2011 年 2 月 のアーカイブ

進路選択についての家庭学習研究社の方針

2011 年 2 月 28 日 月曜日

 今年度の中学入試が終わったところで、今年の弊社会員の進学状況をご紹介しながら、私たち家庭学習研究社の進路指導の基本的姿勢についてお伝えしようと思います。

 家庭学習研究社は、お預かりした受験生がどの中学校を受験するか、どの中学校に進学するかについては、基本的に関わらないことにしています。学力をつけることは私たちの大切な仕事ですが、進路はお子さんとご家族の考えで決められるべきもので、学習塾は関わるべきでないと考えるからです。

 無論、ご相談いただいた場合は誠意をもってアドバイスさせていただきます。しかし、「どの学校を受けるべきだ」ということは言わないようにしています。

 ご家庭それぞれに教育方針があると思います。その方針やお子さんの希望に合わせて受験されるのが本筋です。そのせいか、弊社の会員家庭の受験にはかなり極端なものも見られます。国立のみ受験するとか、共学のみ受験するとか、1校だけ受験するなどの例もあります。

 こうした受験において、やや心配なのは、それがお子さんの意志によるものかどうかです。保護者が決定されたのだとしても、お子さんがそれでよいと納得されているのなら、それはそれでよいと思います。そういうお子さんは、どういう進路を選んでもうまくやっていける可能性が高いからです。指導担当者は心配しますが、それでも介入すべきではないと考えています。

 次の表は、2月23日現在の、6年部会員(入試直前まで通学した児童)入試結果です。今春卒業の6年部会員は、男子260名前後、女子280名前後です。

家庭学習研究社進学結果2011

●その他の合格校・進学校
広島大学附属東雲中学校・広島大学附属福山中・崇徳中・
比治山女子中・鈴峯女子中・山陽女学園中・
安佐北中・AICJ中・武田中・呉青山中・新庄中・
岡山白陵中・高水高校附設中・同志社中・西南学院中

 さて、合格されてからの進路選択ですが、難関校ほど合格者の歩留まりがよいのが普通です。たとえば広島学院合格者の場合、弊社では例年9割前後が入学します。ただ、今年は他校に流れる受験生がやや多かったようです。「修道へと思っていた受験生が広島学院も受かった」というような報告がありますが、こうしたケースが重なっての例外的な年なのかもしれません。

 今ご紹介した例もそうですが、他校を選択される場合のほとんどは修道・附属です。どちらも伝統も実績もある学校ですから、好みで選択されるご家庭もあるでしょう。

 女子の場合、広島学院に匹敵する私学は清心ですが、女子受験生の共学志向は男子よりも強く、附属中も受かった場合、そちらへ進学するケースと半々くらいです。前回のブログ記事にも書いたように、最近は県立中の人気も上がっています。また、広島女学院も根強い人気があります。複数受かった場合の進学先の選択は、男子よりも多様であると言えます。

 ときどき「いったい何人受けての合格者数なのか」と質問を受けます。しかし、誤解を得やすいので公表していません。弊社会員が何名受験したかは掌握しています。しかし、それから率を割り出してもあまり意味がないように思います。なぜなら、どの受験生だって「行けるものなら行きたい」と思って勉強したはずです。成績状況から受験を断念しているケースは少なくありません。ですから、受けた者だけでの合格率は真の合格率とは言えません。そうかと言って、会員数から率を出すのも誤解のもとです。実際、受けたわけではないのですから、これはこれで問題です。

 また、弊社はいろいろな進学目標をもった子どもたちの通う学習塾です。合格率で会員を集めるスタイルを採りません。上表でもおわかりいただけると思いますが、進学先はまんべんなく学校ごとに散らばっています。子どもたちが行きたい学校に進学できるよう応援するのが弊社の方針です。

 また、合格者数にせよ、合格率にせよ、弊社はあまりそれを強調するような宣伝は極力避けています。弊社の経営者は、「合格したのは受験生であって、学習塾ではない。合格したのは受験生本人の努力の賜物であり、合格は受験生自身のものだ。学習塾は、学力をつけるための指導をしただけで、自分の手柄のように言ってはならない」と述べています。

 さらには、「塾のチラシなどを見た人は、放っておいても合格実績の欄に目を通す。わざわざ目立つように大きな数字で合格者数を強調する必要はない」と言われたこともあります。筆者もその考えには賛成で、チラシの合格実績欄は、必要最小限のスペースに留めています。

 とは言え、進学塾は進学実績で評価されます。指導担当者はどの中学校を受験するかに関わらず、子どもたちの最大限の努力を引き出すべく頑張っています。2011年度の5・6年部の講座が2月19日に開講しましたが、来春の入試においても、子どもたちの夢が叶うことを念じつつ、精一杯指導してまいりたいと存じます。今後ともよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念

家庭学習研究社の2011年度中学入試

2011 年 2 月 21 日 月曜日

 2011年度の中学入試が終わりました。毎年のことですが、解禁日から1~2週間のうちに次々と各中学校の入試が行われ、あっという間にすべて終わってしまったという印象です。また、受験産業は毎年の入試結果を目指して活動するせいか、その仕事に従事している人は、例外なく「1年経つのが早い」と言います。かく言う筆者も同じで、毎年の入試結果に一喜一憂しているうちに随分年をとってしまいました。

 人生経験の少ない12歳の子どもの受験ですから、最初の入試で手応えを得ると、勢いに乗ってすべて合格するような事例もあります。しかしその一方、出だしでつまずいて自信を失い、実力の片鱗すら発揮できないまま入試を終えてしまうケースもあります。残念な結果になったお子さんには、ほんとうに何と声をかけてよいか、辛い気持ちに襲われてしまいます。

 今年の家庭学習研究社会員の受験結果ですが、特別大きな変動はありませんでした。強いていえば、昨年は男子のほうに勢いがあったのに対し、今年は女子のほうの健闘が目立ったということぐらいでしょうか。来年は、男子の受験生が奮起してくれればと期待しています。

 今年の入試で気づいたことを少し述べておきます。補欠からの繰り上がりが例年と違う学校がいくつかありました(まだ2月であり、すべて決定済みではないかもしれませんが)。弊社会員の状況に基づく話ですが、広島学院の補欠繰り上がりが例年よりもかなり少なめでした。

 修道については、百名をはるかに超える補欠者が発表されたようで、弊社会員家庭にも多量の補欠通知が来たのですが、今現在一人も繰り上がっていません。合格発表者の数は例年とそんなに変わりませんから、今年は修道の合格者の歩留まりが例年よりもよかったのかもしれません。

 それにしても、たくさんの受験生が補欠からの繰り上がりを待っておられました。学校も手続きの状況を見てすぐに手を打たれたようで、繰り上がりの望みのない受験生の家庭には早めに連絡をされていました。補欠の早い番号で待っておられたご家庭のお気持ちはいかばかりでしょう。例年の統計的傾向が当てはまらず、学校も苦慮されたことでしょう。

 女子の主要校の補欠繰り上がりは、例年とほぼ同じでした。清心や女学院については、おそらく全体で数十名程度補欠からの繰り上がり者がいたのではないかと思います。当社会員については、ほぼ予想通りに繰り上がりました。

 広島大学附属中学校の入試では、補欠からの繰り上がり状況に大きな変化がありました。ご存知と思いますが、同校は共学であることからか女子受験生に大変人気があります。毎年のことですが、女子には大変な難関となっています。合格した女子受験生の入学手続き率も高く、そのため補欠からの繰り上がりは僅かです。今年も、弊社会員で補欠合格になった受験生はごく僅かでした。

 一方、男子の場合は例年かなりの数の合格者が他校に流れます。そこで、女子よりも遙かに多くの補欠繰り上がり合格者が出ます。特に昨年は非常に多くの受験生が補欠から繰り上がり合格になりました。ところが、今年は補欠からの繰り上がりが激減しました。

 原因ははっきりとは分かりません。ただ、120名の定員のうち、今年は附属小から進学する児童が50名強いました。ということは、外部からの進学者の受入数が男女合わせて僅か60数名ということになります。他の理由としては、不況を反映して学費面で負担の少ない同校を選ぶ家庭がいつもより多かったということも考えられます。弊社の会員合格者でも、附属中を選ぶご家庭が今年は例年より多かった(合格人数比で)ように思います。これらの理由もあって、補欠合格者が少ない事態になったのかもしれません。

 弊社会員の進学先として近年多いのが、広島なぎさ中学校と広島県立広島中学校です。これらの学校への進学希望者は、毎年増え続けています。

 なぎさ中学校は、JR五日市駅の南に校舎が移転して以来、五日市・廿日市地区の受験生の受け皿の域を脱し、広範囲から生徒が集まるようになりました。今年など、呉や東広島からの進学者もいます(2月21日現在6名)。今年は弊社から40~50名程度進学する模様です。

 同校は共学校であることから、女子のほうの人気がやや高いようです。そのためか、女子のほうがやや入りにくくなっています。また、併設の小学校からの内部進学者が60名以上あり、200名の定員のうち、外部からの入学者はその数を差し引いた数ということになります。これも、以前よりやや難化している理由の一つと考えられます。

 東広島で建学された公立の中・高一貫校、広島県立中・高等学校も、地元東広島を中心に優秀な生徒が集まるようになり、今やその人気もすっかり定着した感があります。県の肝いりで設立された学校だけに施設もすばらしく、弊社会員のなかには広島市内から通学する生徒も少しずつ増えています。

 昨年は弊社東広島校で、県立中の教頭先生、弊社の卒業生達を招き、同校のことを詳しく知っていただくためのイベントを開催しましたが、予約制にもかかわらず会場は保護者やお子さんで埋め尽くされるほどの盛況でした(とは言え、会場は教室ですから70数名ぐらいです)。

 ただし、同校の志望者の中心は圧倒的に地元東広島地区の受験生です。それも女子のほうに人気が集中しています。これもやはり共学の魅力でしょうか。また、同校は公立であるため、入試は論文や面接が中心に行われています。この入試制度は、内容から女子児童にやや有利であり、志望者の数がもともと女子に偏っていることと合わせ、弊社からの進学者は女子が中心にならざるを得ません。

 同校は、公立の中・高一貫校の成功例として全国的にも注目されています。同校の発展と合わせ、少しずつ男子進学者も増えていくことが予想されます。

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カテゴリー: 中学受験, 私学について

家庭勉強の担う重要な役割とは?

2011 年 2 月 18 日 金曜日

 わが子の学習に向かう姿勢が消極的で、自立した勉強ができない。幼稚さがなかなか抜けきれず、勉強の自己管理もままならない。この問題への対処として、塾で無理やり勉強させるとか、勉強はすべて塾任せといった方法は得策ではありません。

 こういうやりかたでは、子どもは精神的にも行動面でも自立が遅れてしまいます。自立できないまま中学生になった子どもは、伸びる芽を摘まれた状態に等しいと言えるでしょう。すぐに失速してしまいます。

 長年教育に関わる活動をしておられる先生は、「大人が家庭勉強の役割を誤解し、子どもへの接し方を取り違えるからこうした問題が起こるのだ」と述べておられます。

 学校は正式な学習の場であり集団指導の場です。様々な教科の学習を通して、学力を身につけるとともに、他者と交わりながら人間関係を築くすべを学び、将来社会に通用する人間になる基礎を築いていくのが、その大きな役割であろうと思います。

 塾は、学校の学習をちゃんと理解できなかったり、習熟が不足したりしたとき、その埋め合わせをする場所です。また、弊社のように、より高いレベルの学力を身につけるために子どもたちが通い、より発展的な要素を学べる場所として機能している塾もあります。

 家庭勉強は学校や塾の学習と連動していますが、別の重要な役割も担っています。子どもが課題に興味をもち、自ら率先して学習に取り組み、知りたいという欲求を満足させる行動の積み重ねを通して、常に新しい知識を自分で習得してく姿勢を培うためにあるのだと言えます。学校では、教科書の進行カリキュラムに則(のっと)り、順次新しい単元の考え方や知識を学んでいきます。それに対して家庭学習は、勉強に向きあい自らを伸ばしていく姿勢を養うためにあるのですね。自らが自らを鍛える勉強を通じて、子どもは精神的にも一人前に近づいていくのです。

 大人は家庭勉強を学校や塾の勉強の延長と捉え、「とにかく勉強しなさい」と働きかけるケースが少なくありません。これでは自ら学ぶ姿勢は育ちませんし、子どもを知識と心のバランスのとれた人間に成長させることはできません。学習の習慣づけや意欲の向上とからませながら、勉強に向きあう姿勢を辛抱強く育てていくことが、われわれ大人に求められるのではないでしょうか。

 では、親は子どもにどういう働きかけをしたらよいのでしょうか。そこで、2月20日折り込み予定のチラシ(チラシアーカイブはこちら)に次のような記事を掲載することにしました。

 勉強の自立にあたっては、生活面の自立が前提となります。朝の起床、着替えや食事、学校に行く支度など、おたくではどうでしょうか。これらが自立したなら、勉強の自立も大丈夫です。

 子どもの自立度は、親からの働きかけで決まります。「自主性ある子どもの親ほど、ある特定の行動が可能になる年齢を低く見積もる」というデータがあります。過保護・過干渉の傾向はありませんか? 「うちの子はきっとやれる」という、揺るぎない信念をもつことが親には必要です。

 「でも、今さら」と思わないでください。子どもはみな自立心をもっています。小さい頃、できそうもないことまで「自分でやる!」と言い張ったことがあったはずです。今もこの気持ちは決して失われてはいません。自分のことは自分でやらせましょう。そうして、ちゃんとやったら大いにほめ、喜んであげてください。きっと行動の様子が変わります。

 すでに受験勉強を始めているご家庭はどうでしょうか。子ども任せの勉強は親には辛いものです。勉強の甘さにつながりがちです。しかし、失敗する前から手を差しのべるべきではありません。テスト結果で勉強のまずさがわかったなら、そこに着目させるのです。叱るのではなく、「どうしてこうなったのか」を考えさせてください。一緒に考えるのはOKですが、口出しは禁物です。

 お子さんが、「今度はこうやってみる」と言ったなら、子どものさらなる自立に向けたチャンスです。大いに励まし、再び見守ってやりましょう。この繰り返しで確実に子どもは成長します。

 テストで子どもは多くのミスをします。それも修行の一つです。叱るのを我慢し、やり直しを助言してあげてください。落ち着いてやり直すと、できたはずの問題がいかに多いかに子どもは気づきます。「今度は絶対に失敗しないぞ!」と、奮起して次に臨むわが子を応援してやりましょう。

 子どもの自立に向けた見守りは、親にすれば忍耐と辛抱の連続です。失敗を経験させ、自分で這い上がる方法を見つけさせるのは辛いことです。しかし、それでこそ子どもは成長し、自分に自信をもつことができます。自立勉強が果たせたなら、受験での好結果も自然と引き寄せられることでしょう。

 勉強も毎日の積み重ねですが、子育ても同じです。毎日辛抱強くお子さんに働きかけてあげてください。親は命令したり教えたりするのではなく、子どものがんばりを期待し、喜んでやるのが本来の役割だと思います。そうして、子どもに自信と実行力を植えつける。そういった流れをつくっていただきたいと思います。前回ご紹介したようなお子さんたちも、特別な天才などではありません。親の徹底した子育てが彼らのすばらしい成長を引き出したのではないでしょうか。

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カテゴリー: 子どもの自立, 子育てについて, 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念

自立勉強支援に向けて着目すべきポイント

2011 年 2 月 14 日 月曜日

 このブログで、「男の子の幼稚化が進んでいる」ということを書いたところ、連日たくさんの人が読んでくださっていることを知りました。この問題をわが子のこととして受け止めておられる人が多いのでしょうか。

 子どもの幼稚化は全般的に言えることで、男子だけに見られる傾向ではありません。地域社会や子育ての環境が変わったことが主要な原因と思われますから、それは当たり前のことです。

 ただし、どの家庭の子どももそういう傾向にあるわけではありません。なかには「これが小学生か」と思うほどしっかりとした勉強の取り組みをする子どもだっています。

 ある年に担当した6年生クラスに、今考えても「すごい」と感心するような男の子がいました。成績もすごかったのですが、もっとすごいと思うところがありました。授業中に彼が手を挙げると、どの教科の指導担当者もビクビクさせられたのです。というのは、彼が発言するとき、決まって「ボクの式はこうなったんですけど」「ボクは違った考えで解いてみたんですけど」などと言うのです。そして、必ずと言ってよいほど彼の考えのほうが適切でした。

 答えさえ合っていればそれでよしとせず、子どもが考え得る最高の答えや考え方を導いているのですからたいしたものです。また、先生に恥をかかせない言い方を心得ていることにも驚かされます。当然のことですが、彼は受験した学校のすべてに受かり、さらには全国最難関の大学に進学しました。

 またある男の子は6年生から塾に通い始め、入試では広島の最難関校を含めて受験校のすべてに合格しました。それだけなら毎年似たような事例があります。彼がすごいのは、親に「塾に通わせてほしい」と何度も頼んでも受け入れてもらえず、2年越しの交渉でやっと叶った弊社の教室への通学だったということです。親には「1年間がんばってダメだったらあきらめなさい」と言われたそうです。そんななか、「ボク人より遅れているのだからがんばらないと」と絶えず自分に言い聞かせ、必死の努力でついに目標達成を成し遂げました。親もすごいが子どももすごい。ほんとうに感心させられます。

 同じように、6年から塾通いを始めた男の子がいました。転勤で他県から越してきて、広島の教育事情を知った親の勧めで中学受験をめざすことになりました。塾が新鮮で楽しいらしく、いつも笑顔で授業を受けていました。たちまちたくさんの友達ができました。そうして、辛そうな表情を一度も浮かべることなく通い通し、私学最難関校に合格しました。

 その後1~2年のうちに親が再び転勤になり、今度は外国に行くことになりました。するとその子もあっさりと学校を辞め、親について行ったそうです。こういう子どもは、どこへ行こうとうまくやっていけるでしょう。せっかく受験して進学した学校ですが、それに固執しなくても立派な人生を歩んでいくに違いありません。

 いったいどうやったらあんな子どもが育つのでしょう。ほんとうにすばらしい子どもがいるものです。彼らの共通点は、大人に言われて勉強するのではなく、自ら勉強に打ち込んでいることです。しかも、非常に高いレベルでの自立勉強をしています。自立のさせかたに何か秘訣があるのでしょうか。

 とは言え、お子さんがすでに受験勉強を始めているご家庭の場合、今さら一から子育てをやり直すことなどできません。子育ての方法をここで述べたとしても、今さら参考にしようがありません(無論、事例の内容から見通せることもあるでしょう)。

 そこでいろいろ考えてみたのですが、一つご家庭の保護者のかたにお考えいただきたいことがあります。それは、「家庭勉強は何のためにあるのか」ということです。そこから、子どもを自立勉強へと導く手だても見出せるような気がするのです。

 受験勉強を始めておられるお子さんの場合、子どもの学びの原動力となる要素から見直すのがいちばん適切であろうと思います。そこで着目したのが家庭勉強です。家庭勉強の見直しを通して、子どもの自立学習推進の手がかりが見えてきます。

 家庭勉強は、学校や塾の勉強と連動していますが、根本的に違う役割も担っています。その大切な役割が何であるかを、ご家庭のおとうさんやおかあさんにお考えいただきたいのです。学校も、塾も、家庭勉強も、すべて学力をつけるためにあるという発想では、子どもは学習を自立させる原動力を得られません。

 家庭勉強は、学校や塾の勉強とは明確に異なる役割を担っています。そのことを改めて明確にしたうえで子どもへの接しかたを考え直し、工夫してみてはいかがでしょうか。次回は、そのことについて書いてみます。

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カテゴリー: 中学受験, 子どもの自立

中学校生活のスタートにあたって

2011 年 2 月 7 日 月曜日

 人間のすることに絶対ということはないものです。人生経験の少ない小学生の子どもたちならなおさらです。緊張と闘いながらの中学入試では、ちょっとした心の動揺やコンディションの変化で、実力を発揮し損ねる例があとを絶ちません。

 今年の中学入試でも、たくさんこういったことがあったのではないかと思います。運悪くわが子がそんな事態に陥った場合、親御さんのお気持ちはいかばかりかと思うと、胸の痛む思いを禁じ得ません。

 なかには合格か不合格か、はっきりわからない場合もあります。そう、補欠者になることもないではありません。補欠通知が来たばっかりに、親子共々運命に翻弄されることになります。

 無論、学校側にすればしかたないことです。どの中学校も、募集定数を確保しなければならないという事情があります。どの中学校の先生がたも、合格者数を慎重に決めておられると思います。他校の発表者数なども大きな影響を及ぼします。そうして、いざ入学手続きの受付が始まると、その推移や他校の受付締め切り日などを突き合わせ、補欠者からの繰り上げ合格の発表が順次行われることになります。

 さて、複数の中学校に合格したお子さんの家庭においては、「どの中学校に進学するか」という贅沢な選択を強いられます。これもまた、それなりに悩ましいものです。どの学校にもそれぞれに違ったよさがあり魅力があります。学校のよさの何をとるかで進学する学校も決まっていきます。無論、親の意向やお子さんの気持ちも進学校決定の大きな要因になるでしょう。

 こうした諸要素が絡まりながら、補欠の繰り上がり合格が決まっていくわけですが、繰り上がりを今か今かと待っておられるご家庭では、親も子どももほんとうに気を揉むものです。特に本命校が補欠になった場合、すでに合格している学校の手続き締め切り日を気にしながら、時間と闘うことになります。そういう状況に至る家庭が毎年相当数あり、度々相談を受けています。そんなときは、過去の例から統計的確率をお知らせしています。力になれず、申し訳ないと思うのですがどうしようもありません。

 毎年、そうやって最終的に受験生の進路が決まっています。それぞれの家庭ごとに、進路決定に至る様々なドラマがあることでしょう。

 ただし、よく言われることですが中学受験は長い人生のほんの通過点に過ぎません。入試結果は、成長途上の段階での学力で決まるに過ぎず、思うような結果でなくとも悲観する必要などありません。筆者も長いこと中学入試に関わっていますが、中学入試は子どもの人生の歩みに決定的な影響をもつものではありません。

 むしろ問題は、学ぶことに対してどのような姿勢を築いているか、努力を続けながら自らを伸ばしていく態勢がどれだけできているかです。それがしっかりしていれば、どのお子さんも中学・高校の6年間で劇的な成長を遂げることができるのです。

 総じて言えることですが、難関とされる学校ほど早熟性や完成度が問われます。ですから、奥手のタイプの子どもは進学しないほうがよいくらいです。入学後、厳しい競争のある学校では、奥手のタイプの子どもはそういう環境にすぐさま対応できず、取り残されかねません。下手をすると自信を喪失してしまうおそれもあるでしょう。

 精一杯勉強に取り組んで受験し、そこで発揮できた力を評価して受け入れてくれた学校が、子どもにとってその時点でいちばんふさわしい学校なのだと思います。何よりも、背伸びをせずともやっていける環境ですから、伸び伸びと学ぶことができます。無用の劣等感に悩まされることもありません。

 なかには、わが子の入試結果をどうしても受け入れることができないおかあさんもおられるようです。せっかくのわが子の入学式の会場で、「この学校に行かせるつもりはなかった」と他の保護者に向かって話しかけたおかあさんがおられたそうですが、とても悲しいことです。

 進学先が決まった以上、その学校がわが子にとっていちばんよい学校だと信じ、喜んでわが子を送り出してあげていただきたいものです。それがわが子の門出に対するいちばんの祝福ではないでしょうか。そして、それこそがわが子の先々の成長にとってかけがえのない支えになるのです。

 入試結果はどうあろうと、わが子への愛情は変わろうはずがありません。緊張に耐えながら入試に臨んだわが子を、まずは認めてあげてください。そして、新たな中学校生活の始まりを心から喜んであげてください。そうすれば、お子さんは親の愛情をしっかりと受け止め、希望を胸に新たな第一歩を踏み出されることでしょう。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験