“好きなこと”は勉強の敵!?

2018 年 3 月 26 日

 受験生活が始まると、多くの家庭で悩ましい問題となるのは、勉強以外の活動との兼ね合いです。「続けるべきか、やめるべきか」で揺れるご家庭もあるようですが、おたくではどうでしょうか。

 ある調査によると、小学校の高学年でも全体の8割以上が何らかの習い事に通っているそうです。なかにはほぼ毎日スケジュールが埋まっている子どももいるとか。そうなると、受験勉強のための塾通いとの兼ね合いが確かに難しくなりそうですね。以下は、子どもの習い事に関する実態調査の結果です。参考までに見てみましょう。

 ※上記調査は2007年に実施され、調査回答者は505名でした。  

 こういった勉強以外のものは、とかく「受験の妨げになる」とマイナス要素としてみなされがちです。特に激しいスポーツなどは疲労が伴いますから、「勉強の能率を下げるのではないか」と心配されるかたもおありでしょう。みなさんはどう思われますか? 「習いごと、どうする?」とお子さんに相談したら、「じゃ、やめる」とすんなり返事が返ってくるでしょうか。おそらくはそうならないと思います。理由は言うまでもありません。「受験勉強のほうが好きだ。習い事はすぐやめよう」と考えるお子さんは、ほとんどいないからです。

 この問題に対して筆者が懸念するのは、「受験生活において、勉強以外のものは悪である。少なくとも、受験が終わるまではやめるべきだ」と決めつけることです。特に親がこのような考えにとらわれ、無理に習い事をやめさせると、却って勉強がうまくいかなくなることも少なくありません。なぜなら、子どもの心のなかに「好きなことをやりたかった」という未練があり、せっかく確保した時間的ゆとりを勉強に活かすことができないからです。

 「好きなこと、やりたいこと」に打ち込むのは、掛け値なく楽しいことです。しかし、それだけをやり通して愉快に過ごせる人などいないのが人間社会というもの。「好きなこと」は、「やらねばならないこと」をやってこそ真に楽しく打ち込めます。中学受験対策のための学習生活は、そうしたことを学ぶ貴重な場になるのではないでしょうか。そうすれば、受験をめざしたことの価値も一段と高まることでしょう。

 もう一つ言えば、この問題は中学・高校生活はおろか、一生ついて回るものです。好きなことを続けるために、やらねばならないことをしっかりとやる。このような姿勢があれば、人生をより有意義に過ごすことができます。しかしながら、それがうまくできないために人生を踏み外す人がいるのも事実です。

 直近の未来について想像してみましょう。晴れて志望する中学校に受かった後も勉強がメインの生活はまだまだ続きます。そのいっぽう、中学生や高校生になると、自分自身の楽しみとするものは増えるばかり。交友関係も広がり、時間を要するようになりますし、部活にとられる時間も長くなります。これらはいずれもこの年齢期の子どもにとって欠かせないものです。本分である勉強と、勉強以外の大切にしたいものとをどう両立させるか。それが学校生活を実りあるものにするための課題になるのですが、様々な心魅かれるもの、誘惑するものをうまく選別し、やるべきことを疎かにしないでやり遂げるのは簡単ではありません。中学受験のプロセスにおいて、お子さんがそういう難題を克服していれば、中学高校生活を有意義に過ごせるのではないでしょうか。

 無論、「受験勉強」と「好きなことや楽しみ」との両立は簡単ではありません。時間の割り振りや切り替えをうまくやれるようになるには、試行錯誤の経験を余儀なくされることでしょう。ですが、だからこそ子どもは賢く逞しく成長できるのだと思います。

 だいぶ前になりますが、地域のサッカーチームに所属している子どもたちが揃って弊社の教室に通ってくれたことを思い出します。6~7名はいたでしょうか。サッカーは激しい運動を要するスポーツです。しかも、テストと試合の日が重なることもあります。しかし、彼らは6年生になってもサッカーを続け、何と厳寒期もものかは入試直前の1月にも試合に出ていました。そして入試へ。結果は、ほぼ全員が最難関の私立男子中学校に合格しました。これには驚きましたが、ご両親や受験生自身の強い信念がこの結果を生み出したのでしょう。

 また、ピアノに打ち込みながら、週3日片道1時間余りかけて弊社の教室に通っていた女の子がいました。彼女のピアノは「たしなんでいる」という程度のものではなく、相当なレベルだったと思います。彼女も1月まで発表会に出ていました。そして、最難関の私立女子中学校にみごと合格しました。

 以上は、筆者がたまたま担当したクラスのお子さんだったので紹介したのですが、このような例は枚挙にいとまがありません。受験生として必要な勉強をすることと、好きなもの・こだわりのあるものに取り組むこと。この両方を疎かにせず、高い次元でバランスよくやり遂げようと努力するプロセスは、決して楽ではなかったことと思います。しかし、それへの挑戦は中学進学後の人生を有意義なものにするうえで大いに活かされたことでしょう。

 さて、もしも今「習い事をどうするか」で思案しているご家庭がおありなら、ぜひどうすべきかを親子で話し合ってみていただきたいですね。この問題については、親が采配を振るわないことが重要です。まずは「どうしたらいいと思う?」と水を向け、本人の偽らざる気持ちを確認することをお勧めします。そして「続けたい」という意志がはっきりとしているようなら、「どうしたら両立できるかな?」ともちかけ、少しずつそのための方策について具体化していきましょう。

 何をするにつけてもそうですが、あまりに条件が整い過ぎる恵まれた状況よりも、何らかのハンディのようなものを抱えていたほうが人間は本気になれるものです。そのちょっとした負荷が人間を鍛えてくれます。好きなことをする代わりに、時間の切り替えや割り振りを工夫したり、行動の計画性や実行力などを磨いたりしながら、効率のよい受験勉強をやり遂げようとがんばる。この経験もまた、受験がもたらしてくれるすばらしい宝物として、先々までを建設的な人生の歩みを支えてくれることでしょう。


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