中学受験は効率よく働く脳をつくる

2012 年 7 月 23 日

 何をするにも判断がはやくて的確な人がいます。たくさんの仕事を上手に仕分け、段取りをつけて要領よくこなす人がいます。そういう人の仕事を目の当たりにすると、本当にうらやましくなります。こういう人が、「頭のよい人」と評価されるのも頷けますね。

 「頭のよい人」の脳の働きは、どこが違うのでしょうか。脳について知識のある人は、「要するに、シナプス間の神経伝達がはやいのだろう」と考えるかも知れません。確かに、「シナプスを駆けめぐる信号伝達のスピードがはやいと、脳内での情報処理もはやくなるに違いない」という考えは、理に叶っているような気がします。

 ところが、実際はそうではないようです。神経を伝わる電気信号のスピードは常に一定で、頭の良し悪しは関係ありません。ですから、個人間の差もありません。ではどこが違うのでしょう。

 意外なことに、ものごとを要領よくてきぱきと判断している人の脳は、特別活発に動いているわけではないそうです。脳の血流も、人によって違うわけではありません。

 面白いのは、ものごとの判断が迅速でない人、要領よくてきぱき考えることができない人の脳ほど、あちらこちらの部位が動いているといいます。頭の働きに無駄が多いのでしょう。

 頭のよさを数値化したのが、いわゆるIQと呼ばれるものです。この数値の高い人と低い人に同じ作業をさせ、血流の状態の違いを調べた実験があります。それによると、IQの高い人の血流のほうが少ないということがわかりました。これは驚きです。逆を予想されたかたが多いのではないでしょうか。

 勿体をつけた言いかたをしてしまいました。要するに、ものごとの判断や処理がはやくて正確なのは、神経間の伝達スピードがはやいからではなく、神経の回路が無駄なくつながり、記憶をつくったり、引き出したりする作業が効率的に行われているからなのです。また頭を無駄なく使うということは、頭が疲れにくいということも意味するようです。

 ものごとを迅速に判断して片づける能力があり、しかも集中が長続きする。こういう脳の持ち主になったなら、一生における仕事の量も質も、さらには立場や収入も随分変わってくることでしょう。

 さて、ここからが本題です。今回の記事は、有名な学者の本(あとでご紹介します)にあった話をもとに書いていますが、今お子さんを弊社の教室に通わせておられるご家庭、お子さんが中学受験の勉強をしておられるご家庭には、耳寄りな情報を提供してくれる話であろうと思います。

 と言うのは、中学受験準備のための学習は、効率的に働く脳をつくるうえでとても有効なものだと思うからです。子どものもつ可能性は、可塑性に富んだ小学生までの時期に、脳にいかなる刺激を与えるかで随分変わります。

 脳は学習によって賢くなります。しかし、そうした進歩は学習課題の程度が子どもにマッチしてこそ引き出せるものです。子どもが簡単に解決できる課題はふさわしくありませんし、逆に難しすぎたのでは粘り強く考えようという意欲も湧いてきません。その意味において、中学受験対策の学習は、子どもたちの脳を鍛える場としても、非常に大きな成果を期待できるものだと言えるでしょう。

 4教科の受験対策学習を通じて、子どもたちはたくさんの考え方や知識を身につけます。それは、新しいシナプス回路を無数に築くことになります。また、学習の繰り返しは脳の神経繊維を太らせ、神経間の信号の伝達をスムーズにします。そうして、賢い頭脳が育っていくのです。

 また弊社の場合、2週間に1回の割合で、全員で競い合うテストがあります。子どもたちは、新規の学習単元を学びっぱなしにするのではなく、テストに備えておさらいをします。テストでよい点をとるためには、できるだけ丁寧にやり直しや点検をする必要があります。それを繰り返しているうちに、「今、何を優先して取り組むべきか」や、「どこが不十分か」を考えながら学習の調整・管理をする姿勢も身についてきます。

このように考えていくと、中・高一貫校出身者に見通しをもった行動や洗練された取り組みのできる人が多いのは、中学受験を経験したことや、レベルの高い中・高一貫校の教育環境のもとで、自律的な学習姿勢や自己管理能力が磨かれたからであろうと思えてきます。

少し負荷をかけてがんばる。そういう学習体験を、子どもが成長していく年齢のときにくり返せば、脳の大いなる成長を引き出すことになります。中学受験や中・高一貫校進学は、そうした時期を活かす大変有効な方法のひとつではないでしょうか。

 今回の記事は、「『頭のよさ』は遺伝子で決まる!?」PHP新書478 を参考にして書きました。この本の著者は東京大学大学院の名物先生で、神経や遺伝子の専門家です。お子さんの知育に有効な内容の著述がたくさん見受けられます。興味をもたれたら、読んでみてください。どちらかというと、おとうさんによいかと思います。

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