2011 年 5 月 のアーカイブ

本物はもどかしいプロセスから生まれる

2011 年 5 月 30 日 月曜日

 わが子を受験させる以上、親は合格を願うものです。しかし、どんなに親が必死になっても、勉強をするのは子ども自身であり、親も塾の先生も代わりを務めることなどできません。

 言うまでもなく、それは誰もよくわかっています。では、どうすればよいのでしょう。弊社の考えははっきりとしています。勉強は自分のことなのですから、子どもが自分でやれるようにすべきです。

 ただし、やるべき勉強を自分ですべてわきまえ、受験勉強のはじめから適切に学べる子どもなどほとんどいません。弊社の中学受験指導は小学4年生からですが、この年齢で大人の手を借りずに自分の勉強をすべて自分でできる子は皆無だと言えるでしょう。

 そこで必要になってくるのは、子どもの勉強を自立させる後押しです。弊社では、4年生には予習は課しません。子どもがまだ自分で下調べをして、目当てをもって授業に参加できる状態に至っていないからです。

 まず私たちは、授業を通じて考える姿勢を育てていきます。たとえば算数の場合、課題の答え方をすぐに教えてしまうのではなく、課題の意味を理解し、どう考えたら答えが導き出せるかを考えさせるよう導いていきます。そうして、問題が何を尋ねているのか、どう考えたら突破口が見出せるか、式はどう組み立てたらよいかなど、自分の力で解けるようになるための勉強の枠組みを少しずつ習得させていきます。

 そのプロセスは、大変もどかしいものです。なかには手順をわからせようとしても、なかなか反応してくれない子もいます。逆に、あっという間に答えまで見通し、考え方を明らかにするための図を描いたり、計算式を書くよう指導しても、「もう答えがわかった」と言って応じてくれない子もいます。

 無論、塾で扱える問題の数は限りがあります。ましてや私たちの教室では、「考え方」を導くのに時間をかけますから、塾では「量」はまかなえません。子どもたちには、家に帰ってから「復習」という形でテキストを見直し、過不足のない程度と量の問題に取り組んでもらいます。

 こうした勉強の繰り返しを通じて、少しずつテキストを使って自分で学ぶ態勢が整っていきます。復習も、自分でできるようになっていきます。そこで、5年生からは、ごくシンプルな内容の「予習」を課し、自立勉強への流れをさらに築いていきます。

 子どもたちの成長は一様ではありません。得意不得意もあります。ですから、端で見守っておられるおとうさんやおかあさんも気を揉むことになります。申し訳ないのですが、指導にあたる私たちも、焦らずに勉強のやりかたを理解させたり、考え方の道筋を明らかにしたりしていくような取り組みかたができる子どもにすべく辛抱強く指導していきます。

 ただテストで正解を得る力を築くだけなら、この方法はまどろっこしくて非能率的に見えるかもしれません。実際、教室でたくさん問題にあたらせ、解法を体験的に習得させたり、教室で教えたりするのが学習塾だと思っておられるかたは少なくないのではないでしょうか。

 しかし、中学入試で受かりさえすれば満足な親はともかく、ほとんどの親の期待はさらに先の子どもの学力形成や成長にあるはずです。受かることを主眼にした指導は、とかくテストで点を稼げる子どもにはしてくれても、自分で学ぶ術(すべ)を身につけた子どもにはしてくれません。

 家庭学習研究社にわが子を通わせておられるおとうさんおかあさんには、ぜひともこの自立勉強に向けたプロセスの大切さをご理解いただきたいと思います。4年生や5年生までは、テストで何点とれるかよりも、この学習の態勢を整えることのほうに目を向けていただきたいのです。そうして、子どもの取り組む様子を見守り、大いにほめたり激励したりすることで、自立勉強達成に向けた取り組みとがんばりを応援していただきたいのです。

 6年生の指導担当者に尋ねると、「教えたとおりの考え方や勉強法を身につけた子どもは違ってくる」と言います。たとえば、算数で図を描いて考える姿勢を身につけたお子さんは、複数あるバリアを突破して、見事に難問を解決できるようになっています。テストで成績を落としたときなど、「○○のところの取り組みが甘かった」と悔しそうにつぶやき、次の回はしっかりと挽回しています。

 こういう子どもになれば、もうだいじょうぶ。どこの学校に進学しようとも、自分で自分を伸ばしていく勉強ができますから、どこでも通用するのです。こういう子どもを私たちは育てたいのです。それが家庭学習研究社スタイルの能力開発だと思っています。

 将来の大成を見通せる子どもに育てましょう。目先の受験も気にはなりますが、もどかしいプロセスを乗り越えれば、結局はより高い学力へつながるのはこの方法です。ですから、回り道などではありません。

 「今のところ、まだそういう流れがはっきりと目には見えてこない」と気を揉んでおられるおとうさんおかあさんもおありかもしれません。そんなご家庭では、夏休みの講習が巻き返しのチャンスです。毎日の勉強を計画的に規則正しくやっていくことでリズムが生まれます。また、繰り返し受ける授業を通じて、考え方の要領や取り組みかたもわかってきます。

 親の期待を伝え、激励してやりましょう。少しの進歩でもちゃんと評価し、認めてやりましょう。少しずつ子どもが変わっていけば、やがてそれが大きな進歩につながります。

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カテゴリー: 中学受験, 勉強について, 勉強の仕方, 家庭学習研究社の理念

わが子との距離は適切ですか?

2011 年 5 月 23 日 月曜日

 高校・大学受験においては、受験に関わるほとんどのことは受験生自身の問題であり、親が関わる余地はあまりありません。しかし、中学受験は趣が違います。親の関わり、とりわけおかあさんの後押しや助力が入試結果にも大きな作用を果たします。

 おかあさんは、子どもの勉強の進み具合を心配して声をかけるばかりか、やる気をなくしたときには励まし、心のケアもしてやります。体調が優れないときは医者に連れて行きます。小学生までは、おかあさんと子どもの絆は特別に強く、一心同体と言えるほどです。入試本番が終了するまで、おかあさんの愛情深い献身的なサポートは決して途切れることがありません。

 こんなおかあさんとお子さんの間に、おとうさんが割って入れるスペースはほんの少しかも知れませんね。おかあさんには、「自分がお腹を痛めて産んだ子だ」「ここまで私が苦労して育ててきたのだ」という意識があります。お子さんには、「生まれてこの方、おかあさんとどんなときも常に一緒であり、おかあさんに育てられた」「本当に甘えられるのは、おかあさんだけ」という意識があります。おかあさんと子どもの絆が強いのは当たり前のことなんですね。

 映画などで、いかつい大男が危機にさらされたとき、「おかあさーん!」と声を張り上げるシーンがあります。戦争時分、特攻隊で死を直前にした兵士の書いた手紙の多くは、おかあさんに向けてしたためられています。大人になってからも、母親と子どもとの特別な関係は少しも変わるものではないのですね。

 しかしながら、わが子を心配するあまり、知らず知らずのうちに子どもとの距離が近づきすぎるケースもあるようです。わが子の一挙手一投足が気になり、うまくやれていないと、すぐに口を出してしまうおかあさんはおられませんか? 特に子どもが男の子だと、その傾向に拍車がかかるようです。そう言えば、先ほどの映画のシーンも、戦争の話も、息子から母親に向けられたものですね。

 あるとき、有名なカウンセラーの著書を読んでいたら、子どもの書いた「一行詩」が紹介されていました。その詩を読んで、筆者は目が釘付けになりました。ちょっとご紹介してみましょう。

「父よ! 何か言ってくれ。母よ! 何も言うな」

 どうでしょう。筆者は6年生の男子クラスを担当することが多かったので、こんなふうに言われるおかあさんを気の毒に思う一方で、言いたくなった生徒さんの気持ちもまたよくわかるような気がしました。あまりに母子の距離が近いと、子どもは窒息してしまいます。

 以前、電話でおかあさんからこんな相談を受けたことがあります。

<A君の家庭>
 先生、息子がいつまでたっても勉強しようとしないから注意したら喧嘩になって、机の下にもぐりこんだまま出てこないんです。どうしたらいいんでしょうか。

<B君の家庭>
 先生、相変わらず子どもはのんべんだらりで、いい加減な勉強しかしません。見ていられなくて、ついついやかましく注意するんですが、最近では暴力で逆らってくるので、ほとほと手を焼いています。いったいどうしたらいいでしょう。

 状況は似たものであり、程度こそ違え、これと同様の問題を抱えたご家庭は結構あると思います。共通しているのは、おかあさんが子どもに構い過ぎであり、お子さんがウンザリしているということです。A君・B君のおかあさんには何度もアドバイスしたことがありました。そのときは「わかりました」とおっしゃるのですが、すぐに同じ状況に戻ってしまいます。失礼を承知して言えば、子どもを自立させ損なっている、子離れができていないという感じです。

 一方、どちらのお子さんにも言えることは、いつまでもおかあさんに甘えているという現実です。未だに親離れしておらず、いつだっておかあさんの世話を受けて何事もやりとおせてきたくせに、叱られると反抗します。困り果てたおかあさんの顔を見て、ちょっぴり良心が咎めるものの、意地を出してやろうという気概や自立心がなかなか頭をもたげてきません。

 A君は優秀で、テストでは国語で一番をとったこともあります。志望校に合格しましたが、中学進学後も相変わらず踏ん張りが利かず、やがて学校を休むようになったといううわさを聞きました。B君も勉強に本腰を入れさえすれば、相当な結果が得られたはずのお子さんでした。しかし、ちゃらんぽらんな勉強をとうとう改善できずに本番を迎え、入試は今一歩の結果になってしまいました。

 ここで問題にしているのは入試の結果ではありません。子どもが心配なあまり、あまりに距離を近づけると、子どもの自立のチャンスを見失ってしまいます。入試が近づいても相変わらずのわが子の様子に業を煮やしても、今さら“勝手にしなさい!”とも言えず、ずるずると同じ状況を引きずってしまいがちです。

 勉強は、子ども自身のことです。子どもが自立した勉強ができるような応援こそ、親には求められるのではないでしょうか。そうでないと、おかあさんの苦労は逆効果になり、いつまでも報われなくなる恐れもあるでしょう。

 わが子の自立勉強の応援については、今までに度々このブログに書いていますので、よろしければ参考にしてください。

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カテゴリー: 中学受験, 子どもの自立, 子育てについて

あなたは子育てに「向いている」?   ~その3~

2011 年 5 月 16 日 月曜日

 今回は、「あなたは子育てに向いている?」のまとめをしてみたいと思います。その前に、あなた自身の傾向はどうか、前々回でご紹介した質問に答えてみてください。そのうえで、今回の記事をお読みいただいた方が、参考にできる点が多いのではないかと思います。

 さて、ここまでのデータからわかってきたことがあります。自分を「子育てに向いている」と思うおかあさんは、「人の面倒を見るのが好き」で、「のんき」なタイプが多いようです。一方、「自分は子育てには向かない」と思うおかあさんは、「面倒なことはダメ」「なかなかふんぎりがつかない」「言いたいことが言えない」「他人に対して批判的」であると自己認識しておられる人が多いようです。あなたの結果と一致しているでしょうか。

 子育ては、一日として休むことのできないうえ負担の多い仕事です。そうした仕事に「向いている」と答えるおかあさんは、自分のことを「人の面倒を見るのが好き」とか、「私はのんきなタイプ」と思う傾向があるのは頷けるような気がしますね。

 逆に、「面倒なことは苦手」で、「なかなかふんぎりがつかない」「心配性だ」「どちらかというと批判的なタイプだ」と、自分のことを思っている人は、常にイライラしたり悩んだりする傾向があり、忍耐強さ、我慢強さ、楽天性が求められる子育てには「向かない」と考えてしまうのでしょう。

 このアンケートを企画し、実施された田中喜美子さんは、次のように述べておられます。

 以上の結果を読んで、「わぁ、私は断然、子育てに向いていないや!」とがっかりなさらないでくださいね。だいたい「人の面倒を見るのが好き」でしかも「のんき」などという人は、そんなにいるものではありません。たいていの人は、面倒くさいことは嫌いですし、スピードと刺激にあふれている現代社会のなかで「のんき」でいることは難しいのですから。

 そのうえ、「これが自分の性格」と思い込んでいるものも、実は状況によってかなりつくられた部分があり、状況が変われば変わることも多いのです。

 どうでしょう。田中さんのおっしゃる通りだと思います。たとえば、子育てについて相談できる友人がいるかいないか、夫が子育てに積極的に協力してくれるかどうか、おじいさんおばあさんがときどき子どもの面倒を見てくれるかどうか、などによって、おかあさんの心の状態は随分違ってくるに相違ありません。

 そういう環境に恵まれていれば、どなたも子育てに対する受け止め方がかなり変わってくるのではないでしょうか。子育ては1日たりとも休みのとれない仕事ですから、自分の子育て環境によって負担が随分違ってきます。

 また、子育ての最中にあるおかあさんがたが集まり、子育てについて話し合ったり、ともに勉強したりできる場があったならどうでしょう。それによって勇気づけられることや、子育ての意欲や指針を得ることもできるのではないでしょうか。弊社は昨年から「おかあさん塾」(おかあさんの勉強会)という催しを実施していますが、こうした発想から企画したという経緯があります。これをお読みいただいているおかあさんが、弊社の会員家庭のおかあさんなら、ぜひこの催しに参加してみてください。子育てや受験生活のフォローの負担が軽減されることでしょう。

 ともかく、わが子の中学受験を視野に入れておられるご家庭の場合、子育てに加えて、受験勉強のサポートも加わります。子どもの勉強がうまく行かないときなど、親は気を揉むものです。それがそのままストレスにつながってしまわないよう、上手に心のケアをしていただきたいと思います。自分の性格を変えることはできないものですが、ストレスを溜めないような気持ちのもちかたはある程度できるでしょう。また、ご主人との連携体制でわが子の受験生活の応援をしていくことも必要でしょう。

 おかあさん自身の気持ちがしっかりとしていることは、とりもなおさずお子さんの受験生活の充実にも直結することです。自分の性格と向き合い、少しでも気持ちのよい子育て生活を送っていただきたいと存じます。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭学習研究社の特徴

あなたは子育てに「向いている」?   ~その2~

2011 年 5 月 9 日 月曜日

 自分が子育てに向いている人間だと思うおかあさんには、どういう性格的特徴があるのでしょうか。また、自分が子育てに向いていないと思うおかあさんにはどういう性格的特徴があるのでしょうか。今回は、両者の傾向がある程度はっきりと出ている質問項目を取り上げ、ご紹介してみたいと思います。

 心配性  
「向いていない」と答えた人のほうに「心配性」の人は10%強多い。

 大人は、人間関係のしがらみに生きています。たくさんの問題を抱えて生きています。ですから、「あなたは心配性の傾向はありますか?」と聞かれて、「心配性でない」と答える人はかなり神経の太い人だと言えます。だから、子育てに向いていると考えるかどうかに関わらず、半数を超える人が「心配性である」と答えています。それでも、「子育てに向いていない」と考える人のほうが、より多く心配性だと自己分析する傾向が強いことがわかりました。

 面倒なことは投げてしまう 
「面倒なことがイヤ」な人は、子育てに向かない?

 大人には社会的責任があり、投げ出したくてもそうはいかないことが多いものです。ですから、子育てに向いていると思うかどうかに関わらず、「どちらとも言えない」と答えている人が多いのは当然でしょう。それでも、「子育てに向いていない」と答えた人のほうが、12%以上多く「面倒なことは投げ出してしまう」と答えています。面倒なことが嫌な人は、子育ても負担に思う傾向があるのでしょう。

 なかなかふんぎりがつかない 
「ふんぎりがつかない」ことと、子育ては関係あり?

 この質問結果を見ると、子育てに向いていると思う人とそうでない人の性格的な違いがかなりはっきりとわかります。「なかなかふんぎりがつかない」タイプの人は、子育てを負担に思い、「向いていない」と考えがちなのでしょう。

 のんき 
「のんき」であることは、子育てには大きな長所!

 この質問も、子育てに向いていると答えた人と向いていないと答えた人の性格的な違いをかなり明確に示しています。自分をのんきな人間だと自己分析するようなおおらかさのある人は、「子育てに向いている」と感じるのでしょう。特に、子育てに向いていない」と答えた人は、自分をはっきりと「のんきではない」と判断する傾向がありますね。

 人の面倒を見るのが好き 
「人の面倒を見る」タイプは、子育てにも向いている!

 この項目は、子育てに向いていると思うかどうかと密接にリンクしています。「自分は面倒見がよい」と考える人が、圧倒的に多く「子育てに向いている」と答えています。また逆に、「自分は面倒見がよくない」と自覚している人は、子育ても向いていないと自己診断してする傾向が強いことがわかります。

 言いたいことが言えない 
自分の気持ちを表現することは、子育てにも大切!

 これもある程度予想できることですが、「言いたいことが言えない」人ほどストレスを溜める傾向が強いでしょう。子育てにおいてもストレスが発散できず、「辛い」と思う人が多いのかもしれません。それが数字として表れているように思います。

 他人に対して批判的 
「批判的」な人の子育ては辛いものになりがち!

 この項目では、他者に対して批判的なタイプの人のほうが「子育てに向いていない」と思う傾向が強いようです。これはどういうことでしょうか。他者に対して批判的であるという人は、わが子の現状に対しても不満を抱きがちだということではないでしょうか。その結果、「自分は子育てに向いた人間ではない」という意識につながるのだと思います。

 これをお読みになったかたはどうでしょうか。これまでご紹介した質問項目をたどり、自分の傾向を確かめてみてください。次回は、これまでのまとめをしてみたいと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて