2011 年 6 月 のアーカイブ

子どものやる気がないのは子どものせい?

2011 年 6 月 27 日 月曜日

 多くの親はわが子の勉強に満足していません。「しっかりやって欲しい」「これくらい、どうしてがんばれないのか」など、イライラを募らせているおとうさんおかあさんは多いようです。

 しかし、「なぜ、子どもにやる気がないのか」「なぜ取り組みが甘いのか」「なぜ成績が上がらないのか」の原因を、子どもの側だけに求めたのでは問題は解決できないように思います。

 次を見てください。これを見ていただいたうえで、何が問題かを考えてみたいと思います。

 どうでしょう。似たようなやりとりは、弊社の保護者面談でも見受けられます。おかあさんの気持ちはわかるのですが、このままでは解決できません。「悪いのは、すべて子ども。そんな子どものために苦労させられている」――この意識を変えない限り、わが子を奮起させるのは難しいからです。

 今や、「子どもの学習意欲は、放っておいたのでは湧いてこない時代だ」と言われています。どういうことでしょうか。原因はいろいろ考えられます。

  1. ・衣食住が満たされ、子どもを勉強に駆り立てる要因に乏しい。
  2. ・ゲームや携帯など、子どもを目先の楽しさに引き込む誘惑が多い。
  3. ・家族形態や地域社会が変化し、子どもの学びを支援する環境が脆弱になった。
  4. ・幼いころから身体を使って行動する経験が不足し、勉強を行動に移せない。
  5. ・家庭の教育観が多様化し、学校教育が機能しにくくなっている。

 以上は専門家の著述を参考にしたものですが、他にも原因はあるでしょう。ある学者によると、「物質的にも精神的にも満たされると、人間の様々な欲求が減退し無気力になる」そうです。欲しいものをすでに手にした子どもにとって、今が一番幸せな時期であり、「大人になりたくない」と言うのも頷ける話です。なんとかならないものでしょうか。

 さて、話をおかあさんに戻しましょう。「民主主義の時代に育ちながら、いざ大人になり人の子の親になると、多くの人が子どもに対して支配的に振る舞う」と、ある学者が述べていましたが、それはどの家庭にも言えることかもしれません。「熱心に学んでほしい」「立派な人間に育ってほしい」という強い期待がおかあさんにあり、現実とのギャップに直面すると苛立ってしまうのです。

 では、どうすればいいでしょうか。たとえば、力ずくで勉強させる方法もあるでしょう。これは、筆者が担当していたお子さんの家庭の例です。6年生になってもがんばる気配のない息子に業を煮やした両親が、毎晩無理やり猛勉強をさせました。そして長男、次男とも、このやりかたで有力私学に進学させました。ところが・・・・・・ 。

 二人とも、私学6年間で勉強がサッパリ振るわず、大学受験も惨憺たる結果に終わってしまいました。大変頭のよい兄弟であり、その結果は信じられないほどでした。しかし、考えてみれば頷けます。常に二人の頭の中には、親の目をかいくぐって遊ぶことしかなかったのです。

 これは、一流とされる学者の著作で多数確認したことですが、東京大学などに進学し、学問の世界で名を成したような人物は、例外なく「子どものころ、親に叱られて勉強した経験はない」と語っています。たとえば、東京大学大学院名誉教授で、教育学部附属中等学校の校長を務められた汐見稔幸先生は、やや謙遜気味に「実際はどうだったのか覚えていないが、少なくとも『勉強しなさい!』と、叱られた記憶はない」と著書に書いておられました。

 叱られて勉強する子どもの心には、常に「やらされている」という不満があり、心の底では親に反発しています。それが勉強に向かう気持ちを歪めさせ、やがて親のコントロールが利かない年齢になると、勉強を放棄してしまうのです。

 以上から、次のようなことが言えるでしょう。

  1. ・わが子に高い学力を望むなら、叱って勉強させてはいけない。
  2. ・自ら勉強に取り組む姿勢を育てるには、親の関わりかたが問われる。

 では、具体的には親はどうしたらよいのでしょう。そのヒントになりそうな情報を集め、次回から2回に分けてこのブログでご紹介してみたいと思います。

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カテゴリー: 勉強について, 子育てについて, 家庭での教育

親にありがちな子育ての間違い

2011 年 6 月 20 日 月曜日

 あるとき、欧米人の書いた子育ての本を読んでいると、親が犯しがちな間違いがリストアップされていました。欧米人の子育ては、「子どもをいかにして自立させるか」が軸になっています。弊社会員の保護者の方々は、「子どもの自立勉強の促進」に向けて日々がんばっておられます。そんなご家庭の参考になるかと思いますので、ちょっとご紹介してみましょう。

 なお、日本家庭になじまないと思われる項目を一つ省いています。予めお断りしておきます。

★ 親が犯しがちな間違い ★

  1. 1) 子どもと一緒に食事をとることが少ない。
  2. 2) 子どもと一緒に旅行に行く(遠出する)ことはほとんどない。
  3. 3) 子どもと1対1で接することが少ない。
  4. 4) 子どもが何に興味をもっているのかを知らない。
  5. 5) 子どもの話を聞くより、親が話す時間のほうが長い。
  6. 6) 「よい成績をとれ」「勉強しろ」と子どもにプレッシャーをかけている。
  7. 7) 子どもの意見を「くだらない」と遮る。質問をしてきたら「後で」と拒絶する。
  8. 8) 子どもに「それはまだ早い」と、挑戦をあきらめさせることが多い。
  9. 9) 親に興味のあることは、子どもにも興味があると決めつけている。

 以上のうち、ご自身に当てはまる項目があったでしょうか。たとえあったとしても、「見解の相違だ」と思われるかもしれません。ただし、その内容をよく点検してみることも決して無駄ではありません。お子さんのよりよき成長に向けて、重要な視点を教えてくれるかもしれないからです。

 1)~4)は、親子のコミュニケーションを図ったり、親の考えや価値観をわが子に継承させたりするうえでポイントになる事柄です。たとえば、食事の時間は親子一緒に過ごす大切な時間であり、子どもが独り立ちするまで数え切れないほど繰り返される時間です。その時間に交わされる会話の数々は、子どもの性格や人格形成に多大な影響を及ぼすことでしょう。

 子どもの頃、親とどこかへ出かけた思い出はありませんか? 日常の生活圏から離れ、知らない場所へ行って親子で様々なものごとを見た体験は、そのときの情景と一緒に脳裏に深く刻まれます。長じて社会に出てからも、人生の原体験としていつまでも記憶に残っていることが多いものです。あなたのご経験はいかがでしょう。

 子どもの話しかたや対人関係の築きかたは、親との1対1の対話を通じて形成されると言います。人の話にしっかりと耳を傾けられる人、人とほんとうの心の交流を図れる人は、子どもの頃に親との対話を豊富に経験している人です。今のうちにしっかりと互いの目を見て話し、互いの気持ちを受け止めながら話し合う姿勢を築いておきたいものです。

 また、たとえ親子でも、分かり合うための努力なしに深い信頼関係は築けません。たとえば、わが子の興味の対象もろくに知らないようでは、わが子に対してタイムリーな言葉かけやフォローはできません。今、わが子は何に関心を寄せ、どんなことに夢中になっているかご存知でしょうか。

 5)~9)は、子どもの主体性や自立を促進する子育てをしているかどうかのバロメーターになるでしょう。

 5)のように、子どもの言い分をろくに聞かず、親の話したいことばかり一方的に聞かせている家庭では、子どもは言葉を尽くして他者を説得する姿勢や能力を育む機会を失ってしまいます。

 6)のように、親に絶えずプレッシャーをかけられて勉強していると、勉強のもつよさや楽しさを味わうどころではありません。イヤイヤ勉強させられた子どもは、親の影響力が失われる年齢に達すると、勉強を放棄し、親を無視してかかるようになる恐れが多分にあります。

 子どもは、自分の言い分にまったく耳を貸してくれない親のもとで育つと不幸です。自らの存在に自信をもつことができません。親に対して恨みや反感をもった人間に育つかもしれません。親はどんなときにも、子どもの言うことに耳を傾けてやるべきです。時間がないときは、「後で」でいいのですが、ほんとうに後で話を聞いてやる必要があります。

 8)や9)のような独善的な態度の親のもとで育った子どももかわいそうですね。「それはまだ早い」と言われ続けた子どもは、自分に手応えを感じたり、自信をもったりするチャンスをいつまでも得られません。ものごとに立ち向かう勇気やチャレンジ精神を、どうやって育むのでしょうか。親の興味を常に押しつけられ、自分のしたいことや見たいものについて親に語れない子どもも不幸ですね。こういう親のもとで育った人間は、自分を押し殺すことを教えられる代わりに、自分から提案し行動する積極性を奪われてしまいます。

 上記の項目は、子どもの学ぶ姿勢がどのように育つかと深くリンクしています。また、対人関係の築きかたがどうなるかとも密接に関わっています。近年、勉強はできても主体性がなく、対人関係をちゃんと築けない、コミュニケーション能力の欠落した人間が増えていると言われます。子どもの人格形成は、毎日の親子関係と密接につながっています。何か一つでも気づきが得られたら、ぜひ今すぐから活かしていただければと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの自立, 子育てについて

私学紹介イベントを開催します ~6年生会員親子対象~

2011 年 6 月 13 日 月曜日

 来る6月19日(日)、恒例の私学紹介イベント「私学がきみを呼んでいる!」を開催いたします。6年部生のご家庭はぜひご参加ください。会場は、西区民文化センターホールで、今年は女子の部が午前(10:00~12:00)、男子の部が午後(13:30~15:30)となっています。

 参加校は例年と同じで、午前の女子の部がノートルダム清心・広島なぎさ・広島女学院・安田女子(今年の紹介順)、男子の部が修道・広島学院・広島なぎさ・広島城北(今年の紹介順)です。できれば他の学校にも参加をお願いしたいのですが、時間枠内である程度内容のあるものにするため、お招きする私学を現在の数に限定させていただいています。

 早いもので、この催しを始めて10年あまり経ちました。10年の間にコンセプトも微妙に変わり、現在は「子どもたちの受験に対する意識を高め、行きたい学校を考える契機にしてもらおう」というのが主要な意図になっています。

 6月頃から夏休みにかけては、受験生が中だるみをおこしがちな時期です。そこで、子どもたちの目を輝かせるような仕掛けを盛り込んだ行事をして、気持ちを勉強に向かわせようという意図もあります。したがって、すべてが子ども目線になっており、保護者のかたには「付き添い」という立場で、一緒に見ていただく形式をとっています。

 実は、4・5年生家庭も対象にしたり、外部のかたも参加できるようにしたりと、過去にいろいろ試みたことがあります。すると参加者はものすごい数になりました。平和公園のフェニックスホールが、午前・午後とも埋まるほどでした。しかし、結局は今のやりかたがよいと判断しました。

 4・5年生はまだ興味がもてないようで、すぐ飽きる子がいます。肝心の6年生になったときに新鮮でなくなる恐れもあります。外部生家庭もOKにすると、家庭学出身の先輩たちがせっかく多数来てくれているのに、「後輩頑張れ!」とエールを送ってもらうことができず、会場を一体感で包むことが難しくなってしまいます(ただ「受験生のみなさん頑張って!」では、学習塾の催しなのによそよそしくて変ですよね)。

 今年の内容ですが、前半はいつもと同じです。私学紹介映像を見ていただきながら、先輩たちに私学のよさや特徴を解説していただきます。それから私学にまつわるクイズ。会場の子どもたちにも座席に座って答えてもらいます。クイズの答えには、私学の先生がコメントをくださいます。そして、毎年大人気のアトラクション。女子の部では、ノートルダム清心中3年のみなさんが箏曲の美しい音色を聞かせてくださいます。また男子の部は、広島城北中・高バトミントン部のみなさんが、バドミントンのスピード感を楽しめるパフォーマンスを披露してくださいます。

 アトラクション後、10分程度の休憩をはさみ、後半のプログラムに移ります。後半の最初は、「○○中学校の、ここがすごい!」と題し、各私学のクラブ活動で活躍中のみなさんに登場してもらいます。いろいろなクラブから、たくさんの生徒さんが来てくださる予定で、大いに盛り上がることが予想されます。ひょっとしたら、このプログラムが全体のハイライトになるかもしれません。

 その後は、ここ数年の定番のプログラムが続きます。制服ファッションショー、先輩からの受験アドバイス、先生方からの受験情報などを予定しています。ラストは、各私学の先輩たちと、先生がたとの連携で、受験生への励ましのパフォーマンスをお願いしています。ここでは、受験生の子どもたちの目が輝くような仕掛けも見られるかもしれません。

 前述のように、おとうさんやおかあさんに対する配慮は余りありません。親と子どもの両方に照準を当てると、子どもがまず退屈します、詳しい学校情報は、私学の主宰される「学校説明会」にお任せし、この催しは「受験生を励ます」ことに特化しています。

 「そろそろ目の色を変えてくれないと」と、イライラし始めたおとうさんやおかあさんはおられませんか。お子さんが受験生としての自覚を高めるよい契機として、この催しをご利用ください。この催しに興味をもたれた4・5年生のご家庭は、お子さんの番がくるのを楽しみにお待ちください。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念, 私学について, 行事のお知らせ

家庭勉強の自立を応援しよう! ~第1回おかあさんの勉強会~

2011 年 6 月 6 日 月曜日

 受験生をもつと、親には心配事が増えるものです。とりわけ中学受験生の親は大変で、毎日イライラし通しになるケースもあるようです。受験生とは言えまだ小学生。受験することの自覚すら十分でなく、取り組みが中途半端になりがちだから当然です。

 「おかあさんの勉強会」は、受験生家庭のおかあさんがたにお集まりいただき、テーマに基づいて話し合いをしていただこうという趣旨で企画した催しです。同じ立場にある者は、互いの苦労がわかります。また、他の人がやっていることは、たちまち自らの参考にできます。

 さて、第1回の勉強会が全校舎で終了しましたので、その様子をご紹介してみたいと思います。どの校舎からも、「おかあさんがたが楽しく話をされており、よかったと思う」という報告が寄せられました。これをお読みになり、「次は参加してみたい」と思われた会員のかたは、お子さんの通学校にご連絡ください。2回目から、あるいは最終回のみの参加も大歓迎です(一部の校舎では定員に達し、締め切っています)。

 第1回目のテーマは表題の通りで、子どもの家庭勉強をいかにして自立させるかを、おかあさんがたに話し合っていただきました。「勉強の自立」は、弊社の掲げる指導理念の根幹をなすものです。そして、おかあさんがたがもっとも苦労してがんばっておられることです。何を話し合っていただいたら成果に繋がるかを考慮しながら、何度も内容を練り直しました。

 出だしはどうしても雰囲気が堅くなりがちです。そこで、ワークショップの技法の一つ、「アイスブレーキング」から入りました。その名の通り、打ち解けるためにするもので、ゲームのようなものだと思ってください。参加者をいくつかのグループに分け、グループごとに楽しんでいただきました(以後のワークは、すべてこのグループを単位にしました)。これでみなさん笑顔になり、気軽に話せる雰囲気ができあがりました。

 それから、いよいよ本題です。まず、家庭勉強は学校や塾の勉強の延長的な役割だけでなく、子どもの学ぶ姿勢を築く重要なものであるということをお話ししました。それから、それぞれのお子さんの状態について話し合っていただきました。

 すでに手応えを感じておられるおかあさんには、うまく行き始めた理由をお話しいただき、みなさんの参考にしてもらいました。「うまくいっていない」と嘆いておられるおかあさんには、立て直す方法についてみなさんからアドバイスをいただきました。

 それから、「1.現状に満足」「2.まずまず満足」「3.不満」のいずれかについて、全員に挙手をしていただきました。全体の8割以上のかたが2とお答えになりました。

 実は、子どもたちにも「家庭勉強の現状」をどのように自己評価しているかについて、アンケートを採っていました。そこで、結果をおかあさんがたにご紹介しました。全部の会員生からではありませんが、400名以上の4・5年生から聞いた結果です。「1.計画通りやっている」「2.だいたいやっている」「3.できないことがかなりある」のうち、1が約37%、2が約54%、3が約9%でした。「お子さんからも、今の状態をどう思っているか確かめています」と司会者が言ったら、自分の子に聞いたと思われたのか、どっと反応がありました。

 これは予想されたことではありますが、家庭勉強の取り組み具合については、おかあさんがたの見方のほうが厳しめで、子どものほうがやや楽観的な見方をしているように思いました。

 勉強を自立に向かわせるには、まずもって習慣化を図ることが大切です。習慣になればやるのが当たり前になり、勉強を苦にする気持ちはなくなります。問題は、どうすればやるのを当たり前の状態にできるかです。そこで、次のワークでは、それをテーマにみなさんで話し合ってもらいました。

 やるのを当たり前にできないとすれば、その原因は何でしょう。当たり前のようにやるようになった家庭もあります。どこにポイントがあるのでしょうか。それをグループで話し合っていただき、まとまった見解を発表していただきました。たくさんの意見や提案が出たので、それを板書していくと、多くのおかあさんが熱心にメモしておられました。

 ここまでで、たいていの会場は時間になったようでした。少しの時間延長をお許しいただき、最後に家庭学習研究社からおかあさんがたにアドバイスをさせていただきました。アドバイスの内容は、生活習慣の見直しや、おかあさんからの激励のコツ、子どもの自発性を引き出す働きかけかたなどで、特別なものではありません。

 自立した勉強ができるようになるには、子ども自身が精神的にも自立を果たす必要があります。それには、叱ることよりも、子どものプライドが頭をもたげ、自分から何でもやることにこだわる人間になるような接し方をするほうがうまく行くものです。結局、親子が意志疎通を図り、親の期待は何かをしっかりと伝え、子どものやることを信じてやり、ちゃんとやっている様子を喜んでやる。そういう働きかけを常日頃することです。

 そういう流れを上手につくっておられるご家庭は、万事うまくいっているものです。特別な方法などありません。そのことに、多くのおかあさんがたが気づかれたようでした。

 おかあさんがたがすっかり仲良しになり、終了後も長い時間歓談をされている校舎もあったようです。おかあさん同士、支え合う関係ができる。それも、こうした双方向性のある催しのよさかもしれません。

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カテゴリー: 子育てについて, 行事レポート