2009 年 12 月 17 日 のアーカイブ

中学受験におけるおとうさんの役割

2009 年 12 月 17 日 木曜日

 中学受験は、何かと幼さの残る子どもの受験です。首尾よく成功裡(り)に終わらせるには、親の温かい励ましや後押しが不可欠です。中学受験が“親と子の二人三脚だ”といわれる所以はそこにあります。

 ところで、この場合の“親”とは誰でしょう。大抵の人はおかあさんをイメージするのではないでしょうか。おとうさんを連想された人は少ないと思います。なぜなのでしょう。その理由の一つに、「子どもの日常的な躾・教育はおかあさんの役割だ」という社会通念があげられるでしょう。実際、こうした方面の8割以上はおかあさんが受けもっており、おとうさんの比率は6%あまりに過ぎないという公的調査資料もあるほどです。おとうさんは仕事に疲れ、家庭内のことはおかあさんに任せざるを得ないのでしょうか。

 しかし、長年中学受験に関わってきた私たちの経験から言わせていただくと、おとうさんにしかできない役割があります。また、それを踏まえておられる家庭ほど、成功の確率が高いというのが私たちの実感です。では、中学受験におけるおとうさんの役割にはどのようなものがあるのでしょうか。

★わが子の中学受験における、おとうさんの役割

1.子どもの受験生活を大局から見据え、問題点の核心を見抜けるのがおとうさんです。

 おかあさん方のお叱りを承知で言わせていただくと、おかあさんは、どうしても子どもとの距離が近くなり過ぎる傾向があります。子どもの成績がよいと一緒に喜び、子どもをますますやる気にさせようと張り切る反面、子どもが思うようにがんばらないときなど、感情が先走って冷静になれなかったり、成績が悪いと一緒に落ち込んでしまったり。一心同体は良し悪しなのです。

 その点、おとうさんは接する時間が少ない代わりに一歩離れてわが子の様子を見ています。また、おかあさんと比べわが子の受験に対する温度が適度に低く、その分冷静に状況が見えるものです。ですから、わが子の学習を点検し、軌道修正していくうえでおとうさんのアドバイスは欠かせません。

2.おとうさんの大らかな愛情表現、力強い励ましが必要なときがあります。

 どんな秀才であれ、常に順風満帆な受験生活を送るわけではありません。勉強に行き詰まり、思い悩むことだってあります。突然やる気を喪失し、投げやりになる。そんなこともあるでしょう。

 こんなときが、おとうさんの出番です。こうしたケースには、どちらかというと具体的な対策や勉強の内容に立ち入った話をするより、子どもの気分転換を促し気持ちを解きほぐすこと、子どもに自分を見つめ直すきっかけを与えること、子どもの目を覚まさせることが大切です。どのような人間になってほしいのか、親の期待を熱っぽく語ったり、勉強とはどういうものか、親の考えを聞かせたりするのは、おとうさんがふさわしいでしょう。自分の気持ちを包み込み解きほぐしてくれる、優しいおとうさんの一言に、やる気が奮い立ってくる。普段見たことのない厳しい表情のおとうさんの言葉に、自分の甘えた気持ちを思い知らされる。子どもには、そういう体験も必要でしょう。

3.子育てにおける「夫婦一致の原則」を貫き通すためのキーパーソンは、おとうさんです。

 これは、一般に使われている言葉ではありませんが、子育てには「夫婦一致の原則」があるように思います。いくらおかあさんが受験に熱心でも、おとうさんが反対ではうまくいくわけがありません。子どもは、両親の方針が食い違ったとき、大抵は楽な方につくものです。たとえ自分のためにならなくても、易きに流れるのが子どもというものです。おとうさんの、「勉強なんか、程々でいいさ」の一言で、おかあさんの苦労も一瞬にして水の泡になることさえあります。

 おとうさんは、普段あまり勉強のことで口出ししないけれども、いざというときにはおかあさんと歩調を合わせる。それが大切です。厳しいか甘いかはともかく、「子どもに何を期待するか」は変わらないのだということを、子どもに理解させなければなりません。おかあさんの日々の苦労を実らせるかどうかは、偏(ひとえ)におとうさんの出方にかかっているのです。

 なお、以前にも書きましたが、最近ではおかあさんが子育てのすべてを担っておられる家庭も少なくありません。そのようなご家庭においては、おとうさん的な視点や励ましをおかあさんが心がけることで、バランスをとることもできると思います。要は、お子さんとの距離、間合いが適切であればよいのだとご理解ください。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 子育てについて