学力は“学習意欲”に支えられてこそ輝く その2

2017 年 12 月 6 日

 先週は、国際学力比較調査の結果をもとに、日本の子どもの学力や学習の現状についてお伝えしました。今回はその続きです。

 データで確認したように、PISAやTIMSSの学力比較で、日本の子どもたち(小学生・中学生)の学力は世界のトップランクと言ってよいほどの優秀な成績を得ています。そのいっぽうで、算数・数学への興味や関心は意外なほど低く、学びの動機づけも弱いことがわかりました。これはどういうことなのでしょう。 

 だいぶ前になりますが、PISA調査の結果を紹介している書物に、「日本の子どもは受験圧力のもとで勉強しているため、常に他との順位競争にさらされており、成績の良し悪しに関わらず『もっと上がいる』『もっとがんばらないと合格は覚束ない』という意識がつきまとう。そのため、いつまでも自分に自信がもてないのではないか」といったような見解が示されていました。

 こうした日本特有の学習環境は、「受験のために勉強させられている」という受け身の姿勢を助長するとともに、「勉強とはテストで成績をあげるためにするもの」という誤った観念を染みつかせてしまうことになりかねません。「日本の大学生は勉強しない」という指摘をしばしば耳にしますが、これは大学受験を終えて先の見通しが立つと、勉強に対する動機づけを失ってしまうからかもしれませんね。

 そう言えばこんな著述があったことを思い出します。日本有数の国立大学の大学院生(心理学研究室に所属)に、担当の教官が「きみたちは中学受験を経験しているみたいだけど、そのときどんな様子だったか覚えているかい」と尋ねたところ、一様に「ひたすら知識を詰め込む毎日だった記憶しかありません」と答えたそうです。大学院生たちの研究テーマは「学習意欲」でした。その教官は、「高いレベルの学習意欲に支えられていたからこそ、一流の大学に進学し、研究者への道を選んだのだろう」と想像されていたのでしょうか。

 それにしても、受かることのためにしかたなく勉強していた子どもが、長じて学習意欲の研究者を志すことになるとは皮肉な話だと思わざるを得ません。「これではたいした研究者にはなれないのではないか」と思うのは筆者だけでしょうか。

 真の勉強は、「知りたい」「解き明かしたい」という好奇心や探求心を背景にして成り立つものです。それでこそ、学んで得た知識や考えかたが実社会で役立つのではないでしょうか。勉強に「目の前の試験をクリアするため」という側面はあっても、いざ数学の問題を解く際には知的欲求に基づく取り組みをしてもらいたいものだとつくづく思います。

 実際、弊社の教室で学んで志望校へ進学した子どもたちを見ていると、目先の合格に振り回された勉強をしている子どもより、勉強すること自体を楽しんでいるかのように見える子どものほうが、はるかに中学進学後の学習状況がよいのは明らかです。弊社の経営者は、約50年前の創設時からこのことに気づき、「子どもの望ましい成長に資する学習指導の実践」「旺盛な学習意欲に基づく自立勉強の促進」を旗印にした学習指導を実践してきました。

 進学塾は受験生を合格に導くためにあるものです。そんななか、弊社のように「子どもの自立勉強」「自学自習」を方針に掲げている進学塾は珍しい存在かもしれません。それでも今日まで世知辛い学習塾の世界で生き残っているのは、この方針に基づく学習が、子どもたちの能力開花に役立ち、中学進学後の学習活動を支える原動力になっているからであろうと確信しています。

 ここで「学習意欲」の話に移りましょう。子どもの学習意欲はどんなときに高まるのでしょうか。学校や家庭、子ども自身の体験などをもとにした調査の結果が公表されていましたので、ちょっとご紹介してみましょう。調査を実施したのは、国立教育政策研究所内「学習意欲研究会」です。

 これを見ると、子どもの成長段階によってやる気のもとになる要素が少しずつ変わっていくことがわかります。

 小学生の場合、自己向上心を刺激されたときや、先生から承認されたときなどが意欲を刺激するようです。当然、家庭で親からほめられたときも同様に意欲を高める要因になると思われます。特に低~中学年は、大人(親や先生)からの評価の影響力が圧倒的に大きい年齢期にありますから、子どもの取り組みの様子をしっかりと見守り、プラスの反応を示してやることが肝要です。

 中学生も同様の傾向が強いものの、将来の職業的な関心が具体化したときも意欲が高まることがわかりました。このことから、子どもの内面における社会性の発達が見て取れますね。また、成績も自分への自信につながり、意欲増加につながるようです。おそらくそれは小学生にも当てはまるのではないかと思いますが、中学生になると大勢の中での自分の位置づけという視点も加わり、成績がよりやる気を刺激する要素になるのでしょう。これも、社会性の発達と無縁ではないと言えそうです。

 高校生も、基本的には小学生や中学生と同じで、授業がおもしろいと感じたときや、よくわかったときの喜びが学びのモチベーションアップにつながるようです。ただし、中学生のころからその傾向があるように、進学したい学校や職業選択に目標が定まったときにやる気が高まる傾向が見られます。社会への参入にあたっては、期待がある反面不安もありますから、方向が定まることは安心や意欲につながるのでしょう。

 ここまでで、予定していた文字数を超えてしまいました。とりあえず今回はここで終わらせていただき、次回は「子どもはどんなときにやる気がなくなるか」について書いてみようと思います。そのうえで、中学受験に挑戦する子どもたちにふさわしい勉強や家庭環境のありかたについて共に考えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。


カテゴリー: アドバイス, 勉強について

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