「音読」を見直してみませんか?

Posted 2015年3月25日 水曜日

 春休みの話題として、前回は家庭における親子の会話についてお伝えしましたが、引き続いて、今回は「音読」について書かせていただこうと思います。

 皆さんのご家庭では、どの程度「音読」に取り組まれているでしょうか。
 最近では、パソコン・タブレット端末などを使った学習も増えてきていますから、それらと比較すると自分で教科書やテキストを声に出して読むという昔ながらの取り組みは、何とも地味で幼稚な活動のように思われがちです。もしかしたら「うちの子はもう一人で静かに本を読めているんだから、今さら音読なんて・・・」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、前回も書かせていただいたように、子どもの黙読が安定するのは概ね小学2~3年生ころだといわれています。その時期までは文章を一人で読めているようであっても、実際には内容をうまく理解できていなかったり、部分的にとばして読んでしまっていたりで、十分な読みができていないことは往々にしてあるものです。
 これは特別なことではなく、この時期までの子どもにとっての「言葉」が、「書き言葉(文字言語)」ではなく、「話し言葉(音声言語)」で占められていることが大きな原因になっています。誰でもまずは「話し言葉」から身につけ、その後の成長にともなって、徐々に「書き言葉」も頭の中でスムーズに音声に置き換えられるようになっていくわけですが、小学校低学年の時期はまさにこの過渡期にあたります。それまで話し言葉が大部分を占めていた子どもが新たに書き言葉を習得するためには、この過渡期にあたる時期に、文字を一旦音声に変換し、脳の中で音声言語と文字言語の連絡網を築きあげる作業が必要不可欠です。
 そして、この作業に直結する活動が「音読」であるというわけです。

 低学年の時期に、音読を通して上記のような作業を十分に経験しておくと、やがて声に出さなくとも文字を目で見ただけで、単語同士のつながりや文の意味をスムーズに理解できるようになっていきます。これは、文章を声に出して読むことで、脳の中で話し言葉と書き言葉を結びつける回路が少しずつ構築されていくからです。こうした活動の繰り返しによって、書き言葉を理解しやすい話し言葉にスムーズに変換することができ、活字で書かれた文章の内容がイメージしやすくなっていきます。これが「黙読」の態勢を築くということなのです。

 反対に、こうした経験が不十分なまま年齢を重ねていった場合、活字を目で追って文章の内容を頭に思い描く力が弱いまま成長することになります。その結果、国語だけでなくどの教科においても読解力不足に悩まされることになってしまいます。こうした問題を抱えたまま5~6年生頃になって「うちの子は読むのが苦手で・・・」といっても、その時点から読みの態勢づくりを一から始めなければならないことになりますから、中学受験を迎える上では大きなハンディキャップを背負うことになりかねません。

 春休みのようにまとまった時間を取りやすい時期は、音読などの新たな取り組みを始めるにはもってこいです。そして、うまくスタートが切ることができたら、春休みが明けた後も宿題を済ませた後の毎日15分~20分間程度、できればお母さんお父さんと一緒に楽しみながら音読に取り組んでみてください。

 「読み」の力は、全ての教科につながっています。将来努力が実を結ぶものと信じて、低学年の時期から地道な取り組みを継続していっていただければと思います。

(butsuen)


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