「読書」「会話」「勉強」には、相関関係がある?

2018 年 4 月 16 日

 寒からず暑からずのよい季節がやってきました。こういう季節は全ての人間を活動的にします。今こそやるべきことを軌道に乗せるチャンスですね。

 さて、お子さんを弊社などの受験塾に通わせておられる家庭では、「これって、受験勉強に差し支えないの?」とお迷いになる事柄もいろいろあると思います。受験勉強が大詰めを迎える6年生の秋からは、「すべて受験勉強優先」で迷うこともなくなりますが、4~5年生までの家庭では、「受験勉強も大事だが、気分転換にもなるだろうし…」と、気持ちが揺れてしまうものです。

 たとえば読書。いったん本を読み始めると、一気に最後まで読みたくなるものです。大人なら踏みとどまって状況を顧みる分別がありますが、子どもは時間を忘れて読みふけってしまいがちです。また、家族団らんの時間の会話は子どもにとっても楽しいものです。特に子どもの興味の範囲の話題なら、いつまでも話していたい気分になります。こういう場合においても、大人は場の雰囲気を察知して適当に切り上げますが、子どもの場合それがなかなかできません。

 「うちの子は受験生なのだから、読書に時間をあまり割くべきではないのではないか」「ぺちゃくちゃしゃべっている時間があったら、勉強に精を出させたほうがよいのではないか」―――こんなふうに迷っているかたはおられませんか?

 実際のところ、読みたい本を読んだり、家族団らんの時間に楽しい会話を交わしたりするのは、受験勉強をしているお子さんにとってマイナスに作用するのでしょうか。今回は、そのことを話題に取り上げてみました。

 今からご紹介するのは、2010年に実施された中学3年生(7131名)を対象にした調査の結果です。調査対象者を一定の偏差値ごとにいくつかの学力の階層に分け、それぞれの階層ごとの読書量を調べたもので、学力と読書量の関係性についてある程度の傾向が読み取れるでしょう。

質問/「どのぐらい本を読んでいるか」 回答/1:ほとんど読まない 2:月1~2冊は読む 3:月3~4冊は読む 4:月5冊以上は読む

 これを見ると、絶対的な傾向とは言えないものの、学力と読書量にはある程度比例の関係があることがわかります。学力の高い生徒ほど月あたりの読書量は多いようです。なお、漫画や雑誌はこの調査においては読書に含まれていません。

 この調査の対象者は中学3年生ですが、もしもより読書が活発な小学生(読書量は、子どもの年齢が高くなるにつれて少なくなる傾向があります)を対象に調査したなら、学力と読書量の関係がより明確になるかもしれません。ただし、類似の調査をいくつか点検してみると、読書時間は長すぎるのも短すぎるのも学力形成にマイナスの影響を及ぼしているようです。読書時間があまり長いと、勉強にも差し支えるのは自明のことですから、気をつけたいものです。

 さて、次の資料は前出の調査と同時に行われたもので、学力階層別に家庭での会話状況を調査したものです。

質問/保護者とは日ごろよく会話する 回答/1:とてもあてはまる 2:まあまああてはまる 3:あまりあてはまらない 4:まったくあてはまらない

 これによると、大ざっぱに見て成績上位者の家庭では親子の会話が相対的に豊富であり、成績不振者の家庭では親子の会話が少ないという傾向が見られます。ただし、会話が多ければ多いほどよいというわけではないことも見て取れますね。 

 すでにお伝えしたかと思いますが、団らんの時間の会話は子どもの心の安定に寄与します。それが子どものやる気につながりますし、親が何を自分に期待しているのかを感じとる場にもなります。ですから、親子団らんの時間が家庭で確保されていることは、受験生家庭にとっても大切なのだということがわかりますね。また、親子の会話は、子どもにとっては理路整然とした話しかたを習得する場になりますし、親から新しい語彙を仕入れる重要な機会にもなります。家族団らんの時間に楽しい話に興じるのも、受験生にとって決して無駄なことではありません。

 最後にもう一つ資料を見ていただこうと思います。子どもの読書量と家庭での団らんの時間との関係について調べたものです。

 この資料を見ると、親子の会話が豊富にある家庭の子どもほど読書量が多いということがわかります。これまで、「学力」と「読書」、「学力」と「家族との会話」には、一定の相関関係があることを確認してきましたが、「読書」と「家族との会話」にも同じような関係があることがわかりました。どうやら、「学力」と「読書」と「会話」には互いに正の相関があるようです。

 子どもにとって、新たな知識や考えを獲得する場は「勉強」だけではありません。「読書」や「会話」も、同じように重要なものなんですね。それらは互いに根底の部分でつながっているのでしょう。知らないことを知るのは人間の基本的欲求で、‟快“の感情をもたらします。まして子どもは成長の真っ盛りですから、「勉強」「読書」「会話」の体験は、いずれも知ることの喜びや楽しさに触れる体験として相互に刺激し合うのでしょう。

 受験を意識すると、とかく勉強を最優先しがちです。特に親がそういう姿勢でいると、お子さんの勉強が活性化しない根本の理由に気づかないまま悪循環に陥ってしまいかねません。今回ご紹介した資料のデータは、「なぜ、わが子の勉強に意欲が伴わないのか」について、解決に向けたヒントになるかもしれません。勉強の成果は、投入した時間に比例しません。子どもの知的欲求が活性化する仕組みを理解し、勉強の時間が効率的で有効なものになるよう配慮することも大人の役割だと言えます。

 「読書」や「会話」は息抜きになるだけでなく、勉強の成果をバックアップする効能もあるのだということを踏まえ、お子さんの受験生活がバランスのとれた有効なものになるよう配慮してあげてください。


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