどの効果はないようです。高校生になると、「とてもやる気になる」は10%弱、「やる気になる」は50数%となっています。高校生になっても親からほめられるのはうれしいことで、やる気の向上につながってはいるものの、徐々に親の影響が弱くなっている様子も伺えますね。

 ここではデータでご紹介しませんが、「父親に勉強のことで叱られたとき」のやる気への影響も調査されていました。この調査では、年齢に関係なく、「やる気がなくなる」「とてもやる気がなくなる」が合わせて60~70%を占めていました。

 以上のことから、子どもが何歳であろうと子どもの努力や長所を認めてほめることは、子どもに前向きで積極的に生きる姿勢を養ううえで欠かせないことだと言えるでしょう。とかく親は子どもの足りない部分に目が向きがちで、注意や叱責の言葉が多くなりがちです。子どもは年齢に関係なく、「親に認めてもらいたい」「親にほめてもらいたい」という願望を強くもっているのだという認識に立ち、褒めて励ますことを忘れないようにしたいものですね。

 11月6日に掲載したブログでは、弊社の「授業」の意図や手法についてお伝えしましたが、こうした授業の実践による効果は、家庭でわが子を見守り応援しておられる保護者の考えとリンクしてこそ成果をあげることができます。

 受験の競争的側面に目を奪われると、どうしても目先のテスト成績や入試結果を優先したくなります。その結果、子どもの学習意欲や取り組みの自発性の重要性への配慮がおざなりになりがちです。しかしながら、「どういう学びが子どもに本物の知力を授けてくれるか」に立ち返るなら、子どもの学習意欲増進に向けた配慮に基づくサポートのほうが遥かに子どものためになるということに思いを致さないわけにはいきません。

 また、子どもの意欲増進に向けたサポートは、受験での合格についても遠回りのようで近道でもあるのです。受験への自覚と意欲が結びついたとき、子どもは驚くほどの頑張りを発揮し、みるみるうちに学力を伸ばしていくことができるのですから。

 中学、高校、大学へと進む過程で、どういう子どもが順調に学力を伸ばせるかを考えてみてください。また、子どもが何歳になっても良好な親子関係を維持できる子育てとはどういうものかを考えてみてください。そうすれば、親や周囲の大人がどう子どもに関わればよいのかについて、自ずと明確な結論が導き出せるのではないでしょうか。


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学力は“学習意欲”に支えられてこそ輝く その2

2017 年 12 月 6 日 水曜日

 先週は、国際学力比較調査の結果をもとに、日本の子どもの学力や学習の現状についてお伝えしました。今回はその続きです。

 データで確認したように、PISAやTIMSSの学力比較で、日本の子どもたち(小学生・中学生)の学力は世界のトップランクと言ってよいほどの優秀な成績を得ています。そのいっぽうで、算数・数学への興味や関心は意外なほど低く、学びの動機づけも弱いことがわかりました。これはどういうことなのでしょう。 

 だいぶ前になりますが、PISA調査の結果を紹介している書物に、「日本の子どもは受験圧力のもとで勉強しているため、常に他との順位競争にさらされており、成績の良し悪しに関わらず『もっと上がいる』『もっとがんばらないと合格は覚束ない』という意識がつきまとう。そのため、いつまでも自分に自信がもてないのではないか」といったような見解が示されていました。

 こうした日本特有の学習環境は、「受験のために勉強させられている」という受け身の姿勢を助長するとともに、「勉強とはテストで成績をあげるためにするもの」という誤った観念を染みつかせてしまうことになりかねません。「日本の大学生は勉強しない」という指摘をしばしば耳にしますが、これは大学受験を終えて先の見通しが立つと、勉強に対する動機づけを失ってしまうからかもしれませんね。

 そう言えばこんな著述があったことを思い出します。日本有数の国立大学の大学院生(心理学研究室に所属)に、担当の教官が「きみたちは中学受験を経験しているみたいだけど、そのときどんな様子だったか覚えているかい」と尋ねたところ、一様に「ひたすら知識を詰め込む毎日だった記憶しかありません」と答えたそうです。大学院生たちの研究テーマは「学習意欲」でした。その教官は、「高いレベルの学習意欲に支えられていたからこそ、一流の大学に進学し、研究者への道を選んだのだろう」と想像されていたのでしょうか。

 それにしても、受かることのためにしかたなく勉強していた子どもが、長じて学習意欲の研究者を志すことになるとは皮肉な話だと思わざるを得ません。「これではたいした研究者にはなれないのではないか」と思うのは筆者だけでしょうか。

 真の勉強は、「知りたい」「解き明かしたい」という好奇心や探求心を背景にして成り立つものです。それでこそ、学んで得た知識や考えかたが実社会で役立つのではないでしょうか。勉強に「目の前の試験をクリアするため」という側面はあっても、いざ数学の問題を解く際には知的欲求に基づく取り組みをしてもらいたいものだとつくづく思います。

 実際、弊社の教室で学んで志望校へ進学した子どもたちを見ていると、目先の合格に振り回された勉強をしている子どもより、勉強すること自体を楽しんでいるかのように見える子どものほうが、はるかに中学進学後の学習状況がよいのは明らかです。弊社の経営者は、約50年前の創設時からこのことに気づき、「子どもの望ましい成長に資する学習指導の実践」「旺盛な学習意欲に基づく自立勉強の促進」を旗印にした学習指導を実践してきました。

 進学塾は受験生を合格に導くためにあるものです。そんななか、弊社のように「子どもの自立勉強」「自学自習」を方針に掲げている進学塾は珍しい存在かもしれません。それでも今日まで世知辛い学習塾の世界で生き残っているのは、この方針に基づく学習が、子どもたちの能力開花に役立ち、中学進学後の学習活動を支える原動力になっているからであろうと確信しています。

 ここで「学習意欲」の話に移りましょう。子どもの学習意欲はどんなときに高まるのでしょうか。学校や家庭、子ども自身の体験などをもとにした調査の結果が公表されていましたので、ちょっとご紹介してみましょう。調査を実施したのは、国立教育政策研究所内「学習意欲研究会」です。

 これを見ると、子どもの成長段階によってやる気のもとになる要素が少しずつ変わっていくことがわかります。

 小学生の場合、自己向上心を刺激されたときや、先生から承認されたときなどが意欲を刺激するようです。当然、家庭で親からほめられたときも同様に意欲を高める要因になると思われます。特に低~中学年は、大人(親や先生)からの評価の影響力が圧倒的に大きい年齢期にありますから、子どもの取り組みの様子をしっかりと見守り、プラスの反応を示してやることが肝要です。

 中学生も同様の傾向が強いものの、将来の職業的な関心が具体化したときも意欲が高まることがわかりました。このことから、子どもの内面における社会性の発達が見て取れますね。また、成績も自分への自信につながり、意欲増加につながるようです。おそらくそれは小学生にも当てはまるのではないかと思いますが、中学生になると大勢の中での自分の位置づけという視点も加わり、成績がよりやる気を刺激する要素になるのでしょう。これも、社会性の発達と無縁ではないと言えそうです。

 高校生も、基本的には小学生や中学生と同じで、授業がおもしろいと感じたときや、よくわかったときの喜びが学びのモチベーションアップにつながるようです。ただし、中学生のころからその傾向があるように、進学したい学校や職業選択に目標が定まったときにやる気が高まる傾向が見られます。社会への参入にあたっては、期待がある反面不安もありますから、方向が定まることは安心や意欲につながるのでしょう。

 ここまでで、予定していた文字数を超えてしまいました。とりあえず今回はここで終わらせていただき、次回は「子どもはどんなときにやる気がなくなるか」について書いてみようと思います。そのうえで、中学受験に挑戦する子どもたちにふさわしい勉強や家庭環境のありかたについて共に考えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。


カテゴリー: アドバイス, 勉強について