2008 年 12 月 のアーカイブ

2008年の終わりに

2008 年 12 月 29 日 月曜日

 このブログは、11月8日に始めたのですが、おりしも冬期講座の会員募集、次年度の会員募集と、あわただしく動き回る時期と重なり、原稿をゆっくり書くのもままならぬうちに年末を迎えてしまいました。このブログは、「家庭学習研究社をより深く知ってもらえたら」という意図で始めたものです。しかし、お気づきになったかもしれませんが、私たち家庭学習研究社が掲げる学習指導の方針や、教室で実践している授業は、何ら特別なものではありません。

 よく教育心理学の世界で提示されている、学習とはどういうものか、どうあるべきか」を、学習塾・進学塾の実践バージョンとして編み出したものだと言ってもよいでしょう。ただし、一口に「学習」と言っても受験での合格を視野に入れた学習です。長期間継続する必要がありますし、注ぐべき時間もエネルギーも半端ではありません。

 その一方、受験生はまだ小学生で人間として固まらない成長期の子どもです。この、「成長期の子どもの受験」ということの意味を、大人はよくよく考える必要があるのではないでしょうか。どういう勉強で受験を迎えるかが、そのまま子どもの人間形成・人格形成に影響を及ぼすのです。

 「できるなら、結果を出させてあげたい」と、子どもの受験に関わった者なら誰でも強く願います。しかし、そのあまり子どもの現実にそぐわない受験対策を押しつけると、大人の願いに反した結果に陥りがちです。また、たとえ合格を得たとしても、勉強法が間違っていたなら、子どもはたちまち次の壁に突き当たってしまいます。中学・高校生になってしまうと、もはや大人の力は及びません。小学生の受験は、大人が関わってこそ成り立つものです。だからこそ、大人は子どもの明日や将来を見通しながら後押しをしてやるべきではないでしょうか。

 ところで、このブログの入り口にあるイラストを覚えておられるでしょうか。実は、イラストに描かれている少年は、家庭学習研究社の「総合案内書」のために考え出されたキャラクターです。「子どもたちには、自ら学ぶ積極的な学習を通じて、自らの可能性を自ら切り開いていける人間になってほしい」――そういう願いを伝えるよい方法はないかと思案し、広告会社の人と話し合っているとき、筆者はふとあることを思いつきました。「人生を自分で切り開く、冒険心を忘れない、自分の可能性を追求していく……そうだ、少年版のインディ・ジョーンズで行こう!」となったのです。

 このキャラクターには、社名の一部をとって研太君と名づけましたが、子どもたちには、研太君に託した願いの通り、受験勉強を通じてたくさんの冒険をし、大いに成長していってほしいものです。

 経済がグローバルに連動していく今日においては、大国の不況はあっという間に世界中に波及します。どんな職業が将来安泰かなどということは、誰にもわからない時代が訪れています。善く生きていくのが難しいこのような時代にこそ、逞しく生きる力と創造力が必要です。子どもたちには、中学受験の勉強を「合格のため」などという狭い視野でとらえず、「自分の可能性を広げるために学ぶのだ」という大きな視点に立ってとらえてほしいと願っています。

 それでは、よい年をお迎えください。このブログは、1月5日より再開いたします。来年も、どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: ごあいさつ, 家庭学習研究社の理念

剣の道は、学問を究める道に通じる ~その3~

2008 年 12 月 26 日 金曜日

 東京大学大学院教授の市川伸一先生は、認知心理学者であり、子どもの学習意欲に関する書物を多数著しておられます。その市川先生の本にも、「守」「破」「離」を使って、現在の子どもたちの学力低下問題について触れた記述があります。

 そのおおよその内容は、『今日の教育は、「守」「守」「守」と、型の習得に終わってしまっているのではないか』というものでした。教育が「守」に終始した原因の一つとして「ゆとり教育」もあげられるのでしょうが、もっと言えば、家庭教育の衰退とも言うべき現象があるように思います。子どもが家庭で勉強しなくなっているのです(大がかりに行われた様々な調査データがそれを裏づけています)。地域社会の教育力が落ちているうえに、家庭教育までが衰退したとなると、子どもを取り巻く教育環境は絶望的と言うしかありません。

 この問題は、私たちにはどうしようもないことですが、小学校低学年の段階から「家庭学習」の習慣をつけるよう、学校と家庭による一致協力態勢を築くべきではないでしょうか。学校の勉強だけで基礎・基本がしっかりと身につくはずがありません。何とかして多くの子どもが家庭で勉強に励む日を実現したいものです。

 翻って、私たちの学習塾はどうでしょうか。私たちは、家庭学習の重視、自学自習の姿勢の確立を謳う学習塾としての方針をご理解くださる、たくさんの家庭のお子さんを預からせていただいています。したがって、もとから意図しているとは言え恵まれています。教室での「授業」と「家庭学習」は、互いに切り離せないものとして絶えず連動しています。まねる段階の学習を、教室と家庭で繰り返すことで、基礎・基本の徹底をはかることができるのです。

 ご存知のように、子どもは何でもまねてそれがどういうものかを学びとります。興味をもったなら、遊びでも勉強でもまずはまねようとします。まねて型を学びとる勉強を子どもはいといません。この「守」の段階で、ものを知ること、自分で考えて理解することの喜びをたくさん味わわせる。そうすれば、自分で考えて工夫する段階、すなわち「破」へと子どもは否応なく進んでいくものです。

 「基礎力養成期(4年生~6年生4月末)」の学習を通じて、まねることをしっかりと経験した子どもは、「応用力養成期」の学習が始まると徐々に「破」の段階へと進んでいきます。「もっと成績をあげたい」「より高度な内容の学習をやりこなせるようになりたい」という欲求から、今の勉強に満足せず、自分にあった勉強法、納得できるやり方へと自ら勉強をグレードアップさせていくのです。

 「守」の段階にとどまらず、次の「破」の段階へ、さらには「離」の段階へと子どもたちが学問を究め、先人の域を超えて行くには、小・中学生時代にもっともっと充実した学びの体験をすることが必要です。それを将来ある子どもたちに保障することも、私たち大人の大切な役割ではないでしょうか。子どもたちには、是非ともこうした体験をたくさん積んでほしいと願っています。

 1~3の内容は、かなり重複していたかもしれません。学力形成において小学生時代の学習体験は決定的な影響を及ぼすものであり、あえて強調させていただいた面もあります。お子さんの学力形成の道筋を再考する契機にしていただければ幸いです。
 

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念, 教育者とは

剣の道は、学問を究める道に通じる ~その2~

2008 年 12 月 24 日 水曜日

 前回は、学力を身につけるには、まずもって基礎・基本を固めることが肝要だということを述べました。しかし、この基礎・基本を固める学習が質・量ともに脆弱な状況に陥っています。

 多くの教育熱心なご家庭は、家庭勉強に配慮したり、基礎の身につく塾に通わせたりするなど、そのことへの対策を講じておられます。基礎・基本が不十分なまま中学・高校生になると、勉強を放棄するか、伸び悩みで苦しむしかありません。「守」でつまずくと、もはや「破」も「離」もなくなってしまうのです。近所同士の交流が少なくなくなり、異年齢の子どもの集団が見られなくなった今日、地域社会の教育力は衰退の一途をたどっています。子どもをもつおとうさんおかあさんが、このことを自覚しておられるかどうかは、子どもの学力形成に大きな影響を及ぼすことでしょう。

 心理学者A・ジャーシルドは、「ある機能が一定の程度まで発達すると、人間はそれを自発的に使用しようとする」ということを述べています。「自発性使用の原理」と呼ばれるこの考えは、子どもの学習に当てはめることもできるでしょう。すなわち、学習という行為を支える基礎・基本が、子どもに一定の水準以上身についていなければ、子どもの自発的な学習は実現しません。これでは、いくら「子どもの自発性を尊重した学習」の重要性を説いたとしても、「絵に描いた餅」に終わってしまいます。

 ただし、「基礎・基本」の習得にあたっては、重要なポイントがあります。それは、大人の押しつけによって勉強させるのではなく、子どもが勉強に対してプラスのイメージをもつよう配慮してやるということです。基礎・基本の習得が学習の能動性を引き出すような流れは、無理強いの勉強ではつくれません。

 家庭学習研究社では、4年部開始から6年部の4月末までの2年あまりを「基礎力養成期」と位置づけ、基礎基本の徹底をはかっています。かなり長い期間ですが、「基礎・基本」の習得は、学力形成にとってそれだけ重要なものなのです。この「基礎力養成期」の学習指導において、私たちは勉強の面白さ、自分で課題を解決することの喜びを味わえる機会を数多く子どもたちに提供するよう努めています。そして、おとうさんおかあさんには、お子さんが家庭でやるべき勉強をやり遂げるよう、粘り強く励まし、応援していただくようお願いしています。家庭と学習塾の連携で、子どもにとって理想の学習環境をつくってやるのです。初めからちゃんと一人で勉強できるお子さんはいません。未熟な小学生の勉強ですから、軌道に乗るまでが大変です。しかしながら、ここをうまくクリアすると素晴らしい可能性が子どもに開けてくるのです。

 繰り返しになりますが、学習であれ、何であれ、まずは「まねる」段階、つまり「守」をしっかりと固めておくべきです。「守」の習得にこそ、時間もエネルギーもたっぷりと充てなければなりません。ところが、中学受験においては、「合格」というとりあえずの目標があります。それに惑わされて「守」がおざなりにされ、「破」や「離」に走るケースも出てきます。やり込み主義、暗記主義の勉強も、よいと思ってのことというより、目先の結果ほしさから生まれたやむを得ない手段なのかもしれません。
 

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 子育てについて, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念, 教育者とは

剣の道は、学問を究める道に通じる ~その1~

2008 年 12 月 22 日 月曜日

 その昔、剣の道を極めるために修行に打ち込んだ人は、その過程を「守」「破」「離」という三つの段階に分けて語ったそうです。

 「守」とは、ある流儀をまねて学びとる段階です。それによってその流儀を会得するのです。次は、学びとった流儀を自分なりに見直し、手を加えていく段階に至ります。これが「破」です。そして、ついには学んだ流儀を超え、より次元の高い流儀を自ら編み出します。この段階が「離」です。このように、まねることから始め、やがて自分の流儀に到達するまでのプロセスを「道」と呼びました。「守」「破」「離」は、現在では茶道を始め様々な習い事・学びごとにおいて使われているので、ご存知の方も多いことでしょう。

 ある本に、この「守」「破」「離」を子どもの勉学の道になぞらえた興味深い記述を見つけました。

 『小学校での「読み・書き・算」という、基礎能力の習得にあたって、あれも大事、これも大事とばかりまねるべき基礎が細分化され、結果的には思考力の基礎となる読み・書き・算の内容が量的にも質的にも減少している。つまり、「守」も、「破」も形骸化しているから「離」の段階、すなわち創造することができない。脳は、「守」と「破」の段階で多くの時間を割かなければ育たない。小学校・中学校はその時期にあたるが、そこで必要な繰り返しの訓練が不十分なまま終わっているのではないか』

 これは、近年取り沙汰されている子どもの学力低下の原因を指摘したものでしょう。小学校課程は、言うまでもなく「まねて型を学びとる、“守”の段階」にあります。まねて体に染みこませることが必要なのに、今の公教育ではそれが十分に行われていないということを言っているのだと思います。

 このところ、学校では「基礎・基本の習得」を重要視し、子どもを鍛える方向に向かっているようです。新しい指導要領は、そういう意図をかなり明確に示しています。ただし、学習が質・量ともに不足しているという問題は、週5日制、教科書や授業時数などの枠組みが大きく変わらない限り、抜本的解決には至らないと思います。また、基礎・基本の習得が強制的かつ強引に行われたのでは、新たな問題が生じる懸念が生まれます。

 小学生、特に低~中学年の子どもは、計算処理などをはやく快適にやれるようになることがうれしく、繰り返してやることを嫌がりません。子どもがそういう段階にあることをもっと上手に活かすべきではないでしょうか。

 たとえば、計算を速く快適にできることや、漢字をすらすらたくさん書けることにプライドをもたせるよう、子どもの取り組みに関心をもち、進歩を大いに誉め称えてやることが必要だと思います。前述のように、命令して無理にやらせるのは好ましくありません。また、他人と比べてほめるのもよくありません。子どものがんばりを見守り、進歩していることを喜んでやることで、子どもの向上心に火をつけるのです。きっと、お子さんは元気づき、夢中になって取り組み始めることでしょう。こうした学習を経て、子どもは「守」を固め、徐々に「破」への移行準備をしていくのです。

 なお、「まねるべき基礎が細分化されている」という前述の指摘は、かねてより日本の初等教育の欠点として取り上げられているようです。欧米の初等教育では、「母国語教育」に全体の授業時間の半分もしくはそれ以上が充てられているという話です。この問題は、私たちがとやかく言える次元のことではありませんが、いずれ機会があれば私見を述べさせていただきます。

 

 

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カテゴリー: アドバイス, 教育者とは

まもなく冬休みの講座が開講します

2008 年 12 月 19 日 金曜日

 もうすぐ、子どもたちが待ちに待った冬休みです。冬休みは、夏休みと比べると休暇の期間が短いため、「いつのまにか終わってしまった」と感じるお子さんが多いようです。これは、クリスマスや正月などの行事が多いこととも無関係ではないでしょう。「楽しいことは、あっという間に終わってしまう」のは、大人も子どもも同じですね。

  ただし、楽しい行事満載の冬休みは、それまで築いてきた学習の習慣が壊れる危険性もはらんでいます。楽しい遊びや行事の魅力に酔いしれたあと、「さて勉強」とは思っても体が動いてくれません。「習慣」は、一旦途絶えると取りもどすには時間がかかります。お子さんの学年を考慮に入れながら、冬休みを上手に乗り切れるよう配慮してあげてください。

 さて、ここで話題は中学受験生の冬休みに移ります。例年当社では、冬休みに4・5年生を対象とした「冬期講座」を実施しています。この冬期講座は、「基礎力の定着をめざした学習を進める」とともに、「これまでの学習の流れを壊さないこと」「毎日の通学と家庭学習の繰り返しで、勉強のリズムをよくすること」を指導の主眼においています。

 冬期講座では、短期間とは言え毎日通学があります。「授業」と「家庭学習」を常に連動させていくことで学習にリズムが生まれ、受験勉強の効率がグンと上がっていきます。小学生は吸収力がありますから、勉強の組み立てがしっかりすれば、成果が目に見えて表れてきます。その意味において、冬期講習は非常に重要な役割を担っているのです。

 また、入試本番まであと1ヶ月を切った6年生には、入試対策の完成を目指した冬休みの講座を開講します。毎年のことですが、受験生としての自覚が見られなかったお子さんも、さすがにこの時期になると必死の面もちで取り組んでいます。そんな受験生の子どもたちにとっては、クリスマスや正月を楽しむゆとりはないかもしれませんね。

 先日、県民文化センター等で行ったイベントで、校舎責任者の一人が自らの中学受験生時代の思い出を語っていました。「中学受験を控えたちょうど今頃、母親から『受験が終わるまでは、あなたには誕生日もクリスマスもない』と言われてショックだった」という話ですが、遊びたい盛りの子どもたちのことですから、クリスマスや正月ぐらいは楽しいひとときを送らせてあげたいものですね。

 受験生のみなさんが追い込み期を無事に乗り切り、見事志望校合格の夢を果たされることを、そして改めてクリスマスや正月を満喫できる日がくることを、心よりお祈りするばかりです。

 <当社の冬休み期間の講座>
ジュニアスクール(小学校1~3年生対象)
1・2年生「冬休み学習会」 算数・国語
1年生・・・12/24・26・28(計3日間)
2年生・・・12/23・25・27・29(計4日間)
3年生「冬期集中講座」 算数・国語
・・・12/23・24・25・26・27(計5日間)

中学受験部門(小学校4~6年生対象)
4・5年生「冬期講座」 算数・国語・理科・社会
・・・12/23・24・25・26・27・29・30(計7日間)
6年生「中学受験冬期講習」
・・・12/23・24・25・26・27・29・30・1/4・5・6(計10日間)

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カテゴリー: 家庭学習研究社の特徴