4年生の1年間の活かし方  ~その1~

2009 年 10 月 26 日

 今回は、4年生の1年間を、子どもの言葉と思考の発達を促すために積極的に活かしていく方策をご提案させていただこうと思います。ただし、これから書くことのほとんどは以前書いたことであり、このブログを以前からお読みなっているかたにとっては、既知の事柄になり、あまり参考にならないかも知れません。ご了承ください。

 まず、小学4年生は人間の人生においていちばん語彙増加率の高い時期にあたるということを親は認識する必要があります。そのことを忘れ、勉強の内容面にばかり目を向けていると、勉強が空回りのうちに入試を迎えることになりかねません。4年生の1年間における親の役割として最も重要なのは、「適切な言語環境を設定しつつ、子どもの語彙の発達と内面の成長を引き出す」ことにあるのだと認識してください。

 では、具体的にはどういうことをすべきなのでしょうか。

1.子どもと一緒に読書を大いに楽しむ。

 3年生ぐらいから、子どもの語彙増強を引き出す主要な場は、読書へとシフトしていきます。それまで、主として親や周囲の近しい間柄の人との会話が、読書が軌道に乗るまでの子どもの語彙獲得の中心的な役割を果たしていました。しかし、書き言葉の習得が進み、一人で読書を楽しめるようになってきたこの年齢あたりから、語彙獲得の道筋に大きな変化が現れるのです。会話よりも書物を通じて新しい語彙を獲得する。そのことは、語彙増強のペースに劇的変化を生み出します。

 こうした変化が、数値にはっきりと見て取れるようになるのが4年生の頃です。年間の語彙増加率が生涯最高の数値を示すのです。発達心理学者の坂元一郎氏の研究によると、9歳から10歳にかけての1年間の語彙増加率は39.4%に達します。

 この圧倒的な増加率をベースに、ますます読書が語彙獲得を推進していきます。その結果、5年生(10~11歳)の1年間の語彙獲得数は6342語と、これも生涯最高の数字を記録します。理解や使用の可能な言葉が増加すれば、当然微妙にニュアンスの違う言葉の識別能力も進歩します。さらには、関連(4年)、編集(5年)背景(6年)など、抽象的な意味合いをもった言葉も、語彙としてどんどん増えていきます。こういう流れがあってこそ、小学生にはいささか難しい中学入試問題への対応力も身についていくのです。

 できるなら、土曜日や日曜日には親子で本屋や図書館に出かけていただきたいものですね。図書館に行くと、創作児童文学だけでなく、いろいろな本が見つかると思います。伝記、記録文、紀行文、説明文、随筆、歴史物、科学物など、いろいろな本を親子で手に取ってみてください。

 同じタイプの本ばかり読みたがる。そんなお子さんもいます。そういうとき、図書館や本屋は本を手にできますから、一緒に見て、「たまにはこういう本を読んでみようよ」とお子さんに促すこともできるでしょう。

2.子どもとの会話の時間を大切にする。

 子どもが一人で本を読み始めたなら、言葉の先生としての親の役割は終わったのかというと、そうではありません。親子の会話はやはり重要な役割を果たしていきます。おかあさんは、子どもの思考力、表現力のグレードをあげるための大切なパートナーとして欠かせない存在なのです。

 1日に10~20分でも構いません。学校や塾でのできごと、友だちのこと、子どもの興味関心に関わること、時事に関すること、新聞の記事、テレビのニュース、有名な人物のこと、家族のことなど、話題は何でも構いません。

 おかあさんが話をするときには、話が終わるまでしっかりと耳を傾けるように伝えます。また、おかあさんも、お子さんが言い終わるまで、ていねいに聴いてやります。おかあさんには、子どものまどろっこしい話し方にイライラせず耳を傾けるとともに、話し方に問題を感じたなら、「今言っていたこと、わかりにくいからもう一度言ってくれない?」など、子どもの話し方が向上するよう、辛抱強く相手をしてあげてください。

 お子さんにとって、言わばおかあさんは会話のモデル、先生ですから、おかあさんの話し方が望むと望まないとに関わらず、お子さんにそのまま浸透していきます。そこで重要になってくるのは、複雑な事柄や関係を扱うような話題に適した話し方です。たとえば、話すときのセンテンスは長く、構文は重文や複文など、主語と述語が複雑に組み合わさったものを多用するといったように。できるだけ感情的な吐き捨てるような言い回しは避け、第三者にちゃんと理解できるよう順序性や整合性においてしっかりとした話し方を心掛けてください。

 あまり堅苦しく考える必要はありません。会話の場では、互いに自分の思いを落ち着いて、わかりやすく、ていねいに相手に伝えるよう心掛ける。それをお子さんに対して徹底させればよいのです。

 1年間それを続けたなら、読書による語彙の爆発的増加と相まって、おそらくお子さんの思考力と表現力は、格段に進歩を遂げることでしょう。そのことが、本格的な受験勉強への取り組みにおいて、大いに威力を発揮するのは間違いありません。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育

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