昭和の頃のアメリカでの話です。国語力と学力の相関関係について、35万人を超える膨大な人数を対象とした調査が行われました。そこで得られた結果は次のようなものでしした。
1.どれぐらい多くの語彙をもっているかが、他のどんな特性よりも社会に
おける成功の原因となる。
2.職場での地位と収入がどのようであるかは、概ねその人の国語力に
正比例している。
3.国語力と学校での成績(学力)は、ほぼ正比例する。
これを見ると、国語力と学力は高い相関関係があるのみならず、社会での成功はその人の語彙力とも深いつながりをもっており、さらには、国語力のあるなしは、社会で成功を収めるかどうかの鍵を握っているということになります。この結論は、「確かな国語力を備えることこそ、人生を成功裡に導く一番の秘訣であり、生きる力を育てることに他ならない」と言っているように思えます。
一方、わが国の初等教育の歴史を調べてみると、前述の調査結果とは相反する方向へと推移していることがわかりました。国語の授業時間が、時代を経るたびに減少しています。
第二次大戦後は、アメリカのプラグマティズム(実用主義)の影響によるものか、理科や社会などの時間数が増えている(このことに批判的な学者も少なからずいるようです)と聞いたことがありますが、資料で確かめてみて、改めて国語の時間数の大幅な変動と、それに伴う影響について考えさせられることになりました。
次の資料は、小学校6年間の教科学習時間数の推移をパーセントで記したものです(現行の学習指導要領に基づくデータは入手しておりません。ただし、2002年と比較して、大きくは変わっていないと思います)。
この資料を見る限り、国語の占める割合が大幅に減っているのは間違いありません。大正時代には、国語の授業時間数の割合は、全授業時間数に対して43~44%ありました。それが、昭和、平成と時代の経過に連れて減っていき、近年の指導要領のもとでは26%足らずになっています。
初等教育の重要な柱の一つは母国語教育です。日本で生まれ育った子どもたちがよりよい人生を歩んでいくためには、小学生時代までにしっかりとした日本語によるコミュニケーション能力を備えておく必要があります。何においても「9歳までに」ということが言われますが、言葉の習得においても重要なのは9歳までです。国語の授業時数の減少と、日本の子どもの読解力の低下とには何らかの相関関係があるのかも知れません。
次回は、欧米諸国の初等教育における国語の状況について調べたことを簡単にお伝えしてみようと思います。



