2018 年 2 月 のアーカイブ

2018年度の入試結果と進路選択状況

2018 年 2 月 26 日 月曜日

 日差しに少しずつ春の訪れの近いことを感じるこの頃ですが、まだまだ朝夕は肌寒い日が続いています。インフルエンザに見舞われる人も相変わらず多いようですので、みなさま体調には十分お気をつけください。

 いっぽう、中学入試を終えた6年生児童には一足早い春が訪れています。一つの大きな目標であり、チャレンジであった中学受験が終わると、入試直前までのあの重圧や緊張感から解放されます。どの受験生も入試までの道のりは山あり谷ありで、決して楽なものではなかったことでしょう。受験を終えたみなさんの胸中にあるのはどんな思いでしょうか。大きな目標をめざし、1年、2年以上もの長きにわたってがんばってきた自体がすごいことです。大いに誇りをもっていただきたいですね。

 なお、受験である以上全員に希望通りの入試結果はもたらされません。残念な気持ちをまだ吹っ切れないでいる受験生もおられると思います。しかしながら、受験の結果と受験をめざして学んだ体験の価値は、別次元でとらえるべきものです。気持ちが落ち着いたら、ぜひこれまでを振り返り、受験生活での反省点や収穫をじっくりと点検してみてください。そこから中学校生活を有意義に過ごすための大切な示唆や足がかりが得られるはずです。学びの人生は長いものです。まさに“これから”が大切なのだと肝に銘じていただきたいですね。

 ところで、今年度の中学入試における弊社会員受験生の入試結果と、進路選択の状況がおおよそわかりましたので、今回はそれをお伝えしようと思います。

 今年の広島県西部地区の中学入試については、特に大きな変化はありませんでした。県西部では、全体的に少しずつ中学受験生の数が減少気味ですが、ただ減っているというよりは受け皿が多様になり、分散傾向にあることも起因していると思います。たとえば、公立一貫校の広島県立広島中学校や市立広島中等教育学校などは、歴史は新しいものの新たな人気校となっており、たくさんの受検生を集めています。こうしたことが私学の各校の応募者数に多少の影響を与えているのは間違いありません。

 今年の弊社の会員合格実績と、進路選択の状況は以下の通りです。

弊社6年部会員受験生 主要中学校の入試結果と進路選択の状況(2月24日現在)

中学校

 

定員

弊社会員合格者

会員進学者

広島学院中

修道中

広島城北中

ノートルダム清心中

広島女学院中

安田女子中

近畿大学附属広島中 東広島校

広島なぎさ中

広島大学附属中

広島県立広島中

広島市立広島中等教育学校

私・男

私・男

私・男

私・女

私・女

私・女

私・共

私・共

国・共

公・共

公・共

184

276

200

180

200

200

140

200

120

160

120

63

144

115

78

133

50

69(男35/女34)

113(男71/女52)

47(男33/女14)

29(男13/女16)

24(男13/女11)

53

80

33

56

57

28

14(男7/女7)

33(男18/女15)

21(男10/女11)

16(男5/女11)

11(男5/女6) 

 

※広島なぎさ・広島大学附属の定員は、附設小学校からの内部進学者を含みます。
※まだ最終的な集計に至っていないため、若干の変動が予想されます。

<その他の合格校> 広島大学附属東雲(男5・女1)、広島大学附属福山(女1)、崇徳(男12)、比治山女子(女10)、山陽女子(女2)、新庄(男1・女1)、AICJ(男8・女5)、呉青山(男2・女2)、武田(女3)、桐朋(男1)、愛光(男2・女1)、岡山白陵(女1)、弘学館(女1※特待)、同志社国際(女1)、兵庫県立大附属(男1)、武蔵野女子学院(女1)

 毎年同じようなことをお伝えしていますが、弊社は各家庭の受験校選択や進路決定には基本的に関わらないようにしています。ですから、合格者と進路決定者の数をご覧になれば、受験者の動向がある程度おわかりいただけると思います。

 男子校の最難関私学は広島学院ですが、今年の弊社からの合格者は63名でした。一昨年の68名には及びませんでしたが、まずまずの結果だったと思います。なお、合格者63名のうち、53名が同校に進学する予定です。辞退者10名のうち、5名が広島大学附属中学校を、5名が修道中学校を進路に選択している模様です。合格者の9割近くが入学する広島学院は、やはり受験生にとっての憧れなのだと思わざるを得ません。もう一つ、補欠からの繰り上り状況ですが、今年度は補欠が多数発表されたものの、繰り上がったのはわずか数名程度の模様です。弊社からは1名でした。

 修道には144名が合格しました。この数はここ数年ではいちばん多く、よい結果を得ていると思います。144名の合格者のうち、80名が入学予定です。他校を進路に選んだのは、大半が広島学院で、あとは広島大学附属を選んでいるケースがほとんどです。修道は何と言っても広島で最もポピュラーな私学であり、弊社でも第一志望にしている受験生も多くいます。したがって、会員受験生の9割以上が受験しました。なお、補欠からの繰り上り合格者は例年より多めで、弊社からは7~8名ありました。

 女子私学の最難関はノートルダム清心ですが、同校には例年並みの78名が合格しました。そのうち、55名が同校を進学先として選んでいます。進路選択率が広島学院ほどでないのは、女子の場合広島大学附属の人気が非常に高く、重複合格した場合には附属を選ぶケースが多いことが原因でしょう。

 広島女学院には133名が合格しています。この数も例年並みであり、女子の場合も男子同様に堅調な結果を得ていると思います。合格者のうち、57名が同校に進学する予定です。合格したものの、他校を選んだ受験生の進学先のほとんどは、清心もしくは広島大学附属です。なお、広島女学院は男子の修道と並んで広島で最もポピュラーな私学です。したがって、弊社の女子会員の80数%が受験しています。

 国立の人気校広島大学附属には、男子が33名、女子が14名合格しています。同校は男女合わせて定員が120名と少なく、しかも附属小からの内部合格者(今年は男子14名、女子17名)が含まれています。したがって、外部受検で合格したのは男子135名、女子55名と狭き門となっています。これは例年のことで、弊社では私学志向の強い家庭が多いこと、難関であることなどから、同校への受験者は6年部会員の男子が5割強、女子が4割強と、主要私学への受験率よりはかなり低くなっています。

 特に附属の女子は、前述のように合格者の入学率が高いため、合格発表数が随分絞られています。そのため、弊社会員の合格者も14名しかいません(男女とも全員外部からの受験生です)。しかも、ご存知のように内申書が点数化されているため、学力試験のデータだけでは合格が読み切れない入試となっています。つまり、学力+運が必要で、そのためか合格した家庭の保護者が「行かないともったいない」などといった反応を示されるのをよく耳にします。なお、附属の補欠からの繰り上りは今年はきわめて少なく、弊社では男子は1名、女子はゼロでした。

 最後に公立一貫校の県立広島中学校ですが、今年は弊社会員の受検が昨年よりも少なく(男子30数名、女子40数名)、合格者・進学者とも昨年を下回りました。弊社東広島校の受験生が例年よりも私学志向が強く、広島学院、修道、清心、女学院などに進学する受験生が多かったことも原因でしょう。

 ともあれ、同校は昨年に続いて今年も東京大学や京都大学への推薦入試で合格者を輩出しており、大変勢いがあります。同校への進学希望者は来年以降も大変多いことが予想されます。まだ歴史は浅いものの、受験生の進学対象としてもはや完全にステイタスを築いています。

 とりあえず、主要校の入試結果と進路選択状況について駆け足でご報告しました。もう少し情報がまとまった段階で、より詳しく結果を概観してみようと思います。

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カテゴリー: 家庭学習研究社の特徴

2018年度「前期講座」が開講しました

2018 年 2 月 19 日 月曜日

 中学入試の余韻が残るなか、2月17日(土)には5・6年部の「前期講座(2~7月)」が開講しました(4年部は2週遅れの3月3日に開講します)。

 新6年部生は、いよいよ来年の中学入試に向けて“待ったなし”の1年が始まります。同時に、小学校課程の学習も来年3月をもって終了します。言わば小学校6年間の集大成としての1年間を送るわけです。お子さんなりの自覚を胸に、やるべきことに正面から向き合いながらベストを尽くしていただきたいですね。毎日の積み重ねをいかに大切にするか。それで結果が決まります。

 さて、先週はブログをお休みさせていただきました。毎週の更新をめざしていますが、更新予定日直前の土曜日から3日間連続で低学年部門の「体験授業会」を実施したため、ブログを書く時間が確保できませんでした。ご了承ください。

 このブログは文字数が大変多いのが特徴です。一般的な日記風のブログなら、短時間で読み終える分量で、印象に残る楽しい話題を提供できるでしょうが、知育や受験に関する情報をある程度しっかりとお伝えしようとするとどうしても長くなります。それをかなり短時間で書きあげるため、更新後にミスを見つけたり、直したい表現が出てきたりします(後でこっそり手を入れています)。読んでおられるときに、「あれ!?」と思われることもあるかも知れませんが、こんな事情に免じてお許しください。

 さて、今回は先ほど触れた低学年部門の「体験授業会」を話題に取り上げ、ご報告してみようと思います。高学年のお子さんをおもちのかたは興味が湧かないかもしれませんが、もしもお読みくださったら、現在の学力形成上の問題点について、その原因や打開策に関する情報も見出せるかもしれません。よろしければ読んでいただきたいですね。

 低学年部門には、弊社のオリジナル講座「ジュニアスクール」と、「玉井式国語的算数教室」の2講座があります。「ジュニアスクール」は広島市内の4校舎に3年部を、「玉井式国語的算数教室」は弊社の全校舎に1~3年部を設けています。また、ジュニアスクールには、「ホームワークコース」という通学のない付設コースもあります。こちらは1~3年生を対象としています(昨年、このコースに3年生児童約40名が所属していましたが、大変優秀なお子さんたちでした)。どちらの講座も中学受験を視野に入れている点は共通ですが、ジュニアスクールは「基礎・基本の徹底習得」を、玉井式は「才能開発」を主目的にしており、受験学力の獲得に向けたアプローチのしかたに大きな違いがあります。

 「体験授業会」は、上述の対象校舎・対象学年の全てで実施しました。お子さんがたには「授業」を体験いただき、保護者にはまず講座の内容や意図をご説明し(「説明会」)、後半の時間に「授業参観」をしていただきました。

 筆者は広報関係の仕事だけでなく、低学年部門の総合責任者をしている関係もあり、全ての会場で約40分保護者向けのプレゼンをしました。人数こそまちまちだったものの、どの会場の保護者も熱心に筆者の拙い話に耳を傾けてくださいました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 これより後は、「学力を飛躍させるための条件」というテーマを掲げてお話した事柄をご紹介しようと思います。6年生になって、小学生にはかなり難解な学習課題に取り組むようになると、「頭のよさ」や「文系か理系か」など、天賦の才能や適性を理由にあきらめの気持ちを吐露するお子さんが現れ始めます。しかしながら、小学校課程で学習する内容は、誰でもちゃんと学べば理解できるものであり、努力しだいで中学受験で求められるぐらいの学力は身につけることができます。

 まずはこのことを保護者にお伝えし、どういうポイントを押さえた勉強が重要かをお伝えしました。時間の制約もあり、いささか乱暴ですが次の4つを掲げてお話しました。

学力を飛躍させるための条件

1.読み書き(リテラシー)の確かな土台を築く。
 小学校前半の3年間で、子どものリテラシー能力の土台ができあがります。高学年になってからの勉強を快適にやりこなすための絶対条件は、児童期前半までに「読みの態勢」をしっかり築くこと。一般に、2年生前半で「黙読」へ移行しますが、お子さんの黙読の状態を把握しておられる保護者は少ないものです。スムーズな黙読が読書を活発にし、語彙の増強や読解力の進歩を後押しします。読みが達者なお子さんは、国語だけでなく、全ての教科の学習で有利です。活字を介した情報のやりとりに強いからです。

 では黙読力を保障するのは何かというと、それは「音読」です。文字に対応する音、書き言葉に対応する音声言語(話し言葉)を確認していくこの音読作業によって、子どもは黙読(脳内で文字に対応する音声をイメージする)ができるようになっていきます。音読が不十分な子どもは、黙読がスムーズでなく、同じ文章を読んでも得られる情報が正確でないうえ、読むのに時間がかかります。これが勉強のブレーキになってしまうのです。テスト時間の制約にも弱いのは言うまでもありません。

 高学年のお子さんで思い当たる節のあるご家庭は、文章の音読を試してみてください。特に問題なのは男子で、1行もスムーズに読むことができないお子さんがいます。そういう子は読書も苦手で、語彙も貧しく、高度な心情表現と縁遠く、国語だけでなく、全ての教科の勉強に支障をきたします。音読は親でも聞き役でサポートできますし、何歳であろうと出直せば成果をあげることができます。

2.算数の基礎・基本をしっかりと習得する。
 とかく大人は「早く難しいことができるように」と子どもをせきたてがちです。掛算九九や筆算などは、「もうできる」と判断すると、「もっと勉強らしい勉強を!」と気にも留めなくなる保護者もおられるようです。しかしながら、たとえば九九などは、「上がり九九」「下がり九九」「途中九九」を縦横無尽にやりこなせるようになってこそマスターしたと言えます。このレベルにならないと、高度な算数・数学領域に足を踏み入れてから苦労することになりがちです。問題解決に向けて思考を巡らせているとき、計算処理で立ち止まるようでは思考停止に陥ってしまうからです。

 受験指導は、計算などの習熟に問題がないことを前提に行いますから、低学年のうちにしっかりと取り組んでおいていただきたいですね。最近になって、高学年になっても暗算が不得手で、指を折って数えようとするお子さんが見られるようになったとか。簡単で機械的な作業の学習にはそれなりの意味があります。「無意識レベルまで習熟してこそ役立つのだ」と、心得ていただきたいですね。

3.算数の感覚的素養を磨く。
 算数においては、「センス」や「閃き」がものを言う単元があります。図形単元はその代表的なものですが、得意不得意がはっきり出るため、テストで得点差が生じる原因となりがちです。こういう学習領域で求められる知能を「流動性知能」と言いますが、思考によって判断・解決を図るのではなく、瞬間的に反応・識別する必要のある領域で力を発揮する神経系の知能です。

 流動性知能は、幼児期からの遊びを通して磨かれる知能です。砂場遊び、積み木、自動車のおもちゃ遊び、レゴやタングラムなどを楽しんでいると、自然にこうした領域に強くなります。これらは男の子が好む遊びです。いっぽうの女の子は、動きのない静かで色彩豊かなものを用いた遊びを好み、結果として図形単元への適性を磨き損なってしまいがちです。流動性知能は、9~10歳頃までは刺激を当てるとまだまだ伸びていく可能性があります。そして、誰でもピークが15歳頃に訪れるのが大きな特色です(読みや思考に関わる知能が老人になるまで伸びていくのとは対照的です)。上昇カーブを少しでも上向きにしておけば、最高到達点も高くなります。

 近年は、女性に対する学問的偏見がなくなりつつあります。また、女性の理系分野への進出が求められる社会になっています。4~5年生までの年齢なら、受験勉強だけでなく、形あるものをいろいろ組み合わせたりバラしたり、動かしてみたりする遊びのようなもの(たとえば、「タングラム」など)をしてみることも、こうした方面のセンスを磨く効果があるでしょう。ジュニアスクールや玉井式では、実物かアニメーションかの違いはありますが、図形課題をふんだんに取り入れて効果をあげています。女子でこうした領域に大変強いお子さんが相当数育っています。

4.勉強に対する“快”のイメージを築く。
 最近書いたブログ記事で、スポーツや研究領域、産業界を問わず、最高レベルに到達した人物の特徴として、「入門期、初期段階に“楽しい!”という思いをたっぷりと味わっている」という研究者の言説をご紹介しました。

 これは中学受験の勉強にも当てはまることです。中学受験は受験生が幼いため、大人の圧力で無理やり勉強させるスタイルが一定の効果をあげています。しかしながら、将来の大成という観点に立つとその方法は適切ではありません。子どもの側に、「なぜ勉強するのか」に対する答えがないからです。

 受験が迫った6年生の秋ともなると、大人ですら簡単に解けない問題に取り組むことになりますが、算数の楽しさをたっぷりと味わっている受験生は全然辛そうにしないどころか、むしろ嬉々とした表情で取り組んでいます。こういう子どもに育てたいものですね。

 受験勉強は厳しいものです。しかし、勉強のよさや楽しさを味わった経験の多い子どもは、一見大変そうに見える勉強を辛いなどとは思わず、自ら進んで取り組もうとします。こういうレベルに到達することこそ受験における最も大きな収穫ではないでしょうか。なにしろ、学ぶことを厭わず、自らに課して努力を継続していける人間に成長したのですから。

 

 中学受験までの勉強は、筋のよい頭脳を形成するうえで大変役立つものです。それを大人の押しつけでやらせると、せっかくの成長の芽を摘み取ってしまいかねません。勉強が楽なものでないのも事実ですが、いったん軌道に乗るとやらずにはいられなくなるものです。そこまで導くのが大人の役割ではないでしょうか。

 家庭学習研究社は、このような考えに立った学習指導を実践しています。ご理解ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。毎日見ていると気づきませんが、子どもたちは日々着実に成長し、1年もすれば著しい成長を遂げるものです。辛抱強く、愛情深くお子さんを見守り応援してあげてください。

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験, 勉強について

受験勉強の初期段階で大切にすべきことって?

2018 年 2 月 5 日 月曜日

 中学受験のシーズンが終わり、学習塾は新年度の学習指導へと切り替えの準備を始めています。現在、弊社の各校では毎週土曜日に「会員選抜試験」を実施しています。この試験で一定の成績を修められると、弊社のいずれかの校舎に会員として通学していただけます。まだお子さんの通う塾を決めておられないご家庭はありませんか? 本ブログも参考のうえ、よろしければぜひこの試験を受けていただくようご案内申し上げます。

 前回は、今年中学入試を終えたお子さんのご家庭と、来年中学受験をされる新6年生のご家庭に、「これまでの学習の振り返りをしてみましょう」ということをご提案しました。というのも、学びの節目での振り返りは、次のステップでより一層成果をあげるうえでとても大切なことだと考えるからです。

 今回は、これから中学受験対策の勉強を始めるお子さんのご家庭、初めて弊社の教室で学び始めるご家庭の保護者に、「学び始めの段階」で大切にしたいことについてお伝えしてみようと思います。よろしければ参考にしてください。

 さて、お子さんの受験準備のための塾通いの開始にあたり、保護者の方々は受験生活にどんなイメージをもっておられるでしょうか。「受験とは、合格を巡る厳しい競争である」という受験の競争的側面に注意を向けると、「とにかくたくさんの問題、難問に取り組ませ、鍛えないといけない」といった考えになるでしょう。いっぽう、「子どもなりの勉強をし、身につけた学力で受かったところに行けばよい」という考えに立つと、受験生活に対する見方も随分落ち着いたものになるでしょう。

 どちらの考えに基づいて受験対策をするかについては、個人の考えかた次第としか言いようがありません。保護者のお考えやお子さんの性格などを踏まえ、納得できる指導スタイルの学習塾を選ばれるとよいでしょう。弊社について言えば、どちらかというと後者の考えかたに近いかもしれません。というのも、小学生のうちはあまり過激な競争原理の下で子どもに勉強を強いるのではなく、勉強が一生モノとして子どもたちにとって大切なものとなるよう配慮して指導し、その結果志望する中学校に合格できれば、そのほうが子どもたちの人生において得るものが多いと考えるからです。

 ただし、一定水準以上の学力が問われる入試をクリアしないと志望する中学校への進学の夢は叶いません。その意味において、受験勉強はそう楽なものではないのも事実です。弊社は50年前の設立以来、広島の伝統的6か年一貫校への進学を視野に入れた学習指導を基軸にしています。無論、進学塾として活動するからには合格力で他塾に劣ることは許されません。そこで、広島県内の主要私学や広島大学附属中学校などの入試を徹底的に研究し、極力無駄を省いた効率的な受験対策によって、子どもたちの夢が実現するよう応援しています。

 このような方針に基づく受験対策で、重要なポイントの一つが受験対策開始当初の指導です。勉強というものは、嫌なもの、辛いものと思ったなら、「気が進まない」「後にしよう」「今日はやめておこう」「自分にはできっこない」といったように、受け身の気持ちから負の連鎖が始まります。しかしながら、受験勉強を始める小学4~5年生の本来の姿は「好奇心の塊」です。学習課題に興味をもち、「解き明かしたい」「どういうことなのか納得したい」という気持ちが頭をもたげてきたなら、「嫌なもの」「辛い」などという感情はどこかへ吹き飛んでしまいます。

 受験対策の始まりの時期は、今お伝えしたような子どもの好奇心を上手に刺激し、勉強に対して能動的な姿勢を引き出す必要があります。これがうまくいけば、受験生活はうまく軌道に乗り、子どもたちの学習活動はどんどん活発になっていくのです。

 このような始まりの時期の重要性は、どのような分野の勉強や取り組みにも言えるようで、「ものごとに取り組むときには、初めの段階で楽しいという気持ちを引き出すことだ」というアメリカの心理学者の著述を目にして、わが意を強くした次第です。ちょっとご紹介してみましょう。(一部分を調整)

 

 心理学者のベンジャミン・ブルームは、スポーツや芸術、科学の分野において、世界で活躍する120名の人々に加えて、その両親やコーチや教師たちにもインタビューを行った。その研究結果のなかでもとりわけ重要なのは、「スキルは3つの段階を経て進歩し、各段階につき数年を要する」ということだ。

 興味のあることを見つけて掘り下げていく段階を、ブルームは「初期」と呼んでいる。この「初期」に励ましを受けるのはきわめて重要だ。というのも、初心者はまだ本腰を入れて取り組むべきか、やめるべきか、決めかねているからだ。ブルームらの研究でも明らかになった通り、この段階で最も望ましいのは、やさしくて面倒見のよい指導者(メンター)を得ることだ。

 「そのような指導者たちの最大の特長は、最初の学びを楽しく、満足感の得られるものにしたことである。入門のごく基礎的なことは、ほとんど遊びを通して学ぶ。最初のうちは学ぶというより、ゲームのようなものだ」

 また初期には、ある程度の自主性が尊重されるのも大切なことだ。勉強や習い事の学習者を対象に行った長期的研究によって、威圧的な両親や教師は、子どものやる気を損なってしまうことがわかっている。いっぽう、自分の好きなことを選ばせてもらえた子どもは、ますます興味を持って取り組み、後に一生の仕事として打ち込む確率が高くなる。

 

 著者は、上記引用部分の前で、エイミー・チュア氏(イェール大学法科大学院教授)の「保護者や、これから親になる人に伝えたいことがある。それは、『必死に努力する以前に、まずは楽しむことが大事』ということだ。 打ち込みたいものが見つからず、毎日何時間も努力する覚悟ができていないうちは、興味をもったことをひたすら楽しんで、どんどん興味が湧くようにしたほうがよい」という言葉も紹介しておられます。

 

 先ほどの引用文では、ものごとのスキルアップの過程は3段階あり、各段階に数年かかるといった記述がありますが、受験までの助走もそれより短いものの、基本的には同じことが言えると思います。受験生活は2年ないし3年。しかし、子どもにとっては長い期間です。この長いプロセスを乗り切るには、最初から無理やり勉強を押しつけて全力の取り組みを要求してもうまくいきません。まずは子どもに「勉強は楽しいもの」「自分にとって必要なもの」と思わせることが肝要です。

 また、指導担当者は上記引用文にある“メンター”の役割を果たすべき存在です。子どもたち一人ひとりの学ぶ様子をよく観察し、適切なサポートをする必要があります。強引に勉強を押しつけるのではなく、子どもたちの勉強に向き合う姿を見ながら、その子に合ったアドバイスを送るなど、あくまで学習者としての子どもの自律性を尊重しながらバックアップする姿勢が求められます。

 もしも初期の体験がうまくいけば、子どもは受験勉強をやらされるもの、嫌なものなどと思うことは決してありません。そもそも中学受験の勉強には、「受験のための手段」として片付けるにはもったいないほどの知的興味をそそられる学習課題がいっぱいあるのですから。それへの取り組みは、すばらしい頭脳鍛錬になるものです。塾通いを始めたばかりの段階で、「勉強っておもしろい!」「わかったときのうれしさは格別だ」という気持ちをたくさん味わったなら、子どもにはいささか長い受験生活が「大いなる成長を引き出す貴重な体験の場」となることでしょう。

 こんな中学受験をあなたのお子さんにも体験させてみませんか? 私たち家庭学習研究社は、お子さんの目が好奇心で輝くような授業の実践に向けてばんばってまいります。そして、お子さんの学びの人生に確かな足がかりができるよう、また、お預かりしたお子さんの志望校合格の夢が実現するよう、全力で応援させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 勉強について, 家庭での教育