中学校生活のスタートにあたって

2011 年 2 月 7 日

 人間のすることに絶対ということはないものです。人生経験の少ない小学生の子どもたちならなおさらです。緊張と闘いながらの中学入試では、ちょっとした心の動揺やコンディションの変化で、実力を発揮し損ねる例があとを絶ちません。

 今年の中学入試でも、たくさんこういったことがあったのではないかと思います。運悪くわが子がそんな事態に陥った場合、親御さんのお気持ちはいかばかりかと思うと、胸の痛む思いを禁じ得ません。

 なかには合格か不合格か、はっきりわからない場合もあります。そう、補欠者になることもないではありません。補欠通知が来たばっかりに、親子共々運命に翻弄されることになります。

 無論、学校側にすればしかたないことです。どの中学校も、募集定数を確保しなければならないという事情があります。どの中学校の先生がたも、合格者数を慎重に決めておられると思います。他校の発表者数なども大きな影響を及ぼします。そうして、いざ入学手続きの受付が始まると、その推移や他校の受付締め切り日などを突き合わせ、補欠者からの繰り上げ合格の発表が順次行われることになります。

 さて、複数の中学校に合格したお子さんの家庭においては、「どの中学校に進学するか」という贅沢な選択を強いられます。これもまた、それなりに悩ましいものです。どの学校にもそれぞれに違ったよさがあり魅力があります。学校のよさの何をとるかで進学する学校も決まっていきます。無論、親の意向やお子さんの気持ちも進学校決定の大きな要因になるでしょう。

 こうした諸要素が絡まりながら、補欠の繰り上がり合格が決まっていくわけですが、繰り上がりを今か今かと待っておられるご家庭では、親も子どももほんとうに気を揉むものです。特に本命校が補欠になった場合、すでに合格している学校の手続き締め切り日を気にしながら、時間と闘うことになります。そういう状況に至る家庭が毎年相当数あり、度々相談を受けています。そんなときは、過去の例から統計的確率をお知らせしています。力になれず、申し訳ないと思うのですがどうしようもありません。

 毎年、そうやって最終的に受験生の進路が決まっています。それぞれの家庭ごとに、進路決定に至る様々なドラマがあることでしょう。

 ただし、よく言われることですが中学受験は長い人生のほんの通過点に過ぎません。入試結果は、成長途上の段階での学力で決まるに過ぎず、思うような結果でなくとも悲観する必要などありません。筆者も長いこと中学入試に関わっていますが、中学入試は子どもの人生の歩みに決定的な影響をもつものではありません。

 むしろ問題は、学ぶことに対してどのような姿勢を築いているか、努力を続けながら自らを伸ばしていく態勢がどれだけできているかです。それがしっかりしていれば、どのお子さんも中学・高校の6年間で劇的な成長を遂げることができるのです。

 総じて言えることですが、難関とされる学校ほど早熟性や完成度が問われます。ですから、奥手のタイプの子どもは進学しないほうがよいくらいです。入学後、厳しい競争のある学校では、奥手のタイプの子どもはそういう環境にすぐさま対応できず、取り残されかねません。下手をすると自信を喪失してしまうおそれもあるでしょう。

 精一杯勉強に取り組んで受験し、そこで発揮できた力を評価して受け入れてくれた学校が、子どもにとってその時点でいちばんふさわしい学校なのだと思います。何よりも、背伸びをせずともやっていける環境ですから、伸び伸びと学ぶことができます。無用の劣等感に悩まされることもありません。

 なかには、わが子の入試結果をどうしても受け入れることができないおかあさんもおられるようです。せっかくのわが子の入学式の会場で、「この学校に行かせるつもりはなかった」と他の保護者に向かって話しかけたおかあさんがおられたそうですが、とても悲しいことです。

 進学先が決まった以上、その学校がわが子にとっていちばんよい学校だと信じ、喜んでわが子を送り出してあげていただきたいものです。それがわが子の門出に対するいちばんの祝福ではないでしょうか。そして、それこそがわが子の先々の成長にとってかけがえのない支えになるのです。

 入試結果はどうあろうと、わが子への愛情は変わろうはずがありません。緊張に耐えながら入試に臨んだわが子を、まずは認めてあげてください。そして、新たな中学校生活の始まりを心から喜んであげてください。そうすれば、お子さんは親の愛情をしっかりと受け止め、希望を胸に新たな第一歩を踏み出されることでしょう。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験

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