2012 年 12 月 17 日 のアーカイブ

中学受験の真の価値について考える

2012 年 12 月 17 日 月曜日

 中学受験準備の学習は、多くの場合小学校4年生か、5年生頃に始めます。この年齢は、ちょうど人間としての行動様式が定まりつつある時期です。それをうまく活かすことで、子どものすばらしい成長を引き出すことができるのが、中学受験の最もすばらしい点だと私たちは考えています。

 1年、2年と学習を継続したなら、受験勉強を始めた頃とは比較にならないほどの学力が身についているものです。また、毎日決めた時間に勉強することを習慣づけたなら(これが辛抱のいることですが)、それは中学進学後もずっと無形の財産として残っていきます。

 受験生は、大人の影響力が十分残っている年齢の子どもですから、アドバイスに耳を傾けてくれるし、筋の通った叱りかたをすれば素直に反省するし、期待に答えようとがんばります。ただし、親はどうしても先を読みながら子どもを見るので、助言したり手を差しのべたりするタイミングが早くなりがちなのが難しいところです。親には大変な忍耐・我慢が求められますが、うまくやれれば子どもは飛躍的に進歩していきます。それは、親が子どもに与えてやれる最高のプレゼントになることでしょう。

 がむしゃらな勉強をさせても子どもの成長にはつながりません。計画を立て、決めた時間枠の中でベストを尽くすよう子どもを導いてやりたいものです。そうすれば、学習の習慣が身につくだけでなく、行動の計画性や、やるべきことを集中してやる姿勢、「やればできる」という自信が備わり、先々の大いなる成長の土台を築くことになります。中学生になってから飛躍するのは、学習習慣や学習姿勢のしっかりした子どもです。

 ただし、前述のようにわが子のことになると、親は我慢がきかなくなりがちです。そこで、子どもの勉強をコントロールするケースもしばしば起こります。しかし、それでは子どもはいつまで経っても自立できません。中学受験の難しい点は、大人が無理強いしても子どもは言うことを聞き、それで中学入試を突破できるところにあります(しかし、それではせっかく得られるはずの成果も取り逃がしてしまいます)。

 近年は、子どもが全力で取り組める目標が少なくなっていると言われます。その代わり、携帯ゲームなど、目先の退屈を紛らわすものはたくさんあり、それらが子どもの辛抱強い取り組みをスポイルしています。

 受験という目標を与えたことがきっかけで、子どもが著しく変わっていったという話は決して少なくありません。受験勉強を自分の力でやり遂げる。それはすぐにできることではなく、最終目標です。それができるまで、親の苦労や忍耐は絶えませんが、得るものの価値は莫大と言えるほどです。

 それから、中学受験について誤解されやすい点にふれておきます。中学受験対策の勉強というと、解法パターンを覚えたり、暗記をたくさんしたりするといったイメージをもつ人が多いようです。確かに、そういう方法で合格をめざす例もありますが、中学受験の勉強の本質はそういうものではありません。

 例えば算数。数学と違って公式を適用して答えを導いたりするのではなく、自分で公式を編み出すところに胸のすくような楽しさがあります。方程式を用いず、単純な計算式の組み合わせで答えを引き出すプロセスで子どもの頭脳は鍛えられ、思考力が育まれます。簡単な図を自分で描き、仕組みを理解しながら答えにたどり着く勉強は、子どもに喜びと感動を与え、粘り強く考える頭脳を育みます。こうして培った思考力やセンスは、より高い学問領域に入ったあと、何よりも心強い武器になるものです。

 国語では、様々なジャンルの文章を限られた時間内で精読し、テーマや書き手の意図を読み解く作業を繰り返すのですから、確かな読解力を育むのは当然のこと、大変な頭の鍛錬になるものです。

 理科・社会についても、資料をもとに考えさせたり、現象の背景になる因果関係などを考えさせたりする課題が多く、こうした受験問題への対策をすることで、子どもの頭脳は大いに鍛えられるでしょう。

 中学受験には、様々な噂や憶測が飛び交いがちです。それは、幼さの残る子どもの受験であり、親自身もまだ若いということと無関係ではないでしょう。ともすれば過激な話が飛び交い、「そこまでしなければ受からないのか」というような話を耳にすることになりがちです。

 しかしながら、こうした流言の類に振り回されず、親自身が納得のいく中学受験勉強の方法を貫くことをお勧めします。それがどれほど大切かということを、私たち自身、数多くの家庭の受験を見守ることで学びました。

 入試の結果が全てであると思わなければ、親は大抵のことに抑制が利き、適切な判断ができるものです。親が信念をもち、子どもの自立に向けて粘り強く応援していけば、いつか子どもが応えてくれるときがやってきます。中学受験を、親も子どもも成長する素晴らしい体験の場にしましょう。それは全てのご家庭で実現可能なことです。
 

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