2009 年 5 月 のアーカイブ

家庭での会話と子どもの学習との関係  ~その2~

2009 年 5 月 28 日 木曜日

 前回に引き続き、家庭での会話と子どもの学習の相関関係について、調査でわかったことをご紹介します(この調査は、上智大学の武内清教授と、ベネッセ教育研究開発センターによって実施されたものです)。今回は、「親子の会話量」が「子どもの学習する理由」に、どのような影響を及ぼすかを調べたものです。中学生との比較も興味深いので、中学生の結果も合わせて見てみましょう。

勉強する理由 (親との会話量別) 調査対象:小学生・中学生学習理由

 小学生で注目に値するのは、「問題が解けるとうれしい」「いろいろな考え方が身につく」という二つの項目で、「会話が多い群」が非常に高いポイントを示しているという点です。この二つは、「親子の会話が多い家庭の子どもは、勉強本来のよさを理解しており、それを勉強に向かう動機づけにしている」ということを示しています。会話の多い家庭の子どもは、健全な学習動機で学んでいることの証です。

 また、小学生で注目すべきもう一つの傾向は、「いい中学校に入りたいから」「「自分がつきたい仕事につくのに必要だから」という二つの項目で、「会話の少ない群」よりも圧倒的に高ポイントを示しているという点です。普通、小学生は目標意識をもって学ぶのが難しいと言われています。家庭で進路や職業などについて親子で語り合う生活を送っているからこそ、こういう高いレベルの意識も芽生えているのだと思います。

 中学生との比較でお伝えしたいのは、中学生になると「問題が解けるとうれしい」とか「いろいろな考え方が身につく」など、純粋な動機での学習理由が相対的に低くなっているという点です。これは「会話が多い群」でも言えることです。理由は、社会的な常識が身につき、大人と同じように打算で行動するようになったことの証であろうと思います。

 しかし、これは悪いことではありません。むしろ子どもの成長を意味すると言ってさしつかえありません。たとえば、「いい高校に入りたい」や「つきたい仕事につくのに必要」などの勉強理由は、小学生と比較するとかなり高いポイントを示しています。このような項目が勉強の理由となるのは、社会や将来などに目を向けるなど、時空を超えた発想ができるようになったからこそであり、子どもが大人に近づいているからこそのことです。

 特に、仕事についての認識は、会話が多い家庭とそうでない家庭とではかなり認識が違っているようです。

 以上からも、家庭での会話の大切さを改めて認識された方も多いのではないでしょうか。会話の多い家庭では、小学生の子どもは純粋な動機で勉強に向かう気持ちをもつとともに、当面の目標、さらには将来の目標をも意識して勉強に励むという、理想的な学習への動機づけが実現しているのです。毎日親子の笑い声が絶えない、楽しい会話生活を送っていただきたいものですね。

 

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カテゴリー: 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育

家庭での会話と子どもの学習との関係  ~その1~

2009 年 5 月 25 日 月曜日

 家庭での会話量が、子どもの学習時間に影響しているのをご存知でしょうか。上智大学の武内清教授とベネッセ教育開発センターの共同調査(2004年11~12月)によると、小学生、中学生、高校生を問わず、親との会話の多い子どものほうが、少ない子どもより平均にして15分程度の違いがあるということが発表されています。以下は、調査結果をグラフで表示したものです。

家庭での学習時間(小学生・親との会話量別)

学習時間グラフ

平均時間(無回答・不明を除く)
会話が多い…59分 会話が少ない…44分

(Benesse 第1回子ども生活実態基本調査より)

 ここでの親子間の会話とは、「学校でのできごとについて」「勉強や成績のことについて」「「将来や進路のことについて」「友だちのことについて」「社会のできごとやニュースについて」の5項目です。これらの話題について、おとうさんやおかあさんとそれぞれどれぐらい話をしているかが調査されました。5項目×(父・母)合わせて10項目について、「よく話をする」から「ぜんぜん話をしない」までをいくつかの段階ごとに得点化し、その合計点を会話量の指標としています。そして、全体をほぼ同数の半分ずつに割り、「会話が多い群」「会話が少ない群」に分けて比べています。

 上表は小学生に対する調査結果のみご紹介しましたが、中学生、高校生についても、「会話をよくする」子どものほうが平均して学習時間が15分程度多いという結果が示されています。

 これを見て、「やっぱりそうか」を思った方も多いことでしょう。大人でも「夫婦間」「親子間」を問わず楽しい会話の時間をもつと元気ややる気が出るものです。まして、親の庇護のもとで暮らしている子どもは、親と楽しい会話の時間をもつと、自然と「やるべきこと」に気持ちが向かっていくのではないでしょうか。

 中学受験の勉強が始まると、親子で話をする時間を惜しんで「おしゃべりより勉強」となりがちですが、これは却って逆効果だと言えるでしょう。また、これは以前にお伝えしましたが、中学受験の準備にあたる小学校4~6年生は、爆発的に語彙を増やしていく年齢期にありますから、親子で会話の時間をもつことは、語彙や思考力を増強させる意味においても重要です。何よりも言えるのは、会話があってこそ親子の信頼関係は増しますから、受験が近づいてから親子共々ストレスをためることもなくなります。まさに、「中学受験生だからこそ、親子の会話を大切にすべし」と言えそうですね。 

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

算数と国語では、好きになる理由が対照的?

2009 年 5 月 21 日 木曜日

 「子どもを勉強好きにする」と言っても、算数と国語とではやることが全然違いますから、好きにする方法や、好きになる原因は違うものです。どちらも好きになるとは限りません。では、算数好きか、国語好きかを決定するのは、どういう点なのでしょうか。

 算数が好きな子どもは、「必ずはっきりとした答えがあるから」「どういうやり方をしても、結局は一つの答えにたどり着くから」と言います。つまり、自分の答えが正解か否かが子どもにもはっきりとわかるので、成果を実感し易いということなのでしょう。

 一方、国語が好きな子どもはそれと対照的なことを言います。「記述問題などは、正解と同じことを書いていなくてもマルがもらえるから」「答えが一つでなく、ポイントさえ押さえていればどんな書き方をしていても正解になるから」などと言います。

 さて、これを読んでおられる方のお子さんはどうでしょうか。これまで、お子さんがどんな遊びや勉強を体験してきたかを思い起こせば、合点がいくかもしれませんね。

 幼いころ、学校や公園の砂場で何かをこさえては壊すことを、飽くことなく延々と繰り返していませんでしたか? レゴや積み木など、形のあるもので何かを組み立てたりすることに熱中していませんでしたか? 何かの数を数えたり、順番を数えたりすることを好んだり、親を相手に数遊びをしていつまでもやめようとせず、親を困らせたりしませんでしたか? 言うまでもなく、こういうお子さんは算数好きになりそうですね。

 幼い頃からお伽話を聞いたり、本を読み聞かせてもらったりするのが大好きで、いまだに読み聞かせをせがんだりしませんか? 早くから文字に興味をもち、おかあさんにかわいい手紙を書いてくれたりしませんでしたか? 絵本を読むのが大好きで、直にかなりしっかりとした本を一人で楽しむようになりませんでしたか? 勉強をしていても、いつの間にか本を手にして読みふけったりしていませんか? こういうお子さんは国語好きになりそうですね。

 よく、「うちの子は文系か理系か」というような話題に花が咲いているのを耳にします。そして、「親からの遺伝が大きく影響する」という見解を示す人が多いようです。筆者の指導経験から言うと、遺伝よりも「どういう体験を重ねてきたか」「どんな環境で育ったか」のほうが、子どもの傾向を決定づけているように思います。親が文系だから子どもが国語好きになると言うより、親が本読みだから、子どももまねてそうなったのではないでしょうか。算数好きの子どもは、親も算数・数学が好きで、そういう遊びを飽きもせず教えてやったり、道具を買い与えたりしたからではないでしょうか。

 4年生ぐらいになると、教科の好き嫌い、得意不得意もかなりはっきりとしてきます。それにはそれなりの理由があったのです。もし何かの教科が嫌いになってしまったら、その教科の勉強を押しつけるよりも、それが好きになるような体験から少しずつ巻き直すのも有効な方法かもしれませんね。 

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おまえならできる、あなたならできる

2009 年 5 月 18 日 月曜日

 親なら誰しもわが子に対して「こうあってほしい」という期待があります。しかし、小学生の子どもは、小学生という年齢ゆえに何をするにつけても未熟で無自覚なものです。親の期待と現実とのギャップは親を苛立たせます。そこで、心ならずも叱りとばしたり、「バカ」という言葉で子どもを傷つけたりするようなことも起こりがちです。

 しかしながら、こうした親の態度は子どものやる気を促すどころか、物事に取り組む意欲をしぼませたり、自分への自信を失わせたり、親への反発心を招いたりするなど、逆効果になりがちです。未熟な子どもの取り組みをよくする方法はないのでしょうか。

 リクルート社から東京の公立中学校の校長へ転じ、「夜スぺ」などのユニークな学力増強方策を提案して話題になった、藤原和博氏のことをご存知の方も多いことと思います。その藤原氏の著作に、ジャーナリストの櫻井よしこ氏の親子関係についての記述がありました。参考になるのではないかと思い、おおよその内容をご紹介してみます。

 ジャーナリストの櫻井よしこさんは、おかあさんに幼いころからことあるごとに「あなたなら必ずできるよ」と、励まされて育ったそうです。

 櫻井さんの一家が、ハワイに住んでいたときのこと。おとうさんが事業に失敗し、レストランを閉鎖して日本に引き揚げることになりました。当時、ハワイ大学の学生だった櫻井さんは、一人ハワイに残る決心をしました。おとうさんの反対を押し切って、ハワイに残るにあたっては、おかあさんのいつもの言葉、「あなたならできる」が力になったそうです。

 しかしながら、住まいはない、仕送りもない、身内もいないなか、どうやって暮らしていくのか、すべてが五里霧中でした。途方にくれた櫻井さんでしたが、おかあさんの「あなたなら必ずできるよ」という言葉を思い出しては、励まされたそうです。とにかく、何らかの行動が必要です。大学の先生を訪ねて相談した櫻井さんは、住まいの提供者を見つけ出したり、学費を捻出するための奨学金を得る手続きをしたりと、問題の一つひとつを解決していきながら窮地を脱することができました。

 学生生活が何とか維持できるめどが立ったら、今度は生活費を稼がねばなりません。この問題も適当なアルバイトが見つけ出してクリアすることができました。

 この櫻井さんの並はずれた行動力は、わが子を信じるおかあさんの大きな愛情あってこそ発揮されたものだと言えるでしょう。支えてくれた大学の先生も、おかあさんとのことをほとんど聞いていなかったにも関わらず、櫻井さんにとってのおかあさんの存在の大きさを見抜いていたそうです。

 かなり前に読んだ内容を思い出して書きましたので、若干間違いがあるかもしれません。「母親の深い愛情」のすばらしさについて記憶に残っている話であり、ここで紹介させていただきました。 

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子どもに共感する姿勢が「やる気」を育む

2009 年 5 月 14 日 木曜日

 「子どもが心からやる気になるのは、こういうときなのだろうな」と、思わされる話があります。

 東京大学大学院名誉教授の汐見稔幸先生は、有名な教育学者であり、また一般向けにたくさん書物を著しておられるのでご存知の方も多いと思います。その汐見先生の著書に、子どもの勉学に向かう姿勢を築くうえで参考になる記述がありますので、ご紹介してみましょう。

 小学校2年生のときの母との会話で、今でも鮮烈に覚えているものがあります。学校で蒸留水について習ったのですね。僕は誤解していて、川の上流の水だと思った。家へ帰って「上流水というのをやったんやで」と言ったときに、母は変だと思ったのでしょう。それで、「あ、そうか、『じょうりゅうすい』って、川の上流の水のことだと思ってたん? あんなあ、違うんや。『じょうりゅう』って難しい言葉やけど、お湯を沸かして出てきた湯気を冷やしたのを蒸留水って言うんや」って言ったんです。

 僕が偉そうに説明して間違って言ったことを「何をアホなこと言って」と言わず、僕のプライドを傷つけないように、「ああそうか、『じょうりゅうすい』ってそりゃそういうふうに間違うわなあ」って言ってくれたんです。僕が間違っていたことに対して、僕のプライドをできるだけ傷つけないように母が配慮してくれたことを、その年で僕はわかったのですね。それを今だに覚えている。母がそんなふうに配慮してくれたことがとてもうれしかったのですね。

 このエピソードを紹介された後、汐見先生は親の「共感してやろう」「傷つかないように配慮してやろう」という気持ちは、子どもに通じるのだということを述べておられました。親が子どもの気持ちに立ってものを言えば、それがちゃんと子どもに伝わる。考えてみれば、それは当たり前のことかもしれません。しかし、往々にして親は子どもがどういう気持ちで言ったのかということまでは考えず、間違いを指摘してたしなめるようなことを言ってしまうものです。

 もしも、あのときに汐見先生のおかあさんが「何をアホなことを言って」というふうにおっしゃっていたら、汐見先生の心のうちにあった勉学に対するあこがれや向上心は、木っ端微塵に砕け散ってしまったに違いありません。

 子どもに共感し、子どもの気持ちを汲み取りながら丁寧に接してくれる親の態度は、子どもの勉強に向かう姿勢にも少なからぬ影響を及ぼすことでしょう。こうした親の心遣いが、親への信頼の気持ち、自分を大切に思う気持ち、親の期待に応えようという気持ちにつながり、結果として学習に対する真摯な姿勢につながっていくのだと思います。 

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