2010 年 8 月 のアーカイブ

中学受験生の親に必要な配慮

2010 年 8 月 30 日 月曜日

 一般に、中学受験の準備学習は4年生もしくは5年生ぐらいから始めます。ただし、まだ常識や判断力の育っていない年齢ですから、受験勉強を子ども自身の力だけで進めていくのは無理だと言えます。ですから、受験生活が終わるまで親が何らかの形で関わることが必要です。

 そのいっぽうで、小学校の中~高学年は、毎日の経験を通じて日に日に変わっていく成長期にあたります。受験生活にあたっても、こうした面への配慮は怠らないようにしなければなりません。

 たとえば、この年齢の子どもには、ものごとを自分で判断したり独力でやり遂げたりする体験が必要です。そういった成功体験を通して、子どもは一人前の人間に近づいていきます。受験勉強も、可能な限り子ども自身にやらせ、自分でやり遂げることの喜びを味わわせることが大切です。

 ところが、子どもの勉強の様子を見ると、何もかも頼りないのが現実です。そこで、いつの間にか注意やアドバイスを与えたり、答えの導きかたを教えたりすることになりがちです。それは程度問題ですが、あまり親が子どもの勉強に深く入り込んでしまうと、受験勉強が子どもの自立に向けた成長の場にはならなくなってしまいます。

 今、このブログをお読みいただいているかたのなかにも、該当年齢のお子さんをおもちのかたもおられると思います。おたくではどんな状態でしょうか。何事も一人で判断し、バランスのとれた学習ができるようになるまでには、かなりの長い期間に及ぶ試行錯誤が子どもにも必要です。ちゃんと一人でできるようになるまで、親は辛抱強く励まし、見守ってやらなければなりません。

 そこで、親に求められてくるのは、子どもの成長の度合いをよく観察し、子どもが自分でできることは自分でやらせながら、まだまだひとりでは無理な点は何かを掌握し、その部分にだけ必要最小限の手助けをするということです。

 そうして、一人でできることの領域を少しずつ増やし、「もう、大丈夫かな」と思える段階になったことは、思い切ってやらせてみるということも必要です。少々の失敗なら、子どもにとってよい経験ですから、マイナスにはなりません。

 子どもの独り立ちに向けたプロセスにおいて、親に求められるのは子どもの努力を承認し、喜んだりほめたりすることを忘れないことです。もうちょっとでできそうになってきたら、大いに励まし、期待の気持ちで見守ってやることです。そのことの繰り返しが子どもの奮起と積極的行動を促し、成長をより促進していきます。

 何と言っても、小学生までの子どもにとって、親に期待され、励まされること以上にうれしいことはありません。ですから、わが子の自立のためには親の働きかけが重要なのです。

 無論わが子に期待しない親などいません。わが子の独り立ちは親の願いでもあるはずです。しかしながら、わが子がひとりやろうとすることを、どれぐらい辛抱して見守れるかどうかになると、親それぞれに違っているようです。

 それはどうやら、過保護と過干渉の傾向があるかどうかで決まってくるのではないかと思います。よく言われることですが、親が心配をして子どもに手を貸せば、その分だけ子どもの自立は遅れるのです。子どもは失敗を繰り返しながら成長していくものです。子どもの失敗を黙ってみていられない気持ちはわかりますが、親がいつも手を差しのべていると、かえって子どもの成長は遅れてしまうのです。

 子どもの自立を遅らせても、中学受験での合格は得られるかも知れません。しかし、本来の目的は合格ではなく、子どもが自立を果たすことではないでしょうか。そうでないと、子どもはいつまで経っても人生を自力で歩むことはできません。

 わが子がちゃんとできるかどうか心配なのは、どの親も同じであろうと思います。しかし、どれぐらい途中で声をかけるか、どれぐらい一人でやる様子を見守れるか、どの段階でどれぐらい手伝うかは、親それぞれに違っています。

 そして、親がかりでものごとをするようになると、親に依存する子どもと子どもを放っておけなくなる親とのもたれ合いの関係が際限なく続くことになりがちです。

「そうは言っても、もはやわが子は親が厳しく言わないと自分から勉強なんてしない」「親がちょっとでも目を離すと遊んでしまう」「自己管理など全然できないから、毎日ある塾に通わせて鍛えてもらうしかない」――こんな状態のご家庭はありませんか?

 もしもおありでしたら、そういうお子さんが自ら学ぶ姿勢を身につけるために、どういう働きかけをしたらよいかについて、いずれ記事を書いてみたいと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 勉強の仕方, 子育てについて

子どもが勉強を嫌がるのはなぜ?  ~その2~

2010 年 8 月 23 日 月曜日

 前回は、自分のしたことを否定されることが、子どもにどのような影響を及ぼすかについて書きました。

 幼児期~小学校低学年は、“オール・オア・ナッシング”の時代だと言われます。子どもは自分のしたことが全部OKでないと気がすまず、ちょっといけない部分があっても気持ちが納まりません。

 そんな年齢期ですから、「ダメ」と言われるとたいへんなショックを受け、自分をまるごと否定されているように受け止める恐れがあります。「惜しかったね。もうちょっとで100点だったね」と言われても、「全部○でなきゃダメなんだ」と思い込んでしまいかねないのです。

 親御さんにくれぐれもお願いしたいのは、子どもが意欲的に取り組むこと自体を大いに称え、間違いがあっても叱らないということです(態度面で叱ることとは別の問題です)。間違いがあったなら、「あれ、ここはどうしたのかな?」などと言葉をかけ、子どもに気づかせるようにしてあげてください。

 小学校低学年の段階では、次のようなことは普通にみられますが、問題視する必要はありません。

  1.  ・字を書いたり、計算処理をしたりするのに手間取る
  2.  ・取りかかりが遅い
  3.  ・うっかりミスが多い
  4.  ・ものごとを迅速に判断したり、てきぱき処理したりできない

  「子どもが読み間違えたり取り違えたりするのは当たり前だ」と心得、気長に見守ってあげてください。前回ご紹介したお子さんも、親の叱責が自信とやる気を失わせたのではないでしょうか。もっとおおらかに見守っておられたなら、お子さんは伸び伸び学べたことでしょう。

 おかあさんがたにお願いしたいのは、うかつに否定的な言葉や子どもを打ちのめす言葉を使わないことです。特に、「ダメな子」「おまえはバカ」といった子どもの人格を無視するような言葉は、後々までも子どもを苦しませることになります。

 ある書物にトルストイの幼少期のことが書いてありました。トルストイは、4歳のとき「おまえは醜い子だ」と母親に言われたそうですが、その言葉を生涯忘れなかったそうです。またフロイトは、「幼児期は人間の運命を決める」という言葉を残していると言われます。幼児期~小学校低・中学年期にいちばん大切なこと。それは「何ができるようになったか」ではなく、何かをすることを通じて、「自分に自信をもたせること」「物事への興味・関心をもたせること」ではないでしょうか。

 有名な教育学者(東京大学名誉教授)の書物に、親が子どものすることにどう対応すべきかについて、参考になる話が載っていましたのでご紹介しておきましょう。

 僕が小学校2年生のときの母親との会話で、今でも鮮烈に覚えているものがあります。

 学校で「蒸留水」について習ったのですね。僕は誤解していて、川の上流の水だと思った。家へ帰って「上流水というのをやったんやで」と言ったときに、母は変だと思ったんでしょうね。それで「あ、そうか、『じょうりゅうすい』って、川の上流の水のことだと思ってたん?あんなあ、違うんや。『じょうりゅう』って難しい言葉やけど、お湯を沸かして出てきた湯気を冷やしたのを蒸留水っていうんや」って言ったんです。

 僕がえらそうに説明して間違って言ったことを「何をアホなこと言って」と言わず、僕のプライドを傷つけないように「ああそうか、『じょうりゅうすい』ってそりゃそういうふうに間違うわなあ。でもなあ、『じょうりゅうすい』ってそういう意味違うんやで」と言ってくれたんです

 僕が間違って言ったことに対して僕のプライドをできるだけ傷つけないように母親が配慮してくれたことを、その年で僕はわかったのですね。(中略)

 親が「何言ってんのよ」とかなんとか言ってたら、僕は考えるのがいやになるかもしれないし、そういうことを言うこともいやになるかもしれない。

 どうでしょう。子どもの間違いを見て叱りとばす親も、子どもの間違いに共感する言葉を投げかける親も、わが子に期待し、わが子を愛する気持ちに変わりはないと思います。しかし、子どもに自信を植えつけたり、子どもを奮い立たせたりする力をもっているのは、明らかに後者のほうだとどなたも思われることでしょう。

 子どもが小学生までのうちは、基本的に勉強嫌いなんていません。勉強嫌いになったとしたら、それは人為的な要因があるからです。もしも親が原因だったとしたら、悔やんでも悔やみきれるものではありませんね。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

子どもが勉強を嫌がるのはなぜ?  ~その1~

2010 年 8 月 19 日 木曜日

 ずいぶん前のことです。ある日、低学年部門の会員家庭から「子どもが塾の勉強を嫌がります。辞めようと思うのですが」という連絡を受けました。それはそれで仕方ありません。しかし、原因をはっきりさせることは、ご家庭はもちろんのこと、学習塾の側にも必要なことです。そこで、お子さん共々面談をさせていただくようお願いしました。

 面談前、指導担当者に授業でのお子さんの様子を確かめてみました。すると、「今まで休んだことはないし、いつも楽しそうに授業を受けている。どうして勉強を嫌がるのか理由がわからない」とのこと。「そうか、授業では問題点は見つからないのか。じゃ、どうして勉強を嫌がるのかだろう」と、不思議に思いました。クラスでの子ども同士の関係も問題ないようです。

 面談は、家庭での学習状況を確認することから始めました。おかあさんは「一応、ホームワーク(家庭学習課題)は子どもがやっています。ただ、間違いが多いんです。だから私がチェックしています」と、報告してくださいました。それをお聞きする限り、熱心で望ましいおかあさんです。やはり、原因はお子さんにあるのでしょうか。

 そこで、お子さんに「算数か国語のどちらか、勉強するのが嫌になったのかな?」と、尋ねてみました。すると、小さく首を横に振るものの、はっきり答えてくれません。そこで、家でどんなふうに勉強しているのか、少し詳しく尋ねてみました。そうこうするうちに、徐々に状況がつかめてきました。

 どうやらそのお子さんは、おかあさんに答案をチェックされるとき、強い口調でミスを注意され、大きな×をつけられるらしく、それが辛かったようでした。遠慮がちに、事実関係をおかあさんに確かめてみました。すると、「これじゃ、ダメ。何でこんな易しいのを間違えたの」などと、厳しく叱っておられるようでした。そういったときの様子は、筆者にも容易に想像がつきました。なぜなら、お子さんは小声で筆者に話をしてくれるものの、絶えずおかあさんの目を気にしていたからです。なんだか、おどおどしているようにも見えました。

 これで理由がわかりました。低学年までの子どもにとって、自分の答えを打ち消されるのは、自分を否定されるのと同じことなのです。それで、家での勉強が嫌になったのです。ただし、「おかあさんが×を咎め、叱るからお子さんは勉強を嫌がるんですよ」と、あからさまに言うのははばかられます。そこで、お子さんに「そうか、おかあさんに×をつけられ、叱られるのが辛いんだね」と伝えました。そのお子さんは小さくうなずきました。

 ところが、おかあさんはまだ自分の間違いにお気づきになりません。あきらかに、お子さんはサインを出していたというのに。「うちの子は、やっぱり勉強に向いていないんですかね」と言って帰られました。そして、間もなく塾を辞めてしまわれました。

 親は大人の目で子どもを見ます。どうしても子どものやることは頼りなく、イライラしがちです。勢い口をついて出る言葉は辛口になり、ほめることを忘れてしまいます。なかには、「うちの子は足りないんじゃないかと~」「何につけトロくて~」「落ち着かなくて、ADHDじゃないかと~」といったような、聞く側の耳に辛い言葉を口にするおかあさんもおられます。

 もちろん、わが子に面と向かってそうおっしゃるおかあさんはおられないと思います。しかし、外でつい言ってしまうのですから、お子さんが親の気持ちに気づいていないとも限りません。もしもおかあさんのそういった本音を知ったなら、子どもはどう思うでしょうか。

 これも同じような話ですが、以前大都市圏の大手進学塾を所用で訪ねたことがあります。待合いのソファーに座っていると、突然大きな声が響き渡りました。

「どうしてこんな簡単な問題を解くのに時間がかかるの。それに間違えてるじゃないの!」

 叱られているのは小学校2~3年生とおぼしき子どもでした。おかあさんにきつく叱られて、顔がこわばっています。

 あんなに叱られて勉強したのでは、子どもはとても勉強好きにははなれません。それどころか、意欲もしぼんでしまおうというものです。おかあさんは、自分のしていることが、子どもにどういう影響を及ぼすのか、考えてみる必要があるでしょう。見ていられないほどつらく、悲しい光景でした。

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カテゴリー: 子育てについて, 家庭での教育

記憶力がよくなる方法ってあるの!?

2010 年 8 月 9 日 月曜日

 このところ、記憶に関する話題、復習の重要性について書いています。飲み込みが早く物覚えのよいお子さんはそういるものではありません。まして、小学生には難しい課題に取り組むのが中学受験対策の学習です。大抵は、一度の取り組みでは理解できなかったり、覚えられなかったりするものです。

 そこで、「繰り返しやることを厭わなければ、誰でも覚えられる」という、脳科学系の学者の言葉をご紹介しました。また、復習を繰り返せば、より多くのことを理解し記憶に残せるということもご紹介しました。少しでもお子さんを励ます材料になれば幸いです。

 ただし、「一度でわからなければ、何度も繰り返そう」といったアドバイスは、まかり間違うと努力の押しつけになる恐れもあります。そこで、「もう少し親子共々希望のもてる情報はないものか」と調べてみたら、ちゃんとありました。今回は、それをお伝えしてみようと思います。

 前回書いた海馬に関する情報ですが、海馬を組成する一部のニューロンには増殖能力があるそうです。記憶に関わるニューロンが細胞分裂を起こして増殖するということは、記憶のポテンシャルが強化されるということです。つまり、頭がよくなるということです。

 人体を組成するニューロンには増殖能力はありません。前頭葉などの脳部位のニューロンにも増殖能力はありません。もしあったなら大変です。どの人間も、日に日に人格を変化させてしまうことになるのですから。

 ところが近年、海馬の入り口にある、歯状回という部位の顆粒細胞(丸い形状の神経細胞)だけは増殖能力があるということが学者の研究によって明らかにされました。五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)を通して脳内に入力された情報は、すべて海馬の入り口にある歯状回へ送られます。そこにある神経細胞が増殖するということは、記憶のキャパシティが増大することを意味します。この作用は、老若男女を問わないそうです。ですから、誰でも記憶力をよくすることは可能だということになります。

 では、どうすれば海馬の顆粒細胞は増殖していくのでしょうか。専門の研究者がいくつかのポイントをあげておられますので、それを簡単にご紹介してみましょう。

★記憶力がよくなる条件

 1.好奇心を稼動させる

好奇心を持ち探索するときシーター波が発生する ものごとに興味をもち探索するとき、海馬でθ(シータ)波と言われる脳波が発生する。これによって海馬の働きが活性化し、今体験していることを記憶しようとする。

 2.愛情深く育てられる

愛情深く育てられたネズミの子どもの海馬はよく発達する 親から熱心に愛情深く育てられたネズミの子どもの海馬はよく発達しており、記憶力もよい。これは、人間にも当てはまるのではないかと考えられる。

 

他者と積極的に交流するほうが海馬の神経細胞はより多く増殖 3.他者と積極的に交流する

 一人きりで孤独に過ごすより、積極的に他者と交流したほうが、海馬の神経細胞はより多く増殖する。

適度な運動をすると海馬の歯状回にある顆粒細胞が活性化し増殖 4.適度に体を動かす

 ジョギングなど、適度な運動をすると海馬の歯状回にある顆粒細胞が活性化し増殖する。

 何にでも興味をもち、いろいろ調べるようなことが好きな子どもは、記憶力もよくなるのですね。これは、脳のなかのことを知らなくても、何となくみんな知っていたことではないでしょうか。また、親から愛情深く育てられる子どもは、精神的に落ち着くことができます。平静な状態を得た子どもは、本来もっている好奇心を大いに発揮させることができるでしょう。これも、当然と言えば当然のことですね。一人で家に籠もっていると、頭は活性化してくれないものです。子どもは特に、他者を見ていろいろなことを学ぶものです。授業のもつ効果がどういうものか、これでおわかりいただけるでしょう。ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士は、散歩が大好きだったと言います。おそらく体を動かすことで、脳が活性化し、思考が活発になるということを感じておられたのでしょう。

 一方、海馬の増殖が滞ることもあります。たとえば、ストレスが溜まるとか、多量の飲酒だとかがそれに当たるそうです。子どもの勉強にストレスがもち込まれないように配慮することが必要だということですね。また、頭を叩くと、軽くやった場合でも海馬にある数千のニューロンが死んでしまうそうです。まして強く叩くなどはもってのほかで、確実に記憶力の低下に繋がってしまいます。

 もう一つ、海馬のニューロンについて知っておきたいことがあります。それは、海馬のニューロンは休みなく働くせいか、数ヶ月しか寿命がもたないということです。だから、増殖する量と死滅する量とのバランスが問題になります。常に学ぶことを熱心に続ける人の海馬のニューロンは、増殖する量のほうが常に上回ります(記憶力はよくなっていきます)が、学ぶことをしない人、ボンヤリと何もしない人の場合、死滅するニューロンのほうが数的に上回ってしまいます。そうなると、脳の学習機能は停滞しがちになるのは避けられません。

 記憶に関する情報をご紹介しながら、筆者も改めて自ら積極的に学ぶということの大切さについて考えることになりました。また、記憶力は年齢に関係なく強化できるということに励まされる思いをしました。そして、家族全員が常に前向きに生き、知りたいことに好奇心を燃やし続ける家庭を築けば、それが子どもの知育にとって何よりの環境整備になるのだということを痛感しました。みなさんは、どう思われたでしょうか。

※今回の記事は、東京大学薬学系準教授池谷裕二氏の文献をもとに書きました。

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編集部より

 夏季休業期間につき、8月12日(木)・8月16日(月)のブログの更新をお休みします。次回のブログの更新は8月19日(木)となります。よろしくお願いいたします。

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暑さに負けず、熱心に学ぶ子どもたち

2010 年 8 月 5 日 木曜日

 灼熱の太陽がギラギラと照りつける夏真っ盛りのこの時期、中学受験をめざす子どもたちは毎日のように塾に通って勉強に打ち込んでいます。実際に学んでいる子どもたちを見たことのない人は、小学生の夏期講習と聞くと「かわいそうに」と思われるかもしれませんね。

 そんなかたも、ひとたび塾の中に足を踏み入れて授業の様子を御覧になると、子どもたちの真剣な表情や活発に学ぶその生き生きとした様子にビックリされることでしょう。知識欲が旺盛で、疑問を解決することが好きな子どもにとっては、塾って結構楽しいところなのです。勉強嫌いの人には理解できないかも知れませんが、学校より難しいことを学べるから元気が出るのです。

 実際のところ、教室にはエアコンが完備しており、凌ぎやすい室温が維持されていますから、暑さでまいってしまうというようなことはありません。教室の中にいる限り、真夏なのだということはすっかり忘れてしまうほどです。

 ずいぶん前になりますがエアコンのシステムが故障し、校舎内の全ての教室のエアコンが二日半使えなかったことがあります。その暑さたるや、思い出すだけでもゾッとするほどで、止めどなく流れ出る汗でたちまちタオルがぐっしょりぬれてしまうほどでした。午後になると暑さはいよいよ勢いを増し、頭はぼうっとして思考力が見る見る落ちていきます。「このままでは倒れてしまう」と身の危険すら感じました。エアコンの故障から三日目の朝、まだ直っていないことを確認したときには、心底落胆し、「休講にしてくれ!」と叫びたい心境に駆られたものでした。

子ども達の熱意の方があつかった! ところが、授業を受けている子どもたちはどうかというと、至って平気な顔をしています。こちらは立っているのがやっとの状態で発問をしたり説明したりしているときにも、弾けそうな笑顔で反応してくれました。あのときは、ほんとうに「子どもってすごい!」と感心したものでした。

 さて、勉強に打ち込むには決して条件がよいとは言えない真夏の講習ですが、中学受験生にとっては大変重要な役割を担っています。普段学校があるときには、学校を軸に毎日の生活は組み立てられなければなりません。ですから、受験勉強は学校生活と家庭生活の隙間に時間をつくってやるべきものでした。しかし、約40日間の長期休暇である夏休みには、受験勉強を軸に生活を組み立てることができます。このチャンスを活かすことで、子どもは大きく変わるのです。

 日頃は日曜日を利用しない限り、朝から塾があるなどということはありません。しかし、夏休みには毎日朝から塾に出かけて授業を受け、昼間の時間を経て、夕方や夜には塾の予習や復習をします。塾で学んだことがまだ記憶に新しいうちに、家でやり直したり、次の授業の準備をしたりすることを繰り返すわけですから、自然と勉強にリズムが生まれ、調子が上がってきます。決めた時間に、予定通りの勉強をやりこなすことで、集中力を伴った勉強ができるようになっていきます。

 こうして夏休みの講座を順調に終えれば、多くの子どもたちが単に勉強した内容を自分のものにしているだけでなく、夏休み前よりも学習の習慣がしっかりとし、計画的に着実に勉強を押し進めていく力をつけています。

 人間の頭脳は、どのような生活リズムのなかで働かせるかで、機能性が随分変わってくるものです。ボンヤリと何をするでもなく過ごしている子どもが、勉強のときだけシャキッとすることなどできません。いつも落ち着きがなくせかせか過ごしている子どもが、勉強のときだけ腰を据えて取り組むなどということも期待できません。毎日の計画を立て、できるなら塾での授業と家庭での勉強を中心とした生活を一定期間送り、テンポのよいメリハリのある学習ができるようになれば、秋以降の学習成果も随分違ってくるはずです。

 夏休みの期間はまだまだ残っています。お子さんが塾に通っておられるご家庭におかれては、今の生活リズムはどうであるかチェックしてみてください。予定の時間がくずれているようだったら、叱るのではなく、現状を確かめ合い、原因をお子さんに考えさせてみてください。夏休みのうちに、学習の流れがうまく行き始めたら、必ずや秋からの勉強に好影響がもたらされます。

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