2013 年 4 月 のアーカイブ

よい着座姿勢も学力のうち?

2013 年 4 月 29 日 月曜日

 お子さんは、何かスポーツをしておられますか? サッカーや野球、バスケット、陸上などの激しいスポーツでなくても、何か運動めいたことをしておられるでしょうか?

 運動をしているお子さんは、筋力が備わっています。これが大変重要なことで、日常生活を快適に送れるだけでなく、勉強の能率にも大きな影響を及ぼします。

 最近気になるのは、着座姿勢のよくないお子さんが増えていることです。塾での授業においても、体をねじ曲げたり、イスにのけぞるような姿勢で座っていたり。見た目にもよくありませんが、学んでいる子ども自身にとってもよいことは一つもありません。

 ある脳科学者によると、子どもの体の姿勢と脳の働きとには密接な関係があるそうです。悪い姿勢が染みつくと、脳への酸素供給がままならなくなります。背筋がきれいに伸びたお子さんは見ていて気持ちがよいものですが、それだけではありません。呼吸がしっかりとできるので酸素供給が円滑に行われ、脳の働きを活発にします。

 逆に背筋が丸くなったりねじれたりしていると、大きな気持ちよい呼吸ができません。当然酸素も十分脳に送られませんから、脳の働きも鈍くなってしまいます。

 よい姿勢を保つには、背筋と腹筋のバランスが大切だと言われます。背筋がしっかりとしていたら、自然と背筋がピンと伸びるので、着座姿勢もよくなります。それが脳の活発な働きへとつながるというわけです。運動をすれば自ずと背筋力を使います。それによって背筋が鍛えられることが、勉強に好影響を及ぼすというわけです。

 逆に運動が不足している場合を考えてみましょう。運動の足りない子どもは背筋が弱くなり、腹筋のほうが勝って猫背気味になり易いようです。その結果、大きな呼吸ができず脳への酸素供給が行われにくくなります。前述の脳科学者は、子どもの運動不足について次のように述べておられます。

 今の子どもの家庭生活を考えてみると、外で遊ぶことが少なく、家でテレビやビデオを見たり、ゲームをして遊んだりと、座って過ごす時間が多くなっています。座った姿勢というのは、背筋が曲がっている状態です。この状態は、脳への刺激を弱めてしまうのです。人の背筋は、脳のしっぽのようなものです。背筋の内側の脊椎骨の中には中枢神経系である脊椎が通っていて脳につながっています。したがって、座って背筋が曲がっていると脳に刺激が行きにくくなり、必然的に活動が低下してしまうのです。

 ある年、かつて担当していたクラスの子どもたちが多数最難関の国立大学に進学したということを知りました(以前ご紹介した話です)。その子どもたちの名前や顔を思い出しているとき、その子どもたちに共通する印象が記憶に蘇ってきました。それは、どの子どもも背筋がピンと伸びて、実に気持ちのよい着座姿勢をしていたということです。まっすぐに背を伸ばし、筆者の話を聞いてくれていた姿をはっきりと思い出しました。

 「姿勢」というと、学びの心構えや取り組みのことを指すことが多いものです。しかし、文字通りの意味の「姿勢」も負けず劣らず勉学の成果に多大な影響をもたらしているのですね。

 これもずいぶん前の話です。ある年、小学生のサッカーチームに所属している子どもたちが、5~6人一緒に弊社の教室に通ってくれたことがあります。メンバーの一人のおとうさんがコーチをしておられ、6年生の最後までサッカーをしながらの受験生活をさせられたとか。その子どもたちもまた、姿勢がしっかりとしていました。厳しい運動で背筋が鍛えられていたのでしょう。

 また、スポーツマンで頭のよい人の特徴として、「集中力を発揮した勉強ができる」という点があげられます(無論、スポーツをする人の全てには当てはまりませんが)。これはスポーツで鍛えられた集中力や、前述のような脳の働きなども大いに関与してのことではないでしょうか。

 さて、サッカーをしながらの受験生活を送った子どもたちの結果ですが、入試では全員が志望校に受かりました。彼らの進学先の大半は、広島最難関と言われる私学でした。

 中学受験というと、とかく勉強のことばかりに目を向けられがちです。運動の重要性については、目が向けられないどころか「勉強の妨げ」という見方をされることが多いようです。しかし、運動の効能についても目を向けるなら、適度な運動も勉強面にとっては必要なことなんですね。

 4、5年生のお子さんで、受験生活の間はスポーツを控えるかどうか迷っておられるご家庭もおありでしょう。もしお子さんがそのスポーツを大好きなら、やめずに受験する方法もあるかもしれません。上手に時間を振り分け、集中して取り組む受験生活を送れば、入試突破は十分に可能です。

 姿勢と脳の働きの関係について書くつもりが、少し脱線してしまいました。今からしばらくはスポーツに適したよい季節です。ときどきは気分転換の意味も込め、家族でスポーツを楽しむのもよいかもしれませんね。間もなくGWに突入します。おとうさんも一緒に、スポーツを楽しんではどうでしょうか。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 勉強の仕方, 子どもの発達

親も子どもも、会話一つで気持ちが変わる

2013 年 4 月 22 日 月曜日

 前回は、子どもが親の期待に反した行動をとったときの対応について書きました。親は、自分の子どものことになると寛容の気持ちがもてず、ついつい尋問口調になったり咎めたりしがちです。しかし、それでは子どもの素直な反省を引き出すことができない、といったようなことを書きました。

 重要なのは、子どもをコントロールすることではなく、子どもの気持ちを理解してやることです。親が自分のことを理解してくれたと思うと、子どもは素直になれます。そして、辛い現実に対して向き合う強さを取り戻すことができます。

 とは言え、現実にはなかなかうまくいかないものです。そんなかたは、次のディスカッション(アメリカの心理療法家の著作を引用しました)を読んでみてください。

リーダー:何もかもがうまくいかない朝を想像してみて。電話は鳴っているし、幼い子どもは泣いているし、トーストは知らないうちに焦げちゃうし、さんざんな朝よ。そのトーストを見た夫はこう言うの。「なんてことだ!おまえは、一体いつになったらトーストをまともに焼けるようになるんだ!」 さあ、どんなふうに答える?

A:トーストを夫めがけて投げつけるわ。

B:私なら「トーストくらい自分で焼いてよ!」って言うわ。

C:私はかなり傷ついて、泣いてしまうかも。

リーダー:夫の言葉を聞いて、彼に対してどう感じる?

親たち:(声を合わせ)怒り、憎しみ、恨み。

リーダー:その場合、もう一枚トーストを焼くのは簡単なことかしら?

A:毒を塗ってもいいならね!

リーダー:じゃ、同じ状況だったとするわよ。トーストが焦げてるの。でも、夫がその状況を見て、こんなふうに言ったらどう?「うーん、おまえ、今日は大変だな。子どもは泣き止まないし、電話は鳴るし、トーストは焦げるし」

B:それならすばらしい気分になるわ!

C:いい気分になって、夫をますます好きになるでしょうね。

リーダー:どうして? 子どもはまだ泣いているし、トーストは焦げているのよ?

親たち:(声を合わせて)それでも構わない。

リーダー:何が違うの?

A:責められていないことがありがたいのよ。

リーダー:じゃあ、三番目のシナリオを言うわよ。夫が焦げたトーストを見て、穏やかな口調でこう言うの。「おれがちゃんとしたトーストの焼き方を見せてやるよ」

B:とんでもない。最初のよりも悪いわ。自分がバカみたいに感じるもの。

リーダー:今話した三つのアプローチが、子どもの扱い方にどうあてはまるか考えてみましょう。

A:言わんとしていることはわかるわ。私はいつも子どもにこう言うの。「もうそんなことわかる年でしょう」すると、子どもは必ず怒りだすの。

B:私はいつも娘に「やり方を教えてあげるわ」って言ってる。

C:私は自分が責められることに慣れているから、自然に責める言葉が浮かんでくるの。子どものころ母親に言われた通りのことを子どもに言っているわ。そのことで母を憎んだというのにね。私はいろいろなことがちゃんとできなくて、いつも母にやり直しをさせられていたの。

リーダー:そして、今、あなたの娘さんに同じことを言ってるわけね?

C:そうね。自分でもいやなのに。そういうことを言う自分も好きじゃないわ。

リーダー:焦げたトーストの話から学べることは何? みじめな気持ちを愛に満ちた気持ちに変えたのは何だと思う?

B:理解してもらっているという感覚ね。

C:責めるんじゃなくてね。

A:それに、こうすればもっとよくなるとも言われずにね。

 どうでしょう。人の気持ちは、言葉一つで随分違ってきます。相手の気持ちを慮(おもんばか)って会話をすれば、場の雰囲気はガラリと変わることでしょう。

 「子どもがやるべき勉強をしないから叱るのだ。それのどこが問題なのだ」と、かつて筆者は思っていました。しかし、実際に子どもにまつわる数々の問題に直面するなかで気持ちが変わりました。子どもの望ましい成長という視点の必要性を痛感したからです。

 まずは、おかあさんから実行してみてはいかがでしょうか。きっと、家庭の会話が重要な意味をもつことに、家族全員がたちまち気づくことでしょう。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

親子のギクシャクを解消するには?

2013 年 4 月 15 日 月曜日

 親にとって、わが子は世界中の誰よりも大切な存在です。特に小学生までは、目のなかに入れても痛くないほどかわいいものです。しかしながら、子どもに中学受験をさし向けたことから、かわいいわが子との関係が微妙にギクシャクし始める家庭もあるようです。

 原因ははっきりしています。子どもが親の期待に応えるような勉強をしてくれないからです。これは人生経験が浅く、先を読んだ行動ができない小学生だから当たり前なのですが、親には大きな期待や思い入れがあります。理想と現実とのギャップが大きいと、黙っていられなくなってしまいます。気がつくと叱りとばしたり、激しい親子喧嘩を引き起こしたり・・・。

 悪いのは子どもでしょうか。しかし、小学生の子どもはまだ受験の意味もよくわかっていません。自分を追い込んだ勉強など、まだ無理な段階での受験生活なのです。親の対応なしにこの問題を解消するのは難しいのではないでしょうか。

 そこで今回は、子どもとのよい関係を築くとともに、子どもの自発的ながんばりを引き出す接しかたについて、ともに考えてみたいと思います。ある臨床心理学者は、子どもとの良好なコミュニケーションを築くにあたって、次のようなポイントを掲げておられます。

 1.親から発する言葉は、親だけでなく子どもの自尊心も傷つけないものであること。
 2.忠告や指示を与える前に、子どもの気持ちを理解するよう努めること

 なぜこの二つが重要なのでしょうか。子どもは感情を高ぶらせると、自分が経験したことや、自分の思いを親にきちんと説明できなくなります。それでいて、自分の気持ちを全部わかってほしいし、「親はわかってくれる」と思っています。「随分勝手な話だ」と思われたでしょうか。しかしながら、それが子どもというものであり、子どもゆえの望みなのです。

 親には、こうした子どもの気持ちを受け止めた対処が望まれるのですが、親も感情に走ると亀裂は避けられなくなってしまいます。前述の学者は、それを踏まえて次のように語っておられます。

「先生が私のことをどなったの」と子どもが言うとき、私たちはその子からもっと詳しい話を聞き出そうとしなくていい。「いったい、何をしてどなられたの? 先生がどなったってことは、あなたが何かをしたからでしょう? いったい何をしたのよ?」などと言わなくてもいい。「あら、かわいそうに」という必要さえもない。子どもが感じている痛みやとまどいや怒りの感情を、親が理解していることを示さなければいけないのだ。

 「受験生活が始まってから、どうも怒りっぽくなった」「最近、子どもが自分に反発するようになった」――このように思っておられるかたはありませんか?

 そんな人は、子どもへの対応を振り返ってみてください。子どもの行為をとがめたり、叱ったりする前に、子どもの気持ちを汲む言葉を投げかけてやる必要があるかもしれません。

 親は問題の主がわが子だと、遠慮のない言葉を発しがちです。そのいっぽう、他人の過ちやしくじりに対しては寛容で、ひどい言葉を浴びせたりはしません。それどころか、「大変でしたね」などと、いたわりの言葉を投げかけるはずです。まちがっても、「だからあなたはダメなんだよ」などと批判することはありません。わが子に接すると、どうして違ってしまうのでしょう。

 子どもは、自分を責められると腹を立てます。そして、「やっていないところが出た」「妹がうるさくて勉強できなかった」「ノートをなくしたから」など、言い逃れをしようとします。親は、そんな子どもの態度に腹を立てます。そして、子どもを一層とがめることになります。ときには、ひどい言葉を浴びせてしまうことも珍しくありません。

 しかし、ここで知っておきたいことがあります。子どもが怒りを爆発させたとき、その裏には子どもなりの不安や無力感などの感情が背景にあるのです(たとえば、「自分は、算数のセンスがないのかな」「きょうだいより頭が悪いんだ」など)。親は、そうした心のうちに目を向けてやる必要があります。そして、子どもの行為をとらえて叱るのではなく、子どもの気持ちを理解してまずは受け止めてやり、子どもが冷静になるのを助けてやるのです。

 具体的には、子どもの気持ちを言葉にしてやることです。たったそれだけのことで、テストに失敗して落ち込んだ子どもの気持ちは楽になるのではないでしょうか。たとえば、次のような言葉を投げかけたならどうでしょう。

・とても残念な結果だったね
・それじゃ、とても悔しいでしょうね
・あなたにとって最悪の日だったわね

 「親がわかってくれた」と感じると、子どもの心の痛みはやわらぎます。また、親に対する信頼の気持ちも深まります。親が子どもの落胆した気持ちをすくい取ってやると、子どもは辛い現実に向き合う力を取り戻すことができます。

  親も急に態度を改めるのは難しいものです。しかし、「まずは、子どもの気持ちを受け止めてやろう」を胸にお子さんに接してみてください。お子さんの表情が明るくなるかもしれません。

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自立勉強の姿勢を磨いて入試の突破を

2013 年 4 月 8 日 月曜日

 大学受験を終えた弊社の卒業生に会ったときのことです。私学で学力を伸ばす秘訣について尋ねたところ、次のように話してくれました。

 「うちの学校では、先生がたが勉強についてあれこれ注意や指示をされることはありません。夏休みにも、先生が毎日学校にきて補習をしてくれたりするわけでもありません。でも授業はよいし、勉強についてうるさく言われないから、必要な勉強を自分で考えてやっていける生徒にとってはとてもよい学校です。勉強が大変な学校と思われているようだけど、高3まではそんなふうに感じませんでした」

 この言葉に、私学とはどういうところかの核心があるように思います。また、冒頭の質問に対する明確な答えが示唆されているように思います。

 優秀な先生による質の高い授業を受けながら、向上心をもった生徒同士が互いに切磋琢磨していく環境。それが私学です。このような私学の環境で学力を伸ばすには、それ相応の準備をしておく必要があるように思います。

 たとえば、「家庭での勉強と授業を連動させながら学力を伸ばしていく態勢」や「自己管理に基づいて、自律的に学習を進めていく姿勢」を備えておけば、私学の環境に戸惑うことはありません。

 弊社の卒業生で、私学進学後に学力の花を咲かせている生徒のほとんどは、中学受験生の頃にきちんとした学習姿勢・学習習慣を身につけていた生徒であり、運や才能で頭角を現したわけではありません。 

 つい先日も国立大学のなかでもトップと言われる大学に進学した卒業生が、「家庭学で身につけた学習法はそのまま大学受験まで役立ちました」と語っていたという話を、校舎長から聞きました。

 ただし、近年は私学の様子も少しずつ変わりつつあるように思います。昔と比べて宿題が増えるなど、やるべきことを具体的に指示される傾向が強まりつつあると共に、学力不振の生徒に対するフォローもかなりきめ細く行われるようになっています。

 それは、私学がより個の教育に熱心になったと単純に受け止め、歓迎すべきことなのでしょうか。こうした私学の傾向は、生徒の自発的な学習が期待できなくなりつつあることの裏返しとも受け取れます。勉強しない生徒が増えたから、宿題という形でやらせるのであり、それでもがんばれない生徒がいるから「補習」もやらざるを得ないのです。

 私学とは、本来学びの志をもった生徒の集まりです。レベルの高い生徒が集まって刺激し合ったり、高度な内容の魅力的な授業を受けたりする環境があれば、学校から手取り足取りのフォローなど必要ないのです。むしろそれは“主体性”や“自立性”の欠落した生徒の増加という、私学にあるまじき悪循環を引き起こしかねません。

 考えてみればわかることですが、自分の勉強を自分で取り仕切れない生徒は、どんなフォローを受けようとうまくやっていけるはずがありません。やり残した学習のフォローをしてもらっても、またその先に息つく暇もなくおびただしい量の学習が待っているのですから。

 以上からおわかりいただいたことと思いますが、私学進学後、学力を大きく伸ばしていくためには、入試で合格点を取れる学力(得点力)を備えるだけでは不十分であり、私学の教育環境で学力を飛躍させていくための備えもしておかねばなりません。その備えとは、自分で学習を管理し、自分で学習を進めていける力に他なりません。そして、このような力は、私学の環境に足を踏み入れてから身につけようにも、そうした時間も暇も得られないのが現実です。

 弊社の学習指導は、週3日通学制を原則としています。これは、通学日と通学日の間に必ず家庭学習の日を設け、子どもたちが家庭で自習をする習慣を備えるよう配慮したものです。したがって、授業のない日の学習をいかにして上手に組み立て、成果をあげるかが、弊社の会員にとっては入試での成否を決定づける重要なことであり、また、中学進学後の学力伸張に見通しを立てられるかどうかを左右する問題であると言えるでしょう。このことからもおわかりのように、弊社の受験指導は「受験合格」だけでなく「合格後」に待っている学習環境を視野に入れたものです。

 弊社の授業は、子どもたちの家庭学習とかみ合ってこそ活かされる内容になっています。したがって、家庭学習をおざなりにした子どもと、きちんとやりこなしている子どもとでは、成果に雲泥の差が生じてきます。現状を振り返ってみてください。

 お子さんは毎日の「学習計画」を立てておられるでしょうか。そこから振り返りながら、学習計画に基づいた学習を実行するよう励ましてあげてください。「まだまだ自立勉強にほど遠い」と思われたかたもおありかもしれません。しかし、焦っても子どもは急に変われません。

 大学受験レベルの自学自習ができるには、まだお子さんは幼すぎる年齢です。高度な要求をするのではなく、今の学年で求められる家庭学習のレベルをこなせるようになれば十分です。授業においては、少しずつ家庭勉強がこなせるようになるための助言もしていきます。現段階では、「毎回の授業を楽しみにして通学してくださること」「授業と家庭勉強がつながりをもったサイクルになること」が当面の課題です。

 テストでの結果にすぐはつながらなくても、まずは上記のような受験生活の実現に照準を合わせていただきたいと存じます。小学校の中~高学年は、子どもの人間としての枠組みができあがる時期です。筋のよい学習姿勢を身につければ、それは一生の財産として生き続けます。

 保護者の方々におかれては、辛抱強い見守りと応援をよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子どもの自立, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念, 私学について

今さら音読? いえ、今こそ音読!

2013 年 4 月 1 日 月曜日

 

   学習のなかで、“読む”という行為は大きなウェートを占めています。実際、小学校での学習においては、すべて「教科書」を読むことが基本となっています。学習塾での勉強も、国語は言うに及ばず、算数も、理科も社会も、「テキスト」を読むことなしには成り立ちません。

 ところが、近年は“読む”ことを苦手にしている子どもが増えています。ただでさえテレビが茶の間を席巻して久しいのに、それに加えてゲームや視聴覚メディアが子どもを取り込んでいます。それらは一概に悪いと決めつけるべきものではないにしても、子どもが活字から遠ざかってしまうのを放置していると、子どもの読みの力の上達がままならなくなるのではないでしょうか。

 特に男子の場合、テレビやゲーム漬けの生活に陥りやすいうえ、机について読書に勤しむ習慣が身につかない子どもが多く、活字を通して情報を得たり、それをもとに考えたりするのを苦手にすることが多いものです。

 6年生になっても相変わらず読むことがままならないようでは、能力を云々する以前に「活字をまともに読めないから勉強が成り立たない」ということになりかねません。これでは受験対策は空回りするばかりです。

 すでにこのブログでご紹介したかと思いますが、4・5年生は人間の生涯で最も語彙の獲得が著しい時期です。この時期を活かすには、まず活字を読んで情報を得るための態勢をしっかりと築くことが求められます。そうでなければ、本の世界を楽しむこともできませんし、読むことを通じて新しい語彙を増やしていくこともままなりません。

 次の資料は、子どもの語彙増加の様子を知ることのできる有名な資料です。これによると4年生頃が語彙増加率で、5年生頃が語彙増加数で生涯最高の数値を記録することがわかります。大人はこのことを踏まえ、子どもの読みの態勢づくりにもっと十分な配慮や後押しをすべきではないでしょうか。

 

  

  小学生の語彙増加の状況        (発達心理学の文献より)

 

 

 

学年

(年齢)

1年生

(6-7歳)

2年生

(7-8歳)

3年生

(8-9歳)

4年生

(9-10歳)

5年生

(10-11歳)

6年生

(11-12歳)

年間語彙

獲得数

1,271

2,305

3,602

5,448

6,342

5,572

語彙量

6,700

7,931

10,276

13,878

19,326

25,668

増加率

19.0%

28.0%

35.1%

39.3%

32.8%

21.0%

 

 読みの態勢が不十分な子どもは、読むことを苦痛に感じるものです(子どもは、“たいぎい”とよく言いますが、読むのを負担と感じなければ積極的に本を読もうとするものです)。逆に、活字を読む態勢を築いた子どもは、読むことの負担が少ないため、本を楽しむことや読書を通じて知識を得たりすることに熱心になります。これが読みのさらなる習熟、知識や思考力の拡充、ひいては高いレベルの学力の獲得につながります。

 今、お子さんが4・5年生のご家庭はどうでしょう。読みの力は順調に伸びているでしょうか。読書をすることが生活の一部として定着しているでしょうか。4・5年生の時期に語彙が急速に増加する様子を、「語彙の爆発」と呼ぶ学者がいます。中学受験生の子どもにとって、この「語彙の爆発」という現象と無縁なままの中学入試突破はあり得ません。その意味において、読む力を育てることは、中学受験生にとって受験対策の要と言えるほど重要なものです。

 語彙の爆発を通して、小学生には少し難しいと思われる文章の読解も初めて可能になります。抽象性を帯びた表現の意味の類推も、一定以上の語彙を伴ってこそ可能になります。今、まさに子どもは大人の思考への脱皮をしていかなければならない時期に来ているのです。

 ここまでお読みになって、「うちの子の状態はどうなんだろうか」と心配になったかたもおありかもしれません。子どもが活字を読んで知識を得る態勢を築いているかどうかを知るには、“音読”をさせてみるよいということを以前ご紹介したことがあります。もしご心配なら、一度さりげなくお子さんに音読をさせてみてはどうでしょう。もしも読みの態勢づくりが順調に進んでいるなら、滑らかに上手に音読ができるでしょう。

 「今さら音読をさせるなんて悠長すぎる」と思われるかたもおありかもしれません。しかし、上手に音読ができないお子さんが、滑らかで正確な黙読ができるようになることはありません。ですから、読みの熟達に向けて避けて通れないのが音読なのです。

 音読が上達すると、それに比例して黙読の態勢も整っていきます。当然、学習において読むことの負担は軽減され、それが学習の理解を高めるという好循環の流れができていきます。これは書物に書かれていたことですが、たとえ6年生の秋からでも、音読をまじめに取り組めば3カ月位したら学習効果につながるそうです。ですから、「今さら音読なんて」と思わずに、ぜひお子さんに取り組ませていただきたいですね。

 音読の素材は何でも構いません。学校の教科書でも、弊社の国語テキストでも、マナビーテストの国語の素材文でも、一般の児童向け図書でも結構です。親がそばで聞いていて、「随分うまくなったな」と思える状態に漕ぎつければ、きっと学習全般に好影響をもたらすことでしょう。

 音声の言葉は生活の場で自然と身につきますが、文字の言葉を自在に使いこなせるようになるには、意図的な準備が必要です。その準備の違いが、読みの能力、学力に多大な影響を及ぼすことになります。そのことについて、このブログに書いたことがありますが、来週以降にもう一度書いてみようと思います。

 

  

 

 

 

 

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