2009 年 10 月 のアーカイブ

4年部の1年間を上手に活用する

2009 年 10 月 13 日 火曜日

 先週月曜の記事から、4年部の1年間のもつ役割や意味について、ある程度おわかりいただけたのではないかと思います。4年部からお子さんが弊社の教室に通われるメリットは、教科学習面よりは、むしろ余裕をもって学習の態勢を整えていける点にあるのです。今回は、このことについてもう少し詳しくご説明してみようと思います。

 たとえば、4年生から弊社の教室に通い始めるのと、5年生から通い始めるのとの違いについて考えてみましょう。

 まず学習する教科の数が違います。4年生の学習教科は算数と国語の2教科であるのに対し、5年生は理科と社会科が加わり、入試4教科のすべてを学んでいきます。

 通学コースの通学日数は、4年生、5年生ともに「週3日」となっていますが、授業時間や土曜日の通塾負担に違いがあります。たとえば、平日の授業時間は4年生が午後5時50分~7時35分であるのに対し、5年生は午後5時50分~8時30分となっています。また、テストは2週間に1回の割合で土曜日に実施していますが、テストのない土曜日に5年生は授業を行うのに対して、4年生は授業がありません。

 4年生は算数と国語の2教科しかなく、通学コースの場合、授業は夕方7時半過ぎには終わります。通塾や勉強の負担は、5年生よりも随分少ないことがおわかりいただけると思います。テストは、4年生も5年生も2週間に1回、土曜日に行いますが、教科数が違いますから負担は随分違います。

 もしもお子さんが、年齢の割にしっかりとしておられ、受験に対する意識も明確にもっておられるのなら、5年生からの通学でも何ら支障はありません。受験勉強をやりこなしていく上での基礎学力さえあれば、おそらくは2年間の受験生活で志望する中学校への合格は問題なく果たせるのではないかと思います。

 しかしながら、多くの中学受験生家庭の悩みとなっているのは、能力を云々する以前の段階で生じる諸問題への対処がうまくいかないことです。たとえば、次のような悩みについて、しばしば相談を受けることがあります。

  1. ・計画通りに勉強しない
  2. ・勉強に集中しておらず、その日に決めたことをやりこなせない
  3. ・いつまでもやる気が高まってこない
  4. ・勉強のやりかたが要領を得ない
  5. ・考え方や言葉が幼稚で、それが学習成果のあがらない原因のようだ

 こうした問題への対処にあたり、子どもが4年生であるか、5年生であるかでは、随分親の気持ちも変わってくると思います。先ほども書きましたが、5年生になると受験対策は4教科ありますし、日々の学習の負担が随分違ってきますから、勉強の内容面以外の諸問題に対処する余裕をなかなかもてないものです。

 一方、受験生活をもう1年早くスタートさせていたなら事情は違ってきます。4年生なら、勉強そのものの負担も5年生ほどではありません。学習の習慣づけ、子どもの性格、受験に対する目的意識、学習方法、言葉や思考の発達など、学習成果をあげるうえで土台となる諸要素を点検しながら、問題点として浮かび上がった事柄に対して早めに対処することができます。また、4年生の1年間を通して、今あげたような諸要素を意図して整えていくことももできるでしょう。

 中学受験は、いくら子どものポテンシャルが高くても、それだけではうまくいきません。子どものもっているポテンシャルが、教科の学力に反映されるような態勢をつくっておく必要があるのです。4年生の1年間の通学の意義は、こうした観点から捉えていただくとわかりやすいかもしれません。

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念

受験生活 ~子どもとの間合いをどうする~

2009 年 10 月 8 日 木曜日

 だいぶ前の話ですが、あるとき一人のおかあさんから次のような依頼を受けました。

「先生、うちの子は私の言うことを全然聞いてくれません。何を言っても反発します。でも、先生のことは信頼しています。ですから、私の代わりに先生から言っていただけませんか?」
「はぁ、それで何を言ったらいいんですか?」
「それはですね、いっぱいあるんですよ。ここにリストを書いてきましたから、読んでみてください」

 手渡された紙には、息子さんに実行してほしいと願っている学習上の事柄がこまごまとビッシリと箇条書きにしてありました。いくら言ってもわが子が聞いてくれないから、わらをもすがる思いで筆者に頼んでこられたのでしょう。

 しかし、筆者はその依頼のリストを見ただけで、とてもそのおかあさんの願いを聞き届けてさしあげる気持ちにはなれませんでした。なぜなら、筆者がいくらおかあさんの願いに沿って「やってみなさい」と言ったところで、問題の解決にはならないと思ったからです。

 息子さんはおかあさんの過剰な干渉に閉口し、親を拒否するところまで来ていました。すでに息子さんを通じて、彼の家庭での問題についてある程度知っていたのです。仮に彼が筆者の言うことを聞き、がんばろうと多少は努力したところで、おかあさんがすぐに黙っていられなくなり、息子さんの勉強に口出しをするに違いありません。息子さんと一緒に暮らしているのは、筆者ではなくおかあさんです。家族の信頼と絆の問題に立ち入ることなどできない相談です。

 さて、この話は多くの中学受験生家庭において人ごととは言えない問題かもしれません。たくさんのおかあさんがたにお会いし、話を伺っていると、やはり「親子の間合い」に問題を感じることが多いのです。特に多いのは、親が子どもの取り組みの甘さを黙って見ていられなくなり、いろいろと手出しをして独り立ちに向けた習練の場を奪っているケースです。

 そこで、現在のお子さんとの関係をチェックしてみていただけたらと思います。チェックリストはやや一貫性を欠いているかもしれませんが、学習の取り組みのよいお子さんの家庭から得た情報をもとに作成しました。これからお子さんが受験勉強を始められるご家庭、受験生活の最中にある4~5年生児童のおられるご家庭のおかあさんは、是非試してみてください。

印刷用チェックシート
(見えない場合はAcrobat Readerのバージョンを6.0以上にしてください。)
 

自立促進度

 結果はどうだったでしょうか。7割、すなわち14点以上あれば、現状はまずまず良好だと言えるでしょう。もし、それよりもずっと点が低いようでしたら、各項目の内容を点検し、改めるべき点をチェックしてみてください。

 子どもの中学受験を考える親御さんに、放任主義のかたはほとんどおられません。逆に、子どものことに手出しをし過ぎ、子どもが自分で考えて行動する体験を奪っている傾向が強いようです。あまりに親子の間合いが近すぎると、子どもが窒息してしまいます。

 親は原則を示すことは重要ですが、一つひとつの行動の決着は子どもにつけさせる必要があるように思います。それが子どもに自信を与え、自立した行動のできる人間へと成長させていくからです。中学受験が、お子さんの自立への大いなる旅立ちになるよう、ご配慮のほどよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: 中学受験, 子育てについて

中学受験のための塾通いは、いつからがよいの?

2009 年 10 月 5 日 月曜日

「中学受験を考えているのですが、いつから塾に通ったらよいのでしょうか」――こんな質問や相談をよく受けます。

 それに対して、「いついつからがよいです」という具体的な返事をするのは難しいものです。なぜなら、お子さんの学力状態、体力、他の習い事などの数や時間的な負担、塾への通学に要する時間、家族の送り迎えの可否、お子さん自身の意志など、通塾開始時期を判断するうえのさまざまなファクターは、家庭によって随分違っているからです。

 そこで、中学受験準備のための塾通いの現状について、弊社の例を簡単にご紹介してみましょう。多少は参考になるのではないかと思います。

  1. ・4年生から通塾を始める・・・・・・・・・6割強
  2. ・5年生から通塾を始める・・・・・・・・・3割ぐらい
  3. ・6年生から通塾を始める・・・・・・・・・1割弱

 大雑把に言って、大体こんな具合です。今のところ、全体の半分以上のお子さんは、4年部の開講時(一部は、4年部の夏期もしくは後期開始時)から通塾を始めています。10年以上前には、4年生からと5年生からとは拮抗しており、半々程度であったと記憶しています。

 では、「5年生からでは、ハンディが大きいのか」「6年生からでは遅すぎるのか」という質問を受けるかもしれませんね。しかしこれも、一口にはお答えしにくい質問です。勉強への意識や構えがしっかりとしており、決めたことをちゃんとやっていけるお子さん、学校で学習している内容を高いレベルでやりこなしているお子さんは、5年生から通い始めてすぐさま学年でトップランクの成績をあげる例もかなりあります。

 また、少数ですが6年生から受験勉強を始めるお子さんもいます。正直申し上げて、6年生からの受験対策はお子さんにとってかなりの負担になります。しかしながら、「みんなより遅れて出発したのだ」という気持ちが勉強への真剣さや集中力につながり、最終的にトップランクの私学に合格するようなケースもあります。ただし、実際のところ、、6年生から入会されるお子さんの多くは6年生から受験勉強を始めたということではなく、以前は別の塾に通っておられたお子さんであるケースのほうが多いようです。

 ここまでを読んで、「いつから通えばいいのか、ますますわからなくなった」と思われるかたもおられるかもしれませんね。そんなかたには、次からの説明を参考にしていただきたいと思います。

 弊社の中学受験指導は、4年生からの3年間を原則としています。なぜ3年間かというと、「広島の私立・国立の最難関中学に合格できる学力を養うのに、どうしても3年間必要だ」という意味ではありません。中学受験をめざすのは、小学生のお子さんです。小学生の場合、学力形成以前の部分をまずは整備する必要があります。すなわち、小学生が受験生活を送るにあたっては、生活習慣の自立であるとか、行動の自己管理であるとか、習い事やスポーツなどとの兼ね合いを調整するとか、勉強をやって成果をあげられる状況を少しずつ固めていく必要があります。5年生や6年生になってから受験勉強を始めると、そういった面への配慮をする余裕がなかなかつくれません。その意味において、4年部の1年間があるのは、ゆとりある受験生活を実現するうえで大きな役割を果たしてくれます。

 また、算数は教科書と入試問題の内容的なギャップが大きく、入試で得点差のつきやすい教科です。入試問題に対応できる応用力を備えるには、早めに教科書範囲の学習を終え、入試問題と教科書の間に存在するギャップを埋めていかねばなりません。そこで弊社では、4年生から算数の指導を開始し、少しずつ教科書の先取りをしていきます。

 ちなみに、4年生の秋口には5年生の教科書範囲に移行します。また、6年生の教科書範囲の学習は、単元によっては5年生の6月頃学習を開始するものもあります。そして、6年生の4月末に小学校課程の全範囲の学習を終了します。

 また、「鶴亀算」「過不足算」「流水算」などは現在の教科書では扱われていませんが、中学入試では出題されています。こうした単元の基礎を学ぶ期間を確保するためにも、学校の進度よりも早くカリキュラムを消化しておくことが求められるのです。

 以上のように、弊社が中学受験指導を4年生から行っているのは、「4年生の1年間を、受験態勢を整えるための助走期間とする」とともに、「算数における、入試問題と教科書のギャップを埋め合わせる期間を確保する」という理由に基づいています。

 ですから、弊社の教室への通学をいつからにするかは、こうした点を勘案し、ご家庭やお子さんの状況に合わせて決めていただければよいと思います。いずれにせよ、弊社のどの教室においても、お子さんをお預かりした時点から最善の受験対策ができるよう、精一杯努めさせていただきます。

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴

4年生の「読み」の力のバラツキにびっくり!

2009 年 10 月 1 日 木曜日

 昨年の夏の講座でのことです。久しぶりに4年生の国語の授業に出ました。新規通学生のクラスだったせいか、子どもたちは少し緊張した面もち。でも、全員が熱心に授業に参加し、たくさん発表してくれました。久しぶりの授業は、私にとっても楽しい時間でしたが、テキストの文章を音読させてみてビックリしました。子どもたちの「読み」の能力に、大きなバラツキがみられたのです。

 ただ滑らかに読めるだけでなく、情感のこもった読み方のできる子どもがいるのには、感心させられました。しかしその一方、「このままでは苦労するぞ」と、心配になる子どもも少なくありませんでした。文節の区切り目を識別できず、もたもたする子ども。漢字が苦手で、読むのに難渋するする子ども。早とちりをして、同じ漢字をふくむ似た言葉と勘違いして読んでしまう子ども。「あまり活字にふれていないのではないか」と首を傾げるようなたどたどしい読みをする子ども・・・・・・。

 長年小学生の国語指導をしてきた私の経験から言って、4年生の時点で読みの上達の遅れている子どもは、この先国語で苦しむことになりがちです。授業の終わりにあたって、「今日、文章を読むときにつまずいていた人は、毎日音読の練習を15分~20分くらいはやっておこうね」と、念を押して言っておきました。読みの態勢を整えるうえで、音読はどうしても必要なプロセスだからです。

 なぜ音読をしっかり経験しないと、黙読の力が育たないのでしょうか。それは、活字を目で追って読み進める力は、音読を通して身につくものだからです。小学校入学したての子どもにとって、言葉とは、音声による言葉(話し言葉)に他なりません。ですから、この段階の子どもが文字による言葉(書き言葉)を目で見てすぐにその意味を理解できるようになるには、文字列を音声に変換し、話し言葉とつなぎ合わせる作業が不可欠になってきます。

 この作業をたっぷりと経験して音読が滑らかにできるようになると、やがて子どもは声に出さなくとも目で見ただけで文字のつながりが形成する言葉とその意味を理解できるようになります。音読が不十分なまま黙読に移行した子どもは、文章を目で追っていきながら内容をイメージ化していく力が弱く、読解力不足に悩むことになりがちです。

 すでにお伝えしたと思いますが、黙読が可能になるのは2年生後半から3年生にかけてだと言われています。それへの橋渡しとしての音読に習熟していると、黙読ができるようになってからの読書活動が一段と活発になります。本を読んで理解することが容易にできるので、読書がより楽しいものになるからです。読書時間が増えれば、それだけ文章を目で追って理解する脳の仕組みが鍛えられますから、黙読の態勢は一層整っていきます。こうして、個々の「読み」の能力差が顕在化してくるのが3年生終わり頃です。

 これをお読みになったかたのなかには、「うちの子は5年生で、黙読するのが遅いのですが、もう手遅れなのですか」とおっしゃるかたもあるかもしれません。そういう家庭のお子さんも、あきらめずに毎日音読の練習をしてみてください。そのとき、始めは親がフォローしたほうがよいと思います。

 音読の練習においては、一つの文章を間違えないように集中し読むようにし、読了までの時間を計測します。親は、お子さんが間違いのないように読んでいるかどうかを聞いてやります。また、音読のときには書かれている内容をしっかりと確かめながら読むようお子さんにアドバイスしてください。これをずっと続けているうちに、少しずつ滑らかに読めるようになっていきます。

 もし、わが子の黙読力に不安を感じたなら、一度文章を音読させてみてください。ちゃんと読めるようなら、黙読の力は間違いなくついています。逆に、ちゃんと読めないようであれば、今すぐにでも音読練習をしっかりとやっておく必要があります。
 

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育