自己肯定感が学習活動に及ぼす影響 その1

2018 年 8 月 6 日

 先々週、先週は、「自然体験や生活体験、手伝いなどと、子どもの自己肯定感との関係」を話題に取り上げてみました。かなり多くのかたがこの記事をお読みくださっているので、もう少し話を進めてみることにしました。

 自己肯定感が、子どもの学習の活性度、ひいては学力に大きな影響を及ぼすのは間違いありません。そのことは、先週ご覧いただいた調査資料である程度ご了解いただけたのではないでしょうか。このブログをお読みくださっているかたの多くは、中学受験生の保護者であろうと思います。当然、わが子の学力形成について高い関心をおもちのはずです。そこで今回は、自己肯定感と学力の関連性について筆者の頭に浮かんだことを書いてみようと思います。

 みなさん、まずはご自身の小学生時代、中学・高校生時代、さらにはその後の学びの人生を振り返ってみてください。もっと高い学力の持ち主になるには、どうすべきだったと思いますか? あるいは、何がかつての自分に足りなかったと思いますか(失礼な質問をお許しください)?

 答えは人それぞれでしょう。筆者自身について申し上げると、「もっと段取りをつけて計画的に学ぶ姿勢を養っていたら」と悔やんでいます。筆者は30数年広報業務を担当し、常に企画や原稿の締切日に追われる日々を送ってきました。この仕事は学生時代までと違って、「できませんでした」の言い訳は通りません。大きな催しは半年以上前から企画を練りますが、時間的猶予がなくなったときなど、「段取り力」の不足を痛感したものでした。ただし、なんとかここまでやってこれたのは、「きっとできるはず」という気持ちを失わずにがんばってきたからだと思います。また、数多くの場を踏むプロセスで、「段取りが事の成否を分ける」ということを身に沁みて感じたからだと思います。

 また、「教科の好き嫌いが小学生時代から顕著で、大学受験に至るまでそれが尾を引いた」ということも後悔の一つです。仕事柄、とても面白い算数の入試問題などに出くわしますが、そんなときには「こういう問題を解く楽しさを味わっていたら、文系に偏っていなかったのでは」と、ついつい思ってしまいます。以上の二つは、筆者が中学受験を経験していたら、状況は随分違っていたかもしれませんね。段取りとつけて学ぶこと、学ぶことの楽しさや面白さに触れる経験をすること。この二つは、弊社の指導方針の柱となるものですから。

 ところで、なぜ上記のような問いかけをしたのかについて申し上げると、それには理由があります。ご自身のこれまでの人生の歩みを、自己肯定感とのつながりで振り返ってみていただきたかったからです。また、今の自分をつくった原動力は何かということについて、改めて振り返ってみていただきたかったからです。そうすれば、今のお子さんの学びの状態をよりよい方向へと改善するうえで有効は方法に気づかれるかもしれません。お子さんの内面の強化に向けたサポートを怠らないことや、学びに対する受け止めかたをより能動的なものにすることも、学力を伸ばすうえで大変重要な役割を果たしています。これらにも、ぜひ目を向けていただきたいですね。

 多くの親は自分の経験を忘れ、わが子の勉強のことになると、直接勉強に関わることばかりに目を向けがちです。しかしながら、子どもの学習成果を規定しているのは、勉強それ自体よりも、自己肯定感や、学習意欲、学習習慣、ものごとに取り組む姿勢などです。これらが、学習成果をあげるうえでの前提として重要な役割を果たしているのです。何を、どれだけ、どのように取り組むと学力がつくかは、この前提が整ってこそ効果に直接結びついていくのではないでしょうか。また、それを研究して多くの受験生の学力形成に貢献することこそ、学習塾に課せられた大きな役割だと思っています。

 前述の「学びの前提」となる諸要素は、今日の時代にますます重要性を帯びているように思います。というのも、高度経済成長期までの日本では、「大人になったら、お金持ちになりたい!」という願望を胸に勉学に励む子どもが多数いたものです。しかしながら、すでに得るべきものを得た親が築いた環境の下で育った今日の子どもには、そういった上昇志向は希薄です。勉学に打ち込む意欲を否応なく引き出す社会的要因がないなら、人間が本来もつ探求心や向上心を呼び覚ます環境や刺激を子どもに与え、勉学への志向性が子どもに宿るよう大人が働きかけるしかありません。

 次の資料を見てください(文部科学省のHPから引用。データ以外の一部を加工。以後の資料も同様です)。

 上記の資料は、日本、アメリカ、中国、韓国の高校生の生活意識を調査し比較したものです。いずれの国でも、「将来志向の頑張り型」の子どもが「のんびり型」よりも多い傾向にありますが、4か国を比較すると、日本の子どもに気になる点が見受けられます。たとえば、「将来のために~」は40ポイント強で三番目、「できるだけいい大学~」は20数ポイントで最下位です。そのいっぽう、「食べていける~」のポイントは4か国中最上位、「人並みの生活~」のポイントは4か国中二番目となっています。つまり、将来志向の意識は低く、無理をしてまでがんばろうとは思わない高校生が多いという現状が明らかになっています。

 さらに、次の資料をご覧になると、現代の子どもの「のんびり志向」がより詳しくわかると思います。

 父親や母親は、「現在中心」の考えと「未来志向」とのバランスがとれています。ところが、子どものほうはと言うと、圧倒的に「現在中心」に志向が偏っています。将来ある中学生や高校生が、その場しのぎの享楽的生活や人生を追い求めているのが気になります。こういう考えかたは、当然将来の人生の歩みに幅をもたせるための勉強にも、マイナスの影響を及ぼすおそれが多分にあるでしょう。

 気がつけば、当初思っていたことと微妙に話題がずれてしまいました。また、文字数が多くなってしまいました。今回はここまでで終了させていただきます。うまくまとまるかどうか自信がなくなりましたが、「今の子どもたちの保護者に」という思いで書いています。よろしければ引き続き読んでみてください。

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子どもの自己肯定感と自然体験・生活体験等の関係 その2

2018 年 7 月 30 日

 前回は、自然体験や生活体験、手伝いなどを豊富にしている子どもは、自己肯定感が高いという調査資料をご紹介しました。今回も、引き続きこの話題を取り上げてみようと思います。

 自己肯定感は、ものごとを遂行し成果を得るうえで欠かせないものです。特にやるべきことが簡単でない場合、「自分にはやれるだけの力がある」と思っているか、それとも「自分にはやれるだけの力がない」と思っているかで、取り組みの能動性や情熱、集中力、粘り強さなどにおいて大きな違いが生じるからです。

 まずは自己肯定感に関する調査の結果を概観してみましょう。なお、調査対象は前回と同じで、小学4年生3084人、5年生3152人、6年生3043人、中学2年生5140人、高校2年生5647人です。この調査は、平成27年の2~3月に、「国立青少年教育振興機構」によって行われたものです。

 自己肯定感に関する調査は、6つの質問項目によって行われました。それぞれの質問に対し、「とても思う」を1点、「少し思う」を2点、「あまり思わない」を3点、「全く思わない」を4点とし、各質問項目の平均点を基準に「高い」「やや高い」「ふつう」「やや低い」「低い」の5段階に分類した結果をまとめたのが上記グラフです。

 資料①は、小4~小6、中2、高2の対象者すべてから割り出した数値を示しています。これによると、自己肯定感が「高い」「やや高い」の合計は48%でした。6つの項目のなかで、自己肯定感が高かったのは「学校の友だちが多い方だ」と「自分には自分らしさがある」で、それぞれ8割、7割強が「高い」もしくは「やや高い」となっています。自己肯定感が低いのは「勉強は得意な方だ」で、「高い」もしくは「やや高い」と回答したのは4割強の子どもでした。

 次に、学年別に自己肯定感の状況を調べた資料をご覧いただきましょう。

 この資料をご覧になったかたの大半は、「自己肯定感が、年齢を重ねるごとに低下している」ということに注目されたのではないでしょうか。なぜ年齢が上がるにつれて自己肯定感が失われていくのでしょうか。

 筆者の想像ですが、これは「子どもが年齢とともに現実の厳しさに直面し、自分への信頼の気持ちを失っている」だけではなく、「子どもが年齢とともに、現実をより客観的に批判的に見つめるようになった」からであろうと思います。子どもは成長の過程で様々な体験を繰り返しますが、その結果自分にできるか・できないかを事前に見通すようになります。自分の現実を、願望を織り交ぜてとらえるのではなく、冷静に可能性を検討する視点が育ってくるからではないでしょうか(無論、このことに関しては様々な見解や意見の相違があろうかと思います)。

 ここまでは、日本の子どもの自己肯定感の現状を示す資料をご覧いただきました。ここから、今回のテーマに直接関わる話題に移ります。自然体験、生活体験、手伝いなどが、子どもの自己肯定感にプラスの影響をもたらしているかどうかを、調査資料でともに確認してみようと思います。

 いかがでしょう。各資料は、自然体験、生活体験、手伝い、生活習慣のそれぞれについて、「多い(身についている)」から「少ない(身についていない)までを5段階に分け、自己肯定感の状態を比較してものですが、いずれも「多い(身についている)」子どもほど「自己肯定感が高い」という結果を示しています。

 自然と触れ合う体験は、人間としての瑞々しい感性をよみがえらせてくれるものです。本来備わっている探求心も、より活動的になるのではないでしょうか。生活体験が豊かであれば、自分や他者と向き合う姿勢が育まれます。物事に取り組むうえでの能動性は、「自分や他者への信頼」が背景にあってこそ発揮されますから、高い自己肯定感を伴うことは疑う余地がありません。子どもは家の手伝いをすることで、「自分は家族のために役立っている」という手応えを味わうことができます。当然、自己肯定感が強化されるのは間違いありません。生活習慣がしっかり身についていれば、「何でも自分のことは自分でして当たり前」という観念が自己に浸透していきます。これも自己肯定の気持ちと密接につながっていることは言うまでもありません。

 こうしてみると、自然体験も、生活体験も、手伝いも、生活習慣(の自立)も、すべて自分という人間を肯定的に見る姿勢の醸成に深く関わっていることが容易に想像されますね。子どものうちに、自己肯定の気持ちを育む様々な体験をさせてやりましょう。そうすれば、子どもは大人に近づいていく人生の過程で突き当たる様々な問題に対しても、決してあきらめることなく前向きに向き合い、自分で活路を見いだせる人間へと成長していけるのではないでしょうか。

 夏休みは、毎日の生活のありかたについて振り返り、足りない点や望ましくない点をチェックするよい機会です。また、修正すべき点が見つかったなら、そこを重点的に改善していくこともできます。今回の調査結果とお子さんの現状とを照合し、お子さんがより前向きに物事に取り組む姿勢を強化していくための参考にしていただければ幸いです。

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子どもの自己肯定感と自然体験・生活体験等の関係 その1

2018 年 7 月 23 日

 この7月、西日本を中心に発生した集中豪雨により、多くの地域が大変な被害に見舞われました。わけても広島県は道路の崩落、河川の氾濫、土砂崩れなどによって、たくさんの尊い命が失われています。数多くの家屋が損壊し、ライフラインにも多大な影響が生じています。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたしますとともに、被害を被った地域の方々が、一日でも早く以前の生活を取り戻せるよう念じるばかりです。

 このような折でもあり、当ブログの掲載をしばらく見合わせることを検討しておりましたが、過去の掲載記事を閲覧してくださるかたが多数おられ、迷った挙句掲載を再開することにいたしました。

 夏休みに入り、弊社では21日の「6年部 中学受験夏期講習」の開講を皮切りに、各学年の夏の講座が次々に始まりました。災害の起こった直後で心配しましたが、無事に開講することができ、とりあえずはほっと胸をなでおろしたしだいです。

夏休みは、年間を通じていちばん長い休暇ですから、中学受験をめざしている子どもたちにとっても、ただ受験勉強に時間を当てるだけでなく、普段経験できないことがらに挑戦し、人間としてより幅広い成長を遂げる絶好のチャンスにしていただきたいですね。

 

 今回は、自然体験や生活体験、家庭の手伝いなどと、子どもの自己肯定感の状態との関連性についての調査結果をお伝えしようと思います。まずは、次の資料をご覧ください。

 
① 自然体験の現状

※本調査は、国立青少年教育振興機構が平成27年2~3月に実施したものです。小学4年生3084人、5年生3152人、6年生3043人、中学2年生5140人、高校2年生5647人を対象に行われました。いずれも公立学校の児童・生徒です。
 
 この資料は、子どもの自然体験の現状について調べた結果を明らかにしたものです。時間や労力をさほど必要としない自然体験は、かなりの子どもたちが経験しているようですが、キャンプは連れていく大人に知識や経験が必要ですから、経験していない子どもも多いようです。また、自分の足で高い山に登る経験も、親が経験者であったりそういうことが好きであったりしないと、子どもも経験するチャンスが得られないようです。

 自分の家庭の話で恐縮ですが、筆者はキャンプが苦手で一度も息子をキャンプに連れて行った経験がありません(お恥ずかしいかぎりです)。ただし、キャンプの経験は必要だと思い、カブスカウトに入れたことを思い出します。また、山登りは3歳頃からかなりの回数を経験させました。山の植物を手に取り、図鑑で照合する楽しさを教えてやろうと思ったからです。何度も山へ行くうちに、目の前の植物の名前を親に教えてくれるようになりました。もう昔の話ですが、そういう思い出は懐かしいものですね。普段町中に住んでいると、自然体験はなかなかできないものです。みなさんのご家庭では、意図してお子さんに向けている自然体験はおありでしょうか。

 引き続き、生活体験の現状、家庭での手伝いの現状に関する資料をご覧ください。

 

② 生活体験の現状
  
③ 手伝いの現状
 

 赤ちゃんのおむつを換える経験などは、きょうだいの少ない今日では経験しようにもできない家庭も多いことでしょう。「他者のために何かをする」という意味では、電車やバスでお年寄りに席を譲った経験なども、同じように生活体験の括りに入れることができるでしょう。生活体験というと漠然としますが、「日常生活で、自分自身に関わることをどれだけ自分でしているか」や、「身近な地域社会や人との接触・関わりがどれだけあるか」「弱い立場にある人のために、何かしてあげようとかしたか」などは、いずれも生活体験の範疇に入ります。これらの観点から、ご家庭の現状を振り返ってみてください。

 手伝いに関しては、全般的に「必ずやる」という回答が少ないのが少し気になりました。しかしながら、全般的に多くの子どもたちが家で手伝いをしているようです。筆者は、「少子化が進み、便利で快適な生活が実現した昨今、昔なら子どもが当たり前にしていた手伝いが減少しているだろう」と勝手に決め込んでいたのですが、10年以上前の調査と比べると、子どもが家で手伝いをする傾向は以前よりも強くなっていました。「家族のために、自分でやれることをする」という経験は、家族間の信頼関係や、子どもの人としての成長にとって間違いなく必要なことです。「受験生だから必要なし」ということはありません。むしろ、行動の切り替え能力や実行力、ものごとに取り組む意欲などにプラスの影響をもたらすものです。ぜひわが子に手伝いをさせてやりましょう。

 さて、筆者が注目したのは、この調査において「子どもの自己肯定感」との関連性、それもプラスの関連性が明らかにされたということです。自然と触れ合う体験が多いことも、豊かな生活体験をしていることも、家庭で手伝いをたくさんしていることも、すべて子どもの自己肯定感を高める効果があるということがわかりました。当然ながら、このことは子どもの学業面での成果にも間違いなく影響を与えるでしょう。自分をOKであるという気持ちは、「為せば成る」という自信につながります。

 次回は、上記の3つの調査項目と、自己肯定感との関連性を示すデータをご紹介します。また、自然体験や生活体験、手伝いなどが、なぜ自己肯定感につながるのかについても、筆者なりに考えてみようと思います。なお、最後にひとつ申し上げておきたいこと、お願いしておきたいことがあります。日本では、子育てや親子の接触にかける時間がおかあさんに著しく偏っているという現実があります。夏休みの自然体験などは、おとうさんが活躍してお子さんの存在感を高める絶好の機会です。可能なかぎり時間を割き、お子さんと一緒にすごす機会を増やしていただきたいですね。ぜひがんばってください。

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親に求められる二つの資質とは

2018 年 7 月 9 日

 今回は、引き続き子育てに関わる話題を取り上げてみようと思います。前回、このブログの冒頭でスティーブ・ビダルク氏の文献の一部をご紹介しました。そのおしまいの部分に次のような文言がありましたね。

 わが子を愛し、自分にできる最善を尽くす気持ちがあり、子育てについて学ぼうという姿勢をもったおかあさんは、例外なくよい親になるための資質をすべて携えておられます。ただし、現実の生活においては、子どもが思うに任せず、途方にくれたりイライラしたりする場面が幾度となくあるのではないでしょうか。つまり、「子育ては、愛情さえあればうまくいくものではない」ということも、偽りのない事実です。今回はこの問題について考えてみましょう。

 前出のビダルク氏は、「わが子への愛情の核となるものは、一見対照的とも思える二つの資質で成り立っている」と説明しておられます。それは、「温かいやさしさ」と「ゆずらない強さ」です。毎日の子育てで直面しがちな問題を未然に回避したり、うまく乗り越えたりするうえで参考になるかもしれません。そこで、この二つについてもう少し詳しくご説明してみましょう。以下の①~③は、氏の著作の一部を参考にしてまとめたものです。

 

① 「温かいやさしさ」とは?
 「温かいやさしさ」とは、ゆったりとくつろいで思いやりと愛情を示すことのできる能力です。それは子どものそばにいてやるために、頭でせわしなく考えるのをやめ、自分の本能を信じ、外から押しつけられてくるさまざまなプレッシャーをはねのけられる能力でもあります。あなたがリラックスして自分自身でいられれば、ごく自然に湧いてくるでしょう。

 「温かいやさしさ」を無理に引き出そうとする必要はありませんが、心のなかにそれが成長するスペースをつくりださねばなりません。

 たとえば、もしあなたの幼少期に親がよそよそしかったり無関心だったりすれば、それが親になったあなたの心のありように影響を及ぼすこともあるでしょう。しかし、わが子の健やかな成長を願うあなたの気持ちは何ら他の親に劣るわけではありません。それは、落ち着いてじっくりとわが子に対する思いに向き合ってみればわかることです。他の何物にも代えられないわが子の存在を、いとおしく思えてくるに相違ありません。

 男性も女性も、自分のなかの「温かいやさしさ」を再発見すると、多くのものごとがよいほうに変わるでしょう。


② 「ゆずらない強さ」とは?
 「ゆずらない強さ」とは子どもに親切にするが、毅然とした態度で臨む――怒らず、弱気にならず、あきらめずに、ルールをはっきりさせて守らせる――能力です。それは、人々が「あの人には気骨がある」と言うときに思い描く資質です。

 多くの人が愛をとらえ損ねているのは、愛がつねに温かく、べたべたしたものだと考えるからです。たとえば父親が、約束した手伝いをまったくしない息子に、高価な遊び道具を買い与える。それは、愛ではありません。たんなる「だらしなさ」です。「ゆずらない強さ」とは、「もちろんおまえを愛している。だが、おまえはやるはずの仕事を随分前から投げ出しているじゃないか。約束をちゃんと実行するまでは、ほしいものを無条件に買ってやるわけにはいかないよ」と、毅然とした態度で伝えることです。

 それは冷たくすることや辛く当たることではなく、愛情のこもった意志に基づく強さです。よい親は子どもを愛するがゆえに、しばしば厳しく接するものです。それは往々にして安全性と関わっています。――「おまえを愛しているから、通りを走ってほしくないんだ」あるいは他人を尊重することと関わっている場合もあります。――「わが家では、おたがいを叩いたりしてはいけない」

 よい親は、子どもたちに毅然として接するのをためらいません。子どもたちがより幸せな生活を送るのに役に立つのを知っているからです(問題は、日本の親がこういった態度を貫くのを苦手にしていることです)。


③ バランスを見出す!
 「温かいやさしさ」と「ゆずらない強さ」を上手に使い分けられるようになるには、試行錯誤しながら、自分自身でやりかたやバランスを見出していく必要があります。やさしいけれども毅然とした親はこんなふうに言います。「だめよ。雨に中に出ていっちゃ。冷たいからね。おうちでできる何かおもしろいことを探したら?」その手の親は、子どもの欲求をよく知っています。――「退屈なのはわかるわ。何ができるか、いっしょに考えてあげる」 けれども、しっかり心に決めています。――「雨が降っている間は、家の中にいなさい」

 さて、あなたは今のところこの二つのバランスをどのようにもっているでしょうか? 簡単にチェックしてみませんか?

 以上の結果から、「温かいやさしさ」の得点が低く「ゆずらない強さ」の得点が高いかたをAタイプ、「温かいやさしさ」と「ゆずらない強さ」の両方とも得点が高いかたをBタイプと分類します。同様に、「温かいやさしさ」と「ゆずれない強さ」の両方とも低いかたをCタイプ、「温かいやさしさ」の得点が高くて「ゆずれない強さ」の得点が低いかたをDタイプと分類します。あなたはどれにいちばん近いかを確かめてみてください。

 上表は、各タイプの特徴を示したものです。言うまでもなく、理想のタイプは「温かくて強い」Bのタイプです。このBのようなタイプこそ、自分で物事を判断し、適切な行動のとれる人間を育む子育てであろうと思います。

 ある年、学年でトップ3の成績を常に挙げていた男の子がいました。その男の子の精悍で逞しい外見から「天は、二物も三物?も与えるものだな」と内心感心していたのですが、その男の子が、「ボクは普段は母に叱られることはありませんが、いざというときには厳しくて怖い母です」と、おかあさんのことを語っていたのをふと思い出しました。まさに、Bのタイプの子育てを、その男の子のおかあさんは実践しておられたのでしょう(ちなみに、そのおかあさんに一度お会いしましたが、とても優しそうなかたでした)。

 これは筆者の独断ですが、多くの人は「Bのタイプがよいのはわかる。しかし、問題は『ゆずれない強さ』をうまく発揮できないことだ」と思われているのではないでしょうか。そんなかたは、子どもの我儘や甘えについつい応じてしまい、やるべきことをやり通す強さや実行力を育て損なっておられるのではありませんか?その結果、子育てがDのタイプに近づいてしまっているのではありませんか? 中途半端な受験勉強に終始してしまわないためにも、DのタイプのおかあさんはBへとシフトしてくようがんばっていただきたいですね。

 お子さんがまだ幼児でしたら、少しわが子への対応を改めれば理想とするBのタイプにシフトしていくのはそう難しくないかもしれません。しかし、わが子が小学校の中~高学年ともなると、なかなか思うに任せないものです。ですが、子どもが節度や実行力を備えた人間に成長していくためには、今こそ「ゆずれない強さ」を発揮できる親に近づく努力が求められるのではないでしょうか。 子どもの我儘を受け入れるわけにはいかないことを、感情的にならずにしっかりと理屈で説明すればよいのです。さあ、今のうちに。子どもが中学生になると、もはや親の影響力は失われてしまいます。

 繰り返しになりますが、子どもの言い分や行動が認められないものだったとき、大切なのは親の価値観や考えをきちんと説明することです。そこから、少しずつ「ゆずれない強さ」の域へと近づいていけるでしょう。もしも現状がDのタイプであり、わが子の学習や生活に問題を感じておられるなら、ぜひ今からがんばっていただきたいですね。まずは、「② ゆずれない強さとは?」のところを読み直し、親としての対処のありかたについてもう一度じっくり考えてみてください。

 落ち着いた雰囲気のもとで、しっかりわが子を見て親の気持ちを話すと、子どもは親が望んでいることから気持ちを逸らすことはありません。上述の「愛情のこもった意志の強さ」は、親であるどなたにも備わっているものです。

※今回の記事で使用したチェック項目や、4つの子育てタイプの説明は、スティーブ・ビダルク氏の著書をもとに作成しました。

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人はよい親になるための素質をすべてもっている!

2018 年 7 月 2 日

 あなたは子育てを楽しんでいますか? 子育てに生きがいを見いだしていますか? それとも辛いと思っていますか? 不安になることが結構ありますか?

 「楽しいし、生きがいでもある。しかし、ときには不安になるし、辛いと思うこともある」――それが多くのおかあさんの本音ではないでしょうか。わが国では、子育てにまつわる問題として、「おかあさんがたの負担が大変大きい」ということがしばしば指摘されています。子どもの日常のしつけや世話の、実に80数%をおかあさん一人が引き受けておられる。それがわが国の現実なのです。それに加えて、みなさんは「わが子の受験」という大きな課題を抱えておられます。親の精神的な負担は否応にも増すばかりです。

 そんなおかあさんを少しでも応援できたなら…。そう思うものの、そもそも筆者は子育ての達人でもなんでもありません。そこで、今回は子育てや家庭教育に関わる書物のなかから、みなさんに元気を吹き込み、毎日の親業に指針を与えてくれそうな著述を探し、まとめてみたしだいです。

 子育てに関する本を数多く著しておられるスティーブ・ビダルク氏は、著書で次のようなことを述べておられます。

 親は誰だってわが子に対して深い愛情をもっています。子育てに対する情熱をもっています。しかしながら、日常の些細な面倒に突き当たっているうちに、いつのまにか大切にすべき本質を見失いがちです。まずは原点に今一度立ち返りましょう。そのうえで、今回みなさんにお伝えしておこうと思うことが一つあります。それは、「言葉のもつ大きな力」に着目するということです。

 私たちの話しかたや言葉には大きな力があります。その力は使いかたしだいでプラスにもマイナスにも作用します。言葉は子どもの心をうち砕くこともできるし、また、子どもをより善い自分に基づいて行動する人間へと導くこともできるのです。

 親が言葉のもつ力をどのように意識し、いかにして用いるか。それがそれぞれの家庭の文化を形づくることにもなります。親の行動のありかたとして、次の二つのうちあなたはどちらに近いでしょうか。

 子どもは正直です。自分の悪い側面を指摘され、叱られ続けると、そういった行動を一層増幅させて手がつけられなくなっていきます。反対に、よい面をほめられ感謝されると、善なる心に基づいた行動を強化していきます。言葉にはそれほどの力があるのですね。

 どちらが望ましいかは言うべくもありません。ほとんどのかたは後者を志向しておられることでしょう。それにもかかわらず、現実の行動は前者に近いものになってしまう。そんなことはありませんか? 親として期待する子どものふるまいと、実際の子どものふるまいにギャップが生じると、どうしても親は苛立ちます。その結果、思いとは裏腹な対応をしてしまうのでしょう。

 私たちは1日に自分自身へ6万回語りかけると言われています。ネガティブな語りかけをする人は、他者への語りかけもネガティブなものになりがちです。常日頃から、ポジティブで自らを力づける言葉を心の内に語りかけることが重要ではないでしょうか。

 次に一つのエピソードをご紹介しましょう。これは、外国の民間教育運動家の著書から引用したものです(文字数・体裁等の都合で文を調整しています)。

 ある国で行われたワークショップでのことです。参加者の一人にパン屋さんがいましたが、この人は奥さんに無理やり連れてこられたようでした。奥さんは彼の虐待的な言葉の使い方がひょっとしたら直るかも知れないというかすかな望みを抱いていました。彼は両腕を組んでぶつぶつ言いながら座っていましたが、間もなくワークショップにしっかりと参加していました。

 翌日、ワークショップの講師が町で彼を見かけました。すると、彼はニコニコしながら近づいてきて、「あれは本当によく効くねえ!」 講師が「どういう効き目があったのですか?」と尋ねると、「まあ、わたしは世界最悪のボスという評判でね。しかし、『ワークショップで学んだ‟人を力づける言葉”とやらを、試しに使ってみるか』と考えたんだ。それで、いつもは怠け者の従業員に『しっかり仕事をしてくれてありがとう。きみがその重い袋を運んでくれたおかげで、わたしは腰に負担をかけずに済んだよ』と言ってみたんだ。すると、彼は飛び上がらんばかりに驚いた様子だったけど、それからにっこり笑って、いろいろと手伝ってくれてね、『ボス、何かすることはありませんか?何でもやりますから』なんて調子だったんですよ。妻にもこれを試してみようと思ってるんです」 

 誰でもそうですが、自分の存在をプラスの観点から指摘されると、単にうれしいだけでなく、前向きな自分を取り戻すものです。まして子どもならなおさらです。

 みなさん、ここで自分の子どもの最もよいところについて、それぞれ頭に思い浮かべてみましょう。そして、1年前、2年前よりも成長したところはどこか考えてみましょう。それだけで元気が湧いてくるのではありませんか?  

 そして次は、子どもの毎日をよく観察し、子どもについて感じたよい点を、場面に応じてタイミングよく言葉で表現して伝えるのです。それによって、子どもは自分に対する自信を取り戻すとことができます。のみならず、自分の足りない点にも心を向けるようになります。なぜなら、ほめてくれた人物がおかあさんなら、「おかあさんは自分に何を期待しているか」に思いを馳せないわけがないからです。親に言葉でほめられるということは、それほどの違いを生み出すのです。

 一度試してみてください。子どものよい点・よい行動を心からの言葉で伝えてやりましょう。そのとき、お子さんの表情をしっかりと見届けてください。きっと親としての新たな気づきがあるはずです。

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